異世界転生 作:MSZ-006
俺は、美星さんにプレゼントを渡し終え、さて皆の所へ戻ろうかと思っていたら、カオリがニコニコしながら、やって来た。
「さぁ!呑むわよ、リョウ!と言うか、呑め!?」
カオリが、蜜酒を片手に俺に絡んでくる。
「カオリ、さっきも言ったが、俺は呑まないぞ?」
もうね、昨日みたいな事になるのは困るんだよ・・・。
「何よ〜!私の酒が、呑めないって言うのかぁ!」
カオリが、酔っ払い特有の台詞で迫ってくるが、目は酔っ払いの目じゃ無い。
「カオリ、酒を呑んでもないのに、酔っ払いのフリか?」
「何よ!?さっきまで、めぐりちゃんと二人っきりで、小さな小屋に閉じこもってたクセに!?不潔よ!」
「おい!人聞きの悪い事を言うな!」
「そうです、リョウ様。あの密室空間で幼気な少女と、一体どんな攻防を繰り広げていたんですか?訴えますよ?」
ミリィさんが、メガネをクイッと上げながら俺に尋問する。
「ミリィさん!お兄ちゃんって、凄いの!もう初めてとは、思えない位テクニシャンだったの!私も、凄く感じちゃった!?」
めぐりちゃんは、頬を染め興奮しながら言い放つ。
ちょっと、めぐりちゃん?
言葉が、足りてませんよ?
「リョウさん、酷いです!私には、まだ何もしてくれないのに!それとも『ゴモリー、俺は旅に出なきゃならん。でも、帰って来たら必ず結婚しよう?それまでは、お互いにお預けさ!』キラーン!って眩しい笑顔で言ってたのは、嘘だったんですか?」
ゴモリーさん?
俺は、旅に出るなんて言った覚えは全く、これっぽっちも、一切、全然、身に覚えがないですけど?
「リョウ!アンタも飲みなさい!先輩命令よ!それで、何をどう感じさせたのか、キッチリ話しなさい?私は、その酔ってるんだから・・・後で、優しく介抱しなさいよね!」
ネアさんが、蜜酒をちびちび呑みながら俺に絡んでくる。
ネアさんは、呑み始めたばかりだな。
「リョウさん?私は、信じてますけど、本当に何をしてたんですか?」
ユカさんが優しい、ファム・ファタルな笑顔で俺を見る。
ちょっと!?
本当に、誤解ですよ?!
「お父さん!ご主人も僕も、ずっと待ってたよ?早くしてくれないと・・・。僕、もう我慢しないよ?」
ポポの様子が一瞬にして、ブラック・モルダバイト化する。
ポポ、落ち着け!
今は、映画の撮影はしてないよ?!
「主、私は?」
瑞?
私はって、一体なんの話かな?
「パパ、私はいつでも大丈夫!だから、結婚前に早く既成事実を・・・」
「珊瑚!お前の口から、そんな発言は父親代わりである俺は、許さんぞ!」
俺は、慌てて珊瑚を止める。
「リョウ〜!いつまでも、待たせてると〜、逃げちゃうよ〜?諺でもあるよね〜?『ジャイアントキラーボアとビッグチキンを追うものは、ホーンラビットも得ず』って〜」
マリーさんは、蜜酒を大ジョッキで呑みながら、俺に言う。
マリーさん、違いますよね?
本当は、『好機逸すべからず』または『旨い物は宵に食え』って言いたいんですよね?
でも、俺はキチンと皆と向き合いたいんです。
だから、もう少しお待ち下さい。
「・・・リョウ、私はジャイアントキラーボアと根菜の蜂蜜赤ワイン煮込みか、ビッグチキンのハニーガーリックソテーか、ホーンラビットの蜂蜜マスタードのローストが良い。でも、マリーの言う事はもっとも」
リリーさんが、いつもの眠そうな目で俺をジッと見つめて、大ジョッキの蜜酒を飲む。
リリーさん、食べたい物が言葉に混ざってますよ?
