異世界転生   作:MSZ-006

224 / 226
224

 

「めぐりちゃん?どうしたの?」

 

俺は、裏声でめぐりちゃんに聞き返す。

 

「う、うん!お兄ちゃ・・・じゃ無くて、お姉ちゃん?あのね、リリーさんの占いの店が長蛇の列になって大変なの!だから、助けて欲しくて・・・」

 

「あら?それなら、丁度良いじゃない!リョウ・・・じゃ無くて、リョウコちゃんは、タロット占い出来るでしょう?」

 

カオリが、はにかんだ笑顔で俺に言う。

 

「そう言えば、そうね?リョウコちゃん、リリーさんを助けてあげたら?」

 

ヴェルダンディまで、ニコニコ笑いながら言ってくる。

 

確かに俺は前世で、オカルト大好きで(怖がりだけどな!)タロット占いとかにも手を出したよ?

 

そんなんで、良いの?

 

「因みに、タロットカードならボクが持ってるから、リリーさんを助けて!」

 

「うん!分かった。私に任せて!」

 

俺はノリノリで、セーラー服を身に纏い裏声で返事する。

 

そして、俺はリリーさんの隣にめぐりちゃんが用意してくれた小屋に入り、タロット占いを始める。

 

因みに俺は、大アルカナしか使用しない占い方で、ヘキサグラムスプレッドが一番得意な占い方だ。

 

後、タロットカードをトランプみたいにシャッフルする占い師がいるけど、俺はそれが好きじゃ無い。

 

何故なら、タロットカードはトランプじゃないからね?

 

だから俺のやり方は、タロットカードを机やテーブルの上に広げてクルクル回す様にシャッフルし、一纏めにした後、三つの山に分けてまた一纏めにするやり方で占う。

 

それから占いの前に、必ずやる事がある。

 

それは、人差し指と中指で手刀を作り、カバラ十字を切って場を清める事だ。

 

「アテー」

 

俺は人差し指と中指をピンと揃えて手刀を作り、自らの額へと持っていく。

 

「マルクト」

 

そのまま手刀をみぞおちへと一気に引き降ろす。

 

セーラー服の白いセーラーカラーが、その動きに合わせてかすかに揺れた。

 

「ヴェ・ゲブラー」

 

手刀を右肩へ。

 

「ヴェ・ゲドゥラー」

 

間髪入れずに左肩へと走らせ、空間に正確な光の十字を刻みつける。

 

「レ・オラム、アーメン!」

 

呪文の結びと同時に、両手の指をきゅっと胸の前で深く交差させ、祈りのポーズを作る。

 

これで場の結界(クリアリング)は完了だ。

 

カバラ十字の呪文が店内に響き渡ると、それまでの賑やかさが嘘のように、ピーンと張り詰めた神秘的な空気が場を支配する。

 

俺・・・いや、私は、指を組んだまま、最初のお客さんを呼ぶ。

 

そして、目の前に座った最初のお客さんに、極上の裏声で微笑みを向けた。

 

「お待たせいたしました。女子高生『リョウコ』が、アナタのお悩みをお聞きします!」

 

「あ、あの、実は、此れから好きな女の子に告白しようと思うんだけど、それを占って欲しいんだ!」

 

目の前に座った俺より少し若い感じの男子が、そう切り出して来た。

 

「分かりました。では、占いの方法ですが、ワンオラクルとスリーカード、それからヘキサグラムスプレッドの三つになります。どれが良いですか?」

 

「う〜ん?よく分からないな?」

 

「ごめんなさい!そうですよね?簡単に説明すると、ワンオラクルはカードを1枚だけ引いて占う。スリーカードは、3枚のカードを引いて、過去、現在、未来を占う。最後のヘキサグラムスプレッドは、私の場合はタロットカードの大アルカナ22枚を使用して、過去、現在、近い未来、問題に対する対策、周囲の状況、本人の状況、最終結果という占いになります」

 

「う〜ん、一番早く結果が分かるのは?」

 

目の前の男子は、ソワソワしながら聞いてくる。

 

