異世界転生 作:MSZ-006
「それでポポ、ぼくの作る物は完璧じゃないんだ。ごめんね?この猪八戒型の魔導鎧にも弱点があってね?」
俺は、ポポに弱点の説明を始める。
「さっきの黒子豚状態の時も魔導鎧状態の時も同じなんだけど、決してアルコールは与えないでね?」
動きの確認が終わったポポは、猪八戒型の魔導鎧を黒子豚に戻して、胸元に抱っこしながら俺の話を聞いている。
「アルコール?それって、お酒の事?」
ポポは、首をコテンと傾げて聞いてくる。
「うん。酒もそうだけど、例えば工業用のアルコールとかもだね」
アルコールと言えば、エタノールとかを思い出す人が多いと思うけど、メチルアルコールやイソプロピルアルコール、それにグリセリンもアルコールの一種だ。
但し、この中で飲めるのはエタノールとグリセリンのみで、他のアルコールは毒だ。
とは言え、わざわざエタノールを飲もうとするなら、普通に酒屋で酒を買えば良いじゃんって話だし、グリセリンは甘味調味料や保湿剤として使用されてる物なんだけどね?
「基本的に、アルコールの成分は全て危険なんだ。どんな風になるかというと・・・」
黒子豚が、他の女性陣から箸で料理を食べさせて貰ってる。
美味しそうに食べてるな。
凄く、ほのぼのとするよ。
平和な光景だ・・・。
なんて、思っていた時もありました!
女性陣が列をなして黒子豚に並んで料理を与える中、セレネが黒子豚に料理を食べさせた瞬間、異変が起こった!
黒子豚が、真っ赤になって鼻息荒く『プヒプヒ』言い始めた。
「ちょっと?!セレネ?何を食べさせたの?」
俺は慌てて、セレネに聞く。
「創造主様?どうしたニャ?吾輩、この子豚ニャンに、鯖の味噌煮を食べさせただけニャン?」
鯖の味噌煮だと!?
美味しいよね?
じゃ無くて、鯖の味噌煮って酒使ってんだぞ!?
大人しくポポの胸に抱かれていた黒子豚が、ポポの腕から抜け出す。
そして、何処から持って来たのか分からないが、黒子豚サイズのちゃぶ台を持って来て、その前にどかっと座る。
黒子豚は、自分サイズの一升瓶とコップを出し、一升瓶の中身をコップに注いで飲み始める。
その顔は、もう完全に出来上がった酔っ払いのそれだ!
「ピギィ!ピィ、ピピィ!」
黒子豚が、何やら怒りながらコップを煽る。
更に、女性陣が次々と黒子豚が持って来たテーブルに料理を置くから、黒子豚は料理を食べつつ、一升瓶から酒を注いで呑む。
暫くすると、黒子豚が「ピィ〜!ピピィ〜!」と、悲しそうに鳴きながらポポの所にやって来て甘え始める。
「この様に少しでもアルコールが入ると、非常に不安定な状態になってしまうんだ。魔導鎧の状態でもアルコールが付着した場合、今のこんな状態になっちゃうんだ。だから、注射前のアルコールとか厳禁なんだ。ポポ、ごめんね」
俺は、申し訳なくなってポポに謝る。
「お父さん?謝らないで!この子、凄く可愛いよ!?お父さんみたい!後、この子って魔導具だから、注射とか必要ないよね?」
ポポは、黒子豚を抱っこして撫でながらそう言う。
「ポポ?ぼくは、酔って怒ったりしないよ?確かに、その通りだね?アハハ!美味いな、コレ!」
俺は、セレネから鯖の味噌煮を小皿に盛ってもらい、それを食べながら返答する。
「そうだね!お父さん、甘えん坊になるだけだもんね?」
「ぼくは、別に甘えん坊将軍じゃないよ!?ちゃんと、大人として論理明白に秩序整然で、終始一貫して理路整然だよ?だから、ぼくの生きて来た前世なんて弱肉強食どころか、焼肉定食だったんだよ!?」
ちょっと、言葉の繋がりがおかしいのは、酔ってるからなんだよ?
ぼく、バカじゃないよ?
