異世界転生 作:魔導科学
俺たちは、フォンファさんからセーブポイントの場所だけでなく、九龍エリアについても詳しく教えてもらった。
教えられた通りに進むと、少し開けた場所にセーブポイントはあった。
地面には光り輝く魔法陣が描かれ、数人のプレイヤーたちが何やら話し込んでいる。
「やぁ、はじめまして。セーブかい? それとも、一時撤退かい?」
こちらに気づいて話しかけてきたのは、腕に腕章をした女性だった。
「こんにちは。セーブと情報収集に来ました」
「情報か。どんなのが欲しい? 無限ロケットランチャーや無限マシンガンは、クリア後に手に入る貴重なアイテムで、他には無限ビームソードなんてのもあるぞ」
無限ってことは、絶対に壊れない系の武器ってことか。
それは、確かに貴重品だ。
とは言え、クリアを目指すにしても、今はまだ情報不足だ。
「ここに来る前に、エアポートの看板を見たんですが・・・」
「エアポートか。そこへ行くには、九龍エリアを縦断しないとダメだ。あそこに出る敵の情報は持っているかな?」
「大体の情報は。武器も手に入れました」
「そうか。あそこの連中は、外の奴らと違って簡単には倒せない。気を引き締めてな。初めてなら、案内役を付けた方がいい。もし居ないなら、私か他のリーダーに頼めば紹介するよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「ユカさん、とりあえず情報は手に入りましたね」
「そうですね。あとは、セーブしておきましょう」
少し歩いて魔法陣の中心まで移動した俺たちは、光り輝く魔法陣の中に入る。
目の前に光学ディスプレイが現れ『セーブ?』『一時撤退?』の選択肢が浮かび上がる。
ユカさんが『セーブ?』に指を合わせると、場にそぐわない軽快な音楽が流れ、セーブ完了の文字が表示された。
「リョウさん、ごめんなさい。リョウさんにゲームを続けるか聞かずに、セーブだけしてしまって」
「いえ、構いませんよ。俺としても、ゾンビをもっと倒して資金を稼ぎたい所ですから」
今の装備と言えるのは、確保した鉄パイプとナイフ、あとは対キョンシー用の桃木剣に銭剣、霊符のみ。
現実世界のお金も使えなくはないが、それは出来れば使いたくない。
ゾンビを倒してポイントを貯める方が、生活の負担にならないからね。
「じゃあ、また外に行きましょうか」
「はい! 頑張って、ポイントを稼ぎましょう」
「ピィ!」
「クカァ!」
みんなの士気は十分だ。
「外に行くのか? 気を付けろよ!」
門番をしているプレイヤーに、声を掛けられる。
重たい扉がゆっくりと開かれ、外からゾンビたちの不気味なうめき声が響いてきた。
俺たちの冒険はこれからだ!なんて、アニメや漫画の最終回的なことを考えながら、俺たちは一歩、外へ踏み出した。
俺は無限収納カバンから鉄パイプを取り出し、軽く一振りする。
ビュンと風を切る音が響き、気合いが入る。
ゆっくりと近付いてくるゾンビの頭へ、その鉄パイプを叩きつける。
鈍い衝撃とグシャっとした感触が鉄パイプを通して伝わり、動く死体は崩れ込んだ。
その横では、ユカさんが巧みなナイフ捌きと体術で次々とゾンビを殲滅し、ポポと瑞も「ピギィー!」「クカァー!」と声を上げながら、それぞれのやり方で奮闘していた。
付近のゾンビを一掃したものの、奴らは次から次へと湧いてくる。
さすがに体力の消耗が激しくなってきた。
「ユカさん、そろそろ休憩しますか?」
「そうですね」
息を整えながら周囲を見ると、あんなに倒したはずのゾンビの姿は、いつの間にか陽炎のように溶けて消えていた。
「クァ〜、ピィ〜」
ポポと瑞が、俺達を呼んでいる。
「どうした?」
二匹に近付くと、色々な物が集めらている。
どうやら、倒したゾンビが落としたアイテムを、集めてくれていたらしい。
戦闘しながら、有り難い事だ。
「有難う!」と、ユカさんがしゃがみ込んで二匹を撫でている。
俺も二匹の健闘を称えながら、声をかけた。
「本当に有難う。戦闘しながら、集めてくれたのか。取り敢えず、カバンに仕舞って、安全地帯に戻ろう」
門に近付くと「無事か?今、開けるぞ」と、中から門番が声を掛けてくる。
他の門番は、ボウガンや銃でゾンビを狙撃し援護してくれる。
「よし!入ってくれ!」
重たい門が少し開き、俺たちは滑り込むように安全地帯へと駆け込んだ。