「それなら、ワンオラクルですね!」

 

俺が、ニコッと笑って答える。

 

「そ、それなら、ワンオラクルって奴で!」

 

俺の笑顔を見た男子は、真っ赤になって答える。

 

「分かりました。では、シャッフルしますね」

 

俺は、タロットカードをシャッフルして一纏めにしカードを扇状に開く。

 

「では、この中から1枚だけ、カードを選んで下さい?」

 

「・・・じゃ、此れで!」

 

目の前の男子が、1枚のカードを指差す。

 

「では、開きますね?」

 

俺がカードをひっくり返すと、其処に出たのは男女が仲良く手を繋いで、微笑みながら歩いているカード。

 

大アルカナ6番目のカード、〈恋人〉のカードだ!

 

でも、逆位置だけどね?

 

 

「残念ながら、その好きな女の子に告白するのは、待った方が良さそうですね」

 

「えっ!なんで?」

 

「このカードは、〈恋人〉のカードの逆位置です。もし、正位置で出たなら問題ないと言えますが逆位置の為、残念ながら『実らない恋』という事になります」

 

俺は、占う時に絶対にオブラートに包まない言い方をする。

 

それは残酷な様だけど、必要な事だと思う。

 

確かに占いなんて、当たるも八卦当たらぬも八卦だと思う。

 

でも、そうだとしても余計な希望を持たせて、それが上手く行かなかった時にショックを受けるよりは、まだ救いがあると俺は思うんだよね。

 

「で、でも、言わなきゃ想いは伝わらないだろう?」

 

男子は、必死の形相で俺に言う。

 

「そうですね。それは、その通りだと思いますよ?」

 

確かに想いは、伝えないと伝わらないよな。

 

いや、当たり前の事を言ってるだけかな?

 

「す、好きです!一目惚れしたんです!貴女が歌っている姿、そしてあの台詞!俺は、貴女に惚れたんだ!だから、付き合って下さい!」

 

男子は椅子から立ち上がり、勢いよく俺に右手を伸ばしながら頭を下げる。

 

「・・・ごめんなさい。私には、好きな人がいるの。その人たちは私に取って、とても大切な存在なの。だから本当に、ごめんなさい」

 

俺は丁寧に、目の前の男子に頭を下げる。

 

きっと、一世一代の決心だったと思う。

 

だからこそ、不真面目な返答で返す訳にはいかない。

 

「ふぐぅ!でも、君みたいな素敵な女の子を、好きになれて良かったよ!グスッ」

 

「有難う御座います。では私から、最後にアドバイスです。いっぱい恋して下さい。そして、それは上手く行かなくても、貴方の糧になります。人を好きになる心は、貴方を人として成長させる大切なエネルギーになる。だから、此れからも恐れず恋して下さいね?」

 

「有難う・・・。うわぁ~ん!」

 

男子は、泣きながら走って行ってしまった。

 

「あの、お金・・・」

 

・・・まぁ、良いか。

 

「次の方〜?どうぞ〜!」

 

「アミーゴ!来ちゃったよ!」

 

現れたのは、神楽坂さんだった。

 

「ごめんなさい?もう、店仕舞いです」

 

俺は即、お断りして店仕舞いしようとする。

 

「おいおい!なんでそんなに塩対応なんだよ?アミーゴ!さっきお互いに身体と身体で、理解り合ったじゃないか?」

 

「おい!言い方に、気を受けろ!そもそも、さっきのは俺が捕まらない様に、合気道の技で投げただけだよな?」

 

いかん!

 

思わず地声で、文句を言ってしまった。

 

「う、うぅん!それで、相談内容はなんですか?早くして下さい?」

 

俺は再度、裏声で女子高生『リョウコ』になって対応する。

 

「やはり、男の声も素晴らしいが、女装して女の子の声になってるアミーゴも素晴らしいな!」

 

「・・・女装って、何の事ですか?セクハラで訴えますよ?早く、相談どうぞ」

 

俺は、目の前のウザいキャラクターに対して辛辣な対応をする。

 

「じゃ、アミーゴ!俺の人生の野望が達成されるか占って欲しい!」

 

神楽坂さんが、ニコニコしながら俺に言う。

 

「人生の野望ですか?」

 

野望ってなんだよ、

 

何かとんでもない野望でも、抱いてんのか?

