異世界転生 作:MSZ-006
「それでね?他の人たちにも、プレゼントあるんだけど」
俺は、まだプレゼントを渡していない面々を見ながら言う。
「では、私は何を貰えるのかな?リョウ!」
テア博士が、満面の笑みで俺に聞く。
「テアちゃんには、コレだよ?」
俺は、エルダーエント製の『ウッドブレスレット』を手渡す。
「有難う、リョウ!ふむ?ブレスレットか?コレは片方しか無いが、私の両腕を拘束して・・・」
テア博士は嬉しそうにブレスレットを眺めて、危険な発言をするが俺は無視して言う。
「その『ウッドブレスレット』も、ちゃんと仕掛けがあるんだよ?魔力を、流してみて?」
俺はニコニコしながら、テア博士に言う。
「り、リョウ?私は、君に耳元で『テア?俺の命令を聞け?じゃないと、お預けだぞ?』って、優しく命令して欲しいんだが?」
テア博士が、身体をクネクネと悶えさせながら俺に言う。
「テアちゃん、そういう気質だから仕方無いか!でもそれって、ぼく好みなんだけどね?」
俺はニコニコ笑いながらテア博士に近寄り、ご希望通り耳元で『テア?俺の命令を聞け?じゃないと、お預けだぞ?』と、囁いてやる。
「は、はいぃ・・・!リョウ様、テアは何でも従います!」
テア博士が、うっとりとした瞳で俺を見つめてくる。
「うん!じゃ、早く魔力流して?」
俺は、テア博士を見つめて言う。
「そ、そんなに見つめられると・・・。ハァハァ」
テア博士が、身悶えながら魔力を流す。
すると目の前に、漆黒のフードのついた前開きのロングコートが空中に現れる。
「そのコートね?テアちゃん、大きい鎌を武器にしてるでしょう?だから、死神っぽくしてみたんだよ!因みに、身体に装着すると・・・」
俺はそう言って、パチンと指を鳴らす。
死神を模したコートが、テア博士をクルッと包み込む。
次の瞬間、黒いボディラインの浮き出る戦闘服を纏ったテア博士が現れた。
見た目が、某三姉妹の怪盗っぽいってのは蛇足だな。
「ふむ?なかなか、動きやすいな!更に身体を締め付ける、この感じも素晴らしい!」
「普段のコート状態でも、防寒や防熱、防水はバッチリだし、自動体温維持機能もあるから、真夏でも大丈夫!更に防弾・防刃・防魔機能とオートリペア、クリーン能力までついてるんだ。見た目もシックだから、フードを被らなければドレスコートみたいに、おしゃれなロングケープとしても使えるよ?でも、そうは言っても、やっぱり弱点はあるんだよ」
俺はションボリしながら、テア博士に言う。
「一定のダメージを食らい続けると、破損しちゃうんだ。特に、高位の魔導武器。ぼくの胴田貫とかね?とは言え、一応オートリペアはあるけど、ダメージが酷いと直るまでに結構、時間が掛かるんだ。それに、もし原形を留めないくらい完全に壊されちゃうと、もう元には直せないからね?」
「なる程?しかし、当たらなければ、どうと言う事も無し!全て、躱してみせるぞ!」
テア博士は、次元収納から長い一本の棒を取り出しクルクル回しながら、魔力を流しつつ舞うように動く。
すると、棒の先から光り輝く刃が伸び、巨大な魔力刃の鎌を構える。
「テアちゃん、凄いね!動きが凄く綺麗だよ!?」
俺は、感嘆の声を上げ拍手する。
「そう言って貰えると、嬉しいな。私の大鎌術の師匠は、私の祖母だったんだよ。とても、優しくて強いエルフだった。因みに、動き的には、杖道に大鎌を付けたような動きだな」
「そうなんだ!でも、長物だと懐に入られると、困るんじゃないの?」
俺は、素直な疑問をぶつける。
「フフフ!そう思うだろう?リョウ、ちょっと試してみるかい?」
「うん!面白そう、やってみる!」
俺は、先ほどエルダーエントで作った居合の練習用の鞘付き木刀を次元収納から取り出し、テア博士も同じく練習用の木製の大鎌を取り出し構える。
無言で向かい合い、俺が抜刀して上段に構える。
そして、一足一刀の間合いから斬り込む。
ヒュッという風切り音と共に、テア博士の頭部に木刀を振り下ろす。
テア博士は、鎌の峰の湾曲で俺の攻撃を滑るように受け流し、その勢いのまま俺の頭部に鎌の先を寸止めする。
その状態から俺は、踏み込んだ右足を支点に左へと旋回。
鋭く手首を返し、右逆袈裟で反撃する。
だが、テア博士は大鎌の柄でそれを防ぐと同時に、柄を短く持ち直す。
そして、引き戻される鎌刃が、俺の首へと引っ掛けられた。
