スタートレック 新世代たち   作:ギラスⅡ

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宇宙__そこは人類に残された最後の開拓地である。
宇宙船エンタープライズ号の5年の航海から、宇宙基地ディープスペース9のドミニオン戦争の記録から、宇宙船ヴォイジャー号の7万光年航路からさらに年月の過ぎた西暦2382、惑星連邦の宇宙艦隊アカデミーの卒業生たちが新たな惑星、世界、秩序を夢見て旅立つ。

これはその卒業生の一人の物語である。


2章.停滞

U.S.S.ムツは危機を脱した。しかし船内医務室はいまだ地獄と化していた。

治療も不可能な戦傷者があふれ悲鳴やらゴボゴボと響く息やらがあちこちから聞こえていた。しかしこの船において最も問題であることはそのほとんどが上級士官や先任士官であったことだ。

 

(ベイツ大佐……私がもっと迅速に動いていれば、あなたは死ななかったのでしょうか……武器を持ちながらあなたが死ぬのを見るだけだった私を、あなたは恨んでたのでしょうか、もしあなたが生きていてくれればこの船はもっと状況は良いものだったのでしょうか)

 

ジルは艦長であったベイツ大佐の亡骸の傍に呆然と立っていた。バルカン人は本来、死ぬ直前の人と精神融合を行いその人物の知見と経験を得てそれをまた自らが死ぬときに他のバルカン人に譲渡する、それを繰り返し昇華していくという慣習がある。しかしバルカン人のいない環境で育ったジルにその慣習は根付いておらず、死亡し(カトラ)の抜けたベイツ大佐がもっていた艦長としての経験はおろか死ぬ間際に考えていたことや感情はもはや知る由もない。

 

「申し訳ありません、大佐……」

 

目を伏せて物言わぬ遺体に謝罪の言葉をかけるジル。この見た目以上に小さくなったバルカン人の背中に中年の声が刺さる。

 

「亡くなった人に謝るのは傲慢じゃないかね」

「あなたは……」

「医療部門長のサン大尉だ、よろしく艦長代理どの」

 

初老のボリア人がジルに手を掴んだのちにベイツ大佐の遺体のほうに振り返る。

彼も彼なりに以前の上司の死にたいして思うことがあるようだった。

 

「大佐は優秀と手放しにいえる人では無かったがね、人に恨まれる人でも人を恨む人でもなかったよそれに……」

「……それに?」

「死人に謝罪すべきは私のほうだろうね。なにせ彼を救うことができなかったのだから」

 

部下として、医師として命を救うという矜持を真っ当できなかった無念はジルの計り知れるものではない。

なにか彼にかける言葉を探すジルだが、先にドクターサンのほうが話し始める。

 

「それより、ブリッジに戻らなくていいのか?」

「それは、はい……もう、戻らないと……ですね」

「頼むよ艦長代理どの。これ以上私が謝罪する相手が増えないように、な」

 

肩をすくめて冗談をいうドクターサン。あいにくジルにはうけなかったようで怪訝な顔で医務室を出ていった。

 

 

 

艦橋では周囲のスキャン情報や星図室からの共有をもとに現在位置の把握が行われていた。あらたに指揮部門長とされたエリザベス、化学部門長となったヴィルラ、操舵手のシン、ナビゲーターのパヴァロッティ、そして機関部門長となったルカが艦橋で作業を続けている。

そこにターボリフトから降りて艦橋に入ったジルがその結果を問う。

 

「現在地はわかったかしら?」

「ああ、わかったぜ。もっとも最悪な情報だがな」

 

パヴァロッティが頭を掻きながらジルに報告する。

方向も滅茶苦茶に最大ワープで飛んだムツはクリンゴン領域に飛び込んでいた。むろん惑星連邦とクリンゴン帝国は同盟を結んではいるものの、許可なしに領域に入り込んでいいものではない。せいぜい航行を許されているのが中立地帯なのだ。ムツはそれを侵害している状況にいる。

 

「……ひとまずは進路を惑星連邦領域にとって、ただしカサエ宙域を避けるように迂回して」

「了解、とんだ遠回りになるぞぉ」

 

そう言いながらコンソールを操作するパヴァロッティ、シンも操舵席で船の始動準備に入る。

次にジルはルカのほうを振り返る。

 

「ルカ、機関は問題なくいけそう?」

「ワープコアは正常に戻したから大丈夫、いつでもいけるよ」

「よし……ワープスピード5で発進!」

 

ジルの指示に従ってシンがコンソールパネルを触れる。ムツの船体が振動をはじめ、船体が光速を超えた速度へと加速する。

超光速で飛行するムツだが、それでもクリンゴン領域を出るには時間がかかる。まして一度通ったカサエ宙域を迂回するため余計にだ。その間なんの援護も得られないことは避けたいし、現状を報告する必要がある。

 

「今のうちに報告と救援要請が必要ね……エリー、緊急回線を使って付近の基地なり艦隊なりに通信を繋いで」

「はい、わかりました」

 

エリザベスが通信をつなぐ間、ジルは艦長席に座ると背もたれに沈み込む。正直、ジルの考えうるかぎり救援に来る惑星連邦艦はいないだろうという想定だった。

ロミュラン星系において恒星の超新星爆発の危険性が示唆され、難民船の建造とロミュラン方面の緊張対応が強まってる今では同盟国のクリンゴン方面の警戒は限定的になっていた。

