スキル屋のバイトになりまして   作:何処にでもある

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信念が芽吹く(悪華を咲かす)

 

 

 ° ・元シェフ

 

 

 命の価値を問われたら、私はきっと永遠に答えられない。

 

 食べる為に育て、殺す為に産まれ、殺す為に殺し、死ぬ必要もないのに死ぬ。

 生きる為に生きていいのに、生かす為に生きていいのに、産む為に生きていいのに、育てる為に食べさせてもいいのに。

 

 何故か、みんなして死んじゃう方に進んでいく。

 

「……もう、やだ」

 

 1週間にも満たない経験は、私に当たり前のようであまり真剣に考えられない疑問を頭いっぱいに湧き立たせました。

 悪夢みたいな世界で死んで、戻って来れたのに殺し合って、それを前にして、私は訳もわからずに逃げ出す事しか出来なくて。

 

 酷く惨めで、自分がちっぽけで流されるだけの存在なんだって、全ての結果が私に指差して嘲笑ってるみたいだった。

 それはポタポタと水滴が滴る、じめっとした影の濃い日陰に覆われた裏路地でも変わらなかった。

 沢山の毛皮を乱暴に裂いて(ゆわ)いで造られたコートを、布団みたいにぶかぶかと被さって、世界に顔を隠して……もっと惨めになって、もうこのまま消えてしまおうかと考えちゃって…。

 

「ご機嫌よう、痣涙…元シェフ」

「      !!!!?!!?っ!!?」

「驚いて口をパクパクとさせてる所に悪いけど、はい。渡し損ねた分を持って来たよ。確認して」

 

 突然だった。本当に脈略も影も形もなく、コマを飛ばしたマンガみたいに唐突に出て来た。

 コウモリみたいな羽、赤く怪しげに光る眼、何を考えているかわからない動かない顔、イギリス仕立てみたいで、よく見れば変な織り方で造られた紳士服。

 

「なっななななななななになによよよ」

「何用か。給料のお渡し。当店は出来高性なので、その分の精算に参りました」

「たったたたったた!!」

「退職金は退職金だから。給料は別。換金に時間を貰ったけど、ちゃんと用意したよ」

「アジャパー パー  バー  」

「解読不可。怖がってる事しかわからないな。家に居なかったから探したよ。学校から辿って来たんだから」

 

 小さな、悪魔。

 

 私を陥れ……何故か助けてくれた化け物…!

 

「‭─‬‭─‭─‬‭─なんで態々追ってまで

「契約だから」

ひぃ…

「…最初に名乗り出た時は結構ハッキリ喋ってたけど、どうしてそうなったの?」

 

 尋ねられて、思わず今までのことを振り返った。

 北のブロックの世界から逃げて、空腹に耐えかねてシェフに名乗り出て、何とか使い物にして……悪魔は私にだけ敬語を使わなかったから、何だか特別な人になれたような気がして、私なりに働いて……。

 

……獣人さんが決闘で死んだ時、怖くなったから

 

「別の言語の会話を聴いて親近感が消え、人として振る舞う獣の死を間近にして非日常の興奮が消えて、全部が怖くなったと」

「身も蓋もない!?」

 

 余りにも容赦のない赤裸々な言葉だったから、私は思わず腰を浮かして大きな声で反論しちゃいました。

 ハッとなって口を塞いでも後の祭り。殺される…なんて根拠のない考えに身を震わせていると、彼女は顔を変えないまま緩く指を口元にやって顔を下げ、クスリと笑ったように振る舞った。

 …本当は笑ってないのに、そうされただけで本当に笑った様に錯覚させてきた。

 

「案外みんなが死んだのはショックじゃなかったんだね。

 Ms.痣涙。君が感じた恐怖は他人の喪失じゃなくて、殺されるかも知れないっていう自己保身だ。

 みんなの為に泣いてる訳じゃないし、私もそこまで心配しなくて良かったね」

 

「……いや、ぇ…そんなことは…」

 

「シェフに名乗り出た時もそうだったけど、君はもっと他人に興味を持った方がいい。

 声が小さいのに、どもって伝わってないのに、賞賛を浴びたりしても心拍数を1つも上げなかった。

 大体はそれでちょっとは緊張したり気まずくなる。でも、君はずっと気にしてなかった」

 

「ち…違う!」

 

