スキル屋のバイトになりまして   作:何処にでもある

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業務:アフターケア 場所:ドールハウス/とある高校跡地

 

 

 4月|日

 今の私には元々あったサキュの私、吸血鬼セットの私、人狼の私、人魚の私の身体がある。

 それで判明した事実だが、1人だった時の私は、どうやら眼は吸血鬼、牙は人狼、髪は人魚であったらしい。

 全身サキュだと思いきや、人型の種族で纏まってるだけだったようだ。

 この様子だと尻尾は悪魔で責任感はガーゴイルからとか判明しそうな勢いだ。

 

 尚、元々あったサキュの身体についてはセットで抜け出した要素がサキュ本来の物に置き換わっている。そのせいか夢の能力をより扱い易くなり、他の事が若干苦手になった。

 とはいえ意識せずとも出来たのが自転車の立ち漕ぎ程度に難化しただけのこと。大した違いはなかった。

 

 

 そういえば今日、家出した。なんでかと言えば昨日の話の流れである。

 今更ながらあれは家出する流れだったと起きて気付いたので、言い出しっぺの人魚に件のミッション高校に、本来の転校日より2日早く向かわせた。

 それとお気に入りのぬいぐるみを持たせてあげる。特別だよ。私ならこれがどれだけ重いか理解してるよね。

 絶対の約束だよ。居場所を作ってあげてね。命賭けてね。

 

 その間、寮が整うまで私達は離散した。自室を使えないんだから各々いい感じの寝泊まり場所を見つけ出すのだ。財布の中身、全員合わせて15万はある。分けてもなんとか出来はするだろう。

 

 各々、仕事を終えてからだが。

 

 

‭┫

 

 

 という訳でサキュの私はヌルイ店長に10億と100万ドルを渡しに来た。

 昨日自分同士で交流してこっちの予定が潰れたからだ。

 ついでに寝泊まり出来るようすればいいなという作戦である。仲良しな気はするし出来るだろう。

 

 

 最初に仕事の結果を書く。

 店長のスキルは予想通り成長した。やはり店長が自分自身のスキルと契約し、お金を渡す代わりに成長を買うのは合っていたようだ。

 

 ただし、今まで気付かなかったからか成長の序盤の枠にかなり吸われ……或いは無制限に成長する枠にかなり割かれ、合計約11億円を使った割にはド派手な成長は起きなかった。

 精々がG以下のスキル自動収集の範囲が大陸規模に拡大、貯めておけるスキルの数が数万倍に。

 スキル加工の店員枠を追加、現実と繋がってない異相牢に漂うスキルもちょっとは回収できるようになっただけだった。

 

 いい機会なのでこれを機に社宅を条件に入れてスキル加工枠として本雇用して貰った。

 これからは私もスキル制作に携われるのでより理解が深まっていく事だろう。

 事実上の人体改造なのは目を瞑ることにする。医療知識の収集と割り切ろう。

 

 これらの行いで店長がとても喜んでいたので本日は彼に1日付き合うことにした。

 そういえば利用してばかりで彼が望んでいた友人としての振る舞いが疎かだと気付いたからだ。

 その結果、情報嵐に消えたのか記憶が歯抜けだと判明した。恐らく元々居た知人達が嵐に消えたから、それに伴って記憶も抜け落ちたのだろう。

 

 ずっと店長に付いてる訳にもいかないので管理人の様子も見た。

 奥様については既に本人と顔を合わせたのか最初にお礼を言われた。

 ブラウザに関してはJRがポータル利用料キャッシュバックキャンペーンを始めたからか順調に増えているらしい。

 それに伴いJRが協力するならと社会的信用も得て、様々な広告の申し込みがあったそうだ。

 

 勿論全て断ったそうだ。

 なのでブラウザにデフォで付いてるSNSや動画のプラットフォームでアカウントを作って活動するのは禁じない旨を記載するよう伝えた。色々なSNSにも公式アカウントはある。それを拒む道理が私達にはない。

 既にやっている企業はあったが、これからはもっと増えるだろう。青い鳥みたく対戦型にはならないよう注意は必要だろうが、そもそもあそこは長年の積み重ねがある強い所。

 これが多いかは知らないが、そもそも利用者20万程度の過疎ブラウザなのだ。荒れる事自体あるまい。この初動が順調かも分からないし。

 じわ伸び重点で行くとしよう。そもそもが商業目的の開発じゃないんだ、楽な姿勢でいい。

 

