異世界転生   作:MSZ-006

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瑞と珊瑚が、魔導通信機を買って来てくれたから、取り敢えず西洋甲冑と龍ロボに魔導通信機を登録して、文章で会話出来る様にしよう。

 

俺は、そんな事を考えながらテア博士が手渡してくれたスポーツドリンクを飲む。

 

うん!

 

スッキリ爽やかな味わいが、身体に染み渡る〜!

 

「取り敢えず西洋甲冑と龍ロボ、魔導通信機の登録しよう?」

 

俺がそう言うと、珊瑚と瑞がそれぞれ、魔導通信機を手渡す。

 

西洋甲冑の方は、腕輪型。

 

龍ロボの方は、ボール型だな?

 

アレか!

 

東洋の龍って、手に宝玉みたいなの持ってるイメージあるから、それでボール型にしたのかな?

 

そんな事を考えていたら、二体は魔導通信機を飲み込みやがった!

 

「おいぃ!そんなの食べたら、おなか痛くなるだろう!?出しなさい!ほら、ぺってッ!吐き出しなさい!アレか!ラマーズ法で取り出すか!?どうしよう?!」

 

俺が半狂乱になりながら慌てていると、珊瑚と瑞もアワアワして周りの女性陣の所へ駆けていく。

 

「いいか!?ヒィヒィ、ふぅ~だぞ?その呼吸で、吐き出すんだ!分かったな?じゃ行くぞ!ヒィヒィ、ふぅ~!ヒィヒィ、ふぅ~!」

 

俺は必死になって西洋甲冑と龍ロボに向って、おかしな事を言っている。

 

いやね?

 

もう、パニックですよ!?

 

すると、西洋甲冑が掌を顔の前で左右に振り、龍ロボは尻尾で俺の尻を軽く叩く。

 

「痛ッ!?た、叩いたね!?俺は叩かれるより、叩く方が好きなんだけど!?」

 

俺は尻を押さえながら、そんな抗議をする。

 

[創造主、落ち着く。私は、何の問題も無い]

 

西洋甲冑が俺に、魔導通信機のディスプレイを出現させて見せてくる。

 

「ガァ、グラァ!ギャオ、グァギャオ!」[その通り、慌て過ぎ!後、創造主がドSなのは百も承知!]と、龍ロボも魔導通信機のディスプレイを出現させて見せる。

 

「パパ、めぐりちゃん連れてきた!」

 

珊瑚が、めぐりちゃんと共に駆け寄って来てくれた。

 

「お兄ちゃん、どうしたの?」

 

めぐりちゃんが、ズレたメガネを直しながら俺に問い掛ける。

 

「そ、それが西洋甲冑と龍ロボが魔導通信機を飲み込んでしまって、吐き出させようと今、ラマーズ法で・・・」

 

「お兄ちゃん、落ち着いて?ラマーズ法は、赤ちゃん産む時の呼吸法だからね?で、お前たち?何で、飲み込んだの?」

 

めぐりちゃんが、腕を組んで二体を叱る。

 

[いや、身体に付けるより、体内に入れた方が効率が良いでしょう?]

 

西洋甲冑は、腕組みしながら『ウンウン』と、頷きながらディスプレイを見せる。

 

「ガァ!グガ〜!」[その通り!無くす心配が無い!]

 

龍ロボは、さも当然みたいな顔で返答する。

 

「なる程?その方が、効率が良さそうかな?」

 

めぐりちゃんは、二体の話を聞いて感心している。

 

えっ!?

 

誤飲じゃ無くて、ワザとなの?

 

しかも、全く問題無いの?

 

よ、良かった〜!

 

創ったばっかで壊れるとか、本当にキツいからね!?

 

俺は、ホッとしながらスポーツドリンクを飲む。

 

少し離れた場所では、婚姻届を出した後、『式場の見学』やら『ハネムーンは何処が良い?』とか『子供は何人、欲しい?』や『住む場所は、どうする?』等の話で、盛り上がっている独身組女性陣たち。

 

「〜〜!〜!?あ〜、あ〜、ただいま、マイクのテスト帰り〜!お帰り、こんにちは!」

 

「グガ〜、ガァ〜!・・・赤巻紙、青巻紙、黄巻紙、カエルぴょこぴょこ、でも、どうせ食べるなら蛙より、もっとデカい獲物の方が良いかな〜!」

 

はっ!?

 

なに今の?

 

誰が喋った?