「リョウ!わ、私は、お前に昨日、プロポーズされたからな!だから、私は黙って待ってるぞ?だから、安心しろ!でも、早めにな?」
瞳ちゃんが、腕を組んで俺に言う。
プロポーズって言っても俺は昨日、泥酔してたじゃないか?!
でも、ちゃんと責任は取るよ。
「キュ、キュキュン、ブフゥ?」[ぼくは、女装さえしてくれれば、問題ないぞ?]
魔導アナグマが、俺をチラチラ見ながら魔導通信機の表示を見せる。
「言っとくが、女装は俺の趣味じゃない!アレは、映画の撮影で仕方無くやったんだ!勘違いするなよ?」
俺は魔導アナグマに、優しい笑顔で威圧する。
「リョウ!私は、君に人生も私生活もキツく縛り上げてくれれば、大満足だぞ?ハァハァ」
テア博士・・・は、放って置こう。
「此方を、チラッと見て放置!?そ、そんな態度を取られたら、あふぅ!ハァハァ」
「リョウ?私は『ヴェルママ、お腹すいた〜?食べさせて〜!』って甘えてくれれば良いわよ?」
ヴェルダンディが、そんな要求をする。
「ヴェルダンディ?俺はそんな事、酔わない限り言わないぞ?それから、皆にプレゼントを作ってきた。此れは、俺の皆に対する覚悟だ。受け取って欲しい」
そう言って、俺は次元収納からプレゼントを取り出す。
「ヴェルダンディには、此れだ」
俺は、先ほど皆のプレゼントを作っていた際に、小人の少女が洗濯ばさみを髪留めにしている姿を思い出した。
俺はそのイメージを頼りにして、ヴェルダンディにぴったり合うサイズのエルダーエント製クリップを手渡した。
「か、可愛い!髪留めね?有難う、リョウ!長老の枝を素材に使ったのね?凄く魔力が溢れてる!」
ヴェルダンディは、長い髪を纏めて洗濯ばさみ型のクリップで髪を纏める。
「どう?似合う?」
ヴェルダンディが、優しい笑顔で俺に聞いてくる。
「うん、とても似合ってる。それで、本当に申し訳ないんだが・・・」
俺は、この『洗濯ばさみ型』髪留めの機能を説明する。
「実は魔力を流すと、髪留めから蟹ロボが出現してな?」
「リョウ?髪留めから、カニって何?ダジャレ?」
ヴェルダンディが、引き攣った笑顔で聞いてくる。
「いや、ちょっと魔力を流してみてくれないか?そうすれば分かる」
ヴェルダンディが、俺を見ながら髪留めに魔力を流し始める。
すると、ヴェルダンディの目の前に超巨大な蟹ロボが出現して、両手を上に振り上げ『シャキ、シャキン!』と両手の鋏を開閉する。
「この蟹ロボは、戦闘補助をしてくれる。自分の意思もあるが、使用者の思考を読み取って動かす事も可能だ」
そもそも、髪留めを作る時に、洗濯ばさみ型を思い付くまでは良かったんだよ。
洗濯ばさみって、言葉の響きが鋏っぽいよね?
