異世界転生 作:MSZ-006
「美星ママ?おじいちゃんを、怒らないで!ぼく、大丈夫だよ?」
俺がうるうるした目で、美星さんを見る。
すると扇面が鮮やかに変化し、静かに見守る三日月と水面に優しく煌めく金銀の光が、深い安心感と上品な静けさを醸し出す扇絵が現れる。
「貴方?リョウさんに、感謝なさい?」
美星さんが優しい笑顔で俺を見つめながら、声のトーンを落として静かに宇治茶博士に言い放つ。
「う、うむ!リョウ、すまんかったな?」
宇治茶博士が、タジタジになりながら謝る。
「ううん!おじいちゃん、ごめんね?」
俺は、宇治茶博士に潤んだ瞳で謝ると宇治茶博士は「こ、此れは、いかん!何という威力じゃ!?本当に、孫のようじゃ?!」と、動揺する。
「私たち、子供には恵まれませんでしたもの。リョウさんを養子に、お迎えしてよろしいかしら?貴方・・・」
落ち着きと気品を漂わせる美星さんは、帯に魔導扇を淑女らしく優雅に仕舞いながら、大人の余裕を含んだ微笑みで宇治茶博士に問いかける。
「・・・そうじゃな!リョウさえ良かったら、考えても良いかもしれんのぅ」
宇治茶博士が、コーヒーに口を付けながらしみじみと呟く。
「リョウさん?私たちと一緒に、暮らしてはくださいませんこと?」
俺は美星さんに、ハムのきゅうり巻きを優しく口に運んでもらいながら、そんな魅力的な提案を受ける。
「え〜!それは、ダメだよ!だって、ぼくには、かおりとサンゴ、それにミズキと木人が居るんだもん!」
俺は大切な家族たちの顔を思い浮かべながら、元気いっぱいに首を振った。
「あ、主、大好き!」
「リョウ!もう、ずっと離さない!」
瑞とカオリが、俺に飛び込んで来る。
「ミズキ、カオリ、危ないよ〜!」
二人に抱きつかれた俺は、ケラケラ笑いながら更に蜜酒を煽る。
すっかり暗くなった宿の牧場で、ワイワイと賑やかに過ごす。
とても平和な風景だ。
めぐりちゃんが、哀さんを相変わらず鎖で拘束しているのを除けば、だけど。
「そうだ!みずきとカオリに、プレゼント作ったんだよ?」
俺は、次元収納からエルダーエントの木材で作った、特製の品を取り出す。
瑞には木製ブローチを、カオリには木製のカチューシャをプレゼントする。
瑞は、ブローチをしげしげと眺め「主、有難う!真ん中、私だ!隣にポポと珊瑚ちゃんが居て、主とカオリさんも彫られてる!」と、感想を述べる。
「リョウ!可愛いカチューシャね、有難う!似合う?」
カオリは早速、カチューシャを着けてニコニコしている。
瑞に渡したブローチは、俺の姿とカオリ、その間に真ん中を瑞、両端に珊瑚とポポを彫り込んだ綺麗な木彫りのブローチ。
カオリに渡したカチューシャは、細かい幾何学模様が彫り込まれた美しいカチューシャ。
「それでね?そのカチューシャとブローチに魔力を流してみてぇ?うふふ!」
俺は、イタズラを企む悪いクソガキみたいな表情で二人に言う。
「う、うん?まさか、ミリィさんやヴェルダンディのプレゼントみたいに、何か仕込まれてるの?」
カオリが、ちょっと引き気味に聞いてくる。
「いいから〜、いいから〜、ぼくを信じて〜?」
瑞は、俺の言葉を聞いた瞬間に、ブローチに魔力を流す。
すると、目の前に様々な武器が取り付けらた西洋甲冑の様な物が現れる。
そして、呆然とする瑞に、その西洋甲冑が独りでに分解され瑞の身体を包み込む。
その姿は、前世でやってた身体を部分的に西洋甲冑みたいな装備を着けて戦う少年たちのアニメの様な姿だった。
「あ、主?これ、何?!」
「うふふ!それはねぇ、めぐりちゃんとぼくが、共同開発した魔導武器セットなんだよ!ミズキは、琉球古武術が合うんでしょう?だからね、西洋甲冑みたいなパーツで身体を護りながら、身体のアチコチに武器を取り付けてみたの!先ず、両の太腿を護る白銀の装甲に漆黒の『トンファー』を一本ずつ装着して、ふくらはぎの横の装甲には『二丁鎌』を一本ずつ装着!普段は刃が畳まれてるから、脚を交差させても自分を傷つけることはないけど、足払いとかローキックを食らう寸前に、シャキンと刃が飛び出す仕様なんだよ!見てて?」
