異世界転生   作:MSZ-006

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「リョウさん。私の早合点で、とんだ非礼を働いてしまいましたわ。本当に、申し訳ありませんでした」

 

「すまんのぅ。儂はてっきり、お主が女とみれば年齢に関係なく、見境なしに手を出す不埒な人間だと思ってしもうた。申し訳ない!」

 

俺は、美星さんと宇治茶博士の謝罪を、蜂蜜入りホットミルクを飲みながら聞いている。

 

「別に良いです。慣れてますから・・・」

 

もうね、この流れは恒例行事ですよ?

 

途中で弁明の為に、周りの女性陣が『俺は、そんな人間じゃ無い!』と、一生懸命に色々と言ってくれた。

 

言ってくれた・・・。

 

だが、その台詞の中に『リョウ様は、確かにメガネが性癖で』

 

『リョウさんは、人妻が大好きで』

 

『確かに、リョウさんはマザコンでロリコンで、私たちの関係の話を先延ばしにする人ですけど』

 

『・・・リョウは、中二病で一級フラグ建築士』

 

『パパと私は、結婚するの!』

 

『お父さんは、「僕たちを幸せにする」って、言ってくれたんだよ?ご主人と僕はその言葉を信じて、ずっと待ってるんだ・・・』

 

悪口にしか聞こえてない言葉や、結婚するって言う個人的な願望、此れは可愛いから別に良いけど。

 

更に、カオリやヴェルダンディによる俺の性癖暴露がありましたが全然、気にしてませんよ?

 

そもそも、ずっと待ってるんだ・・・って、哀愁漂う言葉だけど、俺はそんな言葉を言ってないよ!?

 

更に、アレか?

 

可愛いフリして、偶然を装い帰り道で待ってたりするの?

 

ちょっと、ヤンデレ気質な昭和歌謡曲みたいな感じになるの?

 

因みに俺は、あの歌は大好きな曲の一つだけどね?

 

確かに全員、可愛いし美人揃いだけどさ・・・。

 

あれ、おかしいな?

 

雨なんて降ってないのに、目から水が溢れてくるよ?

 

「お兄ちゃん、蜂蜜ミルク美味しいね!」

 

「パパ!アイスクリームに蜂蜜掛けるのも、凄く美味しい!」

 

「主、ホットケーキに蜂蜜掛ける」

 

「お父さん、僕もご主人もヨーグルトに蜂蜜掛けたの食べてるけど、凄く美味しいよ!」

 

めぐりちゃん、珊瑚、瑞、ポポと見た目が幼気な少女組が順番に俺に感想を述べる。

 

うんうん、そうだねぇ〜!

 

美味しいよね!

 

幸せだなぁ〜。

 

「リョウ、やっぱり蜂蜜なだけにハニーフラ・・・」

 

「ヴェルダンディ!?駄目だ!それ以上は、危険だ!」

 

俺は、ヴェルダンディを急いで止める。

 

蜂蜜の使用に関して、宇治茶博士は「別に構わんぞ?」と言ってくれ、グリーン博士も快く(返事が無い、屍のようだ!)許可してくれた。

 

他の女性陣も、蜂蜜を使ったデザートや、飲み物を愉しんでいる。

 

調理専用の魔導ロボが此方に来て、クリムゾン・キラー・ビーの素材を大量に置いて行く。

 

翅、牙、鉤爪といった素材が大量に保管された魔導コンテナにめぐりちゃんが近付き、素材を吟味し始める。

 

「美星さんは、どんな武器を使ってるんですか?」

 

牧場に設置された椅子に腰掛け優雅に蜂蜜紅茶を飲んでいる美星さんに、めぐりちゃんが話し掛ける。

 

有閑マダムがお茶を飲むシーンって、凄く絵になるな。

 

俺はそんな感想を心の内で呟いていると、美星さんは着物の帯に差した扇をテーブルに置いて、めぐりちゃんに見せる。

 

「此れが、私の武器ですわ!長年連れ添って、其処の呑んだくれの主人よりも、長い付き合いですのよ?」

 

旦那である宇治茶博士は、相変わらず正座中である。

 

扇子?

 

「私、踊りを多少嗜んでますの。それで若い頃から、此方の扇を使っておりましてね?」

 

なる程!

 

鉄扇か!?

 

「儂のカミさんは日舞の家元で、本来なら弟子を取って教える立場なんじゃが、家で踊りを教えるよりも外でモンスターの討伐をしてた方が良いと言って、若い頃から冒険者をやっとるんじゃよ」

 

日舞を使って、モンスターを討伐!?

 

流石、現役のギルド長!

 

「えぇ、ですから母や姉たちから、伝統芸能である家の家督を継げと酷く責められましてね?『私の人生は、私が決めます』と言って、ちょっと丁寧に『お話』したら、直ぐに納得して下さったのよ?」

 

「でな?カミさんの踊るように戦うその姿を見て、儂は一目惚れしたんじゃよ!」

 

正座しながら、デレデレになっている宇治茶博士。

 

宇治茶博士の言葉、アレは本気だな。

 

凄く奥さんを愛してるってのが、伝わって来る。

 

でも、お説教中だって、分かってますか?

