異世界転生 作:MSZ-006
哀さんは、俺をジッと見たあとプレゼントしたスライド式手鏡に魔力を流す。
すると、哀さんの身体から半透明な哀さんが複数出現して、それぞれ様々な動きをする。
それを見た俺は「哀さん、魔力を遮断すると『分身』は消えるからね?後、命令すれば聞くから、戦闘の時は使ってね?」と、ニコニコしながら言う。
哀さんは、魔力を遮断した様で一気に分身が消え失せる。
「なる程?此れは、なかなか面白いわね?」
哀さんは、何やら思考しながら再度、分身を出現させる。
「でも、一度に込める魔力に応じて出現させられる『分身』の数が変化するし、多ければ多いほど『分身』の性能が悪くなるんだよ」
俺は、哀さんに渡した魔導スライド式手鏡について説明する。
「例えば、『分身』を100体も出したら、何もせずボーッとしてたり、命令を聞かず勝手な行動を取ったりする分身が出たりするんだ。ごめんね?」
「リョウさん、謝らないで?リョウさんは、とても素晴らしいモノを作ってくれたのよ?この分身を例えば、10体出しても、私の意思通り動かせると思うの。主婦はね、『もし、分身出来たら』って思う事が、多々あるのよ?リョウさんは、それを叶えてくれたんだもの!後、ウチの人の分まで、本当に有難う!」
哀さんは、嬉しそうに俺のプレゼントした魔導スライド式手鏡と、今ほど渡し直した『たこ焼き』のキーホルダーを胸に抱いて、微笑んでいる。
良かった、喜んで貰えた様だ。
その後、哀さんは分身を複数出現させ、様々な事をさせている。
一人は、めぐりちゃんと組手。
一人は、珊瑚に十文字槍の稽古。
一人は、瑞に忍法体術の稽古。
一人は、牧場の狩場から狩ってきた獲物を、調理ロボに渡している。
一人は、何故か料理を始め、そして本体である哀さんは、宇治茶博士の座っている席に戻り、美星さんと談笑している。
そんな光景を見てホッと、一安心しているとリリーさんが、服の袖をクイックイッと引っ張る。
「・・・リョウ、説明求む」
「リョウ〜!私のは〜?」
リリーさんは、しずく型の可愛いエルホイッスル・ペンダントを手に、俺を見上げて小首を傾げながら問い掛けてくる。
そして、マリーさんはニコニコ笑いながらビールジョッキを片手に豪快に煽り、空いた片手に哀さんの分身が仕留めて来た、ジャイアントキラーボアの串焼きを頬張っている。
双子であるリリーさんとマリーさんは、見た目が完全に可憐な少女だ。
それ故に、彼女たちの何気ない仕草の破壊力は計り知れない。
前世で大好きだったロボットアニメの美少女二人が巨大ロボを駆り、叫びながら放つ合体蹴り技。
あれを直撃されたかのような衝撃が走る。
数億の宇宙怪獣を一瞬で消し去るほどの圧倒的な熱量と衝撃波が、こちらの理性を粉砕しそうになる。
「リリーお姉ちゃんも、マリーお姉ちゃんも、可愛いなぁ!ぼく、鼻血でそう・・・!?」
俺は酔っている事もあり、普段は口にしない様な表現で二人を褒める。
「・・・有難う」
「リョウ〜、有難う〜!凄く嬉しいけど〜、私には、何をくれるの〜?」
リリーさんは言葉少なに返事をするものの、すっかり顔を赤くしている。
対するマリーさんは、嬉しそうに笑いながらプレゼントを催促してきた。
「はい、マリーお姉ちゃんには、コレだよ!」
俺は次元収納から、エルダーエント製の円筒型木製リップケースを取り出し、マリーさんに手渡す。
直径は4センチ、高さは10センチほどのサイズで、円筒の側面に縦長の長方形をしたミラーシールを貼り付けた逸品だ。