鋏と言えばバスタークラブって言う巨大な蟹のモンスターを、前に湖で獲った事があったけど、なんて事を考えたのがマズかった。
出来上がった作品を見ためぐりちゃんの最初の一言は「お兄ちゃん、今度は戦闘補助の蟹ロボなの?」だった。
「因みに、その蟹ロボは前後左右どんな動きも出来るから」
俺がそう言うと、蟹ロボが前後左右、更にクルッと回転して一瞬で前後を入れ替える。
「リョウ、凄いわ!有難う!」
魔力を遮断して、蟹ロボを消すとヴェルダンディが、とても喜んで礼を言ってくれる。
喜んで貰えて、良かったよ。
俺はてっきり、『何で髪留めから、蟹が出るのよ!親父ギャグにすら、なってないわよ!』と言われるかと思ってたんだ。
「次は、ミリィさん。明日のデートの時に渡そうかと思ってましたが今、渡します。受け取って頂けると有り難いです」
俺は、ミリィさんにススキの簪を手渡す。
「リョウ様!こんな素晴らしい物を、有難う御座います!」
ミリィさんが、嬉しそうに赤くなりながら俺に礼を言う。
「ミリィさん、大変申し訳ありません。実は、その簪にも特殊な機能がありまして・・・」
俺は作った直後に、めぐりちゃんが実演した内容を説明する。
「なる程?簪で相手を突き刺すだけで無く、振り抜けば散弾銃の様に穂が飛ぶと、そんな素晴らしい機能まであるなんて、有難う御座います。リョウ様!」
そう言って、ミリィさんは髪を纏めて簪を差す。
「似合いますか?」
ミリィさんが、ニッコリ笑って俺を見つめる。
「ふ、ふつくしいです!いや、美しいです!」
俺は、真っ赤になってミリィさんに返事する。
凄く色っぽいから、つい言葉を噛んじゃったよ!?
俺は興奮のあまり喉が乾いた為、傍に置いてあった、誰も手を付けていないであろう蜂蜜ジュースを一気に飲み干す。
美味い!
でも、凄くアルコールの味もするんだけど?!
まぁいいや、美味しいからお代わりだ!
「リョウ?それ、ジュースじゃなくて、蜜酒なんだけど・・・」
カオリが何か言ってるが、もう遅い。
そして、時間軸が戻り酔っ払った俺が出来上がった訳だ。
「後ね、味噌汁にきゅうり入れるって、どうなの?おかしいよね?そもそも、介護職員が足りないって言ってんのに給料は上がらず、介護福祉士の国家試験は、市町村で受けられないって、おかしいよね?そもそも、高圧ガスの試験とか危険物の試験は、住んでる市町村で受けられたよ?だからね?『な゛ん゛で゛た゛よ゛ぉ゛!』もうね、『ゆ゛る゛さ゛ん゛』って、正義のブラックな怪人の真似しちゃうよ!?」
話を聞いていたユカさんが、呑んでいた蜜酒をブフッと吹き出しむせ返る。
「うんうん、そうね。リョウの言う事はもっとね?でも、国の仕組みとか様々な事があるからね?」
ヴェルダンディが、俺を撫でながら宥めてくれる。
「ヴェルママも、おかしいって思うでしょう?ぼく、間違って無いよね?」
俺はヴェルダンディに、甘えながら拗ねた様に言う。
「そうね?リョウは、いい子ね!」
ヴェルダンディが顔を赤くして、俺を撫でる。
「うん!ぼく、いい子!」
ニコニコ笑いながらそう言って、更に甘い蜜酒を煽る俺。
「だ、駄目!もう本当に、限界!?私、このままだとおかしくなっちゃう?!」
ヴェルダンディが、真っ赤になって俺から離れる。
「ヴェルママ!?何処に行くの?ぼくを、置いて行かないで〜!」
「さて、今度は私が代わりましたよ?リョウ様?」
「ミリィちゃん!今日も、可愛いね!ぼくがあげたメガネ、いつも掛けてくれて有難う!」
「ブッ!ゴホゴホ、うぅん!いえ、リョウ様から頂いたプレゼントですから、大切にしてますよ?」
ミリィさんが、呑みかけのシードルを吹き出しそうになる。
「だ、大丈夫?ミリィちゃん?背中さする?」
「り、リョウ様!?是非、お願いします!」