俺がパチンと指を鳴らすと、瑞の足元から小気味いい金属音が響く。
「だから、相手は大怪我だね?もちろん状況に応じて取り外して、両手に持つことも可能!次は、腰の後ろに二本の『サイ』を交差するように装着!細い鎖の武器『スルジン』は、首周りをぐるぐると巻き固めて、隙間のない鎖の壁みたいなガードパーツにしたんだよ!両手を護るガントレットは、拳のところに鋭い鉄の突起を仕込んで、琉球古武術の『手甲』みたいに殴っただけで、敵を粉砕する打撃武器としても使える様にしたの!それで、両腕の装甲に沿うように、二本の棍をぴったり重ねて鎖の所で折り返した『ヌンチャク』を、左右の腕に一組ずつ装着したから、此れで攻撃を受けても大丈夫!魔導ウミガメの甲羅で作った頑強な盾『ティンベー』と、その裏にセットされた短矛『ローチン』を背中の中心へと背負う様にして、仕上げは盾の裏側左右から斜め下に向けて、コンパクトに縮めた六尺『棒』と舟の『櫂(エーク)』を、先端がかすかに覗くようにしてみたんだよ!因みにこの六尺棒、魔導ギミックで三つに分かれて『三節棍』にも変形しちゃう優れモノなんだから!最後に、全身のあらゆる部位に配置した十種類の武器は、状況に応じて自在に取り外し可能なんだよ!凄いでしょう!?」
「主?全く、重さを感じ無い。何故?」
瑞が、可愛く首を傾げて言う。
「ミズキ?此れは『高位の魔導武器』だからね? ミズキにとっては羽毛みたいに軽くて、いつも通りの素早い動きができるけど、他の人だったら重さで動けなくなってるよ。うふふ、まさにミズキ専用の最強装備なんだよ!それから鎧モードの時は、玄関に飾ったり、居間に飾ったりも出来るし、ゴーレム技術を組み込んだから自己判断で勝手に動くからね?」
酔っ払い特有の意気揚々とした雰囲気のまま、俺はこれみよがしなドヤ顔で胸を張った。
「それで、リョウ?私にくれた、このカチューシャは?後、その甲冑って天秤座をイメージしてるわよね?」
カオリが、引き攣った顔で聞いてくる。
「うん!やっぱり、分かる?後、凄く似合ってる!カオリ、可愛いよ?」
俺は、満面の笑みで答える。
「有難う!でも、そうじゃなくて?!」
カオリは俺の言葉を聞いて、嬉しそうに頬を染めつつ俺に問い掛ける。
「カオリ?魔力を流せば理解るよ〜?」
俺は、悪い笑顔を浮かべながら答える。
「リョウ!?その笑顔ダメぇ!」
カオリが真っ赤になって、俺に言う。
俺はカオリに近付き、耳元で優しく低い声で「ほら?早く魔力を流してご覧?」と迫る。
そんな俺の姿を見ていた女性陣は真っ赤になったり、頬を染めて羨ましそうに眺めたりと様々な反応だ。
「り、リョウ?ひょっとして、私にもプレゼントあるの?」
ネアさんが、顔を赤くして俺に問い掛ける。
「うん!ネアちゃんのプレゼントもあるよ?勿論、他の人たちにもちゃんと、プレゼントあるからね?うふふふ!」
「う、嬉しい反面、ちょっと怖いわね?後、私もカオリと同じ事しなさいよね!?」
「ネアさん、それ凄く分かります。私は、リョウさんに『ほら、ゴモリー?わがまま言ったら、お仕置きだよ?それともゴモリーは、ワザとわがまま言って俺にお仕置きして欲しいのかな?』って、さっきカオリさんに迫った時の様に優しく耳元で囁いて欲しいです!」
ゴモリーさんが、ネアさんの話に同意する。
「ご主人は、お父さんからのプレゼント嬉しくない?僕は、とっても嬉しいよ!例え、どんなビックリ兵器だとしても・・・」
ポポが後半だけ、冷めた声で感想を述べる。
「ポポちゃん、私だってリョウさんからのプレゼントなら嬉しいわよ!それに、リョウさんが作った物を見てると戦闘に関して、無駄がないのよね」
ユカさんは、ポポの質問に独自の解釈を添えて感想を述べる。
「・・・私は、リョウのプレゼント楽しみ。後、『ぼく、お姉ちゃん大好き!だから、コレあげる!』って、言う」
リリーさんが、大皿の上に乗せた大量の料理を堪能しながら、俺を見て要求を述べる。