俺は間合いを取り直し、今度は納刀状態で構えた。
一瞬にして間合いを詰めて抜きつけるが、テア博士は大鎌の柄の部分で上手く防ぎ、今度は大鎌で俺の足を払う。
そのまま俺は転ばされ、トドメに石突きで水月を寸止めで突かれる。
「ふぇ〜ん!負けちゃった?!テアちゃん、強いね!?」
俺は酒が回って完全に出来上がっている状態でゴロンと寝転がり、後頭部をコテンと地面につけて感想を漏らす。
「リョウ!?そのまま寝た状態で、私と組んず解れつしよう!ハァハァ」
あまりの無防備さに理性が吹き飛んだのか、ハァハァ言いながらテア博士が俺に近寄って来る。
「お見事!素晴らしい技術ね?」
俺に突撃しようとするテア博士の肩をガシッと掴んで静止したのは、哀さんだった。
「ふぇ〜ん、哀さん!ぼく、負けちゃったよ〜!」
俺は泣きながら、哀さんに抱きついた。
「り、リョウさん!?よしよし、いい子ね?こ、このままお部屋に行きましょうか!?」
赤面しながらも俺を連行しようとする哀さんだったが、すぐさま他の女性陣がそれを阻止する。
「お母さん!それ以上、やらせない!」
めぐりちゃんは、俺がプレゼントした栗のキーホルダーを手にして、威嚇するようにヒュンヒュンと風切り音を立てて振り回しながら言う。
「お待ちなさい、哀さん?ここは私が、リョウさんを慰めて差し上げますわ!」
美星さんが魔導扇で口元を隠しながら名乗りを上げると、それを皮切りに他の女性陣からも次々と爆弾発言が飛び交い始めた。
『させない!』や『リョウさんは、私と永遠の愛を誓い合ってるんです!』とか『主、私は食べ頃』や『パパ!カオリママと私が居るのに、どうして哀さんに抱きつくの!?』
そんな中、誰かが『リョウ!早く、温泉に行って私と既成事実を作りなさい!』と言い放った。
その『既成事実』という単語に対して、残りの全員が一斉に吠える。
「「「「「「「「「「「「「「させないわ(よ)っ!!」」」」」」」」」」」」」」
もはや戦場と化した修羅場の中心で、美星さんの言葉を聞いた宇治茶博士ががっくりと膝をついた。
「お前、儂というモノがありながら、な゛ん゛て゛し゛ゃ゛よ゛ぉ゛〜!」
夜の屋外宴会場に、宇治茶博士の悲痛な慟哭が虚しく響き渡るのだった。
「哀さん、これプレゼント!」
俺はさっきまで泣いていたのに、今度はケラケラ笑いながら、哀さんにプレゼントを渡す。
「あら?私には二つもくれるの?」
哀さんは、俺が渡した小さな舟皿に、綺麗に8個並んだ木製のたこ焼きキーホルダーと、スライド式の木製手鏡を交互に眺める。
「たこ焼きは、お父さん!哀さんは、コッチの手鏡だよ!」
俺は更に、大ジョッキで注文したイチゴカルアを呑みながら哀さんに説明する。
「リョウさん、有難う・・・」
哀さんは、儚い笑顔で俺を見る。
・・・宜しく無いな、話を変えよう。
「それでね?そのプレゼントにも、ちゃんと仕掛けがあるんだよ?」
俺は哀さんに手渡した、たこ焼きのキーホルダーを受け取り説明を始める。
「お父さん、手裏剣術が壊滅的でしょう?だから、コレを作ったの!お父さん、喜んでくれるかな?」
俺は次元収納から新しい標的を出し、離れた場所まで移動して、地面に突き刺す。
哀さんは、俺を黙って見つめている。
他の女性陣は、俺がまた何かを始めたので、静かになって事の成り行きを見守り始めた。
「見ててね!」
俺は、ニコニコしながらたこ焼きのキーホルダーに魔力を流す。
すると、目の前に船皿に乗った人の頭サイズの〈たこ焼き〉が、8個現れる。
そして、その〈たこ焼き〉たちは自らの手足で立ち上がり、標的に向って行進を始める。
時に転んだり、列から離れそうになったり、俺に向かって手を振る個体もいる。
〈たこ焼き〉同士で殴り合いの喧嘩を始めれば、それを他の〈たこ焼き〉が仲裁していたりもするが、みんなちゃんと標的に向かって行進していく。
そして標的の前に到着すると、先頭の〈たこ焼き〉がプラスチックのホイッスルを取り出し、『ピーッ!』と甲高く吹き鳴らした。
それを合図に、一列になっていた8体の〈たこ焼き〉が、標的を一斉に円陣で囲む。
次の瞬間〈たこ焼き〉たちが、どこからともなく小型爆弾(導火線付き)を取り出し、標的に向かって一斉に投げつけ始めた。
その姿は、まるで運動会の玉入れを楽しんでいるかのような、実に長閑な光景だった。
チュドドドドドドドドン〜!
