異世界転生   作:魔導科学

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白熱する名付け論争を横目に、俺はふと思いついた言葉を口にした。

 

「珊瑚珠色から取って、『珊瑚』はどうだ?」 

 

隣にちょこんと座るドラゴンの子供を見つめて問いかける。

 

その美しい鱗の輝きが、どこか海の宝石を連想させたからだ。

 

「ピィ、ピピィ!」 

 

ドラゴンの子供は短く鳴き、嬉しそうに俺の膝に頭を擦りつけた。

 

「・・・気に入った、そう言ってる」 

 

感情の起伏が少ないリリーさんの通訳。

 

それが決定打となり、食堂を揺るがしていた名前決め会議は、ようやく終結の時を迎えた。

 

「よし、今日からお前の名前は珊瑚だ。よろしくな」

 

「ピィ!」 

 

元気な返事に場が和んだのも束の間、カオリが眉をひそめて異議を唱えた。

 

「ちょっと待って、リョウはパパなのにママになるの?欲張りすぎじゃない!?」

 

「ですが、まだ『奥さん』という空席は残ってますよ?」 

 

ゴモリーさんが、不敵な笑みを浮かべる。

 

「確かに!その手があったか!」 

 

対照的に、ネアさんは何かに開眼したかのように拳を握りしめている。 

 

女性陣の不穏な熱気に当てられたのか、珊瑚が再び声を上げた。

 

「ピィ!ピピィピィピピィ!」

 

「・・・なる程、それはいい考え」 

 

リリーさんが小さく頷く。

 

「えっと、リリーさん?珊瑚は何て言ったんだ?」

 

「・・・名前を考えてくれた皆に、感謝している。だから、ここにいる女性はみんな『ママ』だと言っている」

 

「やったー!私が、一番のママよ!」 

 

カオリたちが歓喜に沸く中、ようやく意識を取り戻した河野さんが、ふらつきながら輪に加わった。

 

「そうか!ならば、俺もママだな?」

 

「ピィ!ピピィ!」

 

「・・・河野は、近所のおじさん。と、言っている」

 

「なんでだよ!?俺も名前案、出しただろ?不慮の事故で、昏倒してたけどさぁ!」 

 

必死に食い下がる河野さんだが、そもそもあんたは男だろう。

 

「近所のおじさんは、黙っていてください。それ以上発言すると訴えますよ?」 

 

ミリィさんが冷徹な声で告げる。

 

その背後には、物理的な殺気すら漂っていた。

 

「すまないミリィ!俺が悪かった、頼むから見捨てないでくれー!」 

 

見事なまでの土下座を披露する河野さんを無視して、ミリィさんは冷ややかに告げた。

 

「さて皆さん、本日の催しはこれにて終了です。お疲れ様でした」 

 

颯爽と食堂を去る彼女の後を、河野さんが情けない声を上げながら追いかけていく。

 

嵐のような騒がしさが去り、ようやく静寂が戻ってきた。

 

「・・・取り敢えず、夕飯にするか?」

 

「そうね、いい時間だし。ピィちゃんは何が食べたい?」

 

「ピピィ! ピィ!」

 

「・・・パパと同じものがいい、と言っている」

 

「俺と同じ飯を、ドラゴンが食っても大丈夫なのか?」 

 

俺の不安に答えたのは、リリーさんの妹であるマリーさんだった。

 

「お姉ちゃんは〜、占い師だけど〜、実はテイマーでもあるから、大丈夫〜」 

 

意外な事実に驚き、俺はリリーさんをまじまじと見た。

 

「テイマーの素質まであるとは驚きました。・・・同じ転生者なのに、俺にはこれといって冴えた能力がないから、羨ましいです」 

 

つい自虐的な言葉が漏れる。

 

するとリリーさんは、無表情ながらもどこか優しい眼差しを俺に向けた。

 

「・・・人には、必ずいいところがある。リョウは珊瑚に、素敵な名前をあげた」 

 

その短い言葉に、胸のつかえが少しだけ取れた気がした。

 

俺はリリーさんに感謝し、膝の上で喉を鳴らす珊瑚を優しく撫でた。

 

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