 

(だから私たちが充てられた、というのはわかってるけれど……)

 

こめかみを押さえて自分たちの状況について考えるのを中断する。ロミュラン方面に展開している艦隊がクリンゴン方面まで向かうには限界速度……ワープスピード9以上で飛んでも2日以上かかる。とても希望と呼ぶには儚い。

と、ついに通信が繋がりエリザベスがジルに声をかける。

 

「ジル……艦長代理、通信来ました」

「ありがとう、エリー。スクリーンに映して」

 

ジルが艦長席を立つと船の進行方向を映していたスクリーンが切り替わる。艦橋の映像に切り替わり、相手の姿が映る。その姿にジルは思わず本来言おうとしていたセリフを忘れる。

 

『こちらはエンタープライズのジャン=リュック・ピカード提督だ……ムツ、応答せよ』

 

忘れもしない、ジルの恩人の姿がそこにいた。

顔を合わせるのはいったい何年振りになるだろうか。なにか言おうとし__ぐっとこらえる。今は惑星連邦の士官、あのとき助けてもらった幼い少女ではない。

 

「こっ……こちらU.S.S.ムツ艦長代理のジル少尉です」

『ジル__少尉?ベイス大佐はどうした?』

「本艦は音信不通となったU.S.S.メイフラワー捜索の途中、メイフラワーおよびクリンゴン戦艦からの攻撃を受け、先任士官がほとんど死亡。ベイツ大佐も戦死されました。現在は私含め新任少尉で艦を運用しており、脱出時にクリンゴン領域に誤侵入したため迂回航路をとりつつ連邦領域へと向かっています」

『なんと……』

 

ピカードは額に手を当てて苦い顔をする。

 

「可能なら救援の船をいただきたいのですが……」

『……すまない。今、こちらも救援に向かわせることのできる船の余力がない状態だ』

「やはり……ロミュラン方面ですか」

 

ジルは想定していた回答に暗い顔をする。しかしその理由はどうやら考えとは異なるものだった。

 

『いや、現在オリオンおよびゴーン勢力の攻撃を受けており、クリンゴン方面所属の艦隊はその対応に追われている』

「オリオンとゴーンが……!?」

 

オリオン、ゴーン、ともにクリンゴン帝国の庇護下にある勢力である。その勢力下の船が惑星連邦へと侵入し破壊行為、民間船および植民惑星への攻撃を行っているというのだ。

ジルの中で最悪のシナリオが組み立てられていく。

 

「クリンゴンがふたたび惑星連邦に戦争を?」

『うむ……しかし動機がない』

 

ピカードも口元に指を当てて考える。クリンゴン側からの宣戦布告もなく、惑星連邦もクリンゴンに対してなにかしらの攻勢をしたこともない。

しかし、メイフラワーの喪失とオリオン、ゴーンの破壊行為がけっして関わりのない物ではないのだろう。

 

『すまないがジル艦長代理、単独にてクリンゴン領域からの脱出を急ぐんだ。こちらも余力ができ次第救援に向かう』

「……承知、しました、ピカード()()

 

ジルの返答にピカードは虚を突かれた顔をし、その顔をみたジルは首をかしげる。微妙な空気が漂うブリッジでエリザベスがジルに耳打ちする。

 

「……ジル、ピカード()()

「え?……あっ、失礼しました提督!」

『いや、いい……ふっ、久しぶりに艦長と呼ばれたな。どこかであったかな?』

 

背もたれにもたれかかり笑うピカードの姿になつかしさを感じるジル。

十数年も前のこと、ちょうど年齢が2桁になる幼いころの記憶だ。

 

「ずっとまえにロミュランの攻撃で滅んだ星から私を助けてくださいました、そのときの唯一の生き残りの少女です」

『__まさか、あのときの……そうか、あのジルか……』

 

2人の間に昔の記憶がよみがえる。

 

ジルの生まれた惑星は惑星連邦とロミュラン帝国の中立地帯にある惑星だった。当時新たな植民惑星で政策の一環で地球人にクリンゴン人、ロミュラン人をはじめ複数の種族の集まる場所だった。

彼女は地球人の母とバルカン人の父の間に生まれた、しかし父は生まれてすぐになくなっている。そのため彼女の中で父から受け継いだ(カトラ)の繋がりはあれどバルカン人としての自覚は薄く、ほとんど地球人として育ってきた。周りの住人にもバルカン人はおらず、幼いジルにバルカン人と思って接する者はほとんどいなかった。

 

その暮らしが一変するのは惑星連邦とロミュラン帝国との対立が水面下で激しくなり、ロミュラン人の入植者が星から引き揚げた後のことだった。ロミュランの過激派一派により彼女の住む惑星は大規模な軌道爆撃を受けた。

クリンゴンの周波数を利用し星に接近したロミュランのディデリデクス級*1は地表に光子魚雷の雨を降らせ焼き払う。近所に住んでいたクリンゴンやゴーン達は果敢に旧式のバード・オブ・プレイで挑んで死んでいった。親しかった友人たちは爆撃で焼かれていった。やさしかった母はジルを地下倉庫に押し込み扉の向こうで蒸発した。

