俺はNPCらしい   作:陸神

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俺はNPCらしい①

 突然だが、大世界──―この世というのは20の小世界に分けられて存在している。例外は…………ちょっとしかない。

 

 イメージするならば、砂時計。

 あるいは、葉が繁茂し、幾重にも根を張った木を想像してみればいい。

 その図を上下に半分に分けて、10個ずつ世界を配置。

 

 そうすれば、この世界すべて。

 

 小世界間は、転移門(ワープゲート)で移動する。

 なにせ、小世界と小世界の間には、宇宙(ウチュー)もないし、銀河(ギンガ)もない。有るのは、ただの『無』だからだ。

 

 

 さて、先ほども言ったが、小世界は20個もある。

 その上で「世界を上下に分けて」と説明したが、これにはもちろん理由がある。

 大世界を上下のちょうど半分で切った時、上半分を《肯定世界群(セフィロト)》、下半分を《否定世界群(クリフォト)》と言うのだ。

 

 

 二者の違いをあえて言うならば、《肯定世界群》は自意識過剰なインテリ集団で、《否定世界群》は根暗陰キャかアホの多い暴力集団だ。

 

 

 言い方は何だが…………まあ、大体あってるから、気にする必要もないだろ。

 

 

 で、それぞれの世界にはそれぞれの種族が住み、それぞれの環境・文明が繁栄している。

 ここで例を挙げるとするならば…………そうだな―――有名どころをいくつか。

 

 

 だが、《肯定世界群》の中央位置頂天部に存在する《天輪浮遊世界・聖域メタトロン》。

 この世界には、()()()()()()()()。存在しているのは、どこまでも続く紺碧の大空とそこに点在するように浮かぶ島々だ。

 そして《聖域メタトロン》には、頭頂部にて浮遊する輪と肩甲骨辺りから生える対の白翼が特徴の種族《天使族(エンジェルス)》が生活している。

 

 次に紹介するのは……あそこだな。

《肯定世界群》の右方最上段、《精霊樹海世界・ラ・ツィエル》。あそこは、切り開かれた街や村々以外のほとんんどを樹海が覆い尽くした世界。

 住んでいるのは、長く尖った耳と美しい美貌、そんでもって魔法が大得意なのが特徴の《精霊人(エルフ)》だ。性格が悪いのが7割を占めてる。正直、行くことはお勧めしない。

 

 長ったらしいのもメンドイ。《肯定世界群》の紹介は次でラスト。

 右方最下段に位置する、切り立った崖と砂漠が特徴の世界。その名も《王獣統一世界・ハニエル》。

 ここに居るのは、獣の一部を身体的特徴に持った、決闘が大好きで大好きでしょうがない戦闘民族《獣人族(ワーアニマル)》が日々、しのぎを削って生きている。

 

 

 こっからはてんで変わって、《否定世界群》の紹介。

 説明も面倒になってきたサクサクいこう。

 

 

 強靭な肉体に焼けた肌、額から生える角は真っ直ぐ天を差し、闘争に明け暮れる種族《鬼人族(オーガ)》が住まう雨林と高原の世界《永劫紛争世界・アスモデウス》。

 

 陽光など消えて久しく、蝋燭・松明以外の光源を灯すことを重罪とする小世界。そこに住まうは、極端に光を嫌い、生気を吸う美男美女ばかりの種族《吸血鬼(ヴァンプ)》。そして、彼らの住まう暗黒の世界こと《永年晦冥世界・バール》。

 

 ほんでもってこいつが本命。

《否定世界群》においてもトップの地位で、とんでも生物ばっかが生息する魔境に住まう、鱗のない竜翼と捻じれた角が特徴の種族《悪魔族(デヴィル)》が住まう世界、《臨界魔境世界・サタン》。

 

 

 

 そんなわけで、世界はこんな感じで20の世界といくつもの種族によって存在している。

 

 だが、ここで問題が一つ。

《肯定世界群》と《否定世界群》は異常とも言えるほどに仲が悪い。

 

 うちの爺が言うには……

 

 むかしむかしも大昔! 

