異世界転生   作:MSZ-006

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「それより、ユカちゃん!ちょっと、傘開いてみてよ!」

 

酒の勢いにまかせて、俺はユカさんに傘を開くよう要求する。

 

「分かりました。ちょっと、開いてみますね?」

 

ユカさんが傘を開いて、ちょこんと肩にもたせかけ、俺に振り返った。

 

大きな和傘の陰から、上目遣いにこちらを覗き込む。

 

両手でぎゅっと柄を握りしめ、肩口に傘を預けたそのポーズは、まさに狙い澄ましたかのような破壊力抜群の可愛さだった。

 

「うん!良いねぇ〜!凄く、良いよ〜!ほら、コッチ向いて!?視線頂戴!もうちょっと、傘を左に・・・」

 

俺は、次元収納から魔力フォトフレームを取り出して、ユカさんを撮影し始める。

 

「り、リョウさん?恥ずかしいです!」

 

ユカさんは、恥ずかしそうに顔を赤くしている。

 

「え〜、でもほら!凄く可愛いよ〜?」

 

俺は、撮影した写真をユカさんに見せる。

 

「本当!ユカさん、凄く綺麗ね!」

 

ユカさんと一緒に写真を見たカオリが、そう言って褒める。

 

「だよね〜!よ〜し、調子出てきた!俺も、撮影しながら脱いじゃうよ〜!」と、言って服を脱ごうとする俺を、一部の女性陣が止めに入る。

 

「リョウ!落ち着きなさい!こんな所で、脱いじゃ駄目!」

 

カオリが、必死に止める。

 

「リョウ〜、脱ぐなら温泉に行ってからだよ〜?」

 

マリーさんが、ニコニコしながら止める。

 

「り、リョウさん!?わ、私は、心の準備がまだ出来てないですが、リョウさんが良いのであれば・・・」

 

ゴモリーさんは、俺に賛成派らしい。

 

美星さんは目を爛々とさせながら俺を凝視し、ヴェルダンディは優しく微笑みながら俺を見ている。

 

珊瑚、瑞、ポポ、めぐりちゃんは、『キャ〜!』と黄色い歓声を上げながら、目を掌で押さえて真っ赤になりつつ、しっかりと指の隙間から覗き込んでいる。

 

「リョウ、わ、私も脱ぐぞ?そうすれば、君は喜ぶだろう?」

 

テア博士が、危険な発言をしている。

 

哀さんは「リョウさん、早く!」と、急かしてくる。

 

「リョウ!こ、こんな場所じゃ駄目!早く、私を連れて部屋に行きなさい!」

 

ネアさんが赤くなって、俺に要求して来る。

 

リリーさんは、俺を見つめて「・・・リョウ、早く脱ぐ。そして、私と一緒に大人の階段、登る」と、意味不明な発言をしている。

 

「リョウ様、はしたないですよ?ですが、リョウ様が私たちに脱ぐ行為を求めて来るのでは無く、ご自身がそちら側と言う新たな一面が分かりました」と、メガネをクイッと上げながら、ミリィさんがメモを取る。

 

「リョウ!呑み過ぎだ!早く、正気に戻れ!」と、瞳ちゃんはパニックになっている。

 

魔導アナグマに関しては「キュ、キュキュン!キュ、キュン、ブフゥ!」[え、脱ぐの!でも、どうせなら、女装してからにして!]と、おかしな要求をしている。

 

そしてユカさんは、ただジッと俺を凝視して、今かいまかと待ち構えている。

 

宇治茶博士に関しては・・・。

 

テーブルに伏せて、寝てらっしゃる。

 

朝から大分、呑んでたもんね・・・。

 

「お盆、二つないかな?やっぱり、お盆で裸踊りって、定番だよね?」

 

俺がそんな事を言っていると、先ほど〈たこ焼き〉たちが小型爆弾(導火線付き)で、穴凹だらけにした地面を旅館の魔導ロボットが整地し終えて、俺の所にやって来て苦情を言う。

 

「オキャクサマ ホカノ オキャクサマノ メイワクニナリマスノデ ハカイカツドウハ オヒカエクダサイ 」

 

ロボットは感情のない声で説教して、そのまま去って行った。

 