 

シェルターに取り残されたジルを救ったのは遅れて到着したエンタープライズだった。ただ一人残ったジルは襲撃者がロミュランであることを知る唯一の生存者だった。彼女の証言が聞きたいエンタープライズの乗員たちだったが、ジルはすべてを失ったショックで失語症となってしまった。

さらに攻撃を仕掛けたディデリデクス級の艦長からジルの身柄を引き渡すよう脅迫される。

 

勝ち目のない戦いの中、ジャン=リュック・ピカードはジルを守る姿勢を変えなかった。さらに当時エンタープライズ乗員であったカウンセラーのディアナ・トロイなどの尽力もありジルは言葉を取り戻しロミュランが犯人である証言を行う。そして襲撃者のロミュランが異端であるとして本国から見捨てられたことにより事態は収束する。

 

その後エンタープライズから他の船に移り地球へと向かうことになるため、ジルがエンタープライズにいた期間はわずか数日のことでしかない。それでもピカードらエンタープライズの面々はジルにとって慕い続けている命の恩人なのだ。

 

「私はピカード提督を信じています。私も最善を尽くしますが、どうかもう一度手をお貸しください。今度は私だけではなく、私の友人と部下たちも……」

『私も最善を尽くそう、ジル』

 

その言葉を最後に通信が切れる。

しかし不思議と絶望はない、むしろ希望が彼女の中には生まれていた。ピカードに寄せる信頼がジルの希望だった。

 

「信じていいのかな、ピカード提督の言葉……」

「大丈夫、信じましょう」

 

不安な声を漏らすエリザベスをジルが励ます。

今は危機を脱するための行動を続ける。ムツのクリンゴン領域航行が始まった。

 

 


 

 

『艦長代理、航海日誌62021.2。ムツは先任士官と上級士官のほとんどを失いながらもまだ航行は可能な状況にある。ひとえに残った士官……いえ、私の同期たちが指示に従ってくれるおかげだ。カサエ宙域を大きく迂回する航路のためかなりの日数がかかる予定。……正直、私は不安です。みんなを無事に地球に戻すことができるのか、もしクリンゴンと再び戦闘になったときに退けることができるのか……私には自信が無い。それでも艦長代理としてできる限りのことはする』

 

 

 

ムツがワープ航行に入って16時間が経過、特段の妨害も無かったためジルは自室に戻り休息と睡眠をとっていた。それからさらに4時間が経過した現在__

 

枕元でやかましく通信機のコール音が鳴り続ける。布団の中からもそもそと腕だけ出すと装置のパネルをタッチしてチャンネルを繋ぐ。

 

「ん……ぅ……ぉちらジルぅ……」

『艦長代理、お休みのところ申し訳ないが緊急事態だ』

 

通信機越しに聞こえてくるヴィルラの声に反応して布団を跳ね飛ばして上体を起こす。腕を伸ばし体をほぐすとと通信装置に向き直る。

 

「~~っ、とっ……どうしたのヴィルラ?」

『クリンゴン惑星の一つから救援要請の緊急通信を受けた。このまま無視するか救助に向かうか判断を頼む』

「わかった、すぐ艦橋に行くわ……ふぁ……」

 

傍に放り出していた上着を掴んで部屋をでていく。足早に通路を歩くとターボリフトに乗り込み、艦橋に向かう。その間、あくびを噛み殺しただでさえ細い目をさらに細めて擦りながら到着を待つ。まだ意識はぼーっとするが一応は起きている……はずだ。

ターボリフトが開くと艦橋にいたパヴァロッティがジルのほうに振り返る、が同時に悲鳴をあげた。

 

「ジル__あぁいや、艦長代理。クリンゴンの惑星から……ギャーッ!?なんて恰好してんだお前ぇ!?」

「んぅ……?」

 

寝ぼけたままのジルは上着こそ持ってきてはいるが着てはおらず、寝ていた時の肌着だけを着ている状態、それもはだけて肩から紐がずり落ち今にも下着とそのほかが見えそうになっている。

パヴァロッティはスクリーンのほうに顔をやってなるべくジルを見ないようにし、ヴィルラもジルのほうを二度見した後に気まずそうに視線を外す。シンにいたってはジルのある一点を凝視している。エリザベスだけは冷静だった。

 

「ジル、上着……ほらこっちきて」

「んー……」

 

エリザベスは重い足取りで近寄るジルの服を整え、上着を羽織らせる。しっかりフロントジッパーを上まであげてやると艦橋の傍らに設置されているフードディスペンサー*2を操作するとコーヒーを一杯ジルに手渡した。

 

手早くジルの世話を焼くエリザベスにシンが感心やら複雑な面を向ける。

 

「ず……ずいぶん手慣れてるのね」

「ジル、疲れてる時は寝起きがすごい悪かったから……起きた、ジル?」

「ぅん……起きた……」

 

アカデミー時代同室だったからわかることだ。ジルもちびちび飲んでいたコーヒーを飲み終えるころにはきちんと目が覚めて意識がはっきりする。

 

「ヴィルラ、状況は?」

「あ、あぁ……クリンゴンのドナトゥ宙域の惑星から救援要請が発せられている。音声だけだが、通信を再生するぞ」

 

