異世界転生 作:MSZ-006
さて、夜も随分更けてきたな。
俺はセーラー服から着替えて、そろそろ部屋に戻ろうか、なんて考えていたらガシッと俺の肩を掴む人物がいる。
ビックリしながら振り返ると、セニョール監督だった。
「リョウ君?君のセーラー服姿も素晴らしいな!どうだろう?次の撮影で、使わせて貰えないかな?」
「か、監督?ミニ浴衣で、女装して撮影したばかりですよね?」
「うむ、確かにそうなんだが、ポポ君と先ほど話していてね?ポポ君が、非常に面白い事を言うんだよ!それを聞いて、私は話を少し手直しする事に決めたんだ!」
監督が、とても熱心に話す。
はて?
一体、どんな話を聞いたんだ?
「監督?ポポは、何と言ってたんですか?」
俺は、ポポの発言が気になり聞いてみる。
すると、監督はニヤリと悪い笑みを浮かべて話し出した。
「それが、ポポ君の役柄『ブラック・モルダバイト』が、主人公に魅了されるのはどうか?と、言われてね?元の話としては主人公とブラック・モルダバイトは、ユカ君・・・。『ファム・ファタル』を奪還する際の障害としてしか、考えていなかった。しかし、ポポ君からそんな意見を出された!それで私は、ポポ君の女優として更には脚本家としての能力を高く評価して、彼女の意見を取り入れた訳さ!」
「あの、ポポの話は分かりました。でも、それとセーラー服姿になる事に、何が関係するんです?」
「リョウ君?私は、俳優兼映画監督だ。だから美しい花を見て、それをただ単に『美しい花』と、表現する様な事はしないんだよ?『鮮やかな色合い』や『可憐で瑞々しい』という様な表現を使って、物語を作りたい。何がどう美しいのか?それを表現する。そういう事だよ!」
「なる程?よく分かりませんが、とても素晴らしい監督の拘りがあるのは分かりました。まぁミニ浴衣で女装してますし、別に今更セーラー服だろうが、ナース服だろうが構いませんよ?」
俺は酔いの勢いもあって、半分ヤケになりながら答える。
「そうか!では、頼むとしよう。後、ポポ君には後日、専属女優としての契約書を出す予定だ」
監督とそんな話をしていると、ミリィさんが来た。
それを見た監督は、ではと言って去って行く。
監督も部屋を取ったのかな?
「リョウ様、明日は私とデートですよ?覚えてますか?」
「はい、ミリィさん。ちゃんと覚えてますよ?宜しく、お願いします」
俺がそう言って頭を下げると、ミリィさんはちょっと驚いた様な顔をしながら言う。
「リョウ様、もう酔いが覚めたんですか?」
「はい。まぁ結構、時間が経ちましたしね?」
「先ほどの酔ったリョウ様も、凄く可愛かったですよ?」
ミリィさんは、はにかんだ笑顔で言う。
「有難う御座います。そんな風に言って貰えると嬉しいですよ?」
俺は、ニコニコしながら答える。
酔いが覚めたとは言え、医学的には完全にアルコールが抜けた訳じゃ無いからね?
お陰で、またフワフワした感じが戻って来てるよ。
早く休んで朝スッキリ、バッチリ起きないと。
「では、明日の10時に、宿の門の所で」
そう言って、ミリィさんは部屋に行く。
さて、戻るかな?
何て考えていたら今度は、カオリと珊瑚が来た。
「リョウ?私たち、戻るわよ?今日から暫く、別々の部屋だけど寂しくなったら来ていいからね?」
「パパ?無理しないで、直ぐに来てね?私もカオリママも待ってるから」
カオリと珊瑚が、そんな事を言う。
「有難う、珊瑚!でも、すぐ傍に居るから、大丈夫だよ?後、カオリ?俺はそんなに、甘えん坊じゃないぞ?」
「リョウ?もう酔いが覚めたの?」
カオリが、驚いた顔で聞いて来た。
「あぁ、完全にアルコールが抜けた訳じゃ無いけど、頭はスッキリしてるよ」
「パパ、常に酔ってても良いよ?」
珊瑚が、おかしな事を言う。
常に酔ってたら、逆に危険だろう?