 

聞いた事が無い、可愛い女の子たちの声が聞こえたけど!?

 

何、心霊現象?!

 

俺は次元収納から胴田貫を取り出し、いつでも抜き打ち出来る体制を取る。

 

この胴田貫は、高位の魔導武器だから、死霊系のモンスターも斬れる!

 

大丈夫、来るなら来い!

 

たたっ斬ってやる!?

 

・・・でも、出来れば来て欲しく無いけどね?

 

「創造主、どうしたの?」

 

「何やってんの?酔っ払って武器を振り回すのは危ないから、止めなさい?」

 

「ま、まただ!また、声が聞こえる!皆、気を付けろ!死霊系のモンスターかもしれない!」

 

俺は注意深く周囲を見回すが、誰も戦闘態勢になって無い。

 

えっ?

 

あれっ?

 

何で、誰も武器を出さないの?

 

ひょっとして俺、悪酔いしてるのかな?

 

「お兄ちゃん、喋ったの西洋甲冑と龍ロボだよ?」

 

めぐりちゃんが、静かに俺に言う。

 

「・・・はぁ?!えっ!何で喋れんの?俺、そんな機能つけた覚え無いよ?めぐりちゃん、西洋甲冑に音声機能付けたの?」

 

俺は、キョロキョロ周囲を確認しながら、次元収納に胴田貫を仕舞う。

 

「因みに、『ただいま、マイクのテスト中』ってヤツを、『マイクがテストを終えて帰って来た』って設定で、喋ってみた!どう?面白い?」

 

西洋甲冑が俺に対して、そんな問い掛けをしてくる。

 

「私は、『カエルぴょこぴょこって、ヤツの続きを言わずに、どうせ食べるならもっとデカい獲物が良い』って言ってみた!面白い?」

 

龍ロボも俺に、問い掛けてくる。

 

「うん、凄く面白い!もう、お笑いの大会とか出たら、即優勝レベルだと思うよ?」

 

俺は酔いもあって、ケラケラ笑いながら手を叩き返答する。

 

・・・そもそも何で、こんなに可愛い声なんだよ!

 

セレネの声も可愛い声だったけど、セレネは男の子だよな?

 

俺は、チラッとセレネの方を見る。

 

すると、セレネは俺の視線に気付いたのか魔導煙管を口に咥えて、俺の隣までやって来る。

 

「ニャンですか、創造主様?吾輩に、何か御用ですかニャ?」

 

セレネは、魔導煙管をゆっくりと燻らせながら俺を見る。

 

「あのさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど、良いかな?」

 

俺は、テア博士から貰ったスポーツドリンクを調理ロボに再注文して、飲みながら話をする。

 

「まぁ、なんだ・・・。セレネって、性別あるの?」

 

俺は、ストレートに質問をぶつけてみる。

 

セレネは、口に咥えていた煙管を勢いよく外し、プルプルと震えだした。

 

「に、ニャンですか?!セクハラですかニャ?例え創造主様だからって、吾輩の身体を好きな様に弄ぶなんて、そんな酷い事は赦されニャいんだからニャ!?で、でも!創造主様が、どうしてもって言うなら・・・」

 

セレネは、自分の体を恥ずかしそうに抱きしめ身悶えながら距離を取って、おかしな発言をする。

 

「いや、あのね?ぼくは君たちを創る時に、性別とかは考えて無かった筈なんだよ?でも、君たちの声は可愛い女の子の声じゃん?!だから、性別を聞いたんだけど」

 

「創造主様?本当にそうかニャ?吾輩を創った時、何を考えたかよく思い出すニャ!」

 

セレネは、ジト目で俺を睨みながら言い放つ。

 

そう言えば、セレネを創った時はユカさんがゲームセンターの景品で、猫のコスプレをしたのを思い出したな?

