エゴにまみれた危険な悪魔 作:名無しの位階1の虫ケラ六年生
キリヲくん。人の心配してるんやないで、自分の尻気ぃつけんとちゃうか?
入間くん視点です
入間くんが好きな人は先に謝っておく。
「入間くん、今回は僕の完敗や」
「でも、覚えといて、悪意いうんは割と近くに潜んでるもんや」
「僕みたいな元祖返りに、気ぃつけてな」
キリヲ先輩は、そう言って学校から去った。
“元祖返り”というのはなんなのだろうか
両親に悪魔に売られて、魔界に来てから、いろいろあった。
僕は、おじいちゃんやオペラさん、アズくんやクララ、クラスメイトたち、先生。いろんな悪魔と出会った。
魔界は元々住んでいた人間界とは大違い。
人間は悪魔にとって捕食対象で、最初はビクビクして生きた心地がしない日々だったけど、友達ができて、周りに支えられて、僕は楽しかった。
魔界なんて恐ろしい響きだけど、僕の周りには良い人ばかりだった。
でも、「絶望に興奮する」というキリヲ先輩をみて、
ここは魔界で、僕は人間で、キリヲ先輩はどうしようもなく悪魔だった。
キリヲ先輩の「僕みたいな元祖返りに気ぃつけてな」というのは、魔界に来て少ない僕にはわからない。
でも、キリヲ先輩みたいな、悪魔らしい悪魔は知ってる。
「お、おいしーーい!!!」
「そうか?良かった」
「こ、これ凄いよ!!こんなに美味しい紅茶初めて飲んだよ、なんか気持ちもほっとするっていうか」
「作ったやつにそう言っとく。喜ぶよ」
「確かに…これはなかなか」
「絶品だねぇ」
「このクッキーもとっても美味しいよ!!」
「上品な味ですね」
前夜祭が終わり、今日は本祭。
おじいちゃんとオペラさんといろんな出し物を周った。少し休憩しようかと言う話になり、とても雰囲気のあるお洒落な喫茶店を見つけたので、そこに寄ることになった。
ドアを開けて中に入ると、カラン、コロンとドアベルが鳴り「いらっしゃいませ」と見知った悪魔が出迎えてくれた。
そう、僕が魔界に来て、一番最初に悪魔だと感じた、
その悪魔は……
「そうかそうか。喜んでもらえてなによりだ。まあイルマには量が足りんだろうが」
僕を揶揄ったように笑う男の悪魔。
クラスメイトのアバドン・マルスくんだ。
初めて会ったとき、とても綺麗なひとだと思った。
多分数分見惚れていたと思う。
綺麗な赤い眼に、輝いてみえる髪、身長は僕なんか余裕で超えていて、多分とてもモテる顔をしている。
僕は、そういうのに詳しくないけど、アバドンくんはいつも女の子に囲まれているから、実際にモテてていると思う。
アズくんにはあまり関わらない方が良いといわれていたし、いつも女の子に囲まれているから、話したことはなかった。クララもなぜか、アバドンくんに会うと警戒して威嚇?みたいな行動を取り出す。
ずっと2人のことを不思議がっていた僕だったけど、ある日その理由が分かる出来事があった。そして、僕が魔界に来て初めて悪魔は本当に悪魔なんだと認識した時である。
あれは、選択科目の授業が始まった事が発端だったように思う。
マルバス・マーチという先生が突然
かなり興奮した様子で
「アバドン・マルスくんはいるかい!!!???」
あまり関わりのない先生が突然異常な様子で勢いよく来たものだから、アバドンくんのお付きのひとらしいメイドさんはびっくりしたようだ。
なぜか、アバドンくんの胸ぐらを掴みだした。
「ッ坊ちゃん!!またなにかしたんですね、キリキリ吐け!!!大人しくお縄につけ!!」
「おい、俺お前の主人だぞ」
「あ、もしかして…アバドン・マルスくん?お噂はかねがね……拷問界のカリスマ的存在!
