異世界転生 作:MSZ-006
「テアちゃんや他の皆が居てくれるから、ぼくは生きていられる。だから、ぼくは誰にも居なくなって欲しくないんだ」
「大丈夫だぞ?リョウ!私は、お前を置いて何処かに行ったりしないぞ!」
俺の発言を聞いた瞳ちゃんが、ギュッと抱きしめて言ってくれる。
「瞳ちゃん、有難う!大好き!」
「り、リョウ!?私も、お前の事が大好きだぞ?」
頬を染めて、俺を見る瞳ちゃん。
「そうだ!瞳ちゃんと魔導アナグマにも、プレゼントあるんだよ?はい!」
俺は、次元収納から木製のチョーカーと、全て木で出来た腕時計を瞳ちゃんに手渡す。
「リョウ!有難う、大事に仕舞っておくぞ!」
瞳ちゃんは、俺の手渡したプレゼントを胸の前で抱きしめ、感極まった表情で俺を見る。
「う〜ん?仕舞っちゃ、ダメだよ?使わないと、意味が無いんだからね?」
「そ、そうだな?魔導アナグマにも、付けてやらないとな!」
「うん!それでね?魔力を流すと・・・」
首にチョーカーを付けた魔導アナグマが、俺の説明を聞く前に魔力を流し始める。
すると、『しなやかな直剣』、『頑丈な杖』、『優雅な扇』、『一振りの横笛』、『大ぶりな瓢箪』、『細長い小太鼓』、『片手サイズの花籠』、そして一対の平たく、薄い拍子木みたいな『雲陽板』へと変化する。
「ブフゥ!?」[うわっ!?]
魔導アナグマが、驚いている。
「もう〜!此れから、説明しようと思ったのに〜!お前は、酔八仙拳をゴモリーさんから教わったでしょう?それで多分、武器術も教わると思うんだ!だから、全ての武器に変化する様にしたんだよ!嬉しい?」
俺はドヤ顔で、魔導アナグマを見つめる。
その姿形が変わった武器を見て、ゴモリーさんが胸元に両手を合わせて、目をキラキラさせながら声を掛けてくる。
「リョウさん!?剣や杖、扇に横笛みたいに分かりやすい代表的な物から、瓢箪や小太鼓、花籠に雲陽板といった、一見武器に見えない『暗八仙』と呼ばれる裏の武器まで作ったんですね?素晴らしいです!本当に、リョウさんの博識さに驚きます!」
「うふふ!因みに、拍子木ってのは『火の用心』で、カチカチ鳴らす木の棒で『雲陽板』は、それを薄くしたような楽器なんだよ?皆、分かったかな?」
「パパ?誰に語りかけてるの?」
珊瑚が、先ほど渡した龍のブローチを手に持って、ジト目で俺を見る。
「珊瑚、ごめんね?珊瑚の事を忘れてた訳じゃないんだよ?そのブローチにも、ちょっとだけ仕掛けをしたんだ!」
俺はニコニコ笑いながらミリィさんが呑んでいたシードルを注文し、それを口に含んでから説明を始める。
「珊瑚、魔力を流してみて?」
「あの、パパ?私もカオリママの時の様に・・・」
珊瑚が、モジモジしながら顔を赤らめて言う。
「え〜?仕方ないなぁ?ほら?珊瑚、魔力を流してご覧?」
俺は珊瑚の傍に寄り、低い声で珊瑚の耳元へ優しく語りかける。
「ひゃうん!ぱ、パパ、それ凄い!」
珊瑚は、片耳を押さえて真っ赤になっている。
「リョウ様?幼気な珊瑚ちゃんに、その様な事をするのは、如何なモノかと思います!私にも後で、お願いします!」
プレゼントしたススキの簪を差したミリィさんが、俺に言う。
「リョウ!私は、四つん這いになるから私の尻を、お仕置きしながら・・・」
「テアちゃん?それ以上は、ちょっとマズいから、自重しましょうね?」
何か言い掛けたテア博士を、ヴェルダンディが即座に止める。
「瞳ちゃんも、魔力流してみて?瞳ちゃんも、珊瑚みたいにする?」
「わ、私は、別に良いから!大丈夫だぞ!そんな事をされたら、危険だっ!」
瞳ちゃんは、真っ赤になって慌てて両手を振りながら、フルウッドの腕時計に魔力を流す。
「ぱ、パパ?」
珊瑚が、驚愕して固まっている。
「珊瑚、凄いだろう?珊瑚は、レッドドラゴンだから、東洋の龍を出してみた!」
この世界は、魔導科学とモンスターが存在する世界だ。
そして、珊瑚の様なドラゴン種も確かに生息しているが、何故か東洋の龍という存在だけは、この世界のどこにも存在していない。