 

アレは凄く印象的だったから、今でも鮮明に思い出せる。

 

で、創る時の思考としては、『安全ピン型のアクセサリーを作ろう!→安全ピンって言ったら、針だよね?そういえば、針みたいな剣ってあるよね?→確か「スモールソード」とかって言うんだよな?→「長靴を履いた猫」って童謡の猫が、そんな剣を持ってた様な気がする!→なら、猫の魔導具にしよう→そう言えばユカさんが、ゲームセンターの景品で「某三姉妹の怪盗」みたいなコスプレしたな→凄く、可愛かったな!→なら、戦闘補助も出来る猫の騎士にしよう!』と、こういう流れだったな。

 

「それから、西洋甲冑と龍のロホも思い出すニャ!」

 

セレネに言われて、俺は魔導甲冑を創った時の事を思い出す。

 

『ミズキって、ゴモリーさんから「琉球古武術の武器術」と、哀さんから「忍法体術」を習ってるんだよね?→凄く強くて、カッコいいし可愛いんだよな!→でも、いくら強くても見た目が幼い女の子だから、傷つくのが凄く心配だ→だったら、「西洋甲冑で、琉球古武術の武器」に分離する「リビングアーマー」みたいな魔導具を作ろう!』って考えたな。

 

珊瑚の龍ロボの時は、『珊瑚って、「十文字槍の魔導武器」をめぐりちゃんに創って貰って、哀さんから教わってるよね?→珊瑚は凄く可愛いし、強いんだよな→でも、いくら強くても、凄く心配なんだよ→なら、鎧兜とかの魔導具とかどうかな?→珊瑚って今は少女の姿だけど、出会った頃は「レッドドラゴンの子供」だったな→この世界って、ドラゴン種は居るけど、「東洋の龍」って存在しないよね?→なら「東洋の龍」で、鎧になる自律型ロボット作っちゃえ!』と、こんな風に考えて創ったな。

 

アレ?

 

思考の途中で、『可愛い』とか『幼い女の子』、『少女』ってワードが出てる?!

 

「・・・理解ったニャ?創造主様は、吾輩も含めて必ず主になる『幼気で可憐な少女』の姿を考えて、創作したニャ!さぁ、白状するニャ?今ならまだ、罪は軽く済むニャ!」

 

セレネが、『ズビシッ!』っていう効果音がしそうな勢いで、魔導煙管を俺に向けて発言する。

 

「確かに、サンゴやミズキの事を考えたり、ユカさんを思い出して創ったよ?だけど、それは連想ゲーム的な思考から生まれた結果だよね?!何で、そんな犯罪者を追求する名探偵とか、刑事みたいなセリフ調なの!ぼくの後ろ、崖なの!?」

 

「創作主様?残念ながら、もう逃げる事は出来ないニャ!観念して、全ての罪を認めるニャ?そうすれば、まだやり直せるニャ?吾輩も一緒について行くから、自首するニャ?」

 

セレネはジッと俺を見つめながら、魔導煙管に火をつけて煙を燻らせる。

 

「創造主?私たちは、主と共に貴方の帰りを待ってるから!」

 

「そうよ?主と一緒に面会も行くし刑期が終わったら、お迎えにも行くから!だから、自首して?」

 

魔導甲冑と、龍ロボがセレネの台詞に乗って更に話を盛り上げ様とする。

 

「ちょっと待って!?何なの?俺が『すまん、俺が悪かった!』とか言って四つん這いになって、なぜ犯行に及んだのかって理由を再現シーンで流した後、項垂れながら両手首に布を掛けられて連行されて、更にエンディング曲が流れて来て、最後の方は『まぁ、色々あったけど、平和ないつもの日常』的なシーンが流れる。そんなのが、見たいの?君たち?」

 

「パパ?私も何か、台詞を考えた方が良い?『ずっと待ってるからね?』とか」

 

珊瑚が、セレネや魔導甲冑、龍ロボの悪ノリに参加している。

 

「主、無言で見つめているのと、号泣しているのと、どっちがドラマティック?」

 

瑞まで、参加しやがった!

 

「因みに、エンディング曲はもう決めてるから、安心する!」

 

魔導甲冑が龍ロボと珊瑚、瑞に歌詞カードを手渡し龍ロボからは、しんみりした曲が流れ出している。

 

「創造主様!早く、罪を認めるニャ!曲が終わって、エンディング曲になってしまうニャ!」

 

・・・テ〜レ〜レ〜〜

 

しっとりしたアコースティックギターの音が流れる中、俺は酔っ払っている事もあり悪ノリに付き合う事にした。

 

「し、仕方なかったんだ・・・っ!俺が殺らなきゃ、アイツは俺の大切な存在をその手で殺すと脅した!だから俺は・・・!」

 

俺は四つん這いになり、何度も拳をハンマーの様にトスンと落とす。

 

そのまま、何度も地面を小突いた後、次第にその速度は落ち、最後は力なく、泥まみれの手を地面に押し当てたまま項垂れた。

 