その、担当強化が拷問学で…ぜひ良かったら今度の授業に実演をお願いしたくて……。いや、生で見てみたいっていう私情じゃ無いですよ!!生徒のためにどうか!」
どこからともなくメイドのメイさんがハリセンを取り出して構える。
「私は、許してませんからね!!私をご、ごうもんしたときのことを実体験として書いて本を出版するなんて!!許さないっ!!」
「本全て購入して愛読してます!!授業の参考にもしてますし、生徒にも本をお勧めしてるんです。サイン下さい!!」
目の前で繰り広げられる会話に僕はついていけなかった。
拷問とか、怖い単語が飛び交っているが、なんなのだろうか。
「アバドン・マルス。趣味で拷問の本を出版したところ、大ヒットした男です。何冊が出版されてファンがつき人気が高いです。
まあ、拷問学という科目は存在していますが、マニアックなジャンルでもありますので、ファン層は特殊ですね」
「へ、へぇ」
僕がぽかんとして眺めて見ていたところを横からアズくんが説明してくれる。アズくんはなんでも知ってて詳しいなと思う。いつも助かってばかりだ,
内容がちょっと人間の僕からすると、理解できなかったものなのでちょっと引いたけど
それから、アバドンくんはマルバス先生となにか特殊な会話で盛り上がり、メイさんが悍ましいものを見る目をして教室から出ていけと言ったので、2人は仲良く喋りながら素直に出て行った。
……授業の、その、実演のことでも打ち合わせするのだろうか。
僕はこれが魔界の常識か、慣れそうに無いなぁと遠い目をした。
そして決定的なことが起こる。
ロビン先生が担当の使い魔交流の授業の時であった。
カルエゴ先生を召喚し、射殺されそうな殺意を受けながらもかけっこしたりフリスビーをしたりしていた時であった。
事件が起きた。
「きゃーーー!!!」
叫び声が上がった。
突然のことに驚き、声の上がった方を目で追う。
「な、」
「ッ」
僕は当然驚いたし、心身ともに疲弊したカルエゴ先生までもその光景に息を呑む。
ボキッ、ボキッという何かを折るような砕くような音が鳴っていた。叫び声が上がって訪れた静寂にその音は響いてよく聞こえた。
それともうひとつ。
くぐもったような声。高い声が懸命に押し殺されたような音。
アルバスくんが女の子の腕を掴みその細い指を一本一本丁寧に折っていた。女の子の指は、青いような紫色に染まり内出血をしていることがわかる。
「ちょ、ちょっと、なにしてるの君!?」
「なにか問題でもあるか?」
「問題しかないよ!?僕は使い魔と交流してと言ったんだ!!」
「今、してるぞ」
ロビン先生が驚いた様子で、アバドンくんの行動を止めに入ろうとするが、アバドンくんの手は止まらない。音は止まらない。
僕は気付けば走り出していた
「お、おいイルマ」
カルエゴ先生の声も聞かずに、女の子からアバドンくんを離さないといけないと思い、僕は駆け出した勢いでそのままアバドンくんの腹に頭を突っ込み、アバドンくんの腰に手を回して掴むように、押し退けようとした。
地面に倒してしまってもいい、そんな勢いで
とにかく、女の子がこれ以上傷付くことはダメだと思った
「ッ、こ、こんなのは、交流じゃなっ!あ、え?」
衝動的になっていた。考えなしにぶつかった。
それが良くなかった。いや、結果として女の子とアバドンくんの距離は離れた。アバドンくんは突然来た僕に意識を向けて女の子の指を折るのをやめたから僕の行動は正解だった。
けど、それは同時に不正解だった。
予想より、アバドンくんは体幹が良かったこと。
僕に押されて体勢を崩して後ろに倒れ込むとみせかけて、突っ込んだ僕の腕をを掴みグイッと引き寄せた。そしてお互いの位置を入れ替えるように反転させられた。
気づけば、立場が逆になっていた。
危険回避能力も、腕を掴まれていては役に立たない。回避、できない。
衝撃に備えるように、ぎゅっと目を瞑った。
「っ、い」
地面に背中から落ちた。痛みで思わず声が出る。
「えらく、積極的だな。イルマ」
「え、」
真上、しかもとても近くで声がかけられたので、思わず瞑っていた目を開けた。
そこには、綺麗な顔。
赤い血のような色をした瞳が僕のことを見つめていた。
目があった。離せない。
綺麗な瞳には得体の知れない感情が込められているようで怖い
