常に即死レベルの攻撃が跋扈する世界で耐久戦強いられる話   作:槇緇櫓把

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なんとなく思いついた作品です

リハビリも兼ねた作品なのでエタらないよう頑張りますが、仕事もあるので更新は亀より鈍足です


任務と報酬、それと休暇

 

 人間の体は、豆腐だ。

 

 出力の高すぎる異能を行使すると身体がバラバラになるし、魔獣に軽く撫でられるだけで肉が千切れ飛ぶ。

 

 一方魔族はタフだ。

 勿論首を刎ねてやれば死ぬし、心臓も3つくらいある奴もいるが全部潰せば死ぬ。

 でも死体蹴りをするくらいの気概じゃないとあいつらは死なない。

 

 魔獣はもっとタフだ。

 皮膚や毛皮が硬すぎて、一般兵の装備じゃ中々致命傷にはならん。

 

 つまり何が言いたいかというと。

 

 「腹の中なら、攻撃は通るって事だぁぁぁぁ!!!」

 

 消化液によって俺は身体をドロドロに溶かされながら、気合いだけで支給された()()()()()を振るい内側から魔獣を両断した。

 

─────────────────────────

 

 

 その後つつがなく、()()()()が執り行われた。

 死因は戦死で、魔獣と相打ちになった英雄として手厚く弔われたそうだ。

 

 「いつも思いますけど、良くこんなストーリー捏造できますね」

 

 喪主の母親は一度も会ったことのない人物で、何故か俺について異様に詳しい。

 個人情報の保護なんてものはなかった。

 

 「無論だとも、君ほど優秀で使い捨てがしやすい兵はそうはいない」

 「目の前で使い捨てる気満々な発言は控えてくださいよ、俺だって痛いのは嫌ですよ」

 

 「ほう」

 

 意外そうな顔をする上司に、頭痛を覚えながら指折り数える。

 

 「まずノルンスト戦役」

 「君の()()()が発見された戦いだね。初めて報告を受けた時は驚いたよ」

 「生きて帰って、家族に会うんだ!ってやってた人間に対してボスのした事は?」

 「君が死に物狂いで戻るまでに情報捜査して亡き者として扱ったね」

 

 信じられるか?

 どう考えても捨て駒みたいな任務で死ぬ気で生き延びたら、故郷の人間から「◾️◾️はもう死んだんだよ!あいつを冒涜する気か!?」ってキレられたんだぜ。

 

 「中隊規模で魔獣18体を退けたのは不味かったね。特記戦力としてカウントされるのは仕方がない」

 「それで全てを奪われた者の気持ちを述べよ」

 「口座は無事でよかった」

 「このクソ上司が……」

 

 全く……殺してやりたいリストがあれば、上位に入賞してるぜ。

 こっちはノルンストの件で上官同僚部下全部失ってるんだよ。

 

 それを「後腐れがなくていいじゃないか」の一言で済ませて人体実験すら始める始末だ。

 

 俺の認識ではこの女は同志というより、ギリギリ味方寄りの敵に近しい。

 

 「2件目、ガラムベルク奪還作戦」

 「いやー凄かったね。知ってるかい?ガラムベルクの件は最早伝説だよ。この戦いが終わったら映画化されるんじゃないかな」

 「黙れ、この件はマジで許さん」

 

 「おぉ怖い怖い」

 

 おどけるようにそう言った上司を睨みつながら、次の一句を紡ぐ。

 

 「……何故あんな指示をしたのか聞いても?」

 「今回の作戦の報酬だね。彼女にはこう言っただけださ」

 

 「人類の希望たる彼を失う事は許さない」

 「()()()()()()()()()()()()とね」

 

 「は?」

 

 それだけ?それだけであいつは……

 

 「おや、心外だね。我ながら寛大な処置だったとは思うのだがね」

 「どいうことでしょうか」

 

 読めない。

 人類最後の文明圏、ジルウィンド。

 その国家における特殊部隊の最高指揮官、アルフィリア。

 俺の上司たる彼女の虫を想起させる無機質な瞳は、決して色を変えない。

 

 「研究所から脱走した君の戸籍を用意し、改めて従軍できるようにしてあげたのにさ」

 「………」

 

 あの時の俺の名前はカナタ。

 便宜上、特殊部隊の中でもそう呼称されている。

 

 本名を名乗る事は禁じられている。

 