 それはそうと電波人間みたくネット空間を彷徨う、情報嵐の被災者用のVRチャット空間は管理人とフクイチと私の三人で制作した。VRなのはより現実通り動けるようにしたいからだ。

 今までは既存の物に五感を感じるMODを提供していたが、ここはオブジェクトにもアバターに与える感覚を設定している。

 

 自分の感覚、相手に与える感覚の二つを合わせた、より現実に近い仮想空間だ。

 被災者向けに外部から侵入したあらゆる情報には仮のゲストアバターを付与。私が夢を使ってできる現象を参考に特定の思考を指向性のデータにして動ける機能を搭載。

 

 UIなどシステムが使えないのを前提にあらゆる操作に対応するオブジェクトを各地に設置。

 一般利用者がイタズラしないように対策も行い、このチャット空間への誘導も広域に設置。

 

 あらゆる形で存在しているのを考慮して電気的、電波的、紫外線や赤外線、有線の途中や色素などそれはもうちゃんと出来てるか確かめられないものまでとことん誘導をあらゆる場所に張った。

 その過程で散々夢を使い倒したからか気絶したりもしたが、これで1人でも助かるなら万々歳だ。

 

 後は…後から思い付いた改善をしつつのんびり待つとしよう。

 私と電波人間がいたのだ。そりゃあスキル以外の形でもっと居るだろう。

 

 チャット空間が最終的に香港や台湾みたいな繁華街と高層ビルが合体した街みたいになったのは気にしない事にする。

 意図してこんなサイバーパンク空間を作る気は無かったが、あらゆる誘導の用意の為に食べ物の匂いや目立つ見た目、ノスタルジーを感じられる現実的かつ魅力的なものを作ってたらこうなった。

 これが収斂進化(しゅうれんしんか)という奴か。なんだか感動した。夜遅くまで働く価値はあったな。

 

 

 早速、ゲストアバターが訪れた。外部のブラウザから来たか、それとも被災者か。

 どっちしろ、ここはあらゆる混沌を許容する拡張現実。

 お好きにお遊びくださいな。

 

 

‭┫

 

 

 という訳で人狼の私は新たに作ったブラウザを設置する為にも芸術家のスキル空間に行った。

 まさかネット環境が異相牢抑制に役立つ事になるとは思わなかったが、これでこの空間が異相牢と混ざってメチャクチャになる事は無くなる訳だ。ついでに無断で寝泊まりも出来る。

 因みに、人狼の私は日記の皮を毛皮の下に創り、変身の要領で乾いてないインクを動かし、文字をリアルタイムに書いていたりする。人狼の私は皮を被らない限り結構人外味の強いモフモフなのだ。二足歩行のスラっとした灰色の狼である。普段はサキュの私みたいな皮を被って過ごしているが、些か窮屈だったりもする。

 

 という訳で設置も終わり、デフォルトブラウザは管理人印の物にした。なんかアプデをしているが、動画環境は問題なく使えるので気にしない事にする。

 帰るついでに劇を見学したが、彼らは見ない間により一層仕上げてきたらしい。

 より複雑で真に迫った演技は私を虜にするのに十分だった。

 

 それから新たな劇団員も追加されていた。

 この前芸術家が創っていた女の子だ。失敗したのでこっちに来たらしい。

 話せるようなのでどんな作品か聞いたが、本人…本作には分からないと言う。

 白と黒を基調に、金の差し色が目を惹く魅力的な容姿をしていた。

 名前を「シャンデリア」。光源としてなんか出来るギミックを持ってそうだった。

 

 ふむ、さては生の人間に迫り過ぎてただの人間を創ってしまったか。確かにこれでは作品とは呼べない。ただ人間であるだけならそこら辺の役者で事足りるし彫刻である必要性が薄い。彼の中では失敗と見做されて然るべきだな。

 

 本人には自身が無機物の彫刻である自覚すらないらしい。私が劇の鑑賞をしている際も見てる側で楽しんでいた。

 折角なので一緒に役割を持って劇に参加するように伝えた。シャンデリアと名付けられたんだ。絢爛に照らし引き立てるのは得意だろう。

 

 結果は無惨な劇だったが光る物は感じた。このまま練習していく事を推奨しておく。

 ついでに、人狼なのを活かして彼女に変身し見本を見せておいた。目指すなら具体的な目標があった方がいいだろう。なんか魔法少女みたいな変身が出来たのは…元々そういう機能があるのだろう。これは将来が楽しみになってきた。成長するスキルの副産物として今後も注目していきたい。