「そうだね〜!怖さ半分、楽しみ半分だよね〜!私は、抱っこしながら〜、料理を食べさせつつ〜『マリー?君は、俺より歳上のクセに甘えん坊だね?でも、そんな所が凄く可愛いよ!』って、言って欲しい〜!」
マリーさんは料理をつまみに、一升瓶から大ジョッキへと、なみなみと日本酒を注ぎ豪快に煽っている。
「カオリ〜!早く〜!ま〜りょ〜く〜、な〜が〜し〜て〜?」
俺が、甘えん坊将軍状態で拗ねながらカオリに強請る。
そんな俺を見たカオリは、「か、可愛い・・・!し、仕方無いわね!?今回だけよ?」と、顔を赤くして目を逸らしながら、頭のカチューシャに魔力を流した。
次の瞬間、カオリの体が眩い光に包まれる。
彼女の頭を飾っていたカチューシャが外れ、光を放ちながら三日月型の短いステッキへと姿を変えていく。
光が収まったそこにいたのは、前世の魔法少女アニメで見たような、完璧な変身ヒロイン姿の彼女だった。
「リョウ!?何、この格好?!恥ずかしいんだけど!」
カオリが羞恥に耐えかね、小さく身を縮める。
「カオリ、凄く可愛いよ!後ね、どんなに激しく跳ねたり飛んだりしても、重力魔法によって『鉄壁の防御(スカートの中)』で、完璧に死守される仕様なんだよ!凄いでしょう!」
ニコニコ笑いながら自慢げに説明する俺に対して、カオリは顔を真っ赤にして「一体、なんの罰ゲームよ!?」と、その場に蹲ってしまった。
「カオリママ!凄く、可愛い!パパ、私もカオリママと同じ装備が欲しい!」
今度は珊瑚が、俺の腕に抱きつきながら甘えてくる。
「え〜?でも、珊瑚にはちゃんと珊瑚用のプレゼントがあるよ?それじゃ、ダメなの?」
俺が今にも泣きそうな顔で問い掛けると、珊瑚は慌てて手を振った。
「ご、ごめんね、パパ!カオリママの格好が凄く可愛かったから、つい言ってみただけなの!」
「珊瑚、ごめんね?でも、このプレゼントを見たら絶対に気に入ってくれると思う!」
そう言って俺は次元収納から、美しい龍が彫られた木製のペンダントを取り出した。
「わぁ!素敵なペンダント!パパ、有難う!・・・これ、魔力を流すと何かあるの?」
「うふふ、当然さ!でも、まだカオリへの説明が終わってないから、ちょっと待っててね?」
俺は、蹲っているカオリに「カオリ、そのステッキを握って魔力を集中してみて?そうすると必殺技が出るから!」
そう言いながら、俺は少し離れた場所に、次元収納から取り出した標的を地面に突き刺した。
「ひ、必殺技って何よ、もう!やれば良いんでしょう、やれば!こうなったらヤケクソよ!」
カオリは立ち上がり、ステッキを握る腕を前に突き出して、独特のポーズを取った。
ステッキの三日月部分に、バチバチと激しく、空間が歪むほどの魔力が集束していく。
「はあぁぁぁっ!」
気迫とともに放たれた三日月型の魔力弾は、標的の目の前でいくつもの光の輪に分裂した。
それらは中心の標的を取り囲むように輪舞を描きながら高速回転し、全方位から縛り上げるように一斉に収束。
直後、標的の胴体が三日月型に鮮烈にくり抜かれ、ワンテンポ置いて夜空を焦がすような大爆発を起こした。
凄まじい威力で粉砕された標的の残骸を見て、めぐりちゃんが少し離れた所で哀さんを鎖で拘束しつつジト目で俺に言う。
「お兄ちゃん、コレって魔法少女じゃなくて、皆殺しの監督が初期に作ったロボットアニメの必殺技だよね?」
「うふふ!分かる?今のぼくには、皆っていう帰る場所がある。今の必殺技のロボットの主人公も、白い機体の主人公も嬉し泣きしながら、帰ってきたよね?前世のぼくには、考えられない幸せが此処にはあるんだ!」
「リョウ、君の話はよく分からないが、私たちを帰る場所だと言ってくれたのは、とても嬉しいぞ?」
テア博士が、俺を見てそんな事を言う。
「テアちゃん!ぼく、テアちゃんや皆が居てくれて、幸せなんだよ?有難う!」
「普段のドSな塩対応も良いが、出会って間もない頃、私を陥落させた時のあの甘え姿と同じで、本当に素晴らしいな!」