異世界転生   作:MSZ-006

202 / 203
202

 

皆が居る場所に戻ると、顔を真っ青にしながらグリーン博士が這いつくばって、虹色の物体を噴射している。

 

周りで見ている女性陣及び宇治茶博士は、ドン引きで固まっている。

 

「取り敢えず、背中を擦って全部、出させないと」

 

俺は、グリーン博士に近寄り手当を始める。

 

まずは博士を横向きに寝かせ、それから背中を擦る。

 

それを見た周りの人々が、慌ただしく動き出す。

 

宿の医療支援ロボットがやって来て、グリーン博士を部屋に運んで行く。

 

「リョウが帰って来たら、急にあんな状態になったのよ」

 

カオリが、俺に説明してくれる。

 

なる程、俺たちが帰って来た直後だから、手当が早い方だったのか。

 

なら、良かった。

 

でも、俺とめぐりちゃんが離れる前に、グリーン博士は泥酔して寝てたよね?

 

「それでね、リョウたちが居なくなって暫く経った頃、私たちがクリムゾン・キラー・ビーの蜂蜜で作ったお菓子やお茶を飲んでたら、急に起き上がって『ぼかぁ、今度は蜜酒を呑むんだな!』って言って、呑み始めたのよ?」

 

ヴェルダンディが、続きを話してくれる。

 

「儂は、グリーン博士を止めたんじゃよ?カミさんに、説教されながら」

 

宇治茶博士が、未だ正座で説教中である。

 

「そうなのですわ!私も、グリーン博士に申し上げましたの。『グリーン博士?それくらいにしておかないと、お体に障りますわよ?』と・・・ウチの主人みたいに、お医者様からお酒を控える様になんて言われる様になったら、大変ですものね?」

 

美星さんは困った様な顔をしつつ、宇治茶博士を睨む。

 

「す、すまんかった!久しぶりに、若い連中と一緒に居たから、ちょっとだけ呑んでしまっただけじゃ!後、モンスターの襲撃や遺跡襲撃やらで、儂も大変だったんじゃよ?!」

 

「ですから!さき程も申し上げましたわよね?『それとも貴方は、私を置いて先に逝くおつもりかしら?』と、もうお忘れになったんですの?それなら、さき程の続きで言った『まぁ、それならリョウさんの様な、素敵な殿方と再婚するのも悪くありませんわね!』を実行しても、宜しいのですわよ?」

 

俺を、優しい笑顔で見つめる美星さん。

 

その笑顔は淑女としての気品や育ちの良さが、凄く表れている。

 

そして対照的に、俺を睨む宇治茶博士の表情は絶望と嫉妬、憤怒と言った感情が織り混ざった表情だ。

 

宇治茶博士、7つの大罪ってご存知ですか?

 

俺の前世の宗教に、傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰と言うのがありましてね?

 

宇治茶博士、貴方は既に3つも制覇してますよ?

 

俺に憤怒や嫉妬を向ける暇があるなら、美星さんを安心させるためにも、まずはその暴飲暴食を控えてください。

 

「美星さん!はい、新しい魔導武器が出来たよ!」

 

めぐりちゃん、本当にいい子!

 

完璧なタイミングで、話に入って来てくれる。

 

もし此れが、全く違った場面だったら、『めぐり・・・!恐ろしい子!』って、白目で驚愕する展開だよね?

 

めぐりちゃんが、俺の横を通り過ぎる時、顔をチラッと見て優しく微笑む。

 

あれ?

 

めぐりちゃんが転生者なのは分かっているけど、やっぱり恐ろしい子!?

 

「此れが、旦那さんである宇治茶博士から依頼された、『魔導クリエイティブ・マイスター』の資格を持つ、ボクの作品です!」

 

めぐりちゃんが、美星さんの居るテーブルに扇を丁寧に置く。

 

「あら、まぁ?透明な扇ですの?」

 

美星さんは、折り畳まれ扇骨の黒だけが浮かび上がる扇を手に取って眺める。

 

「美星さん、扇を開いて魔力を流して?後は、好きな色をイメージしてみて?」

 

ニコニコしながら下にズレたメガネを直しつつ、めぐりちゃんが美星さんに言う。

 

美星さんは、丁寧に扇を広げ魔力を流しす。

 

すると、無色透明だった扇面が色鮮やかに変化する。

 

若草色、濃紺色、水色などの鮮やかな地色になり、上から下へのグラデーションに金色が散りばめられる。

 

そして、美しい桜吹雪とエルダーエントと共に座る少女の絵が映し出され、今度は真っ白な扇に切り替わり、真ん中に日の丸と『壊星の美星!参上!』の文字まで浮かび上がる。

 

