異世界転生 作:MSZ-006
・・・どうも、違いが理解っちゃう男!
リョウです!
今、俺は椅子に腰掛けてウインナーコーヒーを飲みながら、頭の中で鱈だの鯖だのを連想している最中だ。
まぁ、アレだよな?
若い世代には、伝わらない事って色々あるよな?
前世のCMネタなんて、俺と知識を共有している存在なら分かってくれるけど、そうじゃない異世界人やCMを知らない若い世代には伝わらないもんな。
俺は、そんな事を考えつつカップを傾ける。
そして、やって来たミリィさんの姿を見て、可愛い、素晴らしい、さて次は何と言えば良いんだ?
と、思考する。
先ほどの不埒者が暴れた件は、店長(オッサン)が通報して駆けつけた軍人に引き渡して終了したが、それが終わってから俺は店長に気に入られて、ミリィさんや紫雨、アイリスとセレネ、沙羅がファッションショーさながら、次々と服を着替えては俺に見せに来ているのだ。
だから、俺の乏しい語彙力では、もう既に限界なんだよ。
「お兄さん?もし良かったら、お兄さんの服も見ていく?私は、お兄さんの事を気に入ったから、凄く安くしてあげるわよ?」
ウインクしながら、オッサンが俺にそんな事を言う。
「あ、有難う御座います!彼女たちの服だけで、大丈夫ですよ!」
俺は迫るオッサンから、少し離れつつ答える。
そして、数回目の登場をしたセレネが早く感想を言えと言わんばかりに、ジト目で俺を見つめる。
「い、いやぁ~!ミリィさんもセレネも、可愛いよ!もうね、そのままトップモデルとしてやって行ける位!」
「リョウちゃん!私は?」
「そうそう!私はどう?この妖艶さ、伝わる?」
アイリスと沙羅が、そんな事を言う。
うんうん、凄く可愛いよ!
でも、沙羅?
妖艶さって、お前さんの見た目だと、ちょっと何ていうのか・・・。
可愛らしいが、一番しっくりくる言葉なんだけど?
俺は、見た目が少女の沙羅が、頑張ってポーズを取っている姿を娘がお遊戯会で頑張っている様な感情で見ている。
更に紫雨がピシッとした、フォーマルなスーツ姿で現れる。
現在、頭の和傘帽子は無く、代わりにショートボブをカチューシャで留めている状態だな。
なんていうか、仕事の出来るキャリアウーマン的な感じか?
見た目、幼いが・・・。
「YO!リョウちゃんYO!DO〜よ?セクシーだZE?」
チュッと、投げキッスをかます紫雨。
沙羅の時もそうだが多分、世のマトモな親たちは、我が子が一生懸命お遊戯会で頑張っている姿を、今の俺の様な心境で見ているんだろな。
「凄く、可愛いよ!それで、そろそろ服を選んで貰え・・・」
「リョウ様?まだです!」
ミリィさんが、メガネをクイッと上げながら言う。
「そうニャ!吾輩、まだ勝負下着を買ってニャいニャ!」
セレネは、腕組みして答える。
「その通りだ!リョウちゃんを悩殺する勝負下着まで選んで、全て完了する!」
アイリスも『ウンウン』と頷いて合いの手を入れる。
「そうよ、そうよ!私も、セクシーな下着を買う!」
ドヤ顔で、そんな事を宣う沙羅。
「そうだZE〜!リョウちゃん悩殺計画、実行中なんだYO!チェケラ!」
なぜか、その場でクルッと回って新たなポーズを取る紫雨。
「あらあら?なら、男である私たちは、ついて行けないわね?ウチの若いコにお願いして、私はお兄さんとお喋りしようかしら?」
オッサン改め、店長が俺をニコニコと眺めながら、事もなげに言って退ける。
「いや、仕事中ですよね?」
俺は、店長である筋肉質の男を眺めながら言う。
すると「あら?営業も大切な仕事よ?後、店長特権ね?因みに、ウチのお店は、こうやってお客様と同じ席について、様々なお話を通して気に入った服やアクセサリーを選んで頂くの!だから、他のコたちも時々、こうやってお客様と対話するのよ?決して、店長だからと、サボってる訳じゃないんだからね?うふふ!」
確かに周りを見渡すと、数名の女性店員が楽しそうにジュースやお茶を飲みながら、お客さんと座って会話してるな?
なる程?
どうやら、この店独自の営業スタイルって事か・・・。
「私ね?今まで一生懸命、頑張ってお仕事してきたの。でも、一生懸命頑張っても休息が無いのは、駄目だと気付いた!だから、私はこの『暇な時は、お客様を捕まえてお茶飲み友達にして、商品を買わせる!』システムを構築したのよ!どう?凄いでしょう?」
「は、はぁ・・・」
なんて言うか、悪徳商法的な感じのする文言なんだけど、要は休憩時間をちゃんと取れるシステムって事だよな?
そうなんだよな?
多分・・・。
「後ね?勘違いして欲しくないから言うけど、お客様に商品を無理やり買わせたりとか、お店のコたちに対するノルマもないのよ?ウチは、悪徳業者じゃ無いからね?そんな事をしなくても、私の『オ・ト・モ・ダ・チ!』が沢山いるから、店の経営も全く問題ないの!」
「そ、そうですか・・・」
俺は昨日、知り合ったばかりの超危険人物の事を思い出していた。
「そうそう!その最も重要かつ最高の『オ・ト・モ・ダ・チ!』が、日本に来ていてね?そろそろ、来る頃だと思うのよ!人間的に、とても出来た人でね?とても素敵な人だから、お兄さんにも紹介したいのよ!」
ウインクしながら、筋肉質な身体でチマチマとスプーンを使い、山盛りのアイスクリームを崩しながら口に運ぶ店長。
「よぉ!アミーゴ!久しぶりに、帰って来たぜ!相変わらず、繁盛しているな!」
やっぱりだよ!