俺は一人脳内ツッコミをしていると、美星さんが微笑みながら俺を見て言う。
「あらあら!リョウさんは、面白いですわね?でも、本当に優秀な魔導具職人ですわ!是非、ギルドに欲しい人材ですわね」
旦那さんである宇治茶博士は寝てしまった為、宿のロボットが部屋に運んで行った。
流石、軍の高官が用意した最高級の温泉宿。
全て、至れり尽くせりだな。
ポポに抱かれた黒子豚は「ピィピィ」と、静かな寝息を立てている。
「本当に、可愛いね!お父さん、この子にも名前考えてあげて?」
「う〜ん?名前ねぇ・・・」
俺は、鯖の味噌煮を食べながら考える。
そういえば、西洋甲冑と龍ロボにも名前をつけろと言われてたんだ。
チラッと西洋甲冑と龍ロボを見ると、料理を片手に、俺を見ながら『はよ、名前つけろや!』と、言っている様な態度だ。
因みに、お前ら料理、食えるの?
なんて、野暮なツッコミはするなよ?
魔導カプセルから生まれた時の白い烏と黒い子豚状態だった瑞とポポも、『食べた物は分解されて、魔力として保存できます』って世界だからね?
俺が創った時にも、その機能をつけたんだよ!
だって、人が食べてるのに一緒に食べれないなんて、悲しいじゃん?
後、この黒子豚用の魔導通信機を買わないと。
最初から、魔導通信機を組み込んでおけば良かったよね?
まぁ、今後の参考にしよう。
さて、西洋甲冑と龍ロボの名前決めが先か、ユカさんの魔導具の説明が先か。
じゃ、皆に意見を聞きます!
先生は、皆と一緒に決めたいと思ってます!
だから皆、一緒に考えて下さい?
此れから、先生が西洋甲冑と龍ロボの名前を決める、ユカさんに魔導具の説明をするって聞きます。
どちらか、好きな方を選んで手を上げて下さい?
良いですか?
・・・なんて脳内で、学級会的なコントを繰り広げていると、西洋甲冑と龍ロボが此方にやって来た。
「創造主!早く、名前決めて!」
「そうそう!早く名前、頂戴?」
西洋甲冑と龍ロボが、非常に可愛い声で要求してくる。
そもそも、お前ら何で喋れるの?
いや、さっき魔導通信機を飲み込んだのは見てたし、吐き出させようと必死になってたよ?
でも、そうじゃない!
魔導通信機は通信機であって、発声機関が無いお前らが何で喋れるの?
不思議に思い聞いてみた。
「ねえ?何で喋れるの?魔導通信機って、文章を出したり通話機能はあるけど、それは発声器官があるから出来る事だよね?」
「創造主、馬鹿なの?」
「本当!私たちを創った割に、マヌケよね〜!?」
西洋甲冑と龍ロボは、俺に対してそんな塩対応をしてくる。
「・・・さっきみたいに、また泣くぞ?」
俺がプンスカしながらそう言うと、二体は慌てて謝ってくる。
「ご、ごめんね?だから、泣かないで!?」
「な、何で喋れるか?それは、魔導通信機って音楽を流す機能があるでしょう?それよ!ごめんね?」
この世界の魔導通信機は、様々な形状がある。
指輪からペンダント、ブローチやネックレス、龍ロボが飲み込んだ球体なんて物も存在するが、機能としては前世で言う所のスマホって扱いだ。
まぁ、前世のスマホと違って、その能力は格段に上なんだけどね?
離れた場所で、今度はネアさんが『魔導南京玉すだれ』で、皆に芸を見せている。
「ちょいと伸ばせば、ちょいと伸ばせば『地獄の大百足!』」と、半分にして二つに伸ばした『魔導南京玉すだれ』を、額の辺りに持ってきて、日本には存在しないアマゾンにいるセンチピード・オブ・ヘルと言う、超狂悪なモンスターの真似をするネアさん。
俺は、ネアさんの姿を見て拍手喝采を送る。
「ネアさん、凄いね〜!カッコいいよ〜!」
周りで見ている女性陣も、拍手喝采だ。
そして、めぐりちゃんだけは、今だにハンディカメラ的な魔導具で撮影している。
「創造主〜?早く、名前〜!」
「そうよ?いつまでレディを、待たせるのかしら!?プンプン!」
西洋甲冑と龍ロボが、名前の催促をしてくる。
レディって・・・。
まぁ、良いや。
「西洋甲冑、君は『アイリス』龍ロボ、君は『沙羅』だ!どうかな?」
名前を聞いた瞬間、二体は天を仰いで直ぐに俺を直視する。
「良いじゃない!『アイリス』って、可憐な乙女の名前よね!何から取ったの?」
西洋甲冑は、胸の前で両手を合わせて喜んでいる。
「沙羅!素晴らしい響き!如何にも美人って感じ!創造主、やるわね!」
龍ロボは空中をクルクルと、機嫌良さそうに旋回している。
「でも、沙羅って名前は、なかなか合体しなかった巨大ロボの一体を操縦してて、悪い裏切り者の男に騙されかけて、喧嘩っ早い同僚の男に惚れ直しそうな名前ね?」と、アイリスが言う。
すると沙羅が「何よ?アンタの名前は、歌って踊って悪い妖怪たちと戦う歌劇団みたいじゃないのよ!」
「・・・いや、二体とも元々は綺麗で可憐な『花の名前』から取ったんだよ?なんで、そんなマニアックな作品知識が入ってるの」
「えっ!?花の名前?」
アイリスが、コテンと首を傾げる。
「私の名前も花?」
沙羅が、此方をジッと見つめる。
「うん、そうだよ!アイリスはアヤメの仲間の総称で、日本のアヤメやカキツバタの仲間。英語で『アイリス』。天にまっすぐ伸びる鋭い葉が『騎士の剣』に例えられ、ヨーロッパでは騎士道や王家の紋章(甲冑や盾)のモチーフとして愛されてんだって!更に、ギリシャ神話の虹の女神イリスが語源の由来で、花言葉は『勇気』『吉報』っていう前向きな意味があるんだよ?