 

 変身する際に狼の姿を見せた時は驚かれたが、そもそも幻想的な生きた彫刻に囲まれた子供、直ぐに適応した。狼の姿を見た時に男性と誤解されたりもしたが、それは話の端だろう。

 今後はネットに動画を挙げるだろうし、成長記録はそこから確認しよう。

 

 

 後、肝心の芸術家は新たな少女を創っていた。失敗は成功のもと。今度は是非とも完成した魔法少女を見てみたいものだ。魔法少女というテーマ自体世俗的で陳腐に感じるが、そこはご愛嬌。多分本人も衣装や変身機能の練習でやってるだろうし。

 そもそもどれだけ綺麗でも実績が物を言うのが魔法少女だ。今後社会で活躍させて芸術点を稼げば展示の端の方に置ける可能性だってある。その点、習作としてはかなり優秀な題材だ。

 先ずは完成させることが重要。まだスキルを得て一月も経っていない。彫刻家に成果を求めるには早過ぎる。

 

 このまま見守る事にしよう。

 

 

 それから病院の方にも行った。スキル空間に篭ってる購入者が他にも居るのを思い出したからだ。

 これまで触れるのを躊躇ってきたが、いい加減アフターケアをしておくべき頃合いだろう。

 

 

 C「死親子児(ネクロリズム・フィリア)」の蘇生能力を売ったお姫様願望持ち。

 彼女はある交通事故で家族の中で唯一生き残った、イギリスの血が流れる金髪の女の子だ。

 

 父、母、兄。

 無くした家族三人も、1週間以内なら遺骨からでもキッカリ生き返らせられる能力は彼女に打ってつけだった。

 自分と同じくらいの年齢になる欠点こそあれ、これは彼女が支払える額に抑えようした結果。

 どうにか両足両腕を対価に払った彼女は、達磨のまま三人の家族と再会し大変喜んでいた。

 

 問題は家族は芋虫になった彼女を見て大層嘆いてしまった事か。

 

 「死親子児(ネクロリズム・フィリア)」は蘇らせた死者の人格、才覚、記憶、脳に収まる範囲の人としての構成要素を自在に変更出来る。

 

 結果的に彼女はまた家族と愛し合えた。

 しかしそれはスキルで創り出した人工物だ。偽物ではないが、天然じゃない。

 なまじ彼女自身が結構賢く、弄ってしまった事も、これからの未来が絶望的なのも何となく理解しつつあったのも不幸だろうか。

 

 家族はいる。だが見た目は家族というより、おままごとに真剣な同年代の友達だ。

 

「悪魔さん。わたし…パパもママもお兄様も…家族として見れなくなっちゃった」

 

 病院を出る直前に、彼女の元に立ち寄った私に言った、最後の言葉だ。

 それ以来彼女は自身のスキルを拡張させ、自分の屋敷を取り込み築いたドールハウスのスキル空間に閉じ籠っている。

 その際に随分とご家族も弄ったようで、振る舞いは既に原型を留めて居なかった。

 

 

 ハッキリ言って明確に売るべきスキルを間違えた相手だ。

 奥様の件は割と自業自得とは言え、病院の営業は2つも失敗例がある。

 あれ以来かなり売るスキルには気を遣ってはいるが……果たしてあの中で何が起きているやら。

 正直地獄の釜を開ける所業だ。殺されるだけの恨みを既に売っている。

 

 身体が一つだけなら決して入らなかったが、今は他の私が居る。

 世間にご迷惑をお掛けしない内に処理して置くべきだろう。

 

 日記は入る前に置いておこう。それから、これから興味本位でここに入って来た馬鹿者への忠告も別に作っておく。お屋敷の壁とかにも小まめにメモを残したっていいだろう。

 

 ふぅ…正直どんなホラー屋敷か既に恐ろしいが、相手は戸籍のない小娘3人と芋虫姫だ。

 こんな相手に狼が負ける道理は赤ずきんや七匹の子山羊などの童話だけ。

 不思議だ、勇気を持つ為に考えた事で不安になってきた。

 

 

 さて。

 

 

 行くか。

 

 

‭┫

 

 

 という訳で吸血鬼の私は久々にとある学校組の様子を見る事にした。

 あわよくば彼の家に泊まる算段である。

 因みに、吸血鬼の私は血を超小型タイプライターにして日記を体内で書いている。液体の中なので静音性もバッチリだ。

 吸血鬼の容姿は大体赤目コウモリ翼白肌犬歯日光で灰になるとイメージ通りだが、影は操れないし魅了とか本物のコウモリへの変身とかも出来ないし眷属なんていない。代わりに全身を血に変えて操作したり血で出来たコウモリになったり灰を操ったりは出来る。他人の血も操れるし操り状態で日光に当てて灰にも出来る。