「"だったら、みんながなんで死んだか分かってる?"」

 

「……………」

 

 ……わからない。

 だって、"私は誰よりも先に逃げ出したから"。

 その後何が有ったかなんて、これっぽっちも知る筈が無かった。

 

「怠惰。

 君が動けばもっと人が助かる手段は渡してたし、今日に至るまで君は自分の持つスキルを自主的に少しも鍛えようとも、理解しようともしなかったから。

 

 私も面倒くさがりだから気持ちは分かる。君にはずっと同僚としての顔を見せたけど、結局最後まで上に立つ者として君を最低以上に磨くことはしなかったから。

 それだけはごめんね。

 

 もっと自分に正直になって、それから現実と折り合いを付けよう。

 自分で自分を誤魔化してばかりじゃ、いつまで経っても前に進めない。

 バイト先の先輩として、これからの君への就職アドバイスだ」

 

 軽く一瞥した彼女が飛び立たんと翼を広げても、何故だか先ほどの言葉が深く突き刺さり、呆然としたままの私を放って、彼女はこの場を飛び去りました。

 

「………‭─‬‭─あ  そっか」

 

 呆然として唖然として、段々と釈然としていって……私は、漸く自分が何に怯えているか自覚できた。

 

「私、本当は自分が良ければそれで良かったんだ」

 

 みんなとか、命とか、そんな建前で自分を隠していたけど……本当に誰かを大切にしてるなら、あの雨を前に踏みとどまった筈。

 本当は私の優しさは私にしか渡したくなくて、私が困りさえしなければ、画面の向こうで死んだ命も、目の前で死んでいく命も変わらない。

 

「本当の私は…そんなに綺麗な心じゃ無かったんだ」

 

 今こうしてウジけてたのは、勝手に死んだみんなのせいでコレからの社会的立場が困るからで、その死を偲んでた訳じゃ無かった。

 本当はどうでもいい事をいつまでも問いかけてたから、私はずっと蹲ってたんだ。

 

「……なんだ。別に私、惨めじゃなかったんだ」

 

 立ち上がってみれば、もう現実を等身大で歩いていける気がした。

 無意識に普通の人が考えるべき事に拘ってたけど、それを捨ててみれば案外何でも出来そうな気がした。

 

「そうだよね。怖いものは怖いけど、怖くないものを周りに合わせて怖いって言う必要はないよね!

 ありがとう悪魔さん。私、自分の心を大切にしてみる!」

 

 もう立ち去ってしまったけど、もう返事なんて必要なかった。

 みんなが死んだばかりだけど、私がやりたいから笑顔になって、私がやりたいから感謝をして、私がやりたいから未来に向けて頑張る。

 

 死を引きずら無ければいけないなんて誰かが決めた事を守る必要なんてない。

 名前に引き摺られて、そのまま今日まで引き摺ってきた、さっきまでの自分らしさを求めて声を小さくする必要もない。

 私は案外誰かの眼の前で無様を晒しても平気なんだから、堂々と成りたい自分に変わり続ければいい。

 

「桜が舞って、雲一つ無くて、虹が掛かって。

 うん! 今日はとってもいい日だ!」

 

 

 なんだか、久々に清々しい朝を迎えられた気がした。

 

 

 °*× ・管理人

 

 

「ご機嫌よう、Ms.姉島」

 

 私の青春は昨日の目覚めから綺麗さっぱり何処かに旅立っていた。

 色々あって学校の3階から落ちたのは覚えてるけど、それで何年も眠ってたらしい。

 死んでないのは、ギリギリまで足から着地しようとしてたからだっけ。運が良かっただけかも知れない。

 そこまで詳しくは覚えてないけど、目覚めた後の自分の身体は自分のものじゃないみたいで、眼の前には悪魔らしからぬ悪魔が居た。

 いや、中身はそれはもう文句なしの悪魔なんだけど……見た目が殆ど人がコスプレして出来る範疇だったから、一見人には見えたんだ。

 

「マダムの紹介でコチラに就職を希望していると聞きました。

 実に喜ばしい。丁度インターネットを事業に利用したかった所にこれは正に渡りに船。

 つきましてはお互いの人柄を見たく馳せ参じました。これから暫く、共に仕事をする事になるでしょうから」

 

「……あのさ、一つ聞いていい?」

 

 最初はふざけた奴が来たなって感想だった。

 まあ3分間抱えられて空中遊泳されたから信じたけど…!