魔導甲冑が静かに俺に近寄り、優しく俺の肩を叩き立ち上がらせる。

 

立ち上がった俺は、俯いたまま両手を差し出す。

 

魔導甲冑は、己の身体の一部である細い鎖の武器『スルジン』を取外して、俺の手に巻く。

 

そして、宿の調理ロボから拝借した綺麗なナプキンを俺の腕に掛ける。

 

「パパ!私、パパの帰りをずっと待ってる!だから必ず、帰って来て!」

 

珊瑚が迫真の演技で、泣いている。

 

その隣では、瑞が俺を無言で見つめている。

 

その瞳は、悲哀と絶望が複雑に入り混じっていた。

 

そして瑞が、連行される俺に飛び付いて、抱きしめる。

 

「ずっと、主を待ってるから」

 

そう一言、耳元で囁いて俺から離れる。

 

その時の表情は、涙を浮かべた儚くも優しい笑顔だった。

 

めぐりちゃんが手に、ハンディカメラ的な物を持って、龍ロボにサインヲ出す。

 

すると龍ロボから、しっとりしたアコースティックギターの音から、静かでゆっくりした曲が流れ始める。

 

その音楽は、哀愁を帯びたメロディで、胸の奥の一番柔らかい場所を締め付けるような、哀愁に満ちたメロディだ。

 

「お父さん!私を置いて、行かないで!?」

 

ポポが、走って俺に抱きついてくる。

 

「お父さんが、悪いんじゃない!アイツが、アイツが私たちを・・・!何で、お父さんが連れて行かれなきゃいけないの!?」

 

ポポは、号泣しながら俺に縋り付く。

 

それを見たセレネは、ポポに近寄り優しく肩に手を置いて、諭す様に言葉を掛ける。

 

「ポポさん?アニャタのお父さんは、愛するアニャタたちを守る為に人をアニャめてしまった・・・。しかし、そうニャる前に、我々に相談してくれニャら・・・」

 

「相談?相談したら、アイツを止めてくれたの?相談したら、本当に解決してくれたの?!相談したら、お父さんは、あんなヤツを・・・。あんなヤツの為に、お父さんが・・・」

 

ポポはセレネを睨みつけて、涙で言葉を詰まらせる。

 

「・・・すまニャい。吾輩は、神じないニャ。ニャから、かニャらず解決できたかは、分からないニャ」

 

セレネは申し訳なさそうに、帽子を深く被り直して下を俯く。

 

『ア〜ナ〜タ〜からのメッセージを〜、いつも待っている〜。アナタからの〜メッセージを見ると、嬉しくなる〜。そして〜悲しくな〜る〜。決して〜、交わらない心〜。アナタの笑顔が見たいから〜、嘘を〜つく。嘘をついて〜、切なくなる〜。アナタに〜伝えられな〜い、この想いを〜胸に〜、私は〜アナタの幸せを願っている〜』

 

哀愁に満ちたエンディングの歌が流れる中、赤い魔導軍服を着た瞳ちゃんの手によって、俺は赤色灯のついた軍用車へと乗せられる。

 

ガチャン、と重々しいドアが閉まる音が響く。

 

車窓の向こうでは、号泣するポポをセレネたちが必死に宥めていた。

 

そのまま、ゆっくりと走り出す軍用車。

 

遠ざかって行く、みんなの姿。

 

『アナタが〜太陽なら〜、私は月〜。決〜して〜、交わる事は〜出来ない。やがて〜夜から〜朝になり〜、私は〜アナタの前から〜姿を消す。ねぇ〜、どうしたら〜ア〜ナ〜タ〜の〜傍に〜行けるの〜?お願いだから〜、嫌いに〜なって〜。そうじゃ〜ないと〜、ア〜ナ〜タ〜を〜傷つけて〜し〜まう〜。だから〜、アナタの〜前から〜姿を〜消す〜』

 

サビの盛り上がりと共に、めぐりちゃんの持つハンディカメラ的な魔導具の画面の下から上に『撮影:めぐり』『音響:龍ロボ』『衣装協力:調理ロボ(ふきん)』といったスタッフロールが、静かに下から上へと流れ始めていた。

 

「いや!?ぼくは、セレネに性別を聞いただけなんだけどおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!」

 

パトランプの赤い光に照らされながら、俺の文字通り『崖っぷち』の叫び声だけが、夜の帳に虚しく消えていった。

 

 

 

 

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