コンコン、とノックが鳴り響く。
入れ、と一言。そこに入ってきたのは薄紅色の和服に紺色の袴の女性だった。
鳳翔、俺が提督を初めて以来ずっと一緒にいた相棒だった。
「お茶をお持ちしました、提督。」
「あぁ、すまないな。」
そう応え、扉を少しでか見てから水と錠剤を受け取った。
「あいつら.....」
「そう目くじらをたてないであげて下さい。
あの子達も提督が気になるんですよ。」
「そうか.....んぐ、何時もすまないな。」
錠剤を飲み込み、鳳翔を見る。
鳳翔は笑って此方を見た。
そういえば、と顔を上げてカレンダーを見る。
「今日が着任した日だったな。」
「えぇ、あの時は驚きましたわ。」
車の振動に揺られながら目を閉じる。
独立式永久エネルギー製造供給機関「イデア」。
艦娘のエネルギーと同等以上のエネルギーを作りだし、
供給する機関。それが俺の心臓に埋め込まれている。
どんなものでも形成できる粒子、そんな莫大な力が宿る器など、
あるわけがない。最終的に成功したのは十万人の中で俺を含めて二十四人のみだった。
全員、もとの人間のように生活などできはしない。
俺は無限に創られるエネルギーに体を対応させる薬を飲まなければ
数時間で体が動かなくなる欠点があった。残りの奴らも何らかの欠点があるのだろう。
イデア機関搭載完成体α-01-、それが俺を表す唯一の名前だった。
「ついたぞ。」
「そうかい。」
言葉を交わして、荷物を持って降りる。
といっても着替えぐらいしか無いのだが。
右目を使ってこの建物の内部をスキャンし、目的地にマーカーをおく。
すると脳内にそこまでの道のりが表示された。
そのとおりに道を通る。
そうして、執務室についた。
ドアノブに手をかけ、中に入る。
大きめのデスク以外と本棚くらいしか置いていない部屋。
そのデスクに寄りかかるように女性が寝ていた。
薄紅色の和服の女性。
毛布もかけずに寝ているせいか、たまに表情が崩れる。
ベッドと毛布を錬成し、そこに寝かせる。
ベッドといってもかなり簡単な作りのものだ。
複雑なもの程形成と維持が難しい、銃や剣は幼い頃から触れていたので
無意識に創れる程だが、ベッドや毛布に品質を求めようにもんなものは知らない。
さて、そんなこんなで寝かせてから、デスクの上の書類に目を通す。
着任宣言....とやらが必要らしい。
どうすればいいのやら....書類には秘書艦がやってくれると書いてある為わからない。
「起こす...いや、睡眠妨害だけは嫌だ面倒くさい。」
βだってぐっすり寝てるのを起こされた時怒ったし。
01である俺を始めに完成体は対応した数字とギリシャ文字の名前になる。
簡単にいうと弟妹みたいなものだ。俺が長男。βが長女みたいな。
っていかんいかん話が逸れた。
とりあえず本棚の本でも読むか、と本棚を覗く。
ふむ、エロ本しかねぇ.....
てなわけで携帯を取り出して、アドレスを選択。
出た相手は.....
「よう、δ。」
《今の私は四花よ、で、何かしら。》
「話し相手が欲しい、暇だ。」
《.....それσじゃ駄目っぽい?》
「ぽい?」
《いえ、何でもないわ、忘れて。》
少し気になったがまぁいいや。と考えを放棄してから
お互いの近況を話しあった。
お互い軍事関係らしく、いつか会えるんじゃないか、と話しながら。
少しだけこの先が楽しみになった。
「うぅ....ん、あれ?」
「ん?起きたか。」
「う......う?あ、あぁあ!」
一瞬で青ざめる和服の女性。
そうしてあわあわとし始めた。
「どどどどうしましょう殿方の前でこのような失態ををををを」
「とりあえず着任宣言したいんだけど....落ち着けって。」
「でも.....あぅぁぅ.....」
「ほら、深呼吸、吸って、吐いて。」
深呼吸をして、やっと落ち着いたのだろう。
頭を下げてきた。
「取り乱してしまい申し訳御座いません。」
「いや、いい。それよりも着任宣言を頼みたいんだけど。」
「あぁ、はい、わかりました。」
そういいどこから取り出したのかマイクを持った。
そして、スピーカーから声が流れる。
《提督が鎮守府に着任しました、これより艦隊の指揮に入ります》