ヴィルラが通信装置を操作すると録音された救難要請の通信内容が再生される。それはかなり切羽詰まった声であった。

 

『惑星連邦の船から攻撃を受けている__こちらの防衛艦隊が出撃したが通信がつながらない__至急救援を__!!』

「__ここで途切れてる」

「惑星連邦の船……メイフラワーね」

 

誰も言葉を発しなかったが、ジルの言うことが正解だと理解していた。だからこそどう動くか判断に迷う。

艦隊の理念としては当然助けを求める人々を見捨てることはできない。しかし攻撃を行ったのが宇宙艦隊のメイフラワーであれば同所属のムツが攻撃を受ける可能性は非常に高い。

 

ジルもどのような行動をするべきか艦橋内を歩きながら考える。

ここにいる全員か、いるかもわからない生存者か__眉間にしわを寄せる。しかし脳裏に浮かぶのは幼い日の記憶だ。戦火に呑まれ怯えていた日、エンタープライズに救われ守られた日、恐怖におびえ喋ることもできなかった幼い自分の背中__

 

「……惑星に向かうわ。航路を設定」

「艦長代理!?正気か!?クリンゴン領域で許可を得てない船が航行してるんだぞ、それに惑星はメイフラワーに攻撃された……そこに俺たちがいたら怪しまれるのはこっちだ!この船の乗組員全員を危険にさらすつもりか!?」

 

ヴィルラがジルの肩をつかんで吠える。しかしジルにも譲れない過去と思いがある。

 

「助けを求めている以上は無視することは艦隊の理念に反する、ここで彼らを見捨てたら宇宙艦隊に入った意味がないわ!」

「それでクリンゴン艦隊に遭遇したらどうするつもりだ!あいつらが冷静に話の通じる連中か!?」

「私がどこで誰に育てられてきたか知らないわけじゃないでしょう!?クリンゴン人のことはよく知ってるわ!」

「それで話が片付くなら何度も戦争なんてやってない!あんな戦争キチガイどもと同盟を組めてるだけでも奇跡に近かいんだぞ、話が通じるような相手なら俺だってここにはいなかった!」

 

ジルがヴィルラの腕をはらいのけ、互いに一歩も譲らない2人の争いはエスカレートしていく。今にも殴り合いに発展しかねない剣幕にシンやパヴァロッティ、ルカは動くことができない。

険悪な空気が流れる2人の中に割って入ったのはエリザベスだった。

 

「2人とも、や、やめて!今はそんなことしてる場合じゃないよ……!」

「エリー……!」

「エリザベス……ならお前はどっちが正しいかわかるのか!?」

「そんなこと……わかんない、けど……けれど、ジルは艦長だよ。艦長に名乗らなかった私たちが異議を唱えるなんておかしいよ」

 

ヴィルラがエリザベスの言葉にぐっと口をつむる。まっさきにジルに艦長の責任を()()()()()のは彼だ、とてもそのことを言われては何も言い返せない。

エリザベスは泣きそうになりながらも、覚悟を決めた目でヴィルラを見つめる。

 

「私たちがジルを艦長にしたんだから、ジルの命令には従う。それが私たちのすること」

「……わかった、俺が悪かった」

 

後ずさったヴィルラがそのまま自分の席に座り込み、しばらく頭を押さえて考え込む。

やがて彼も覚悟を決めてジルのほうに向き直る。

 

「悪かった、ジル……お前の気持ちを考えずに。行こう、その星に」

「ええ、救える命があるはずよ。今度、ヴィルラのことも教えてね」

 

ジルは柔らかく微笑むと艦長席に座り指示を飛ばしていく。

 

「パヴァロッティ、コースをセットして」

「よしきた、もう設定済みですよっ、と!」

「シン、最大ワープスピードで向かうわよ!」

「了解!最大ワープスピード!」

「__発進(Engage)!!」

 

 

 

ワープスピードで飛行し、モニターには星々が後ろへとすっ飛んでいく姿が映っている。画面を見ながらヴィルラの脳裏には自分の過去を思い返していた。

 

そもそもを言えばフェレンギ同盟出身のヴィルラが異国である惑星連邦に住み、宇宙艦隊に所属できているのはかなりイレギュラーなものである。なぜ彼が惑星連邦にいるのか、その原因となったのがクリンゴンであった。

彼は大手商人の両親のもとに生まれ、親族とともに巨大な財閥を形成していた。何不自由することない、裕福な暮らしが彼の世界だった。親の商売の跡を継ぎ、安定した降伏な人生が待っているはずだった。

 

そんな彼の人生が大きく転換した事件が起きたのはヴィルラ一家の所有するダイリチウム鉱山小惑星へ向かっていた時のことだった。オリオン人の宇宙海賊に襲われた一家は自らのデコラ級宇宙船*3を乗っ取られちりじりに囚われてしまう。

それでもギリギリで救難信号を発したが、助けに来たのはクリンゴンの防衛艦隊だった。彼らは人質となるヴィルラ一家や召使い、乗組員を無視して攻撃を始めた。四方から滅多打ちにされ船体はひび割れ、パワーダウンを起こす。幸いにもそれによって牢屋のシールドが落ちたことでヴィルラと一部の召使いは脱出することができた。しかし両親やほとんどの乗員は脱出できず船と運命を共にした。

