終末世界のスパダリ異形、愛憎入り交じるヤンデレを量産中 〜死闘の末に人類敵を取り込んだ。曇った仲間が怒りを向けるそのバケモノ、俺です〜   作:ゲンコツダイナソー!

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第1話

 

 じりじりと照り付ける太陽。

 

 遠くでバケモノどもが吠える声が聞える。

 

 ――ごつごつとした岩に覆われたこの渓谷の崖上。俺は部下ひとりを連れて駆ける。

 

「レイミヤ、もう少し頑張れ! ……どこか、隠れられる場所を見つけるまではよ!」

 

「わたくし、腐ってもキャンベル家の娘ですの。この程度、持久走のようなものですわ」

 

「そりゃ頼もしいな。その調子で、俺を置いて拠点まで走って行ってくれてもいいんだが!」

 

「なりません。わたくしはカナタ様の部下。上司を置いて敵前逃亡など、軍法会議ものですもの――」

 

 いつも通りクールなことだな。

 

 ちらりと斜め後ろに視線を向けると、確かに涼し気な様子だ。ずいぶんと走ってるし、レイミヤは巨大な剣を背負っているっていうのに。

 

 ……にしても、改めて考えると申し訳ないな。お貴族様をこんな戦場に連れてきて危険にさらしてるなんて。

 

 おさげにした金髪に、薄い赤の瞳。気品のある美しい、ちょっと幼さの残る顔立ちは、俺みたいなスラム育ちには縁がないと思ってたそれだ。

 

 俺の小隊に配属されてもう一年以上。……こんなとこまで付いてきてくれると思っちゃいなかったが、来てくれたからには――――こいつだけは、絶対無事に帰さなきゃな。

 

「……カナタ様、いまなにか。妙なことを考えておりませんか?」

 

「んあ? なんも! ただ、この状況を無事切り抜けられたら……ってな」

 

「無事に…………そうですわね」

 

 神妙な声だ。

 

 気づいてるよな、レイミヤも。後ろから迫る強大な気配……魔力が、俺たちを正確に追って、徐々に距離を詰めて来てることくらい。

 

 突き出す岩々の隙間を縫って姿を見せないよう逃げてるはずなんだが、いつまでも振り切れん。【無形】のやつにここまで正確な感知能力はないはずなんだが。

 

「ったく、せっかく任務目標の上位個体は倒したってのに。こんなのが後出しで出てくるとかついてないよな」

 

 これでも俺、けっこう名が知れてきた強者なんだが。いま追われてる虎みたいな【無形】には敵う気がしないな。

 

 独立特務旅団に属するエース小隊として、四人で上位個体の【無形】を討伐したまでは良かったんだが。こんなのが出てきたからひと当てして、それで無理と悟った瞬間、全員で散り散りに逃走だ。

 

 すぐそばにいたレイミヤだけは俺についてきたが…………どうもこの【無形】、さっきの様子だと……。

 

「なあ、レイミヤ。ほんとにお前、俺と別れて逃げてみないか? ……追跡対象が二手に分かれたほうが、この【無形】も混乱して――」

 

 やつに抱いた違和感は伏せて、再三の提案を試みるが。

 

「――何度も言わせないでくださいまし。わたくしを……王国方面軍の重鎮を幾人も輩出する家の娘を、不名誉の泥にまみれさせるおつもりで?」

 

 きっぱり、だな……。こりゃテコでも折れそうにないわ。

 

 口では貴族の誉れだの軍人の義務だの言うが――――表情のない顔で、俺のこと心配そうに見つめやがって。何かしら、俺の意図を察してるってか?

 

 まったく、俺より弱いくせに生意気なやつめ。…………情が深い女ってのは、厄介なもんだ。

 

 だが。俺だって、部下のことは可愛いんだ。天涯孤独の俺にとって、小隊のみんなは家族より大事な――

 

「――! カナタ様、あちらを」

 

「ん、あれは…………岩肌にできた亀裂が洞窟みたいに……」

 

 なるほど、あそこに隠れようってか。

 

 ……そうだな。崖に沿って地面に刻まれた溝、これなら相当深くまで潜り込めそうだ。ここに入って見つかっちまったらもう逃げようがないが、どうせこのままじゃ追いつかれて二人ともお陀仏。だったら――

 

「――行くか」

 

「はい。……お供いたしますの」

 

 まさに、地獄の果てまでって? 涼しい顔で言いやがって。

 

「……心配すんな。俺がお前を――」

 

 絶対に死なせやしないから。

 

 

 

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