「ちぇ!折角、『右!左!前!後ろ!』って、全方位からの視線を遮るプロ級のキレッキレのお盆ダンスを披露して、『ポンポン冷えたので、おトイレ行ってきま〜す!』って、前世の日本で二番目に多い苗字の『もっこり』が似合いすぎる、高身長の俳優さん張りに言おうと思ったのに・・・。まぁ、いっか!それより、プレゼントした魔導具の説明をしないとだよね!」

 

俺は気分を切り替え、ネアさんたちにプレゼントした魔導具の説明を始める。

 

「じゃ皆、魔力流してみて?」

 

俺がそう言うと、ネアさんは「リョウ?部屋は・・・?」と、残念そうに言っている。

 

「は、裸踊りは、無しなんですね・・・」

 

ユカさんは残念そうに、開いた和傘を肩にもたせかけた。

 

楽しみにしていた俺の芸術的なダンスがお預けになり、へなへなと緊張の切れたユカさんの肩にエルダーエント製の『和傘』が、その心地よい重みをそっと預ける。

 

「リョウさん、酷いです!散々お盆ダンスで期待させるだけ期待させて、まるで合コンで思わせぶりな態度を連発して『誰も傷つけたくないから、私は綺麗なままで帰るね?』とか気取ってるクセに、男の財布とプライドだけズタズタにしていく迷惑な女と、やってる事が同じですよ!?」

 

ゴモリーさんが、なかなか面白い例えで俺に文句を言ってくる。

 

「お父さん、僕はお父さんを信じていたんだよ?でも、僕もご主人もお父さんに裏切られた。それは、『合コンという名のお食事会に出掛けた私に、イケメンが「自分に惚れた」と思い込ませておいて、実際は私の方が惚れさせられていた!気づけばイケメンもその私に骨抜きにされて、結果的にお互い泥沼にラブラブ!だから、私は幸せです!?』っていう高度な心理トラップを男側から仕掛けて、女の身も心も自分の虜にさせて、悦に浸る碌でもない屑男と一緒だよ?」

 

ポポが、ブラック・モルダバイト的な雰囲気で、俺に淡々と語り掛けてくる。

 

す、凄く怖いんだけど!?

 

後、ポポさん?

 

最近流行りの、矢鱈長いラノベタイトルみたいな台詞ですけど?

 

合コンとか屑男とか、一体何処で仕入れた知識ですか?

 

それから、そのラノベタイトルっぽい話が、とても気になるな・・・。

 

先ほどから、俺たちのやり取りを見ている瑞の西洋甲冑と珊瑚の龍は、俺が二体を見た瞬間に顔を背ける。

 

そして、俺が目を逸らしたフリをして横目でチラッと確認すると案の定、また俺をジッと観察している。

 

なんなんだよ!?

 

また、さっきみたいに俺を馬鹿にするつもりか?

 

まぁ、そんな事は後で良い。

 

今は、早く俺が作った魔導具の説明をしてしまおう。

 

「そ、それじゃ魔力を流して〜?」

 

俺は、ネアさん、ゴモリーさん、ユカさん、ポポに言うが誰も俺を見ようとしない。

 

と言うか、完全に無視してる。

 

「リョウ、君は大きな過ちを犯した!」

 

そう言って、俺に声を掛けて来たのは、先ほど虹色の物体を口から吐き出していたグリーン博士だった。

 

「は、博士?大丈夫〜?さっき、具合悪くなってたよね〜?」

 

「僕は、先ほど医療支援ロボットに連れて行かれて、手当をされたからな!今はスッキリ、バッチリだ!そんな事より、君は大きな過ちを犯した。それが何か、理解るかね?」

 

グリーン博士は、先ほどまで泥酔していたとは思えない状態で話をする。

 

「分からないよ〜!?ぼく、頭悪いからそんな事、分からない〜!」

 

「リョウ?君は今、酔っているね?普段の君とはかけ離れた言動が彼女たちに受けが良い。しかし、それでは今の目の前に居る彼女たちの心は、動かせないのだよ!」

 

な、なんかグリーン博士が、凄くカッコいい事を言ってる気がする?!

 

おかしいな?

 

酔ってるから、そう思うのかな?