絶対にそうだと、思ったんだよ!!
だから、早く服を選んで立ち去りたかったのに・・・。
泣くぞ!?
それはそれは、もう幼児の様にわんわんと泣き叫ぶぞ!
チクショウ・・・。
俺は黙って俯いて、顔を見せない様に小さくなる。
「おや?アミーゴじゃないか?奇遇だな!やはり、俺たちは何処に居ても、必ず惹かれ合うデスティノ(運命)なんだな!」
そう言って、此方に両手を広げて迫る神楽坂さん。
俺は緊急避難をして、その場から離脱する。
「おいおい、アミーゴ?どうして逃げるんだ?なる程!そんなに、恥ずかしがるなよ!そもそも昨日は、セーラー服でタロット占いもしてくれたじゃないか!?」
『やれやれ』といった感じで掌を上にして、肩をすくめる外人リアクションをする超危険人物。
「フシャー!ガルルル!!コッチ来んな!危険人物!」
俺は人である事も忘れ、必死に威嚇する。
「久しぶりね!玲央ちゃん!お兄さんとは、知り合いだったの?まぁ、玲央ちゃん好みのイケメンだもんね?『オ・シ・リ・ア・イ!』なだけに、もう既にそんな関係なのかしら?後、お兄さん、セーラー服でコスプレなんてするの?なら、ウチのお店はピッタリだわ!後で、私が服を選んでア・ゲ・ル!」
「結構です!ミリィさん、早く帰って来て!?俺の物語(人生)が、汚される!」
緊迫した状態だからこそ、俺の脳内では大好きだったアニメ。
二人組の女性が難事件を解決して、その代償に甚大な被害をもたらしてしまうアニメ。
その初代エンディング曲・・・、最後の歌詞を思い浮かべる。
まぁ、こんな危険人物に『重力に逆らって、宇宙空間を彷徨う様な恋』なんて、する筈がないがな?
そもそも、俺の恋愛対象は女性なんだよ!
瞳ちゃんが、例外なだけだ!
俺は神楽坂さんの動きに合わせ、いつでも対応できる様に目を逸らさず、一足一刀の間合いを取らせない様に警戒する。
因みに、大好きだから説明しておくが、あの二人組が組織の司令塔である『超高性能なコンピューター』に指名される理由は、彼女たちじゃなきゃ絶対に解決できないし、他の者が対応したら人類滅亡や彼女たちが出す被害よりも、更に酷い被害が出ると予測しているからだと俺は考察しているんだよ。
君は、どう思う?
後、汚されるって所は、二人の仇名を想像してるんだぜ!
渾名(あだ名)じゃ無くて、仇名な?
なんて、訳の分からない現実逃避をしながら、ジリジリ迫る神楽坂さんから必死に距離を取る。
「そうそう!ちょっと聞いてよ、玲央ちゃん!さっき超感じの悪い破落戸がウチの若い娘に絡んでね?それを取り押さえるのに、奮闘してたらお兄さんに助けられたのよ?もう私、超怖かったんだから〜!」
そう言いながら、身体をクネクネさせる筋肉質なオッサン。
俺は、アンタと神楽坂さんの方が恐いんだが?
「そうか!アミーゴは、何処に居てもイケメンな人助けをするだな!流石、俺が見初めた男ってだけの事はある!」
「その評価は、大変有難いですが『見初めた』って文章が、途轍もなく不穏に感じるんだよ!」
俺と神楽坂さんは、店長が座るテーブルの周りをジリジリ、グルグル回転しいている。
此れ、高速で動いたらバターになる展開か?
「リョウニャン?何やってるニャ?」
「リョウ様?その不審者に、また何かされましたか?」
「リョウちゃんYO!ソイツ消す?何なら、私が始末しても良いんだZE?」
「リョウちゃん?帰ったら、みんなで椅子取りゲームとかする?で、お互いに身体がぶつかって、私が押し倒されて・・・」
「そうね!それは名案ね!我慢できなくなったリョウは、私のグラマラスな身体を・・・」
「ちょっと、待て!その非常に危険で誤解を受けるナレーションは止めろ!」
戻って来た、セレネ、ミリィさん、紫雨、アイリス、沙羅の発言を聞いて俺は、ツッコミを入れる。
そもそも、沙羅さんや?
グラマラスって言葉の意味を理解しているのか?
君の見た目年齢は、どう見ても年端もいかない少女なんだが?
それから、シグレ?
その手に持っている小型化した唐傘手裏剣と柄の仕込み杖、危険だから仕舞いなさい?
「オイオイ!アミーゴ?また女の子を増やしたのか?体力は、持つのか?其処に、俺まで加わったら・・・」
神楽坂さんが、紫雨、アイリス、セレネ、沙羅を見ながら動きを止めて、呆れた様に声を出す。
「おいっ!何で、アンタまで俺の身内になろうとしてんだよ!それから、ミズキみたいな事を言うな!体力的にって、どう言う意味だよ?!」