 

 こちとら目覚めたばかりで社会の変化とか受け入れかねてるトコだよ?

 それなのにもう仕事? はっ? 舐めてる?

 いや、ママも追い詰められてそうなのは昨日話し合って分かってたよ? ウチはマダムって呼ばれる程裕福じゃない。私が長い事眠る前だってご飯は半額以外買わず、冷房を求めて「とても図書館」でだらつく程度には無かった。

 

 じゃあ何年も寝たきりの娘抱えてたらすぐ仕事させたいくらいにはなるか。

 チクショウ、ママの行動には納得しちゃったからそこは何も言えない。

 でも……。

 

「悪魔ってなにさ。ママはいつからオカルトの世界に入って邪教崇拝者になったの?」

 

「マダムと私の出会いは昨日ですよ。病院で営業をしていた所、マダムが電話詐欺に遭いそうだったので追い払い、その縁であなたを治す為の力を売りました」

 

「いや恩人お前かい!」

 

 思わずツッコんだが仕方ない。昨日ママがすごく天使様に治して貰ったとか言っていたけど、まさかそういう事情だとは思わなかったのだ。

 いや天使ちゃうやん。悪魔じゃん。羽と角見て分かれよ。

 私のママながら一度こうって確信したら治らないのはどうなんだホント。何年も経った筈なのに変わってないなぁ…!

 

「ありがとうございます。で、なんで私を紹介するに至ったワケ? 流れが見えてこないんだけど」

 

「実は私が売ってる品に欠陥が見つかりまして。その対策は作ったものの、広める為にどうするかと考えた末にネットを利用するに至り、様々な手を尽くした上で空振り、最悪やる気のある無職でいいかとこれまでのお客様の人伝を頼った結果、あなたが当たりました」

 

「妥協を超えた妥協の産物が私かい! なにそれ嬉しくないんだけど!」

 

「意外と居ないんですよ。ITに強いのに詐欺に引っかかるタイプ。私の仕事って詐欺が本物だったってオチ一本でやってる所がありますから」

 

「それは……そうなるだろうけどさぁ!」

 

「後、あなたにとっても渡りに船では? 事情が事情とはいえ、人の社会に中身中2の19歳に碌な仕事はありませんし」

 

「だとして‭─‬‭─ヒッ⁉︎」

 

 ピンと張った糸が首筋に当てられた様な、そんな錯覚を覚えるほど……急に、空気の質が変わった。

 

「だとしても…どうぞ続けて?

 幾ら人材難の買い手市場の世情でも、面接中に言うことかどうか…よくお考えになりますよう」

 

 空気が一変した。

 さっきまでの緩やかな談笑と打って変わった、張り詰めた空気。

 本気の、悪魔の品定め。

 

「とはいえ…仕事内容を知らずに面接というのも片手落ちでしょう。

 目覚めたのが昨日の今日なワケですし。

 なので、馴れ合いはここまでに本番と参りましょうか」

 

 きっとさっき迄は私の事情に配慮して合わせてくれてたのだろう。

 化けの皮を被り疲れたとばかりに無表情のまま足を組み、リラックスした姿勢で私の眼を見つめた。紅く、ぐるぐるとして、ヤケに黒い瞳が瞼に残る。

 真っ赤な眼が、私の心臓まで射抜いたようで背筋が凍った。

 

 面接が始まる。

 

「弊社…と言っても未だ店長とバイトで2名の、地元の八百屋といった感じの小ぢんまりとした店ではございますが、当店は人の店と違い超常の力……後遺症(スキル)を販売出来る独自のお店です。

 品も高級路線と申しますか、どれも使い熟せれば文字通り一国の王になれる力を秘めております。

 

 まぁ…すこーしばかり、スキルの原材料の都合でヤンチャといいますか。

 正直な話、私みたいな悪魔なんて簡単に捻り潰せる怪物を封じて、その一部を扱えるように加工して売ってると申しますか……購入者が一堂に会して使うだけで、世界の周囲を漂う異相牢(ダンジョン)を引き寄せてしまうのです」

 

「…かなり危ないことしてませんかそれ」

 

「good. 臆さず質問出来るとはいい精神力だ。

 bad. 私から挙手を尋ねるまで待つべきだった。評価相殺。

 それで質問の答えですが…of course. なので対策を立てました。

 

