異世界転生 作:MSZ-006
俺は、この窮地をどう切り抜けようかと必死に知恵を絞っているところへ、美星さんとめぐりちゃんがやってきた。
「お兄ちゃん、おやすみ!」
「リョウさん、おやすみなさいませ」
俺は目の前に現れた二人の救世主に、感謝しながら挨拶を返す。
「はい!おやすみなさい」
「瞳さん明日、楽しみだね!リリーさん、ボクの分の婚姻届もお願いします!」
めぐりちゃんが、不穏な発言をする。
救世主かと思いきや、まさかのトドメを刺しに来た刺客だった?!
「あらあら、それなら私も離婚届と婚姻届を・・・」
み、美星さん!?
流石に、それは俺が宇治茶博士に殺されかねないんですが?!
「・・・うん、任せる」
リリーさんが話を聞いていて、スッと親指を立ててグッドサインを出す。
そして瞳ちゃんと魔導アナグマが、何事も無かったかの様に『おやすみ』と挨拶して、女性陣一同は楽しそうに談笑しながら去って行く。
俺は本当に明日、婚姻届を書かなきゃならんのか?
美星さん、冗談ですよね?
宇治茶博士が、また泣きますよ?
一人残された俺は、そんな事を考えていると、ポポがセレネとアイリス、沙羅を連れてやってきた。
ネアさんと、ゴモリーさんも一緒だな。
「リョウ、おやすみ!」
「おやすみなさい、リョウさん」
ネアさんとゴモリーさんが、声を掛けてきた。
「お父さん、おやすみ!」
「創造主、おやすみ〜!」
「創造主様、おやすみニャんだニャ」
「おやすみ、創造主!」
ポポ、アイリス、セレネ、沙羅の順に声を掛けてくる。
「おやすみなさい。ポポ、セレネたちの事、頼むな?」
俺はネアさんとゴモリーさんに返事しつつ、ポポに声を掛ける。
「うん!僕、お姉さんだから、大丈夫!」
黒子豚を抱き抱えたポポが、ニコニコしながら返事する。
「ところで、創造主様?明日、婚姻届を取ってきて貰うと聞いたんニャが、吾輩たちの分も貰えるのかニャ?」
セレネが魔導煙管を燻らせながら、そんな事を俺に言う。
「いや、セレネ?お前は魔導具であって、人間じゃないよな?」
「ひ、酷いニャ!創造主様は、LGBTには偏見が無いと言ってたくせに、吾輩たちには結婚する権利がニャいと!?」
「そうよ!身体が鋼鉄でも、心は乙女なんだからね!」
「そうだ、そうだ!創造主は、こんな身体にした責任を取れ!」
セレネの発言に、アイリスと沙羅が同調して声を上げる。
後、こんな身体って所は、勘違いされる発言だから止めて?
ガシャガシャと重厚な金属音を立てて、詰め寄ってくる西洋甲冑のアイリス。
巨体を揺らし、メカニカルな尾をパタパタさせながら威嚇する龍ロボットの沙羅。
そして魔導煙管を燻らせながら、ジト目で俺を睨む黒猫のセレネ。
「リョウ、女心をなんだと思ってんのよ!」
「リョウさん、酷いです!謝って下さい!」
「お父さん、差別発言は駄目だよ」
ネアさん、ゴモリーさん、ポポに怒られた。
「申し訳ありませんでした!でも、結婚とかは、流石に無理だろう?」
「ニャんで、そんな事を言うニャ?!諦めたら、其処で終了ニャ!」
「そうよ!頑張って、立ち上がってよ、創造主!真っ黒な灰になるまで、燃え尽きてよ!」
「そうだ、そうだ!そもそも、他の人に相談もしないで諦めるなんて、手抜きと一緒じゃない!発売日間近に、延期を発表する某ロボットゲームみたいじゃない!」
セレネ、アイリス、沙羅の順に発言したが、コイツら俺の前世の知識を持ってるからな・・・。
版権問題的に、上手くぼかして攻めてやがる。
「分かった。他の人に相談してみる。だが、期待するなよ?それに、言っちゃなんだが、俺はお前らの創造主だ。だから、お前らは俺にとっては子供や家族みたいなものだからな?後、創造主って呼び方は、止めよう。堅苦しくていかん」
「そんな事を言ってリョウは、人型になった私の身体を弄びながら・・・」