 クソ上司、アルフィリアがジルウィンド全域に施した洗脳の様な異能が綻ぶ可能性があるかららしい。

 どうにも効果が広範囲に及ぶと及ぶほど、綻びやすくなるらしい。

 

 俺が重用されているのは圧倒的な不死生による、()()()()

 それが魔族に認識されると危うい為、俺が死亡するたびに関係する人物の記憶の抹消。

 あるいは関係者の粛清が行われる。

 

 それがどんな形式であれ、どんな関係性であれ……だ。

 

 「だと言うのに、本名を名乗っちゃうのは迂闊だったね」

 「ぐっ……」

 

 そうだ。

 あの戦いの前日、俺は彼女に本名を名乗った。

 

 あれ以来俺は、自らの本名を名乗る事を()()の様に感じていた。

 

 「あんたの仕業だったのか」

 「ああ、確かに君が逃げる前までにこの内容は伝えるべきだったね。力不足を感じるよ」

 

 違ぇよ……

 この女はとにかくズレている。

 

 何もかも、()()()()()そうした。そうしか考えない破綻者。

 だが同時にこの国を救える唯一の希望でもある。

 

 特殊部隊、アインクエストの長官。

 一癖も二癖もある異能者達、通常勇者を取りまとめられるのは、彼女しかいない。

 

 「ああクソ、最悪だ」

 「さておしゃべりはこの辺りにしよう。損な役回りだとは思うが、これも君のためだ。今後も精進したまえよ」

 

 報酬(おしゃべり)はここまで。

 

 「では次の指令だが、君の装備の破損が酷くてね。毎度修復するのも手間だし、いっそ新調するといい。よって5年ぶりの休暇だ。存分に英気を養いたまえ」

 

 「休……暇?」

 

 任務の親戚みたいな響きだが、果てしない虚無を感じる。

 

 言われるがまま執務室を後にし、帰宅しようとしたが……そもそも家がない。

 戸籍も死ぬたびリセットされるし、住居もなくなる。

 今の俺は戸籍上名無しで、住所不定無職のおっさんだ。

 

 「休暇?」

 

 どうやらジルウィンド公国の特殊部隊員の休暇は野宿の必要があるらしい

 元自宅から遺品として色々運び出されているのを見つめながら、ため息を吐く。

 

 「休暇って何するんだっけ」

 

 

 

 

 休みはいらないから、いっそ暇を出された方が良かった。

 

 

 

 

 





ジルウィンド公国:人類最後の文化圏。中心区ではそこそこ栄えているらしいが、外壁街は悲惨な状況。絶賛領土拡大中。

アインクエスト:主人公達が所属する部隊。異能者だけで固められた超特記戦力であり、人類最後の希望。万が一長官のアルフィリアが殉職した場合、人間関係が終わっているため離散する可能性がある。

ノルンスト戦役:まだ己の不死性を認識していない◾️◾️が死にながら魔獣を殺して回り、伝説となった話。この戦いで口座以外全てを失っている。

ガルムベルク奪還作戦:魔人アーディハルトに占拠されたガラムベルク地区を偵察の名目で派遣された◾️◾️の部隊が壊滅した時の話。
この戦いで初めてできた恋人を失ったらしい。社内恋愛には厳しい職場。

聖剣:全生命力を前借りして発動できる超高出力のレーザーブレード。一般兵がこれを使うと大体死亡するが、魔獣にダメージを与えられる。コスパの良い武器。

アルフィリア:クソ上司。申し訳ないけど必要性があればなんでも許されると思っている系女子。洗脳系の能力を持っているらしいが、とにかく皆従っている。本当に申し訳なく思ってるよ。

カナタ:本作の主人公。現在無職。おそらく口座以外の全てをアルフィリアに奪われている。本名は不明。戸籍上死亡する度に全てを失う。
戸籍を改竄されて表の部隊に配属され、その部隊を壊滅させることから都市伝説的に死神(ジョーカー)と呼ばれている。そんな異名が罷りとってしまうから、ババ抜き感覚で壊滅させられるのである。
 ・異能:不死性……異常な再生能力を誇り、物理精神問わず常にフルスペックで稼働が可能。具体的には溶鉱炉に()()()()()()中指を立てて蒸発しながら泳いで殴りかかってくる。あの時は驚いたね。

魔族:全員が異能者の国家。

魔王:魔獣なる化生を召喚できる怪物らしい。

魔獣:魔王の眷属。矢鱈と硬く、通常兵装では傷がつかないため【聖剣】の使用がほぼ必須となる。
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