 コチラ、その対策用に組み立てたスキル3点セット。手にすれば電子世界の神でも精霊にでもなれちゃう動物に与えれば電子惑星系遷遺者(スーパースター)コース。

 スキルが異相牢(ダンジョン)を引き寄せない為のシステムを組み込んだ社員専用スキルです。

 

 ご質問は?」

 

「…何の為にそんな危ないものを売ってるんですか」

 

 純粋に気になった。

 この悪魔が昔から活動してたなら世界はもっと破茶滅茶な筈。

 最近になって商売を始めたとすれば、なんて急にこんな事をしたのか気になったのだ。

 

「ほう、企業理念に関して。定番ですが良い質問だ。

 勿論‭─‬‭─"スキルホルダーを増やしたい"から」

 

「…増やして、どうする気かって質問なんですけど!」

 

「…………」

 

 思わず勢い任せに言った言葉に、悪魔は少しだけ沈黙した。

 考えているのか、焦らせているのか。兎に角、私はもうコイツの事が今後好きにはなれそうにない事は確かになった。

 

 それから眼を瞑って、少しして眼を開けた時、より一層感情が消え…た眼…で…?

 …それこそ、その一瞬、悪魔は世界から消えて……一瞬だけ、私は悪魔が眼の前に居た事すら忘れ去っていて。

 

 

「きっと悪いことばかりじゃない。

 ただ、たった一つの為に全てを摘み取るだけ。

 大丈夫、意味は後から着いてくる」

 

 

 ‭─‬‭─忘れていた事を、再び悪魔が現れた時に遅れて自覚した。

 不思議な話だが、本当にそうとしか言いようのない奇妙な感覚だった。

 

「‭─‬‭─分かって頂けたかな?」

 

「…なにも」

 

「だろうね。要するに、"こう"なる人を増やさない為だ。

 誰だって世界を終わらせたくないだろう。隣人を、家族を、友人を、恋人を、忘れたくはないだろう。

 だから手を伸ばしてるのさ。大抵の人にとって、世界の余白でしか生きられないんじゃ惨めで仕方がないだろうから。印象の皮を被る事でしか世界と関われないのは辛いだろうから。

 

 君達からすれば空白から飛び出た悪魔に感じるだろうが、私からしたらその程度の差だ。

 同じ"人間"同士助け合おうとしているに過ぎず、この商売もその一環なだけだ」

 

 ……なんだか、会社の事よりこの悪魔の話に変わった気もするが。

 悪意を持ってやってるワケじゃなさそうで、色々な事情が絡んでそうなのは私にも分かった。

 

「……で、私は何すればいいワケ?」

 

「新たなブラウザを創り管理して欲しい。スキルを使えば難しい話じゃない。

 そしてこのネットと繋がるスキルで、異相牢(ダンジョン)がスキルに反応するのを遮断する為に、壁をより高く広くする様に利用者を増やして維持するんだ」

 

「割と無理難題じゃない? それ」

 

「取り敢えずやってみなさい。それだけで事足りる様にはしてある。

 必要なのはやる気と責任感だけだ。詳しくは雇用されてから一緒にやろう」

 

 そこまで言って、悪魔は3つのメダルを私に手渡した。

 どう見ても空色、緑色、白色で出来た無地のメダルだったけど…強く握りしめた時、私は溢れんばかりの充実感と、全能感と‭─‬‭─三匹の化け物に相対する幻覚を見た。

 

「ッ‼︎」

 

 反射的にメダルを投げるように手放したけど、既にメダルは透明で、あの3色は私の中に残ったのだと見せつけられる結果になった。

 試しに身体の中に意識を向けて見れば、3つの私以外の存在が感じ取れる。

 悪魔の言っていた怪物がこれなのだろう。

 末恐ろしく感じるが、同時にこれが私に従う現状が…なんだか私に大きな自信を与えてくれているようにも思えた。

 

「入社おめでとう、Ms.姉島…いや、姉島管理人。これから宜しく頼むよ」

 

 

 ……あれ? でもこれ結局流されて就職先決めてない?

