異世界転生 作:魔導科学
一回、千円の非常食ガチャを調子にのって、20回もやってしまった。
白い烏がユカさんの肩に止まり、冷ややかな目で俺を見ている。
反省はしているが、後悔はしていない。
そう!
決して、無駄遣いじゃ無いんだからね?
だって、非常食だもん。
だから、そんな冷たい視線で、俺を眺めないで。
ユカさんが抱いている黒い子豚は、楽しそうに俺を眺めながらピィピィ鳴いている。
因みに非常食の内訳は、ラーメンが2つ、カレーライスが1つ、スパゲティーが1つ、日本蕎麦が1つ、青椒肉絲丼が1つ、豚丼が1つ、サンドイッチが2つ、牛丼が1つ、うどんが1つ、カツ丼が1つ、鮭定食が1つ、オムライスが2つ、中華丼が1つ、チャーハンが1つ、鶏飯が2つ、ホットドッグが1つ。
大型の休憩用テーブルセットを占拠して、椰子の実型の容器を乗せる。
「ユカさん、もし宜しければ、幾つか貰って頂けませんか?」
「良いんですか?有難う御座います!」
そう言ってユカさんが選んだのは、サンドイッチ1つ。
「良かったら、もう少し取って下さい」
「じゃ、この鶏飯(とりめし)も、貰いますね?」
「はい、どうぞ。因みに、コレは鶏飯(けいはん)と言って、鹿児島の奄美で作られる郷土料理で、お茶漬けみたいな感じなんですよ」
鶏飯のラベルを見ると、お茶漬け風の写真が写っているから、鶏飯(けいはん)で良いと思う。
俺は前世で、鹿児島に行った時に食べた鶏飯を思い出し、ユカさんにそう説明した。
「詳しいですね。誰かに教わったんですか?」
「え、えぇ、まぁ、そうなんですよ」
自分が、異世界転生者である事は言わない。
ユカさんを信用していない訳じゃ無いが、知り合ったばかりだし、まだ色々と分からない事だらけだ。
だから、自分が異世界転生者である事は、話さないでおこう。
「もし、私が異世界転生者だと言ったら、リョウさんはどうします?」
「えっ!?」
まさかユカさんが、異世界転生者?
それなら、俺が異世界転生者だという事を、隠す必要は無い。
「・・・実は」と、俺が言葉を発そうとした時。
「なーんて。そんな異世界もののファンタジー小説を読んだから、そう言ってみたんです」
ユカさんは、茶目っ気たっぷりに笑いながら言った。
「な、なんだ。そうだったんですか。驚きました」
俺は引きつりそうになる顔で笑いながら答えつつ、次元収納に椰子の実を仕舞い込んだ。
「リョウさん、一緒にやって欲しいゲームがあるんですけど、良いですか?」
「はい、勿論です。どんなゲームですか?」
「アドベンチャー型の、ホラーゲームなんですけど大丈夫ですか?」
「はい、全く問題ありませんよ。楽しみですね」
「では、行きましょう!」と、ユカさんに手を引かれ、地下一階のスペースにやって来た。
「ひぃ~!」
「大丈夫ですか?リョウさん!しっかり!」
「ユカさん、俺はもう駄目です」
「一緒に生きて戻りましょうって、約束したじゃないですか」
「そ、そうですね。で、でも、ウギャー!?」
建物の曲がり角から、急にゾンビが襲って来た。
俺は叫び声を上げながら、手にした鉄パイプをゾンビの肩口に振り下ろす。
その横でユカさんが、ナイフでゾンビの頭を串刺しにしてトドメを刺す。
まさか、こんなに怖いゲームだなんて思わなかった。
前世では結構、ホラーゲームの動画を見たりプレイしたけど、この世界のゲームはテレビ画面で見てるのとは違う。
自分が、その世界に入り込んで実体験できる。
だから開始10分で、このザマである。
ゲーム開始前に、二人の関係性や参加人数を入力し、腕にリストバンドを装着して色々と説明を受けた。
ゲーム内では次元収納は使用出来ず、武器やアイテムは自分で収集するか、プレイヤーが経営する店で購入でき、ゲーム内で体力や精神状態を計測しており、体力か精神状態が危険になると、ゲームオーバーになる。
セーブポイントがあり、セーブしてあれば再開できる事、ゲームの世界で店を経営できたり、他のプレイヤーと共闘したり、裏切ったり出来る等の説明があった。
・・・そんな説明があったのを思い出しながら、俺は必死に現実に意識を戻した。
視界が暗転し、ゲームが始まった。
俺とユカさんは、結婚式場で向かい合って立っており、神父が側で結婚式の誓いの言葉を述べている。
チラッと周囲を確認すると、客席には参加者は居らず、最前列に黒い子豚と白い烏が客席に居るだけ。
「では、誓のキスを」と神父が言った所で、急に倒れた。
そして吐血しながら起き上がり、低い唸り声を上げながら両手を伸ばして、ゆっくり近づいて来る。
俺は全く状況について行けず、ポカーンとして突っ立ている。
そもそも、何で教会?
神父さん、病気なの?大丈夫なの?
そんな事を考えていたら、隣のユカさんが「リョウさん、危ない!」と言って、神父を突き飛ばす。
突き飛ばされた神父は、グチャリと嫌な音を立てて壁にぶつかりながらも、関節をあり得ない方向に曲げて、ゆっくり立ち上がり低い唸り声を上げながら、のろのろと近づいて来る。