「おい!沙羅?おかしなナレーション入れるな!アイリス、なんで頬をおさえてモジモジしてんだよ?それから、セレネ?なんで、気合の入ったガッツポーズしてるんだ?」
そんなやり取りの後、それぞれ部屋に帰って行く。
まぁ創造主呼びは、明日にでも話すとして俺も帰るかな。
なんて考えていたら、ヴェルダンディがやってきた。
「リョウ、ちょっと良いかしら?」
「どうした?ヴェルダンディ。明日はまた、色々と忙しくなりそうだな」
俺は呑気にそんな事を言うが、ヴェルダンディの表情は優れない。
「リョウ、藍さんと何かあったの?」
ヴェルダンディが、優しく俺に問い掛ける。
「無いと言えば、嘘になるな・・・」
俺は、ため息をつきながら答える。
「彼女、めぐりちゃんに飲み過ぎたから、先に部屋に行くって言った帰り際、泣いてたのよ。私以外、誰も気付かなかったけどね?」
「そっか」
俺は天空に広がる星々を見上げながら、ヴェルダンディに答える。
「ひょっとして、旦那さんの話をしたの?」
ヴェルダンディは、優しく諭す様に問い掛けてくる。
「あぁ、話した。藍さんには、全部バレてたからな」
「・・・リョウ、私はカオリと同じで貴方の記憶を共有してる。でも、カオリと大きく違う所は、カオリが知らない事実を私は知ってる事よ?そして、その事実を知っているのは、あのコたちもそう」
あのコたちか・・・。
セレネ、アイリス、沙羅。
アイツ等も、カオリやヴェルダンディと同じで、俺の知識や記憶を共有している存在だ。
ヴェルダンディが言っているのは、藍さんの旦那さんと夜中に死闘を繰り広げ、這々の体で帰って来た時の事を言っている。
カオリは既に、この世界に居たからその時の記憶は共有していないが、ヴェルダンディは『男同士の話し合い』の後に、顕現した存在だからな。
そしてアイツ等、セレネやアイリス、沙羅も誕生したのはついさっきだ。
だから、カオリが知らない情報を持ってる。
「リョウ?今の貴方は、独りじゃ無い。だから、頼ってね?」
ヴェルダンディが、優しく俺に言う。
「有難う。もし独りで駄目なら、その時は頼むよ」
上を向いていた俺は、ヴェルダンディに視線を合わせ、ニッコリ微笑みながら答える。
・・・そうだな。
今の俺は、独りじゃない。
前世の様に長い間、誰も頼れず、誰も頼らずに過ごしていた時とは違うんだよな。
「リョウ、貴方は鈍感じゃないし他の娘たちの感情にも、ちゃんと気付いている。そして、それに対してキチンと向き合おうとしている。だからこそ、心配なの。独りで、全てを背負い込まないで?他の娘たちも、必ず貴方に協力してくれる筈よ?」
「そうだな、有難う。ヴェルダンディ」
俺は、転生する時に会った女神様の事を思い出していた。
あの何処か懐かしい、前世で凄い昔に会った事がある様な・・・。
でも、未だに思い出せない、美しい女神様。
今は、この世界に転生させてくれた事に、感謝の気持ちしかないな。
「後、リョウ?早く着替えた方が良いわよ?」
ヴェルダンディにそう言われて、周りを見ると遠巻きに温泉宿の客が俺を眺めている。
その瞳は艶めかしい視線から、今度はどんなパフォーマンスをするのかと期待した様な視線だ。
・・・早く、セーラー服から着替えよう。
そうじゃ無いと、またおかしな奴が現れかねん。
俺は、めぐりちゃんが残しておいてくれた一人用の小さい個室に入り込んで、いそいそと着替えを済ます。
そして、個室から出て来た俺を熱視線で見つめる数人の男性客!
なんで男に戻ったのに、おかしな視線を向けてくるんだよ!?
お前等も、神楽坂さんと同類か?
見てんじゃねぇよ!
金、取るぞ!?
小さな更衣室を魔導カプセルに戻し、俺は一人部屋に戻る。
楽しい事ばかりだと良いんだが、人生なかなか上手くいかんよな。
まぁ前世に比べれば、間違いなく今世は、素晴らしい人生だと思えるがね?