そんな会話の後、カオリと珊瑚が部屋に戻る。
「リョウ、夜も随分更けた!早く、暗がりに私を連れ込んで、それで・・・ハァハァ」
テア博士がクネクネと身悶えながら、おかしな事を言う。
「テア博士、寝てください?」
俺は、冷静に冷たい笑顔で返す。
「そ、その塩対応!更に、セーラー服姿で!ギャップ萌え!?しかし、リョウ?あれだけ呑んだのに、もう酔いが覚めているのか?」
テア博士が前半で危険な発言をし、後半ではマトモな事を言う。
「前世からそうでしたが俺は元々、アルコール耐性が強いみたいですね」
「ふむ?そうか、私としては酔ったリョウも凄く魅力的だったがな?」
「有難う御座います。でも、常に酔っている訳にもいかないでしょう?」
「フフッ、それはそうだな!では、私は戻るよ?温泉は、明日の朝に入るとしよう。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
そう言って俺はテア博士と別れようとした瞬間、テア博士がクルッと此方を振り向き言う。
「リョウ?へ、部屋に来たかったら、いつでも良いんだぞ?」
「テア博士、ご安心ください?絶対に行きませんので!」
俺は、爽やかな笑顔で答える。
「はうぅ!そ、そんなドSな塩対応されたら・・・!」
テア博士は、俺の返答を聞いて顔を真っ赤にして身悶えながら、内股で部屋に帰って行く。
次に現れたのは『魔導唐傘おばけ』を連れたユカさんと、瑞だった。
「リョウさん、今日は凄く楽しかったです!」
ユカさんが、微笑みながら言う。
「今日は、、ユカさんと一緒の部屋で寝る。誘ってくれた」
瑞が、嬉しそうに俺に言う。
「そっか!ミズキ、良かったな!ユカさん、すみません。宜しく、お願いします」
俺が頭を下げると、ユカさんは慌てて「そ、そんなに畏まらないで下さい!そもそも、ポポちゃんにしろ瑞ちゃんにしろ、私の妹みたいな存在だと思っているんですから。それにしても、リョウさん?私の事は、もう『ユカちゃん』って、呼んでくれないんですか?」と、ユカさんは残念そうな顔をする。
「そ、その、先ほどは盛大に酔っており本当に、すみません!」
俺が慌てて頭を下げると、ユカさんは笑いながら俺に言う。
「うふふ、別に謝らなくて良いんですよ?ただ、酔ったリョウさんが凄く可愛くて、そんな姿を見れたのがとても嬉しかったんです」
「あ、有難う御座います。でも、醜態を晒してしまって恥ずかしい限りです」
俺は、心から反省を述べる。
酔いが覚めきったとは言えないが、さっきよりも意識は鮮明にハッキリしている。
もうね『な゛ん゛て゛た゛よ゛〜!な゛ん゛て゛、あ゛ん゛な゛こ゛と゛い゛っ゛た゛ん゛た゛よ゛〜、お゛れ゛〜!』って、叫びたい気分だよ!
「YO〜YO〜、創造主YO〜!酔ったお前、最高に可愛いから、今後も定期的に酔えYO〜、チェケラ!」
『魔導唐傘おばけ』が、俺にそんな事を言う。
「うん。もう今後、呑まない」
俺は、決めた。
今後、二度と酒は呑まないと!
「り、リョウさん?毎日呑めとは言いませんが、たまに呑んで欲しいです」
ユカさんが頬を染めながら、そんな事を言ってくる。
俺はニッコリ笑いながら、黙ってユカさんの言葉を受け流す。
もう、同じ過ちを繰り返さない。
毎回『な゛ん゛て゛た゛よ゛〜!』なんて、濁点混じりの言葉を心の中で叫ぶ様な醜態を晒したくないからね。
「そう言えば、ポポは?」
ふと見ると、いつもユカさんと一緒にいるポポの姿が見えないので聞いてみた。
「ポポちゃんは、セレネちゃんと、沙羅ちゃん、アイリスちゃんたちと一緒の部屋に行くと言ってました。私が、お姉さんだからって」
ユカさんが、優しく笑みを浮かべながら答える。
そっか・・・。
ポポは自分より後に誕生した存在が、自分の妹みたいに感じてるんだろうな。
凄く、微笑ましいな。
「では、おやすみなさい」
「おやすみだYO〜!創造主、チェケラ!」
「主、おやすみ」
ユカさんと『魔導唐傘おばけ』そして瑞が、並んで去って行く。
俺は三人(?)の後ろ姿を見送りながら、今度こそ部屋に戻ろう思っていたら、リリーさんとマリーさん姉妹に声を掛けれた。
「・・・リョウ、酔っちゃった。だから、送られオオカミになる」
「リョウ〜?酔っちゃった〜!部屋まで送って〜?そして、そのまま部屋で一緒に寝よ〜?」
ちょっと、リリーさん?
送られオオカミって、危険な発言ですよ?!
「部屋まで送る事は出来ますが、部屋の前までですよ?」
俺は、ニッコリ微笑みながら答える。
「・・・リョウ?もう酔いが醒めた?折角、送られオオカミを狙ってたのに」
「リョウ〜、凄いね〜?あんなに酔ってたのに〜!酔ってたら絶対、部屋に入ると思ったのに〜」
リリーさんとマリーさんは、残念そうな声を出している。
そんな話をしていると、瞳ちゃんと魔導アナグマがやってきた。
「リョウ、私はコイツと一緒に部屋に戻るぞ!明日は、入籍記念日だな!」
「入籍記念日ですか?そう言えば、リリーさんが市役所に婚姻届を取りに行くと・・・」
やべぇ!
オラ酔ってて、とんでもねぇこと言っちまったズラ!?
「あ、あの瞳さん?婚姻届は、ちょっと待って頂けませんか?その・・・まだ、デートもしていないですし・・・」
「リョウ?お前の言葉は、嘘だったのか?」
瞳ちゃんが、泣きそうな顔で俺を問い詰める。
「いえ、酔っていたとはいえ、キチンと責任は取るつもりです。ですが、事は重要な案件。慎重に話を進めて行かないと」
俺は小難しい言葉を並べて、必死に説明をする。
「キュキュン、キュキュキュキュン」[取り敢えず、婚姻届だけ書かせて保管しておけば?]
魔導アナグマが、瞳ちゃんにドヤ顔でアドバイスしている。
「なる程、そうだな!婚姻届を書いておけば、いつでも出せるな!リョウ、婚姻届を貰って来たら、書いて貰うぞ?」
瞳ちゃんが魔導アナグマを撫でながら、元気になって俺に言う。