俺は鯖の味噌煮を食べつつ、今度は沙羅に説明する。
「沙羅は夏椿の別名で、真っ白で上品な『椿』に似た可憐な花を咲かせる高木。5枚の真っ白な花びらの真ん中に、明るい黄色のおしべがツンと突き出す美しい姿なんだよ。潔く散る『一日花』で、朝に美しく咲いたと思ったら、その日の夕方には花ごとポトリと地面に落ちてしまうという、非常に儚い性質なんだ。『平家物語』で出てくる『沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす』って、使われてるね!無敵の者もいつかは散るという『最強の儚さ(諸行無常)』を象徴する花でもある。花言葉は、『愛らしさ』、『哀愁』って意味があるんだって!」
俺は一気に説明を終えて、スポーツドリンクを飲み干す。
うん、酔って火照った身体に染み渡る美味さだよね!
セレネが、新たに料理を片手に持って俺に手渡してくれる。
「創造主様?ニャぜ、吾輩たちが転生者しかしらニャい様な話を知ってるか、知りたいニャ?」
俺はセレネから、皿に盛られた熱々のウインナーを頬張りながら頷く。
「うん!何で、アイリスも沙羅もぼくの前世の知識を喋ってるの?凄く、気になる!」
「それは、創造主様が『貴方』だからニャ!」
『ズビシッ!』っと、格好良く魔導煙管を俺に突き付けるセレネ。
「この焼きウインナー美味しいね!で、ぼくが創ったからって、どういう意味?」
セレネは調理ロボから今朝、ヴェルダンディが獲った魔梶木の刺身を受け取り、食べながら話す。
「この魔梶木、最高級品ニャ!それで、理由ニャんだけど・・・」
「簡単な事よ?私たちは、魔導具として創られた。だから、創った人の思想や信念、記憶が私たちにも入る」
アイリスが、魔梶木のフライを食べながら俺に言う。
西洋甲冑なのに、何処に入って行くの?
まぁ、分解されて魔力になるから、良いけどね?
「だから、カオリさんや、ヴェルダンディさんたちと私たちは、同じ様な存在なのよ!」
沙羅が魔梶木をご飯の上に乗せた、魔梶木丼を頬張りながら答える。
それ、美味しそうだな?
俺も後で、ネギ抜きで注文しよう!
なる程ね?
カオリやヴェルダンディと、同じ存在かぁ・・・。
ちょっと、待て!?
じゃ、何か?!
カオリやヴェルダンディと同じで、俺の黒歴史を知ってるって事じゃねぇかよ!?
カオリとヴェルダンディだけでも大変なのに今度は三体、いや猪八戒型の魔導鎧も含めて、全部で四体も俺のトラウマメーカーを創ってしまったって事じゃないか!
「だから、さっき創造主のお尻を叩いた時に、『その通り、慌て過ぎ!後、創造主がドSなのは百も承知!]』って、表示したのよ!」
「・・・全部、知ってるんだ?」
俺は静かに、空になった皿をテーブルに置く。
「知ってるニャ!」
「知ってる!」
「知ってるわよ!」
セレネ、アイリス、沙羅が声を揃えて答える。
「うわぁ〜ん!お前らは敵だ!全俺を滅殺するタマネギ、ネギと同じくらい敵だ〜!?」