「それじゃ、説明するね?リリーお姉ちゃんのは、アミュレット・ホイッスル・ペンダント。アミュレットなんて言っても、それ自体に効果がある訳じゃ無くて、ぼくの願いを込めた『お守り』的な意味合いなんだけどね?それで、マリーお姉ちゃんのリップケースは、どんなサイズの口紅やリップクリームにも瞬時に内側のサイズが合わさるから、安心して使ってね?」
「リョウ〜、有難う〜!ちゃんと、ミラーまでついてるから、口紅を塗る時に困らないね〜!それで〜、此れにはどんな仕掛けがあるの〜?」
マリーさんは、嬉しそうにニコニコしながら聞いてくる。
「・・・リョウ、凄く可愛いけど、リョウの事だから、とんでもない仕掛けがあるのは分かってる。説明する」
リリーさんは、期待に満ちた目で俺を見る。
「うふふふ!それじゃ、魔力を流してみて?」
俺は、二人にそう言ってニコニコしながら様子を眺める。
リリーさんは、魔力を流しながらホイッスルを吹くと「ぴょ〜!」と、少し間の抜けた音が響いた。
すると、虚空の彼方から一台のバイクが自走して来た。
サイズは、全長1.6メートル程、全幅60センチ程で、高さが94センチ、シートの高さが65センチ。
カラーリングは、白を基調に鮮やかな赤のラインが走る、リリーさんの体躯にぴったりなサイズの美しいミニバイクだった。
マリーさんも、リップケースに魔力を流す。
マリーさんの目の前に、某ロボットが肩に担いで撃っていた自身の身長ほどもある、漆黒の無骨な筒状の巨大バズーカが虚空に浮遊して現れた。
そして、その現れた物体を見た二人の表情は流石、双子と言うべきか『・・・はぁ?!』といった顔になっている。
「お姉ちゃん〜、やっぱり、規格外だったね〜?」
「・・・さっきの、ヴェルダンディの『蟹ロボ』や、哀さんの旦那さん用のプレゼント『たこ焼き』に続いて、リョウらしい」
マリーさんとリリーさんが、お互いに顔を見合わせてそんな感想を漏らす。
「リョウの発想って、斜め上どころか真上を行くわよね?」と、ネアさんが二人を眺めてボヤく。
それに対して、周囲の女性陣たちは皆いっせいに深く頷く。
「えへへ〜!ネアちゃん、そんなに褒めても、プレゼント以外なにも出ないよ〜?」
俺は、ケラケラ笑いながら反応する。
「ほ、褒めてるわけじゃないんだけど?」
ネアさんは、呆れながら蜜酒を呑んでいる。
「ですが、ネアさん。さっきポポちゃんと話してましたが、リョウさんのプレゼントって、戦闘に関して一切無駄が無いですよね?」
ユカさんが、俺の作品をフォローしてくれる。
「そうね?とんでもない仕掛けがあるけど可愛いし、戦闘に関してはエグい位、必殺的よね?」
ネアさんも、ユカさんの言葉に同意する。
「パパは、誰にも傷付いてほしくないんだと思う。さっきテアさんに、『テアちゃんや他の皆が居てくれるから、ぼくは生きていられる。だから、ぼくは誰にも居なくなって欲しくないんだ』って言ってから・・・」
珊瑚が、二人の会話に混ざる。
隣で龍ロボが珊瑚の護衛の如く、しっかりくっついている。
「お父さん、本当に皆の事が大好きだから、護ろうと必死なんだね」
ポポが、ユカさんの隣でそう言う。
「主、心配し過ぎ、オーバースペックでオーバーキル過ぎる」
瑞が言うと、隣で西洋甲冑が地面に指先で『創造主の事は、どうでも良いが、主たる瑞様は必ず護るし、神であるめぐり様も同様』と、書いて瑞にアピールしている。
あるぇ〜?
おかしいな?
西洋甲冑、お前は俺とめぐりちゃんの共同開発だろ?
なんで龍ロボといいお前といい、この世に顕現した途端、そんな塩対応になるわけ?