 世界が2つしか存在しなかった時代。《メタトロン》と《サタン》しか存在しなかった時代のことだ。

《聖なる神》と《邪なる神》を崇める両者は対立を極めていた。

 あ? どっちがどっちを信仰していたかって? 

 んなもん、字面と世界名と種族名で察せ。

 

《天使族》は高い耐久力と《悪魔族》特攻の武器や魔法の突破力で追い詰め、《悪魔族》は《悪魔族》で鬱陶しいほどの再生力と高火力の殲滅力で《天使族》を追い詰めた。

 

 いかんせん。どうにもこうにも、力量自体は互角。

 なまじ決着が付かなかっただけに、互いへの憎悪と執着と暴力性は天井知らずのストップダカ状態へと移行。

 

 で、両者は殺し殺されの泥沼戦争へと突入。

 戦争が1001年目に突入しようかというその時、《聖なる神》と《邪なる神》を生み出した創造神《G・M・ウンエイ》様がダイナミックエントリー。両者の世界を遠い遠い次元へと引き離し、戦争は終結した。

 

 しかし、ここで問題が発生。

 互いの信者が殺された2柱がこれで満足するはずもなく、両者は共に従属神を9つずつ生み出し、それらは共に眷属たる種族を生み出した。それが《精霊人》だの《吸血鬼》だのだ。

 

 よって、ここに《第二次正邪戦争》のはじまりはじまり。

 

 ほんでさらに時は流れて500年。呆れた創造神様は、中立を期すために何にも染まらず、何者にもなれる種族《汎人族(ヒューム)》を生み出し、戦争の終結を命じた。

 

 でも、これが悪手。

 正にも悪にもなれる《汎人族》はあらゆる文化を取り込み、あらゆる技術を生み出し、急速な発展を遂げた後に──―大分裂! 

 

《汎人族》同士での国家分裂、民族分裂。内輪揉めを繰り返した結果、4つの国家と1つの民族集団に分裂し、各小世界へと散っていった。

 

 ここまで愚かな種族を見た両陣営は、かくに戦争を止めるかと思われた……

 

 

 

 が! しかし! 

 

 これでも戦いをやめない両陣営! 

 

 

 

 痺れを切らした創造神様は、戦いを終わらせるために、ある人物らを呼ぶことにした。

 

 彼らは、かつて創造神様が生み出した《汎人族》と酷似した種族だったらしく、遠い遠い次元の果てから創造神様から招かれたやってきた存在。

 

 創造神様は、彼らにあらゆる種族になれる権限と、それに伴う各小世界での誕生権、元の世界への帰還権。それらに加えて、魂の形を武装とする特別な(すべ)を。

 

 そして、──―条件付きとはいえ──―無限の命をお与えになった。

 

 彼らだと分かる証は、頭上に光る《名札(ネームタグ)》と腰に吊り下げられた《魂魄書(ソウルブック)》。

 

肯定世界群(セフィロト)》と《否定世界群(クリフォト)》に住まう、各種族・各住民らは彼らのことをこう呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人呼んで────────《祈りに応えし者共(プレイヤー)》、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「ああん?」

「だから俺は無実なんだって!」

「ああ、了解了解。ソウダナー、オマエハムジツダー」

「バカにしてんのかっ!?」

「そうだけど?」

「そうなのかよ!」

 

 

 

 ここは、《虚構墜落世界・ダアト》。通称《楽園のダアト》、あるいは《失楽園ダアト》。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 たとえ、《転移門》を用いたとしても来ることはできない。

 

 訪れる方法は、大まかに3つ。

 

 ・《ダアト》へと続く次元に穴を空けられるほど強くなる

 ・次元に穴を空けられる《道具(アイテム)》を使う

 ・創造神様から許可を得て訪れる

 

 以上の3つの方法でしか来ることはできない。

 

 ああ、目の前で吠えてるアホンダラのことは気にしなくてもいい。

 