 

「どうすれば良いの?教えて、グリーン博士?」

 

「宜しい!では、先ず何故彼女たちがあんなにご立腹なのか、其処からだ?君は、どう思う?」

 

グリーン博士は、腕を組んで俺を諭す様に言う。

 

「う〜ん?ぼくがお盆で裸踊りをしなかったから?」

 

「そうだ!その通りだよ、リョウ!君は物凄くモテる様だが、今一つ女心と言うものが理解っていない!其処で、私の出番だ!此処で、私がお盆を使って裸踊りをすれば、確実に彼女たちは、僕に惚れる!どうだ?凄い完璧な計算だろう?」

 

フフンと、グリーン博士が胸を張って俺に言う。

 

グリーン博士・・・。

 

やっぱり、まだ酔ってる?

 

一人称が、私とか僕とかバラバラだよ?

 

本当に、大丈夫?

 

「では、見ていたまえ!私の可憐な舞を!?」

 

そう言って、服を脱ごうとした博士が再度、医療支援ロボットに連れ戻される。

 

「ま、待て!私の可憐な舞を・・・」

 

医療支援ロボットは、無言で博士を捕まえて拘束し運んで行く。

 

俺は、連行されるグリーン博士を見送って暫し考える。

 

確かに、グリーン博士の言う通り、俺は女心なんて物は、全く理解していない。

 

そもそも、そんな無理難題に悪戦苦闘して、しかも四面楚歌な状態ってThis is impossible.だよね!?

 

ならば、此れしかあるまい!

 

俺は、ちょこちょこと自分を無視する女性陣の傍へと擦り寄った。

 

そして、下から覗き込むような上目遣い。

 

瞳をウルウルと潤ませながら、一撃必殺の技を繰り出す。

 

「ごめんね?」

 

ペコリと頭を下げてから、すぐに全員の顔を窺った。

 

「ブッ!?」

 

ネアさんは林檎のように真っ赤になり、必死に鼻を押さえている。

 

「・・・だ、ダメ!」

 

ユカさんは和傘で顔を覆い隠し、頑なに俺を見ないようガードを崩さない。

 

「ひ、卑怯ですっ?!」

 

そんな中、ゴモリーさんだけは潤んだ瞳でジッと俺を見つめ、熱っぽい吐息を洩らしている。

 

「お、お父さん、それ可愛すぎ・・・」

 

ポポが身体をクネクネとさせながら、艶めかしく悶絶している。

 

フッ!

 

俺の心の籠もった謝罪が、見事に効果を発揮したようだな!

 

ふと、カオリや珊瑚、美星さんや哀さんといった他の女性陣に目を向けると、赤くなって俺から視線を逸らしたり、両手で顔をパタパタと仰いだり、あるいは俺を熱い視線で凝視したりしている。

 

因みに俺は、前世から手で顔をパタパタする女が嫌いだ。

 

何故なら、ぶりっ子している様にしか見えんからだ。

 

己の仕草を計算し、ぶりっ子でやっているその姿は、前世の某ロボットアニメに出て来た決定的打撃を受けて形骸化した地球連邦軍を非難した台詞と同じく、『敢えて言おう!カスであると!』と、言いたくなる。

 

しかし再度、私は断言しよう!

 

此処に居る女性陣なら全員、それをやっても全然オッケーだと!!

 

だって皆、美人、美少女なんだよ?

 

仕方無いじゃん?

 

そして、魔導甲冑と龍の方を見る。

 

魔導甲冑は、何故か恥ずかしそうに身体を小さくして蹲りながら、両手で顔を覆い隠そうとするが、金属の籠手がぶつかって『ガシャン!』と、大きな音を立てている。

 

龍ロボに至っては、自らの魔力を暴走させ、周囲に濃密な桃色の霧を急激に沸き立たせた。

 

巨体をその中に隠そうと、必死なのだろう。

 

しかし、霧の隙間からは長い蛇のような体躯が、うねうねと身悶えするように動いているのが丸見えになっている。

 

必死に隠れようとすればする程、その不器用な仕草が、隠しきれない気恥ずかしさを雄弁に物語っている様に見える。

 

あれ?

 

おかしいな?

 

俺は西洋甲冑と龍ロボに性別を指定した覚えは無いし、そもそも感情とかを入れた記憶が無いんだけど?

 

・・・まぁ、良いか。

 

落ち着いたら、個別面談する様にしよう。

 

 

 

 

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