辺りが、激しい爆発と煙に覆われる。
離れた場所で狩りをしたり、キャンプをしたり、飲み食いを楽しんでいた客たちが一斉に此方を見るが、俺はそんなこと一切気にしない。
何故なら、酔っ払っているから!!
煙が晴れると、標的は跡形も無く消し飛んでおり、辺り一面が焦げたり穴だらけになっていたりと、酷い有様になっている。
一仕事終えた〈たこ焼き〉たちは、また一列になりこちらに帰ってきた。そして、舟皿に戻る際に〈たこ焼き〉が『イェーイ!』と、俺にハイタッチしていく。
「どう?哀さん、凄いでしょう?」
俺は、ニコニコしながら哀さんに話し掛ける。
「そ、そうね?凄く可愛らしいけど、手裏剣の代わりなのよね?」
哀さんは、引き笑いで俺に質問する。
「うん!この〈たこ焼き〉たちは、狙った獲物は必ず仕留めるし、行動スピードも自由自在なんだよ?敵を瞬殺したいなら一瞬で隠密行動も可能だけど、今のは説明の為にワザとゆっくり動かしたんだ!」
俺はイチゴカルアを飲み干し、ドヤ顔で胸を張る。
そして、事の成り行きを見守っていた女性陣が俺に言う。
「リョウさん、やはりギルドの魔導具製作部門に来て下さいまし!来て下さるなら、冒険者ギルド本部の魔導具課、其処の最高責任者として、お迎えいたしますわ!」
「美星ママ、有難う!でも、ぼくは単なる凡人だよ?だから、就職先に困ったら、下っ端ギルド員として雇ってね?」
「お兄ちゃん、アレって驚きドキドキメカでしょう?」
めぐりちゃんが、ジト目で俺を見つめる。
「うふふ!理解る?流石、めぐりちゃん!転生者同士だからね?ツウと言えばカー。カーと言えば国産だよね!?」
「ごめん、お兄ちゃん!ちょっと、意味が分からない?」
「リョウ?それが理解るのは、私とヴェルダンディだけよ?」
カオリが、俺にツッコミを入れる。
すると、リリーさんがいつもの眠そうな目で俺を見つめ「・・・理解る」と、言ってくれた。
「うふふ!リリーお姉ちゃん、流石だね!無責任な艦長を分かってくれる?」
俺は、抹茶ミルクを大ジョッキで頼み呑みながら、リリーさんと会話する。
「・・・リョウ、もっとお姉ちゃんに甘える」
リリーさんは、頬を染めて俺に要求する。
「うん!リリーお姉ちゃん、大好き!」
俺は、リリーさんに甘えながら次元収納からリリーさんのプレゼントを出す。
「はい!お姉ちゃんには、コレだよ!」
俺はリリーさんに、しずく型のエルダーエント製、アミュレット・ホイッスル・ペンダントを渡す。
要は単音笛を、しずく型にしてネックレス調に仕上げた物だ。
「・・・リョウ、有難う。それで?」
リリーさんは、眠そうな目を見開いて、とても嬉しそうにプレゼントを眺めて聞いてくる。
「この笛はね・・・」
「リョウさん?私が放って置かれてるのだけど?」
リリーさんに説明をし掛けた所で、哀さんが非常に冷めた目で、笑って言葉を発していらっしゃる。
「ご、ごめんね、哀さん!今から、説明するね?リリーお姉ちゃん、ちょっと待ってて!」
俺は慌てて、哀さんに向き直り話をする。
「このスライド式の鏡は、普通に鏡としても使えるけど、魔力を流すと・・・」
俺は、先ほどと同じ様にイタズラを思い付いたクソガキみたいな笑顔で、ワザと言葉を切る。
「魔力を流すと?どうなるのかしら?」
哀さんは、早く続きを聞かせろと言わんばかりに俺を見る。
「うふふ!それは、内緒!魔力を流してみて?」
俺は、抹茶ミルクを半分程、呑み干しながら言う。
やっぱり酒は、甘いのに限るよな!
「リョウさん?ちゃんと説明してくれないと、分からないわよ?」
哀さんは、困った様な顔で俺に声を掛ける。
「哀さんは、忍法体術の師範でしょう?それで忍法って言ったら、創作の世界だと影分身とかあるよね?うふふ、じゃ魔力流してみて?」