 

その後、脱出ポッドで宇宙を漂流するヴィルラらを遅れて到着した宇宙艦隊が拾い上げ、ヴィルラは召使いらのために宇宙艦隊へと入隊することになった。

 

(クリンゴン防衛艦隊に見つかれば戦闘はまぬがれないはずだ、なんとか脱出はできるように艦隊を無力化する方法を考えるんだ……)

 

最善を考え、ヴィルラはクリンゴンの船舶のデータを読み返し始める。もし艦隊が相手になっても帰れるように……

 

 

 

 

 

惑星の衛星軌道上に到着したムツ。しかし戦闘はすでに終わった後だった。惑星表面は焼かれ、宇宙からもみえるほど街並みは破壊し尽くされている。

センサーを操作していたヴィルラが首を振ってジルを見る。

 

「ダメだ、地上に生命反応はない。生存者なしだ」

「そんな……」

 

唇を強く噛み、苦しい表情でモニターに映る惑星をにらむ。エリザベスがジルを心配そうに見つめるが、ジルはまだ希望を捨ててはいなかった。

かつて自分がどうやって救われたのか__昔の記憶を掘り起こす。

 

 

 

ロミュラン艦の攻撃を受けたあの日、避難シェルター替わりに地下倉庫に入れられたジル。通常の船舶のセンサーでは彼女の存在を検知することはできなかった。しかしエンタープライズはジルを捕捉し彼女を救出してみせた。

 

倉庫の中で縮こまる幼いジル、倉庫の灯りに電気は通わなくなって何時間が経ったか、暗闇の中では時という感覚すら曖昧になっていく。ふいに倉庫の扉が強く揺さぶられジルは小さな肩を震わせた。何度も強く揺さぶられた扉は最終的にスライドから引っこ抜かれ、遠くに投げ捨てられる。

室内に差し込む光とともに中に入ってきたのはロミュラン人__ではなく、宇宙艦隊の制服を着た士官だった。黄色の制服に無機質な白い肌と金色の瞳……地球人でもどこかの異星人でもない、非常にまれな人口生命体(アンドロイド)の宇宙艦隊士官、エンタープライズ操舵手を務める”データ”少佐だった。

 

「怖がることは無い、私たちは君の味方だ」

 

恐怖で口のきけないジルに近づきながらデータは答える。ジルは変わらず怯えていたものの、データはおかまいなしだ。

 

「センサーの出力周波数を細かく調整していたんだ、そしたら君の反応があった。君以外は見つからなかったがね」

「データ、もっと言葉を選べ。相手は子供だぞ」

 

無神経に子供向けではない言葉を投げかけるデータの後ろから屈強な体格の髭を蓄えた男性、エンタープライズ副長の”ウィリアム・T・ライカー”と医師の女性”ビバリー・クラッシャー”が現れる。

ドクタークラッシャーはトリコーダー*4を取り出すとプローブをジルに当てて診察を始める。その間もデータとライカ―は先の発言について話し合っていた。

 

「副長、その__言葉を選ぶ、とは?」

「相手は子供だ、親や友人を亡くして傷ついてる。安心させる言葉を言うべきだな」

「たとえば?」

「例えば……そうだな」

 

ライカ―がデータに手本を見せようとジルの前にかがむ。熊のように巨大なライカ―だ、目の前にいるだけでもまぁまぁな威圧感がある。ジルは思わずビクリと跳ねて背後の壁に同化しようとする。

 

「やめておきなさいライカ―副長、あなたの体格じゃ子供を怖がらせるだけですわ」

「むぅ……」

 

ドクタークラッシャーにいわれて不服そうな顔をするライカ―。その一方でデータはジルの隣にかがむとさっきの自分の話のつづきを始める。

 

「センサーの周波数を368.24にセットすると地下に生命反応があるのが確認できた、けれど微弱すぎて拾えない。そこでタキオン粒子の照射を行って君の位置を割り出した……昔の医療機械のレントゲンと同じ方法だ」

「データ、そんな話は子供は退屈だ」

「そうでしょうか?彼女はバルカン人ですよ」

「データ、ここにバルカンアカデミーはないぞ」

 

ライカ―とデータのやり取りの間にドクタークラッシャーの診察が終わる。

トリコーダーにプローブを収めるとジルの頭をやさしくなでながら2人に振り返る。

 

「診察は終わったわ、エンタープライズに戻りましょう」

「わかった__エンタープライズ!4名転送!」

 

ライカ―が胸のコムバッジを叩いてエンタープライズに通信を入れ、転送ビームが照射される。ジルの皮膚にぴりぴりとむずがゆさが走り全身が光に包まれ__

 

 

 

__センサー周波数を368.24にセット、再スキャンして」

「? わかった、センサー周波数を変更……」

 

ヴィルラがジルの指示に合わせてセンサー周波数をセットし再度惑星をスキャンする。険しい顔をしていたヴィルラの表情にしだいに光がもどってくる。

 

「……センサーに反応が!誰かいる、地下だ!」

「ほんとかよ!こんな方法で見つけれるのを何で知ってたんだ?」

「ふふ……エンタープライズの入れ知恵よ。ヴィルラ、タキオン粒子を周辺に照射、位置を特定して」

「了解、艦長代理」

「エリー、私は地上に向かうわ。しばらく船をお願い」

「が、がんばる……がんばります!」

 