で、珊瑚の目の前に居るのは、東洋の龍ロボットだった。
全長十メートル程で、鈍い銀色の光沢を放つボディ。
そして、空中にウネウネと停滞している龍ロボは、驚愕に固まる珊瑚をジッと見つめている。
「因みに、この龍ロボは瑞の鎧と同じで、身体に装着可能で自分の意思で勝手に動いて、戦闘補助もしてくれるからね!ちょっと、実演してみる?」
俺は、そう言って次元収納から出した新たな標的を地面に刺して、龍ロボに標的を攻撃する様に指示を出す。
しかし、珊瑚をジッと見つめたまま動こうとしない。
「アレ?動かないな?壊れちゃったのかな?」
俺がそんな事を言うと、龍ロボは俺の方を向いて、大口を開き「キシャー!」と咆哮する。
「うわっ!ちゃんと、動くじゃん?でも言う事、聞かないな?」
俺が首を傾げていると、珊瑚が龍ロボに話し掛ける。
「あの標的を、壊してみて?」
「グァー!」
龍ロボは咆哮を上げると、身体をバチバチと帯電させ標的に向って雷を落とす。
雷を落とされた標的は、跡形も無く消滅している。
「パパ、凄いね!有難う!」
「う、うん?喜んで貰えて、嬉しいよ?でも、あんなに高威力だったかな・・・」
俺は首を傾げつつ、ちびちびと新たに注文した梅酒のソーダ割りを呑む。
うん!
甘い味に炭酸がきいてるから、非常に旨い!
「他には、どんな事が出来るの?」
珊瑚が、龍ロボに手を当てて話し掛けると龍ロボは『ガー!』や『グルゥ、グァー』と、何やら珊瑚と会話している。
俺には、サッパリ理解らん。
「そうなんだ?じゃ、ちょっとお願い!」
珊瑚は、龍ロボに何かをお願いすると龍ロボが『グルァ!』と一声鳴いて、一瞬にしてバラバラになり、珊瑚の身体にピッタリと鎧の様に装着される。
鈍い銀色のボディが各パーツへ分解し、龍の頭部が兜へ、胴体が胸当てや肩当てへと姿を変えながら、珊瑚の四肢へ吸い込まれるように吸着していく。
そして珊瑚に合わせたかの様に、銀色だった装甲が鮮やかな真紅の鎧兜へと変化した。
「うんうん!珊瑚、カッコいいよ!」
俺は、片手にフライドチキンを持ち、片手に梅酒のソーダ割りを持って眺めている。
「瑞のは、西洋甲冑みたいな装備を着けて戦う少年たちの方で、珊瑚の方の元ネタは、鎧兜を着込んで戦う方のアニメなんだよ!」
俺は、手に持ったフライドチキンを齧り、梅酒ソーダを呑みながら解説する。
「お兄ちゃん?それは、ボクと香りさん、それからヴェルダンディさん、リリーさんにしか、分からないネタだと思う・・・」
めぐりちゃんが、漸く落ち着いたのか此方にやって来て俺にツッコミを入れる。
「め、めぐり?!なかなか、腕を上げたわね!お母さん、嬉しいわよ?」
哀さんは、ゼェゼェ言いながら身体のアチコチを回したり擦ったりしている。
「パパ!この龍ロボの、鎧兜凄い!全く動きを阻害しないし、重さも感じないよ!」
珊瑚は、次元収納からめぐりちゃん作の蛇ロボットを取り出すと、先ず十文字槍に変化させて、一通り動きを確かめる。
そこから三節棍、そして六尺棒へ。
武器を自在に変化させながら一通り型を確かめると、俺に向かって満足げな感想を口にした。
「本当に、有難う!」
珊瑚は、鎧兜を龍の状態に戻し、ニッコリ笑って俺に感謝を述べる。
しかし、どうにも気になる事がある。
俺は瑞の方を見ると、瑞は先ほど渡した西洋甲冑と組手をしている。
「ミズキ〜?ちょっと、来て〜?」
俺は瑞を呼んで、珊瑚の隣に来てもらった。
「主?どうしたの?」
瑞は、不思議そうに小首を傾げて俺に言う。
「うん!それがね?さっき、珊瑚の龍ロボに指示を出したけど、聞かなくてさ?ミズキのは、大丈夫かと思ってね?」
「うん。ちゃんと、聞いてくれる。でも、珊瑚ちゃんの龍も、凄かった!」
瑞が、はにかんだ笑顔で答えてくれる。
「そんな風に言って貰えると、嬉しいな〜!」
俺がデレデレしながら答えていると、西洋甲冑は俺に顔を向けて、瑞の袖をクイクイっと引っ張っている。
その姿は、『こんな奴に構ってないで、早く向こうに行きましょう!?』と、言わんばかりの態度だな?