「うん!ぼくねぇ!ミリィちゃん、大好きなんだ!だから、具合が悪くなると、ぼくは凄く困っちゃうんだよ?」
「り、リョウ様!尊いです!」
ミリィさんは、顔を赤くして俺を見つめる。
「ミリィ?具合が悪いなら、私が擦ってあげるわよ?ほら、此方に来なさい?」
ネアさんが、ミリィさんを俺の隣から引き離す。
「ネアちゃん!ミリィちゃんが可哀想だよ!イジメちゃダメ!」
俺は、ネアさんに怒る。
すると、ネアさんは「リョウ?お姉さんが、この娘の背中をナデナデしてあげるからね?大丈夫なのよ?」と、俺にニッコリ笑って言う。
しかし、ミリィさんは俺の隣に戻ろうと必死に抵抗しているが、ネアさんやマリーさん、リリーさんに取り押さえられて、身動きを封じられる。
「ほら、リョウさん?私が作った卵焼きよ?あ〜ん!」
すかさず、哀さんがミリィさんの方を向かせない様に、卵焼きを箸で掴んで俺の口元に持ってくる。
「美味しい!哀さんっはめぐりちゃんのお母さんだけど、ぼくのママになって!」
「い、いいのよ!私がお母さんよ!おいで、抱きしめてあげる!」
哀さんが、両手を広げて俺を誘う。
俺が喜んでその胸のうちに飛び込もうとした瞬間、哀さんが栗のキーホルダーの付いた鎖でグルグル巻きにされ、勢いよく後方に引っ張られていく。
「ちょ、ちょっと!めぐり!?アンタ、何やってるのよ!この鎖を解きなさい!」
「お兄ちゃんは渡さない!早速、お兄ちゃんからのプレゼントを試す機会ができたよ!」
めぐりちゃんは意気揚々と、俺がプレゼントしたばかりの栗のキーホルダー付きの鎖で哀さんを完全拘束していた。
「ふぇ〜ん!?ケンカしないでぇ〜?!みんな、なかよくしないとダメだよぉ?」
俺は泣きながら、哀さんとめぐりちゃんを止めようとする。
其処に、俺の大好物『タコの唐揚げとイカリング』を大皿に乗せて、立ちはだかったのはマリーさん。
「リョウ〜?いい子には〜、このタコの唐揚げと、イカリングを食べさせてあげる〜!欲しい人〜?」
「は〜い!」
俺は元気よく手を上げて、哀さんとめぐりちゃんの事を忘れる。
「リョウさん?此方など、如何ですか?」
美星さんが、上品に小皿に盛ったきゅうりのハム巻きを箸で持ち上げて俺に見せる。
俺は、マリーさんにタコ唐とイカリングを一つずつ食べさせて貰い、即座に美星さんの方に行く。
「リョウさん?いい子は、ちゃんと席に座ってから、料理を頂くものですのよ?分かりましたか?」
美星さんが、優しく俺に言い聞かせる。
「は〜い!ごめんね?美星ママ!」
「・・・リョウさん?私は貴方のママでは無く、妻でも構いませんの・・・」
頬を紅く染めた美星さんが、俺を見つめて言葉を紡ぐ。
「ちょっと待て!お主、何を言ったんじゃ!?人のカミさんをママ呼ばわりして、しかもお前まで何で乗り気なんじゃよ!?泣くぞ、儂?!」
俺と美星さんのやり取りを見て、怒鳴り散らす宇治茶博士。
「ふぇ〜ん!おじいちゃん、怖い〜!」
「貴方?リョウさんを、泣かせましたのね?」
美星さんが、めぐりちゃん作の魔導扇をスッと引き抜き、落とし開きにする。
『パシッ!』と一瞬にして開いた扇面を、流れるような要返しで宇治茶博士に見せる。
その扇面には、白地に日の丸で『壊星の美星!参上!』の文字が、浮かび上がる。
「ま、待て!待つんじゃ?!リョウ、おじいちゃんは、怖くないぞ〜?だから、もう泣かんでくれ!儂の生命が危ないんじゃ!」
「おじいちゃん?もう、怒らない?ぼくが悪いなら、謝るよ?ごめんね?」
「貴方!?幼気なリョウさんに、謝らせるなんて、言語道断ですわよ!?」
美星さんの怒りに呼応するように、魔導扇の地紙が怪しくうごめく。
日の丸と文字が掻き消え、今度は地獄の様相に般若の顔という、非常に危険な扇絵へと瞬時に変化し『ジャキン!』と音がして、扇の先から無数のクリムゾン・キラー・ビーの漆黒の牙が現れる。