 

「だーかーら! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「あのアホ……んんっ! 創造神様が許したのは、《ダアト》への渡航であって、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「うぐ……そこはさァ! なんか、ほら! 死んでないじゃん? だから、セーフってことで?」

「ならん」

「ならんかぁ!」

 

 

 ここで更に面白くなるチップスを1つ。

 

 俺は、どうにも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 これは、《ダアト》にも《プレイヤー》が来るようになってから判明したのだが、《プレイヤー》は皆俺のことを殺しに来る。

 

 生け捕りにした《プレイヤー》の内の何匹……何人かに話を聞いたところ、創造神様は俺の討伐に対し、賞金1億エン……1億オルの懸賞金を懸けたそうな。

 理由はよくわからんが、あのアホのことだし、「(コイツ)を倒せる存在っているのかなー?」ぐらいの感覚だろうと予測している。

 

 

「なーんで、勝てないって分かってんのに挑んでくるかね?」

「やっぱ……目がくらんで?」

「そっかー、じゃ仕方ないね。お金は大事だし」

「お兄さん、話がわかるね」

 

 

 毎度毎度、返り討ちにしてたが、どうにも数が多く──―今でこそ減ったが──―収容所の空きがなくなってきた。なので、陛下……もとい、成金爺に相談しタ所、王族の名のもとに殺処分することが決定したのだ。

 

 そう。目の前のこの、

 

 

「はぁ」

 

 

()()()()()()()

 

 

 一応、脅されたり、操られたりとかの不可抗力の事情がないか、事情聴取を行っているのだが。

 

 

「そういう感じでもないよなぁ」

「ん? 何? 男色趣味? さすがにノーセンキューなんだけど? あ! これが『くっころ系』ってやつ!?」

「…………うぜぇ」

 

 

《プレイヤー》の特徴、その1・大体ノリがうざい。

 ちなみにその2は「正論を言うと逆ギレする」、だ。

 

 

「くッ殺せ────あぴょ?」

「じゃ、遠慮無くってことで」

 

 

 という訳で、懐から取り出したナイフで喉をひと突き。

 

 喉仏の上から刺しこんだナイフを抉りあげるように、カギ状に奥へ奥へと突き刺す。

 焦点の眼孔の裏側へと消え、後ろ手で付けられていた手錠がガシャンガシャンとけたたましく音を立てた。

 

 やがて暴れていた四肢は弛緩。だらりと垂れ下がる。

 

 口の細いワイン壺を洗った時のように、口からこぽこぽと赤い気泡が口端から漏れていた。その光景を見て、俺はなんとなしに、

 

 

「腹減ったなぁ」

 

 

 って思うワケよ。

 

 

「不謹慎ですよ」

 

 

 で、部屋────―取調室の隅っこで調書を取っていた少女がそう言う。

 

 

「でもメリィちゃんさぁ~、これで今月に入って何人目よ? 俺、100を超えてから数えてないぜ?」

「ウリル=ベルとお呼びください」

 

 

 メリィ。

 フルネームを、メリル・ウリル=ベル。親しみを込めてメリィと呼んでいる。

 

 彼女の頭部には一対の捻れて渦を巻く、羊の角がある。そして、ふっわふわの羊毛のようなモコモコで真白なカールした長髪が特徴の《獣人族(ワーアニマル)》の羊人種(ワーシープ)である。

 

 役職としては俺の補佐もとい秘書官みたいな役割をしている。

 

 

「嘘おっしゃいな。今月はまだ83人目…………今回の()()で84人目です」

「うっそだぁ。なんかいつもより多い気がするんだけど?」

「確か今の時期は…………フユヤスミというやつだからでは? 《プレイヤー》は、年末に未成年・成人問わず大型休暇が与えられるそうですよ?」

「なにそれ、羨ま~。俺なんか年柄年中仕事漬けだよ?」

「それは貴方が書類事務をサボるからでしょうが」

 

 

 眼鏡の位置を押し込んで戻したメリィちゃんがそう言う。

 