「イルマ、俺の邪魔しただろ。なんだ、お前も虐められたいのか」
「ッ」
アバドンくんの言葉に息を呑む
僕はアバドンくんに覆い被さられるような体勢になっていた。僕の頭を挟むように、逃げれないように両手が置かれている。
受け身を取るために手をついたのだというのはわかる。けど、とても怖かった。
「ゆ、ゆるし……て」
口から本能的に出た言葉は許しを乞う言葉だった。
僕は悪いことをしたのか?そんなことアバドンくんの前では関係なかった。
恐怖は本能は、僕を勝手に動かした。
「……可愛いいなぁ。傷物にしてやろう。とびっきりの
たくさん泣いて鳴いて泣き喚け」
アバドンくんの顔は興奮したように、瞳は熱を帯びて、僕を射抜く。
恐怖で体が震えて、動けなかった。
左手をそっと握られた。
指を絡ませられる、優しく撫でられる。
「どの指から折られたい?左手の薬指からにするか、あぁロマンチックだなぁ?」
僕、今から、どうなっちゃうんだろう
「ッ貴様あ!!!!」
アズくんの声がした。かなり怒っている声だ。そして、熱い。アズくんが炎を出したようだった。
「粛に」
「!」
バチバチ、と電気のような稲妻のような音がする。
辺りが眩しくなった、逆光のようになり覆い被さったアバドンくんの顔に影がかかった。
「アバドン、そのくらいにしろ。アスモデウス貴様もだ。怒りはわかるが、こんなところで炎を出すな」
カルエゴ先生のケロベロスが、アバドンくんの頭に手を乗せていた。
ケロベロスが低く脅すように唸る。
アバドンくんが、今日初めて真顔になった。
「今すぐ、獣の手をどけろ。さもないと殺す」
瞳には、感情が見えない。ハイライトが見えなくなったように暗い。
僕に向けられたものではないとわかっていながらも、背中にひんやりと汗が出た
本能が恐怖していた。感情が追いつかない。涙が出る、溢れる
なんで、僕泣いて……
こわい
「……ケロベロス」
カルエゴ先生は、僕同様にアバドンくんの異質さを感じ取ったのか、ケロベロスに手を退けるように命じた。
「坊ちゃん!!な、に、しているんですか、!か!」
メイさんが慌てたように駆け寄ってきて、アバドンくんを僕から引き剥がしにかかった。
寝転んだ僕と目があって、メイさんは悲痛な顔をした。
僕、そんなに酷い顔をしているだろうか……?
「ッ、ケイも手伝いなさい!!」
「え、あ、はいっす!!」
「び、びくともしない」
「イルマ、ごめんな。怖がらせた。
涙出てるな可愛い。
また今度じっくりと
左手の絡めた手を持ち上げられる。
そして、手をアバドンくんの口元に持っていかれた。
薬指を、ガブッと噛まれた
噛まれた
「ッ、」
皮膚が破れ
血が溢れる感覚がする。
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。
僕は人間で、彼は悪魔だ。
この前の飛行試験の際に、僕は人間の特性を知った。
金剪の長の巣に意図せずに入ってしまったあの時、雛がいて、怪我してていたので手当てをしようとした。攻撃の意思が無いことを示すために自分の手を切り、ハンカチを包帯の代わりに巻いてみせた。
雛が怖がらないように、目の前で実演したのだ。
雛は警戒を解いてくれたらしく、僕は雛の怪我の手当てをしようとして、傷口に近づいた時、僕の傷口に巻かれたハンカチから漏れ出た血が一滴、ぽたっと落ちた。
するとどうだろう。驚くことに雛の怪我が修復されるように治っていった。
この出来事で、僕は、魔界では人間の存在は重要なのだと悟った。
そして、目の前の悪魔に戻る。
多分、僕は食べられてしまうだろう。この悪魔によって僕は殺されてしまうかもしれない。
人生最大の危機をヒシヒシと感じ取っていた。
ちゅ、ちゅと血を吸われる。
アバドンくんの目は大きく開かれていた。
やはり、僕はここで終わりなのか。
……いや、まだだ。
絶望感に浸かったってなにもならない。最後まで足掻け、諦めたら駄目だ。
僕は折れかける気持ちを奮い立たせる。
人間界での記憶が走馬灯のように頭の中をかける。僕はクズな親の元に生まれて、幼い頃から金を求めて東奔西走、多くの修羅場を潜ってきた。
まだ、魔界に来て命の危険を感じたのは、これが初めてじゃないか。こんなところで絶望するにはまだ早い…!!