ジルはシンをつれてターボリフトに乗り込み転送室へと向かう。地上に降りるメンバーはジルの中ですでに固まっていた。

 

 

 

 

 

転送室にいる2人に艦橋から通信が入る。

 

『艦長代理、1名生存者がいることは確認しました。座標も特定済み……逆に言えばそれ以外に生命反応はなかった、とのことです』

「ありがとうエリー。これから座標位置に向かうわ。最後の一人が来てから、ね」

 

そう言ってジルが扉に目を向けるとちょうど開いてその最後が入ってくる。医療部門長のドクターサンだ。

 

「人命救助と聞いたが、間違いないんだね?艦長代理どの」

「ええ、1名の生存者を確認しました。この1人を救うためにどうか同行をお願いします」

「もちろんだとも」

 

3人が転送パッドの上に乗ると全身を転送ビームに包まれる。視界が光に包まれ皮膚に刺激が走り、光が収まると目の前に今までのムツ船内とはまったく異なる世界が広がる。地球とはかけ離れた造詣の建物が立ち並び、田園風景が広がっている。その一方で建物や土地は焼けおちて未だに燃え続け熱を帯びている。

 

ジルが懐からトリコーダーを取り出して周辺のスキャンをはじめ、画面の表示に従って歩き始める。

ジルのあとを歩く2人だが、初対面なのもあってシンはドクターサンに懐疑的な目を向ける。ましてサンの飄々とした態度がシンにとっては気に入らないのだろう。

 

「ジル、ほんとに信用できるのこの人?ヤブ医者じゃない?」

「シン、その人上官よ。腕はわからないけど相応のものはあるはずだわ」

「そうとも、私はいままで様々な大変な手術もこなしてきたんだ。それこそ子宮外妊娠の帝王切開の手術からボリア人的解決法*5までなんでもな」

 

ドクターサンの言葉にジルとシンが顔を見合わせる。2人は少しの間黙っていたが、ジルが先に口を開く。

 

「……間違ってもその選択は無いようにお願いしますね?」

「……冗談のつもりだったんだがな?」

 

なんともわかりにくい冗談だ。

 

トリコーダーの指示に従って歩いて行った先にあったのは小さな地下倉庫の扉だった。電気も通っておらず開けることはできない。しかしそこはバルカン人の血を持つジルの出番だ。華奢に見えても地球人よりも筋力のあるジルであれば動かない扉をこじ開けることも可能だ。

フェイザーで物理ロックを溶かしたのちに力任せに扉を少しづつ開けていく。人一人が通れるだけの隙間ができたことでようやく人命救助を行うことができるようになる。

 

「シン、外を見張って。敵が来るようならフェイザーを使っていいわ」

「了解、ジル」

 

ジルの指示で扉の外で待機するシン、中にはドクターサンとジルの2人で入ることになる。

倉庫の中は狭く、換気扇もない。湿気が多く息苦しさを感じる。

 

(私と同じ……)

 

幼いころ、ジルが母親に避難させられた倉庫もこのような場所だった。狭くて湿気っぽく、息苦しい。今になってわかるが、こんな環境に2人でいれば密室ですぐに窒息して共倒れになっていたかもしれない。だからジルだけを中に入れて自分は死ぬ覚悟を決めていたのだ。

今更になって母親の覚悟と思いを理解し感傷に浸りたくなるが、それどころではない。天井までかかる巨大な棚は農作物などで埋まっており視界は悪く、どこに生存者がいるのかわからない。まいて相手は宇宙艦隊が攻撃したと思っているのだから自分たちの姿を見れば攻撃してくるかもしれない。こっちがさきに見つける必要がある。

 

「でておいで~……おじさんたちは怖くないよ~……」

「この状況ではむしろ怖がらせるんじゃないでしょうか……」

 

ドクターサンに小声でツッコミを入れながら奥へと足を踏み入れる。突き当りの壁まできた時だった。先行していたジルに何かが左側から飛び出した。とっさに左腕で防御する姿勢を取ったが、その腕に鋭い痛みが走る。

正体はクリンゴン人の少年だ、年齢は地球人換算で16歳になるかどうかというほどだろうか。武器を持ってはいなかったが、自分の鋭い歯でジルの左腕に嚙みついたのだ。

 

「艦長代理どの!」

「っ……クッ……待っ、て!」

 

医療器具の中から鎮静剤を取り出してクリンゴンの少年に打ち込もうとするドクターサンだが、それをジルが制する。バルカン人だからわかる、少年のわずかな感情の波動(テレパス)がジルに自分がしなければならないことを教えていた。

 

(怒り、悲しみ、寂しさ……この子の感情が伝わってくる!押さえつけるんじゃダメ、この子を安心させること……!)