俺はリリーさん姉妹への説明の途中で、龍ロボと西洋甲冑を見ながら、そんな事を考える。
気を取り直して、説明を続けるか・・・。
「それで、リリーお姉ちゃんのバイクだけど、バイク以外にも『超超小型ドリル付き地底戦車』とか『卵型、超超小型魔導ヘリコプター』それから『水陸両用、超超小型魔導潜水艇』になるんだよ!」
「・・・リョウ?もう一度、説明する」
リリーさんは、頭に?が幾つも出ている様な表情で聞き返す。
「それなら、実際に変形させれば良いか!」
そう言って、俺は手元のスイッチを押すと小型バイクからカシュン、ガシャンと小気味いい音を立てて、前面にドリルが飛び出した一人乗りの『ドリル戦車』に変形し、次に一人乗りで卵型の『ヘリコプター』に変形、そして最後に車輪が6個付いた『水陸両用潜水艇』に変形する。
「リリーお姉ちゃんが銀色の魔導アーマーに変身した時、滅茶苦茶カッコ良かったから、此れを作ったんだよ!」
俺はエッヘンと言わんばかりに、胸を張って言う。
「・・・リョウ、カッコいい!凄い!」
リリーさんは、いつもの眠たげな目からは想像もつかないほど見開いて、変形していくマシーンをジッと見つめる。
「でもね?此れは、バイク以外は変身してないと操縦できないんだ。ごめんね?でも武装は、それぞれちゃんと付いてるからね?安心してね!」
リリーさんの隣で、変形魔導機体を呆然と眺めているマリーさんに説明を始める。
「マリーお姉ちゃんは多分、近接武器が主流だと勝手に思ったんだ!それで、遠距離攻撃用の魔導バズーカを作ってみたの!でも、軍用レベルの強固な魔導バリアだと、防がれちゃうんだ。ごめんね。でもでも、このバズーカは後方確認とか必要ないし、なにより折りたたみ式のシールドも付属してるんだよ!」
本来であれば、この手の肩掛け式重火器は『後方よし!』や『後方確認!』といった安全確認の掛け声の後、後ろに味方がいない事を確かめてから発射するのが鉄則だ。
更に、発射時の破壊的な衝撃波で鼓膜が破れないよう射手本人はもちろん、周囲にいる人間までもが『あーーー!』と、大声を出しながら口を開けるか、耳を必死に塞ぐといった防御行動を強制される。
そうしないと、発射時の強烈な後方爆風(バックブラスト)で後ろの味方を吹き飛ばし、凄まじい爆音の衝撃でその場にいる全員の耳を狂わせてしまうからである。
だが、俺の作ったこの魔導バズーカは違う。
発射エネルギーのすべてを前方への推進力へと変換し、なおかつ安心安全な超・静音設計。
放たれる発射音は、すぐ隣で寝ている赤ん坊すら起こさないほどに静かだ。
なので、真後ろに人が立っていようが真横に人が居ようが完全無害。
乱戦の最中であっても、前方に立たなければ周りの味方に一切の防御行動を強いることなく、即座にぶっ放せる優れもので、更にバズーカの下側に折りたたみ式のシールドが展開できる為、がら空きになる胴体を撃ち抜かれる心配が無くなるのだ。
因みに、シールドは自分の気分次第で出したり仕舞ったり、出来るからね?
「後ね、もう一つ欠点があってオーバーヒートするから連射が出来ないんだ。一度発射すると、放熱の為に最低5秒は引き金がロックされちゃうんだ。本当に、ポンコツでごめんね?」
「リョウ〜?確かに、戦闘中の5秒は〜、永遠に感じる程の時間だけど〜、敵が目の前にいるなら、バトルアクスで斬り伏せるし〜、お姉ちゃんや他の皆が居れば、大丈夫だよ〜!」
マリーさんは、ニコニコと優しく微笑みながら、項垂れる俺の頭を優しく撫でてくれる。
「お姉ちゃん、有難う!大す・・・」
俺がそう言いかけた瞬間、リリーさんが遮るように声を張り上げた。
「・・・電析!」
リリーさんの身体がまばゆい光に貫かれ、光が収まると其処には鈍く輝く銀色のコンバットスーツを着た、リリーさんの姿があった。