 

「・・・貴方?そんなに、美辞麗句を述べても私の説教は、終わりませんよ?大体、お医者様からもお酒は控えるようにと、言われてた筈ですわよね?それとも貴方は、私を置いて先に逝くおつもりかしら?まぁ、それならリョウさんの様な、素敵な殿方と再婚するのも悪くありませんわね!」

 

美星さんは、俺を見て『あぁ!その手があったか!』的な顔をして、胸の前で両手を合わせる。

 

その全ての動きが、美しく洗練された動きだ。

 

「!?す、すまん!本当に、申し訳ない!反省しとるから、捨てないでくれ〜!」

 

宇治茶博士が、土下座している。

 

良いよね〜。

 

こういう、夫婦って!

 

何ていうか、ほのぼのするよね。

 

傍から見てればな・・・。

 

「あら?此れって、長老の枝じゃない!?」

 

ヴェルダンディが、席を立ち美星さんの扇を見てそんな事を言う。

 

「ヴェルダンディ、長老って?」

 

「私たちエントは、己の実から新たな生命を育むの。それが何百年も掛けて、同一の存在として生まれ変わりをすると、エルダーエントとして生まれる。そして私たちは、そのエルダーエントを長老って呼んでるのよ!」

 

あれ?

 

確か、この世界の死生観って魂の力が云々だったよね?

 

でも、エントは違う?

 

まぁ、難しい話はいいや。

 

「それで、その長老ってのはどんな感じなんだ?」

 

「そうね・・・。一言でいえば、伝説ね!後、規格外かしら?」

 

ヴェルダンディが、そんな事を言う。

 

「あら、まぁ!私が踊りを教えたエントさんは、エルダーエントでしたの?どうりで、強かった訳ですわね!」

 

強い?

 

いや、おかしいだろう?

 

この世界のエントは、戦う手段を持たない保護モンスターの筈だ?

 

実際、ヴェルダンディを助けた時だって、俺たちが居なければ殺されていた。

 

「リョウさん?この世界には、たまに規格外なモンスターや存在が居るものですのよ?」

 

ニッコリと、俺を見て笑う美星さん。

 

「ちょっと待ってくれ!エルダーエントなんて、私は聞いた事がないぞ?」

 

生物学者であるテア博士も、美星さんとヴェルダンディの話に加わる。

 

「テア博士?貴女はモンスターの変異種を、ご存知でしょう?」

 

「はい、それは私も学者だから知ってます。ですが、エントに変異種が居るなんて話は初めて聞きました!」

 

「そうねぇ、何方にも言って無かったからね」

 

美星さんは、昔を思い出す様に語り始めた。

 

「あの頃の私は、まだ幼く家督を継げだの稽古だの礼儀作法だのと様々な事を押し付けられて、それが嫌になってよく家を抜け出していましたの」

 

 

 

 

 

『はぁ~、もう嫌だ!バカバカしい!私は、外に遊びに行きたいのに、何で踊りの稽古ばっかりさせられるの!』

 

少女時代の美星さんが、施設を護る透明な壁を飛び出して、外をぶらつきながら呟く。

 

『大体、私はモンスターとかを相手にしている方が、よっぽど性に合うのに!大人たちは、勝手ね!今日も、憂さ晴らしに襲って来るモンスターを退治してやるんだから!』

 

あの頃の私は、己の実力も分からない幼い子供でした。

 

『あっ!あんな所に、キラーハウンドが居るじゃない!早速、退治してやる!』

 

でも、キラーハウンドは集団で狩りをする厄介なモンスター。

 

その当時の私は、そんな事も知らず一人でキラーハウンドを殲滅できると思い戦いを挑みました。

 

『グルル〜!グァ〜!』

 

初めは順調に倒していましたが、次々と仲間を呼ばれて、幼い私は直ぐに体力が尽きてしまいました。

 

『ガルル〜!』

 

『ウォ〜ン!』

 

周りを囲まれ、私は頭を抱えて死を覚悟しました。

 

目を瞑り身体を強張らせ、襲いかかる牙や爪の恐怖に怯えていると・・・。

 

『ギャン!?』

 

『グハッ?!』

 

『ギャフ!』

 

『キャン、キャン!』

 

急に周りが慌ただしくなり、私はソッと目を開いて様子を伺いました。

 

すると、其処には木の枝が身体に纏わりついた様な人が、一人でキラーハウンドを蹴散らししているではないですか!?

 

時に、目に見えない高速で拳を何発も繰り出し、時に掌を開いてキラーハウンドの頭部を鷲掴みにして砕く。

 

その圧倒的な体術で、次々とキラーハウンドを殲滅していく。

 

私は、それをただ呆然と眺めているだけでした。

 

 

 

 

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