 

左腕の痛みに耐えながらもジルはクリンゴンの少年を抱きしめる。突然のぬくもりに驚き少年の嚙む力が弱まり傷口からジルの緑色の血*6がどっと溢れ制服を汚す。そんなことも意に介さずジルは少年にクリンゴン語で話しかける。

 

《大丈夫、だれも君を傷つけない。私は君の味方よ》

 

人肌のぬくもり、クリンゴン語、極度の緊張からの解放、様々な要因が少年に重なっていた。限界をきたした少年が気絶し、身体を彼女に預ける。

左腕の痛みで少年を支えられず、尻もちをつくように崩れ落ちると少年を胸で抱き留める。ドクターサンがまっさきにジルの診察をしようとするがジルがそれを遮る。

 

「サン大尉、先にこの子を……」

「いいや、先に艦長代理どのの診察が先だ。傷口からの感染症は命に関わる、医師の言葉は聞くべきだ」

「大尉……わかりました、するのであれば船に戻ってこの子と私と同時に診察をお願いします。それからでも遅くないはずです」

「まったく……わかった、そうしよう」

 

両腕の使えないジルに代わってドクターサンがムツに連絡を入れて4人が船内に転送される。しかしムツのほうでも非常事態が発生していた。

 

 

 

ジルたちが船内に戻るのとほとんど時を同じくして。

ムツ船内に緊急警報(Yellow Alart)が鳴り響き、艦橋は緊迫した空気に包まれていた。艦橋のモニターに映るのは3隻のクリンゴン・バード・オブ・プレイ*7がムツを囲むように動いていた。

ほんわずか数分前に遮蔽装置をつかってムツの前に現れたこの3隻は無警告でディスラプターを照準していたため、ムツも緊急警報が発令されシールドを戦闘出力に急遽あげていた。

 

緊迫する艦橋のターボリフトが開いてシンが駆け込む。

 

「すいません、ただいま戻りました!」

「シン!……ジルは?」

「腕をクリンゴン人に噛まれて負傷して治療を受けてます」

「そんな……」

 

急遽で船の指揮をしていたエリザベスが絶望した表情をする。気弱な彼女の性格上、どうしてもジルを心の支えにしがちだったためにジル不在は精神的にダメージが大きかった。

しかし心の揺さぶられるエリザベスをヴィルラが叱責することで彼女はなんとか心を持ち直した。

 

「しっかりしろエリザベス!今はお前が副長だ、ジルに船を任されているんだから気をしっかり持て!」

「っ!う……うん!クリンゴン艦に通信がつながらないか試してみて!」

「了解、副長代理!」

 

エリザベスの指示でヴィルラが通信装置を操り始める。先制で相手が攻撃する姿勢を見せてきたものの、戦闘をできる限り避ける努力をするのはアカデミーで習うことだ。

ヴィルラが何度も何度も通信を試みた結果、ついにクリンゴン艦と通信がつながりスクリーンに相手艦長の()()()()顔が映る。エリザベスは思わず気圧されて顔をこわばらせるが、勇気を振り絞って声を張り上げる。

 

「こちら、こちら惑星連邦宇宙艦隊のUSSムツ副長エリザベス・バリーです!こちらは現在人命救助中であることを示しているはずですが、攻撃する動きをしている理由を教えてください!」

『何を言うか、そちらが先にこの惑星を爆撃したのだ!人命救助など信用に値せん!そもそも無許可の連邦艦が立ち入りしているのだ、攻撃されても文句はあるまい!』

 

予想どおりの返答に唇をかむ。しかしここで引き下がるわけにはいかない。こっちも持ちうる限りの情報で相手を言い負かすだけだ。

 

「私たちはクリンゴン退役艦の巡洋戦艦クック、およびクリンゴン人に拿捕されたUSSメイフラワーの攻撃を受け、カサエ宙域から退避のためにクリンゴン領内に侵入しました。真意については宇宙艦隊提督ジャン=リュック・ピカードに確認すればわかるはずです!」

 

もし相手がクリンゴン防衛艦隊であれば相応にアクションを起こすはずだ。しかし、相手の反応はエリザベスの予想しているものではなかった。

 

『巡洋戦艦クックは我が艦隊の旗艦だ。艦隊旗艦がそのような行動をした記録は無い!』

 

エリザベスが思わずヴィルラの方を見る。敵艦の識別を行っていたヴィルラもこの反応は想定外だったようで驚きを隠せない。

ちょうどこの瞬間にヴィルラの艦種識別が完了した。その内容を見たヴィルラが目の前にいる艦隊の異常さに気が付いた。

 

「エリザベス、奴らはD-12型のバード・オブ・プレイだ!正規軍では全艦が退役した欠陥品だ!こいつらはクリンゴン防衛艦隊じゃない!!」

「じゃあ……いったい……!?」

 

驚いた顔でスクリーンに向き直るエリザベス。画面に映るクリンゴン人がにやりと笑った。

 

『我々はアリアス総督の艦隊__かつての力強い偉大なクリンゴンを取り戻す者。クリンゴン帝国の礎となって死ね!』

「__非常警報(Red Alart)!戦闘態勢!!」

 

クリンゴン艦からの通信が切れると同時にエリザベスが指示を出し、艦内の警報灯が黄色から赤色に切り替わる。

しかし相手は欠陥があれど3隻、それも搦め手を使ったとはいえエンタープライズDを撃沈した*8船だ。正面戦闘ではムツでは勝ち目がない。エリザベスがヴィルラに策が無いか尋ねる。

 