 血を吸う必要もなく、吸いたい気持ちもない。

 代わりに果物は沢山食べたい。恐らくチスイコウモリじゃなくオオコウモリの吸血鬼が私だ。よく見れば羽に産毛が生えてて茶色だし多分そうなのだろう。食費が嵩むのが難点だ。

 それから、応用すれば灰に太陽光を宿してレールガンを打てたりする。

 

 何処が吸血鬼だと思うが、血を操るオーソドックスな吸血鬼なので吸血鬼なのだろう。ついでに灰になった自分を操れて再生力が凄まじいだけで。

 そもそもチスイより一般的なのがオオコウモリだ。異世界でもそれは変わらなかったとみえる。結局生きやすさとは食性が全てと言わんばかりだ。

 

 

 ともあれ、学生組はある程度新たな生活が板に付いていた。

 

 復讐の彼は自らを透明人間にして相手の情報を集めながら橋の下や下水道で暮らし、

 赤地坂は警察の隠しキラーとして日々を楽しく過ごし、

 元シェフはなんとびっくり性格が明るく激変し偶然にも私と同じミッション系の学校に転校するとのこと。

 

 それから、元友人の鹿田は廃人になっていた。数多の友の死を受け入れられなかったらしい。

 アフターケアとして血の記憶を辿り思い出に封印を施しておく。ダメ押しに血の臭いを応用した暗示も施した。

 明日には何処の学校に行くか決めている事だろう。性格は変わっているかもだが、思い出す頃には新たな友人が彼女を繋ぎ止めている筈だ。

 

 後、頭が人形になっていた彼はデュラハンみたいな遷遺者に変わり果てていた。

 夜になるとお供に死んだスキルホルダーを連れ、廃墟となったとある学校の敷地で百鬼夜行(ワイルドハント)をしているのが確認された。何故そうなったのかは不明である。

 この結果を受け取り、別にスキルは遷遺者になるのを抑制しないと分かった。

 しかし情報嵐への耐性は未だ不明。まだ広める価値の方があるだろう。

 毎晩彷徨っている彼らは…放っておこう。遷遺者に成り果てようとスキル売った私にスキルを回収し殺す権利はない。敷地から出ない内は放っておくとしよう。

 

 

 これで仕事は一通り終わったが、肝心の寝床の当てにした彼が橋下暮らしだった。

 仕方ないのでデュラハンの彼を何とか人に戻し、そのお礼に家にお泊まりさせて貰う事にした。

 赤地坂もといキラーは殺されそうなのでやめて置く。元シェフは頼めそうな別れ方をしてないので辞めた。

 

 という訳で前言撤回。デュラハン戦に向かう。月は出てるので臨床試験までは出来るだろう。月から反射された太陽光で夜も若干灰になり続けてるが、この程度なら寧ろいい感じに灰を作れるので有利な位だ。

 

 お前の軍勢(ワイルドハント)と私だけの(レッドムーン)、どっちが強いか勝負しよう。

 

 

 勝った。弱かった。

 一通り調べたが原理としては奥様と聖女の関係性と同じだった。

 常に変身し続けたせいで置き換わったらしい。ふむ、こうなるとスキルは寧ろ、使う程遷遺者に変わっていくのだろう。馴染むくらい使い込むと言うことは、それだけ出力が高くなり……イルカのように遷遺者になるという事でもある訳だ。

 もしやすれば私も時間の問題やも知れないが、それよりも早速今後売るスキルにはストッパーを設けるようにしなければ。ポータルの事を言えない程度には私達も安全性に問題があると分かった。

 店長への連絡は明日の朝しておく事にする。

 

 聖女と違い既に人の要素が散ってしまっているが、コチラはコチラで社会に戻れそうな可能性を見つけた。

 とある学校の異相牢、そこで変異した頭部だ。これだけはスキルの影響を受けずに当時のままだった。倒したら突然話しかけて来て驚いた。

 当時の変異で既に欠けてこそいるが、スキル産のデュラハンボディさえ従えさせれば人として生きられるだけの知性と記憶の連続性がある。

 

 スキルが遷遺者として活動しようと彼は無事なままだった。

 これは既に分離していた肉体とスキルの要素が置き換わったせいだろう。

 とっくに千切れた身体が変わろうと、変化した頭部に影響はない訳だ。

 