そして、龍ロボは何故か俺を見ると「キシャー!」と、威嚇してくる。
アレ?
本当に、故障してんじゃないのか?
「めぐりちゃん?此れって、故障かな?」
「う〜ん?ちょっと待っててね?」
俺の問い掛けにめぐりちゃんは、西洋甲冑と龍に近付いて様子を見てくれる。
西洋甲冑は非常に礼儀正しい態度で、めぐりちゃんに接し、龍ロボも珊瑚と接している時と同じ様に懐いている。
めぐりちゃんが、戻って来て俺に一言。
「お兄ちゃん、大丈夫だよ?故障してないと思うけど・・・」
「え〜?だって、ぼくには凄く冷たい態度とか、きしゃー!って怖い声、出すんだよ?おかしいよ!」
「り、リョウ?私は・・・?」
忘れ去られていた瞳ちゃんが、所在なさげに声を掛けてくる。
「ごめんね!?なんか、西洋甲冑と龍が反抗期みたいで、困っちゃうよね?」
俺の言葉を聞いた西洋甲冑と龍は、俺の言葉を一切無視して瑞と珊瑚とゼスチャーや会話で、コミュニケーションを取っている。
「瞳ちゃんも、魔力流したんだね!凄く、似合ってるよ!」
「う、うん、有難う・・・」
瞳ちゃんの今の姿は、本来の軍服では無く、前世でやっていた某ロボットアニメで鮮やかな赤髪のベリーショートに、真紅のミニスカ軍服を纏い、赤い機体を操縦するエリートの女の子の軍服姿だ。
因みに、両肩の肩章には大尉を示す三本の金線が走り、左胸にも同じく大尉の階級章がつけられている。
「しかし、リョウ?この格好は、ちょっと恥ずかしいぞ!?私は普段、軍服は常にズボンなんだが?」
瞳ちゃんは、ミニスカを下に引っ張りながら、健康的な太腿を擦り合わせて、モジモジしている。
「瞳ちゃん、大丈夫だよ!瞳ちゃんの服も、激しく跳ねたり飛んだりしても、重力魔法によって『鉄壁の防御(スカートの中)』は完璧に死守される仕様だし、例え転んでも魔法の力で、真っ暗闇にしか見えないんだよ?凄いでしょう!」
「リョウ?見えなきゃ良いっていう問題じゃないんだが!?」
瞳ちゃんは、赤くなって俺に文句を言う。
「でも、ぼくはね?瞳ちゃんの下着姿を、他の誰かに見られたくないんだよ?それは、分かって欲しいな?」
俺は酔っ払っているのもあり、必殺の『ウルウル視線攻撃』で瞳ちゃんを直視する。
「っ!し、仕方無いな!リョウがそう言うなら、私はこの姿を容認しよう!」
瞳ちゃんが、頬を紅く染めながら答える。
「わ〜い!有難う、瞳ちゃん!それでね?瞳ちゃんってシステマ使うでしょう?でも、いくらシステマやってて、呼吸法で痛みの緩和しても攻撃されたら、やっぱり痛いでしょう?だから、この軍服には特殊効果を付けました!」
パチパチパチと、拍手しながら解説を始める俺。
そんな俺を、生温かい目で見る女性陣たち。
そして、ソワソワしながら相変わらずスカートを下に引っ張っている瞳ちゃん。
「瞳ちゃん、ごめんね?スカート短すぎた?でも、瞳ちゃんみたいに可愛い娘なら、絶対にミニスカが似合うと思ったんだよ?」
俺は意気消沈しながら、瞳ちゃんを見る。