 

「いいじゃん。俺なんて一年中命狙われてるんだよ? もうちょい労ってくれてもいいでしょうに」

「狙われているのは貴方だけです」

「でも、迷惑行為をやってるのも処理してるでしょ」

「当たり前です。貴方は王国の()()()()()なのですから」

「はあ~…………荷が重いよね」

 

 

 俺の右腕には、王族の証が記された金縁の黒い腕章が取り付けられていた。

 

 そうなのだ。どういうわけか俺は、我らが王国にて警備部隊長の任を任せられている。

 これは王国直轄組織でありながら、《近衛騎士団(ロイヤルガード)》や《騎士団》とはまた別に独立した組織なのだ。

 組織の方針としては、俺を含む精鋭でのみ構成されており、《プレイヤー》が起こす問題への対処・解決及び、俺へと差し向けられる《プレイヤー》の殺害を目的としている。

 ここ1、2年で結成された新設部隊だ。

 

 

「あ、もうか」

 

 

 さっきサクッと()った《プレイヤー》を見ると、滴った血液の端々から赤い燐光が漂っていた。

 

《プレイヤー》は胴体から離れた部位や体液、死体は一定時間の経過と共に消滅していくのだ。特に《ダアト》における《プレイヤー》の死は大きな意味を有している。

《プレイヤー》が有する特権の内の一つ、《復活(リスポーン)》が発生しないのだ。

 

 身体の先端…………指先から徐々に赤色の粒子へと変換されていき、ついには──―消滅。完全な死が訪れた。

《プレイヤー》は《ダアト》以外であれば、一ヶ月…………《プレイヤー》のいる元の世界ので十日ほどで復活が可能となる。だが、この《ダアト》で《プレイヤー》が死亡すると、《プレイヤー》の魂の源…………()()()()()()()()()()のだ。

 

 故に《ダアト》において《プレイヤー》は死を何よりも忌避する。

 

 俺は消滅を見届けた後に、席を立つ。

 

 

「さ、終わったし、遊びにでも────―」

 

 

 俺がそこまで言ったところで、

 

 

『伝令──―! 中隊規模の《プレイヤー》の襲撃です! 繰り返します! 《プレイヤー》の襲撃です! 《プレイヤー》は──────』

 

 

 遠くから聞こえてきて爆発音に口を封じられた。

 

 とても嫌な気持ちだ。

 ひどい話じゃないか。やっと今日の分の仕事(《プレイヤー》が問題を起こさなければ基本ない)が終わったのに。

 

 

「残業ですね。元より定時など存在しませんが」

「手当ねぇじゃん」

「サビ残です」

「マジかよ…………公務員ツラ」

 

 

 あちゃー。

 

 行かなきゃ、ダメ? ダメか? …………ダメかぁ~。

 ああそうですか。分かりました。行きます、行けば良いんでしょ? 

 

 

「終わったら飲みに行こうか」

「隊長の奢りでいいのなら行きます」

「…………前も俺が奢らなかった? 一応、立場は俺の方が上だけどさぁ」

「長幼の序ってご存じですか?」

「奢られる側が一番言っちゃいけない奴じゃない?」

「尊敬してますよ? …………実力は」

「あのさぁ、それ本人の前で言っちゃう? ま、いいけどネ」

 

 

 メリィちゃんの良いところは変に誤魔化しや、お為ごかしが無いところ。悪い所は、上司を立てられない所と上司に奢られる時に一番高いお酒を注文するところ。

 

 軽く伸びをして、屈伸を数回。

 

 取調室を出ると、伝令兵の彼がいたので、

 

 

「目的は?」

「隊長殿です」

「やっぱりかよ!」

 

 

 望み薄な賭けに負けたので、諦めて職務に就く。

 

 部屋を出て突き当たりを右に真っ直ぐ。

 

 出入り口に向かっていくにつれて、ドタバタと慌ただしく走り回る兵士の姿が多くなっていく。中には正規の騎士もチラホラ。

 