 

コイツなら、国家転覆級の野望を抱いていても、不可能じゃ無い気がするから危ないんだよ。

 

「おい、欲望って何だよ?危ない事なら、軍に通報するぞ?」

 

俺は、また地で話をしてしまう。

 

「おいおい!アミーゴ、そりゃ無いぜ?!俺の欲望と言ったら、世界から偏見や差別を無くす事だぜ?後、アミーゴとどうやったら、親密になれるかだな!」

 

「うぅん!分かりました。では、貴方の望み・・・。『親密になれる』以外の事を、占いますね?」

 

「う〜ん?まぁ、良いや!それで頼むぜ、アミーゴ!」

 

俺は精神を集中させ、目を瞑りタロットカードをシャッフルしながら、彼の望みが叶うかタロットカードに神託を授かる。

 

そして、俺は7枚のカードを配置し終え最初のカードを開く。

 

過去、〈死神〉の正位置。

 

現在、〈魔術師〉の逆位置。

 

近い未来、〈太陽〉の正位置。

 

問題に対する対策、〈法王〉の正位置。

 

周囲の状況、〈戦車〉の正位置。

 

本人の状況、〈正義〉の正位置。

 

最終結果、〈世界〉の正位置。

 

なる程?

 

では、このカードから導き出された結果を、伝えるとしようか。

 

「先ず過去のカード、〈死神〉です。此れは、先ほど貴方が話していた大好きな初恋の彼との、あまりにも早すぎる死別を意味しています。次に、現在の状態です。〈魔術師〉の逆位置、まぁそこそこ、形にはなってきている状態ですね。まだ世間を大きく変えるほどの影響力はありませんが、手応えは感じ始めていると思います。可もなく不可もない『そこそこ』の現状ですが、水面下でエネルギーは確実に溜まっている状態と言えますね。次に、近い未来。〈太陽〉の正位置ですね。心が躍るような、楽しい出来事が起こる。現在の活動の中で、あなたの心がパッと明るくなるような嬉しいイベントや、純粋に『楽しい!』と思える瞬間が訪れます。あなたの掲げる理想が、多くの人にポジティブな光として受け入れられ、笑顔が増えるような喜ばしい展開が待っている様ですね?次に、問題に対する対策、〈法王〉の正位置です。一人で抱え込まず、信頼できる仲間に協力を仰ぐ事。貴方が目指す『世界の変革』という大きな目標は、一人の力では限界があります。あなたの理念に共感してくれる仲間やサポーター、あるいは専門家に頭を下げて助けを求めて下さい。チームとして結束し、集団の力で進むことこそが、今ある壁を突破する最大の鍵になります。次に、周囲の状況、〈戦車〉の正位置です。頼もしい『協力者』が現れる。圧倒的な行動力と情熱を持った強力な味方が現れる様です。この協力者は、貴方の理想に共鳴し、先陣を切って突撃してくれるような頼もしい存在ですね。その人の登場によって、活動のスピードは一気に加速する。次に、本人の状況、〈正義〉の正位置です。このカードは、貴方の現在の状態を示します。誇りと、大義の為の強い意志を感じます。貴方の心は『世界を正しく、公平にしたい』という純粋な正義感がある。私利私欲ではなく、悲しい偏見をこの世から無くすという公明正大なバランス感覚を持っており、ブレない覚悟があなたの内面に宿っている。最終結果です、〈世界〉の正位置。あなたの望みは、必ず叶う。大アルカナの最終カードであり、最高峰の調和と完成を意味するカード。貴方が今まで流した涙と、仲間たちとの闘いは、最高の形で報われる。差別や偏見のない、誰もが自分らしく生きられる理想の世界が、貴方の手によって完成へと導かれる。こんな、感じですね」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。