 つまり分離してようとスキルは彼の肉体にも宿ってた訳だ。

 そして既に変化していればある程度の分解に耐性が付くと。ウイルスに対するワクチンみたいに。

 この事実は何か役に役立つと思う。覚えておこう。

 

 取り敢えずどれだけ暴れようとデュラハンは彼の肉体だ。ルーペで回収はできない。

 かといって彼に従おうともしない。既にスキルではなく遷遺者として独立している。

 スキルを抜き取り再び与えてもいいが、確実にスキルは劣化する。

 取り敢えず私の血で胴体を作って渡した。彼の意思に合わせて私が動かしてるだけだが、お泊まりする理由にも妙案を思い付く時間稼ぎにもなる。余りにも首が座ってないがそれはもう仕方ない。

 

 アフターケアは売り手の勤めだ。暫く付きっきりでケアをする事にする。

 

 

‭┫

 

 

 本格的な転校準備をする事になった。

 後2日経てば入学する寮制の高校だ。事前に荷物を置くには順当な時期では?

 

 学校は何故かなんの準備もなく、席の用意すらされてなかった。

 市が生き残った教師と生徒の為に用意してくれた学校の一つだし連絡すれば直ぐの筈だが……私の里親がアレだし、イタズラだと思われたのだろう。

 

 直接教師に言って色々なケリをつけた。これからここで生活し学ぶのに十分な準備も終えた。これからはこの「聖テイル高校」に通う事になる。

 寮は4人部屋、親元を離れ共同生活を行う事で協調性を得る為の仕組みだ。

 新たに来る人で固めるらしい。聞けば赤地坂、痣涙、鹿田が居た。

 

 

 荷物を運ぶ為に家と往復している際、私の部屋から13枚の名刺サイズの手紙?を見つけた。どうやら昔の飴…ドロップの缶詰で作った手紙入れみたいだ。作った記憶がない。

 記憶にない手紙で、どれも独り言に近く、名前も而仝而(なんて読むのこれ)?だのアルミ〜だの林檎〜だの無色〜だの人の名前を形成していなかった。

 どちらかと言えば、ラジオの匿名に近い印象を受ける。

 まぁ、何でもいいだろう。意味が分からないし捨てておこう。

 

 廃棄で思い出した。

 そういえば人形を預けられているんだったか。

 大事なものらしいが、私にそんな記憶はない。

 じゃあなんだよこれ、捨てよう。

 

 というよりも、私の中には記憶が不自然な程ない。

 どういう人生を送ればこうなるのだろうか。9歳の何でもない日常を境に、コマ送りのように何もかも写真を積み重ねパラパラと捲っている。

 まるでそこに居た結果だけしかないみたいだ。

 ……気味が悪くなって来た。存在しない人間を捏造している気分になってくる。

 

 

 呼び鈴が鳴った。

 

 

‭┫

 

 

 拝啓

 人魚の私を自称したMr.憤怒へ

 

 前略

 

 消えた人格は吸血鬼と人狼の2人なのに対し、あの日私の家に訪れたのは3人おりました。

 マイゴの夜の遷遺者の特性でしょうね、利用した時点で偽物が紛れるのは。

 私として振る舞うのは別にどうでも宜しいですが、それができないなら私として振る舞わず自分として生きるべきでしょう。

 私の日記を読んだのだろう誰かの呟きも、ドレスのぬいぐるみも大切にできないなら、尚更。

 

 なのであなたにスキルの抱き合わせに里親の娘として学校に送り出す事にします。

 性別を始め、貴方様の細やかな事情は配慮致しません。最初に私の大切な物を捨てたのはあなたの方ですから、一般的な反応に合わせ意表返しをする事に致しましたから。

 

D「E因子(エンジェリック)

 未加工の、天使系列の種族をランダムに得る力。スキル加工の練習素材として渡された品物。

 ミッション系に行くなら丁度良いでしょう。打ってつけのお品です。返品は受け付けておりませんが、起き上がったあなたは必ず喜ぶでしょうね。そういう種族になるスキルですから。

 

 ではご機嫌よう、「小鳥遊未完」。存在しなかった筈の一人娘。

 どこの嵐の被災者か知りませんが、私の人生を乗っ取って生きるなら、もっと自分を消し去るべきだった。

 

 後略

 

     からスキルと立場譲渡代200万の借金書の裏面より

 敬具

 

 

 

 

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