 外に出る。

 

 

「ちょっと借りてくね」

「何を──―どうぞ! ご武運を!」

「ん、あんがと」

 

 

 手持ち無沙汰にしていた門兵の長槍を借りる。

 無論、その彼のポケットに金貨を捻じ込むことも忘れない。アフターケアをしっかり出来る上司ってのは慕われるかららしいし。

 

 鉄鋼を削り出したかのようなダイヤ型の穂先に、なめした皮を巻いた合金の柄。石突きについた鉄のリング。強度だけを重視した量産型のそれだったが、俺にとってはそれだけでも十分だった。

 

 

「隊長」

 

 

 伝令兵と話しあっていたメリィちゃんが追いつく。

 

 

「どこだって?」

「西門です。現在は先制攻撃を受け、砲弾と弓矢・攻撃魔法での飽和攻撃による遅滞作戦を実施中とのことです」

「どれくらい時間稼げそ?」

「多く見積もっ10分程度かと」

 

 

 ん~。10分か。

 そんじゃ、あんまりノンビリしてる暇もないか。

 

 軽く装備のチェック。

 

 鎖帷子…………破損なし。よーし。

 ハーネス…………もつれ、フック強度問題なし。よーし。

 ウエストポーチ…………薬類の切れ、破損なし。よーし

 武器…………刃こぼれなし。よーし。

 

 最後に──―ビジュよーし。

 

 

 

「じゃ、行ってくるね」

「はい。行ってらっしゃいませ」

 

 

 ハーネスのフックを槍の石突き、輪状のそこへと取り付ける。

 

 周りを確認すれば、俺に気付いた平兵士ら諸兄が道を滑走路のように空けて敬礼していた。それらに軽くハンドサインを送り、槍の中ほどを逆手に握り、

 

 

「よー」

 

 

 助走をつけて、

 

 

 

「イ──────―ヨッ!」

 

 

 

 思い切りぶん投げた。

 

 

 

 

 ────────────ッッッ!!!! 

 

 

 

 

 上半身を寝かせた残心も束の間。

 

 槍からフック。

 フックからハーネス。

 ハーネスから俺の身体へ。

 

 順繰りに伝わる張力によって、俺の身体は遠い遠い青空へと引っ張られていく。

 

 

「よっと」

 

 

 身をよじり、飛翔する槍にぶら下がる形で捕まる。裂くような冷たい風圧が頬を撫で付けて後ろへと流れていった。

 

 レンガ造りの街並み、くゆる煙突、不規則に続く石畳。

 見慣れた光景を高速で通り抜けていく。

 

 そうして飛ぶ(?)こと十と数秒。

 

 

「お? あれかな」

 

 

 薄ぼけた直線みたいだった地平線。それが近づいてきた。

 

 

 

 ──────ッ! ~~ッ! …………!! 

 

 

 

 地鳴りのように響く鉄火場の音。

 金属同士のぶつかる音と、水っぽい衝突音。時折悲鳴と怒号が響く。

 

 

「やってんねぇ」

 

 空を覆い尽くす線の集合体こと矢の雨が降り注いでいる。

 時折上がる火柱と雷鳴は一定間隔で繰り返されている。西口の門が破られるのも時間の問題だな。

 

 

「ほんじゃ」

 

 

 ポケットから懐中時計を取り出す。

 時刻を確認して、

 

 

 

一五五三(ヒトゴー、ゴーサン)、西口正面門にて襲撃。王国警備部隊長(たいちょー)現着、対プレイヤーへの特別対応につき出動しまーす」

 

 

 

 淡い光を放つ懐中時計。

 これをしないと、特別任務中による特別手当が支給されないのだ。

 

 目を凝らせば、門に正対してうじゃうじゃと湧いている人の波…………中隊規模だから、200人弱。それが群れをなして襲いかかってきていた。

 

 俺はちょうど攻撃を受けている門と集団との中間地点へと身を翻して着地する。

 

 

 

「業務開始ー」

 

 

 




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