「素晴らしいですわ!扇面の柄や扇絵、更に文字まで己のイメージした物を自在に出す事が出来るだなんて!此れで今後、一々自己紹介する時に名乗りを上げる必要も御座いませんわ!」

 

美星さんは、嬉しそうに手首を返して要返しを見せてくれる。

 

絵柄は、さき程の桜吹雪とエルダーエントと少女だ。

 

そして、宇治茶博士に向き直ると絵柄が般若に変化する。

 

「貴方?とても素敵な贈り物を、頂きましたわ!ですが、今後は本当に、お酒は控えて下さいまし?」

 

そう言って、般若から美しく微笑む美星さんの表情が映し出される。

 

宇治茶博士は、最後の絵柄を見てホッと息をつく。

 

「すまん!今後は、注意する」

 

宇治茶博士は、最後に土下座する。

 

「それで、実はまだ他の機能もあって・・・」

 

めぐりちゃんが、空気を読んで美星さんに声を掛ける。

 

「刃をイメージすると、扇の先からクリムゾン・キラー・ビーの牙が出ます!」

 

そう言われて、美星さんが扇に魔力を流す。

 

すると、ジャキン!と音がして、扇の先から無数のクリムゾン・キラー・ビーの漆黒の牙が現れる。

 

「それで、日舞って確か扇を投げたりすると思うんだけど、この扇は使用者の思考を読み取って、水平に遠くに投げても必ず手元に戻って来る仕様なんです!」

 

美星さんは、その言葉を聞いて立ち上がり、本来の日舞の動きとは全く違う投げ方、まるでフリスビーを水平に投げ飛ばす様に、体の左側から手首のスナップを鋭く効かせて扇を水平に飛ばす。

 

刃の出た扇は、意思があるかの如く回転しながら美星さんの手元に戻り、安全に手元に収まる。

 

「本当に、素晴らしいですわ!此れで、遠距離攻撃もこなせるなんて言う事なしですわ!今まで、遠くに居るお馬鹿さんたちと『お話し合い』する時に、わざわざ隣まで行って『お話』してましたのよ?此れなら大分、楽が出来ますわね!」

 

美星さんは嬉しそうに、今まで着物の帯に差していた扇を抜き、愛おしそうに眺める。

 

そして、次元収納から黒地に綺麗な装飾が施された箱を取り出す。

 

古い扇をそこに丁寧に仕舞うと、愛おしそうに箱ごと次元収納へと戻した。

 

続けて、先ほど手元に戻ってきたばかりのめぐりちゃん作の扇を、空いた帯へと差し直す。

 

「あの〜、実は俺からもプレゼントがありまして、初めて作った物なので喜んで頂けるか・・・」

 

そう言って俺が美星さんに差し出したのは、エルダーエントの帯飾り。

 

デザインは、シンプルに木製の材質に絵を描いただけの物。

 

その絵は、瑞とポポがまだ白い烏と黒い子豚だった頃の絵にした。

 

仲良く並んで居る姿は、とてもほのぼのとする絵になっている。

 

「まぁまぁ!とても素敵な帯飾りです事!?この絵も素敵ね!」

 

「その絵は、瑞とポポの以前の姿なんです」

 

「以前の姿?リョウさん、どう言う事なんですの?」

 

俺は、瑞とポポとの出会い、それからシュウさんに人の姿にして貰った事を美星さんに伝えた。

 

「そうでしたの!ミリィさんが、アスナ家の方とは思いもしませんでしたわ!リョウさんは凄い方と、お知り合いなんですのね?」

 

「そうじゃな!まさか大企業の社長令嬢が嫁さんとは、思いもせんかったぞ!」

 

宇治茶博士が、お茶を飲みながらそんな事を言う。

 

「博士?俺は、まだ未婚です。それでですね、その帯飾りなんですが・・・」

 

俺は褒めて貰ったのに、非常に申し訳なく思いながら追加説明をする。

 

魔力を流すと、魔力で形作られた小型の白い烏が宙に浮かび上がり、使用者の意思に応じて縦横無尽に空中を駆け巡りながら、攻撃や防御をしてくれる。

 

白い烏は互いに連携して三角錐型の魔導バリアを展開したり、敵に突撃したりし、魔力で形成された黒い子豚は地を駆けて敵に突撃したり敵に近付いて爆発する。

 

それを聞いた美星さんは、目を丸くして「リョウさん、ギルド専属の魔導クラフト職人になる気は、御座いません事?」と、俺を勧誘する。

 

「美星さん、有難う御座います。ですが、自分の様な人間には冒険者ギルドの仕事は、勤まりませんよ」

 

「そんな事は、御座いませんわ!もし就職先に困ったら、是非ギルドを頼って下さいまし!」

 

美星さんは、先ほど差し直した扇のすぐ傍に俺の作った帯飾りをあつらえ、満足そうにそう言った。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。