「ねえヴィルラ、なにか弱点とか無いの?」

「……ある。D-12型はプラズマコイルの欠陥で遮蔽装置が意図せず動作することがある。こっちからイオン化パルスを放てば相手は遮蔽装置が動作しシールドが使えなくなる」

「そこを撃てば逆転できるって寸法だな?楽勝じゃないか」

 

パヴァロッティが口をはさむがヴィルラが首を横に振る。

 

「だが相手は3隻だ。3隻同時に撃沈できるのか?」

「光子魚雷で狙うのは?」

「いや、現実的じゃない。左右の船への照準が限界角度に近い以上、命中が望めない」

 

シンが提案するがとても不可能な案だ。打つ手なしか、そう考えていたときにルカが案を出した。

 

「別に撃沈しなくてもよくないかな?エンジンだけ破壊して無力化すれば……」

「……その手は考えなかった。理論上は3隻同時の照準と攻撃は可能だ」

「けど3隻同時照準なんてそんなこと誰ができるの?」

 

名案ではあったが、シンが不安点を口にする。フェイザーの照準装置は単一の敵を狙う事にはたけているが、複数を同時に照準することには不向きだ。

だがそれを可能にする人物が一人、いるとしたら?

 

「それは私がやるよ」

「エリザベスが?できるのか?」

「……任せて」

 

パヴァロッティに今まで見たことない自信にあふれた顔で応える。こうなればやることは決まった。エリザベスが次々に指示を出してく。

 

「ルカ、パヴァロッティ、イオン化パルスを準備して!シンは船を下降させて相手を狙いやすく!」

「わかった!」

「了解だ!」

「了解、副長代理!さまになってるよ!」

 

全員が配置につくと行動を開始する。シンの操艦によりムツはスラスターで少しづつ下降していく。それによりバード・オブ・プレイの下面を照準に納められるようにする。

ルカが機関コンソールを操作してナビゲーション・デフレクターにイオンを注入していき、パヴァロッティが状況をモニタリングする。

 

「イオン化パルス放射準備完了、いつでも行けるぜ!」

「うん__放射!」

 

イオン化パルスがナビゲーション・デフレクターを中心に放射され、それをもろにくらったバード・オブ・プレイ3隻は遮蔽装置の誤作動によりシールドが消失する。そのわずか1秒の隙をエリザベスは見逃さなかった。前と左右、円盤の上部に付いたフェイザー砲が3隻のエンジンを正確に狙い撃つ。

エンジンを破壊された3隻は遮蔽装置の動作とエンジンからのエネルギー供給の断絶により姿が見えたり消えたりと明滅を数秒くりかえすと宙を漂う羽となった。

 

「シン、コースを連邦領域にセットしてワープ1!急いで!」

 

エリザベスの指示でムツは動き出す、今度こそ連邦領へ……そして新たに得た情報と救い出した少年は事件を新たな展開を迎える。

*1
全長1kmほどのロミュラン帝国の戦艦。建造当時最強といわれたほどの軍艦でもあり、惑星連邦の船でも対等に戦うことが困難な相手だった。

*2
レプリケーターというエネルギーを物質化し生成する装置、そのなかでも食事の生成に特化したもの。味など質には劣るがスペース確保の容易さから24世紀ではほとんどの宇宙船に装備されている。

*3
フェレンギ人の宇宙船、カブトムシのような外見をしており、強力な武装と採掘船・商船としての大規模な貨物積載量を誇る。

*4
宇宙艦隊士官が携帯する探査、分析装置。医療従事者はメディカル用のプローブが付属するモデルを携帯する。

*5
ボリア人の文化では深刻な苦痛に陥った時、安楽死が推奨されている。つまりここでのボリア人的解決法とは……そういうことだ。

*6
バルカン人の血液は地球人とちがい、銅成分が含まれており緑色をしている。

*7
クリンゴンが利用する小型の戦闘船舶全般を指す。種類は非常に豊富であり、外見は同じでもサイズ違いだったりとバリエーションに富んでいる。

*8
スタートレック劇場版7作目”スタートレック ジェネレーションズ”での出来事。クリンゴンはとある方法でエンタープライズDのシールド周波数を把握したことでシールドを無効化して攻撃、エンタープライズDを撃沈に追い込んでいる。




U.S.S.エンタープライズ
艦隊登録番号:NCC-1701-E
艦級:ソヴェリン級
惑星連邦において6代目となるエンタープライズ。先代であるエンタープライズD同様に指揮官はジャン=リュック・ピカードが務めるが、乗員は大規模な変換がされている。対ボーグ戦を想定して開発されたこともあり現在運用されている惑星連邦の宇宙船の中では最強クラスの能力を持つ船である。
ボーグの第二次地球侵攻阻止、過去改変の阻止、惑星連邦によるバクー星強奪の阻止、ロミュラン政変による地球破滅の阻止などに尽力した。

U.S.S.エンタープライズ
艦隊登録番号:NCC-1701-D
艦級:ギャラクシー級
5代目エンタープライズであり、作中時点ではすでに撃沈している。乗員数1000人を超える深宇宙探査船であり、長期間の航行を前提とした作りが特徴。艦内には船員の家族が同乗し、学校なども設けられていた。
理想郷ネクサスをめぐる騒動のさなか、クリンゴン艦によって撃沈される。
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