 

 

「…蹲ってどうしたの?」

「聞かないで。母の血を感じ取ってるだけだから」

「はい、入社祝いの前金30万がこれ。マダムが入り用らしいから現金だよ。

 それで早速だけど、ネットワークに接続出来る様になってる筈だから早速試してみよう。

 初めての扱い方は私が教えるから…ちょっと失礼」

「…!!?」

 

 そして悪魔は落ち込んでる私にお構いなく自分の額を私にコツンとくっつけた。

 突然何するんだとか、ちょっと痛いとか頭によぎったのは幾つかあるけど、私はこれまた突然やってきた睡魔に負けて重い瞼を閉じる事になったのだった。

 

 

「ごっ機嫌よー! 管理人ちゃん! スキルチュートリアルの時間だよ!」

「突然ゲームみたいなの始まった!?」

「案内人のサキュです! ちょっとの間だけどヨロシクね!」

「悪魔さん!?」

 

 

「……はっ⁉︎ なんか手の平サイズのキャラ崩壊したミニキャラ悪魔と一緒にスキルの勉強をした気がする!」

「夢の中でも言ったが、私は悪魔というより女夢魔(サキュバス)。サキュの姿としてはあちらの方が正しい」

「嘘でしょ!? 淫魔(サキュバス)が出せる色気の無さじゃなくない!?」

「サキュとしての私は未成年だ。大人なら兎も角、検証の末にこの未成年の身体は植物の精で賄えたのであの姿が普通と思われる」

「…思われる?」

「同じサキュには会った事がないから」

「キャラ崩壊は?」

「夢の中はサキュのみだが、現実の私は過去の出来事で複数の種族と人格が混ざっている。その影響でコチラでは常に人格が形成するものは常に変動し続ける」

「え、何があったの…?」

「5分、休息終了。業務再開」

 

 

 拝啓 ママへ

 

 あなたが紹介してくれた仕事先は気になる事がいっぱいです。

 でも電子の精霊になりました。今日からネットの神になろうと思います。

 

 先輩の悪魔は怖いのか可愛いのか分かりませんが、全体的に愉快っぽい人なのでなんとか付き合えそうです。

 こんなどう考えても普通じゃない仕事を紹介してくれたのに小一時間説教をかましたいですが、何年も寝たきりの私を大切にしてくれたので許してあげます。

 

 後、どれだけ借金抱えたか教えてください。居間を調べたら変な宗教に関したメモが出てきたことも。

 今は手が離せないので後になりそうですが、この手紙を以って家族会議の決闘を申し込みます。

 覚悟してください。場合によっては裁判所にも連れて行きます。ネットの規制だってやります。変な宗教が潰される覚悟をしてください。いいですね?

 

 敬具 仕事量と世間の変化に目まぐるしい娘より

 

 

 

 拝啓 娘へ

 お言葉ですが最近入った「桜笛教」は本物です。

 なんだったら、娘が助かったのも与えられたお告げの結果です。

 

「姉島梅へ

 4月°日に掛かる詐欺電話に騙されること

 取り敢えず病院に居たらボーナスポイント」

 

 天使様と出会ったのは全てこのお告げのおかげです。

 おかげで癒しの祝福を授けられ、他の教徒の皆様をより一層助けられるようになりました。

 祝福を得る為の借金だって、教祖様が無償で返金してくれたんですよ?

 なのでお礼も兼ねて、私はもう暫くここに身を置きます。理由には聖女と呼ばれて気分が良いのも多分に含みます。

 いい年したオバさんがそう呼ばれるのは気恥ずかしいですが、なんだか最近若返ってきた気もするので褒め言葉として受け取ってもいいですよね? 良いと決めました。

 

 なので決闘は受け取りません。

 お金も貰えますし、ちょっくら本気で聖女目指してみようと思います。

 流石のママも馬鹿げてる自覚はあるし、目覚めた娘と会いたいので近い内に顔を見せます。

 

 敬具 ママより

 

 PS.すごい土産を期待してて下さい。

   とーってもすごいお土産を期待しててください。

 

   …厨二は恥だし役に立たないからよしといた方がいいよー?

 

 

 

「悪魔ァァ!!! ママが厨二になったぞどうしてくれんだァァ!!」

「自分のを読み返してみよう。恥になるのは君の手紙も同じ」

「‭─‬‭─グハァ! 言われてみればァ!」

 

 許さない…許さないぞ…桜笛教めぇ!

 首を洗って待ってろよ…絶対潰してやるからなぁ!!?

 

 

 

 

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