異世界転生 作:魔導科学
「フォンファさん、これって動きを止めるだけじゃなくて、操れますよね?」
俺の言葉に、フォンファさんは少し驚いたように目を見開いた。
「リョウさん。よく知っていますね。ええ、その通り。お札は、ただの足止めじゃないんです」
フォンファさんが、黄色い紙に赤い墨で『勅令 陏身保命』と書かれたお札を一枚、指先でスッと空中に掲げた。
「この札の裏に主となる者の名を記せば、一時的にこちらの盾として動かすことも可能です。もっとも、それにはちょっとしたコツと、強い精神力が必要になりますけどね」
そう言うと、フォンファさんは屋台の奥から小さな鈴を取り出して、チリンと澄んだ音を響かせる。
「料理と武者修行も兼ねて、九龍エリアにデリバリーに行くんです。荷物持ちにキョンシーを使えば、狭い路地裏もスイスイですよ」
「キョンシーを、荷物持ちですか?」
ユカさんが絶句している。
想像するとシュールだが、九龍エリアでは、最強の運搬手段かもしれない。
いつ行く事になるか、分からん。
それなら、俺とユカさんの分を買ってしまおう。
「フォンファさん、桃木剣と銭剣、霊符のセットを、俺とユカさんの分で二つずつ貰えますか?」
「はい!有難う御座います。では、お会計は・・・」
冒険者応援価格とは言え、なかなかにいいお値段だった。
桃木剣に銭剣、それに霊符の束を眺め、これらが支払った額よりずっと価値があることを、今は祈るしかないな。
そう言えば今、何時なんだろう?腹が減ったなと考えると、目の前にディスプレイが現れ、現在時刻とプレイ時間を表示している。
丁度、昼時だな。
「ユカさん、お昼にしませんか?」
「そうですね。ずっと動いていて、お腹すきました」
「ピィ!」と、ユカさんに抱かれている黒い子豚が、お昼ゴハンと聞いて嬉しそうに鳴く。
「クァ〜!」と、白い烏も賛成だと言うように声を上げた。
「そっか、お前たちも賛成か」
俺は、肩に止まった烏を撫でながら「買い物ついでに、食事もお願いします」と、フォンファさんに注文する。
「はい!有難う御座います。では、席に掛けてお待ち下さい。メニューは
上にありますからね」
席に座り、上を見るとメニューの書かれた紙が下がっている。
本格的な中華料理だな。
中華と言ったら、やっぱりアレだよな?
「俺は、チャーハンと小籠包で。ユカさんは、決まりましたか?それと、お前たちはどうする?」
「ピィ〜!」
「クカァ〜?」と、何やら相談中。
「私は、ジャージャー麺とエビチリにします」
烏が俺の肩から飛び上がり、メニューを嘴で器用に突いて俺を見る。
「ユーリンチーに、チンジャオロース、それに点心セットか?」
俺が尋ねると、二匹は「ピィ!」「クァ〜!」と、元気に鳴く。
どうやら相当、お腹が空いているらしい。
「分かった。点心セットは、2つで良いのか?」
「クァ〜!」
「ピィ!」と、二匹は元気に返事する。
「よし。フォンファさん、注文お願いします。チャーハンと小籠包、ジャージャー麺にエビチリ。それから、この子たちにユーリンチーとチンジャオロース、点心セットを2つ」
「はい! かしこまりました!」
フォンファさんは頼もしい返事とともに、さっそく奥の厨房で中華鍋を叩き始めた。
注文して思ったが、どっちがユーリンチーで、どっちがチンジャオロースを食べるんだ?
・・・共食いか?
「そう言えば、この子たちまだ名前が無いですね。名前が無いと呼び辛いですよね」
名前が無いと呼び辛いという、ユカさんの言葉に俺も頷き、二匹をじっと眺めた。
「白い烏と言えば、瑞鳥だよな。瑞(みずき)でどうだ?」
白い烏に話し掛けると「それ、いいと思います」と、ユカさんは賛成してくれる。
「クワァー!」と白い烏は羽根を広げて盛大に返事する。
「じゃ、このコの名前はポポにします。丸くて可愛いから」と、ユカさんが子豚を抱き締めると、「ピィ!」と嬉しそうに返事する子豚。
「リョウさんって、本当に不思議な人ですよね。瑞鳥なんて言葉、よく知ってましたね」
「・・・あ、えぇ、まぁ、施設の皆さんが話してるのを聞いたんですよ。宜しくな、瑞、ポポ」
「お待たせしました〜。その子達には、丁度良いテーブルを持って来ますね」
フォンファさんが、両手に料理を乗せて運びながら、瑞とポポを眺める。
さて、注文した料理が並べられ、ポポと瑞のために俺たちの足元へ、低いテーブルが置かれた。
すると、ユーリンチーの前にポポが、チンジャオロースの前に瑞が陣取るではないか。
良かった、共食いじゃないんだな。
それぞれの料理が並び、とても美味しそうな匂いが鼻を擽る。
「いただきます」
そう言って俺は、チャーハンを口に運ぶ。
美味い。
口の中で、ホロホロに砕ける米のパラパラ感。
そして、熱々の肉汁が溢れ出す小籠包。
ユカさんも、それに瑞とポポも、とても美味しそうに食べている。
そう安堵したのも束の間。
瑞とポポはお互いの皿を突き合わせると、仲睦まじく料理をシェアし始めたではないか。
結局、共食い発生。
「美味しい?」と、ユカさんがポポと瑞に話し掛ける。
「クァ!ピピィ!」と、嬉しそうに返事する二匹。
うん、美味いなら良いか。
「ご馳走様でした。とても、美味しかったです」
「ご馳走様です」
「ピィ!クカァ!」と、それぞれ感想を述べる。
さて飯も食い終わったし、此れからどうしようか?