僕は、諦めない。
ドクドクドクと心臓の音がうるさい。
恐怖で口が震える。けど、
諦めたくない
「アバドンくんッ」
「イルマお前「いい加減にしろーーー馬鹿坊ちゃんーーーー!!!!」
バッシィィン!!!!
ハリセンの音がバビルスに響いた。
「……お前は、いつも良いところで邪魔する」
「当然ですよ。それに、今回は事が事です。合意の上、または身内ならば、まだわかります。
が、無理矢理は認められません」
「ったく、イルマ今度時間を作れ」
「イルマさん作らないで良いですからね」
メイさんのおかげで、アバドンくんは僕から体を離した。
本当コイツがご迷惑をと、メイさんが僕に申し訳なさそうに謝る。
「い、イルマ様っ!お、お怪我がは」
「イルマち、大丈夫!?絆創膏あるよ!!」
アズくんが血相を変えて詰め寄ってくる。クララも心配そうにしている。
そっかあ、僕には友達がいるんだ。
心配してくれる人がいるんだ。、人間界ではそんなの、なかったなぁ……
「びっくりしたけど、大丈夫、」
僕は左手を2人に見せた。
出血は止まり、牙の後がついているだけであった。
「絆創膏は、欲しいかな」
パッと見は、すぐ治るような怪我だ。
よく見ないと、噛まれた後もはっきりとわからない。
この傷はすぐ治るだろう。けど、本当の意味で僕からこの傷は消えてはくれないんだなと思った。
アバドンくんとのこの出来事は彼の言っていたように、
あの顔、あの瞳、アバドンくんは多分1番、悪魔らしい悪魔だ。
だって、あのアバドンくんの目はキリヲ先輩よりずっと怖かったから
「ールマ、おい、イルマ」
名前を呼ぶ声で僕は意識を戻した。
「え、あ、ごめん。ぼーっとしてた」
僕の顔を覗き込むようにアバドンくんがいた。あのことを思い出すから、ちょっとやめて欲しいけど、怖いから言わない。
言ったら、また押し倒されそうな気もするし……
喫茶店を出て、また出店を周った。
携帯電話が僅かに震えたので、僕はおじいちゃんとオペラさんにお手洗いに行ってくると言って、トイレに来ていた。
「お前の血は最高に美味しいな」
「ぅ、ぁ」
僕はあの出来事から、こうして定期的にトイレの個室でアバドンくんに血を吸われている。本当に少しだけ吸われているから、貧血にはまだなったことはない。けど、血が抜き取られる感覚はどうしても気持ちが悪い。
慣れることはないだろう
「ふ、っ」
口から、声が漏れ出る。
痛みからか、不快さからか、快感からか。僕は自分の口から出るものの正体がこの頃よくわからなくなってきた。
視界がパチパチと弾けて星が飛ぶ
元祖返りというものを僕はわからない。
けどこの目を、顔を見たら、なんとなくわかった気がする
アバドンくんはタガが外れたように、笑う。
瞳の奥はぐちゃぐちゃで、ずっとみていると吸い込まれてしまいそうな感覚に陥る。
アバドンくんは、壊れている
この後はご想像にお任せしますが、割と健全な関係だと言っておきます。
入間くんは召喚の儀でのオリ主の解剖孕め発言は緊張のあまり、聞こえていませんでした。なんなら、オリ主の使い魔認識していませんでした。良かったのか良くなかったのか
ボーイズラブタグは、今回のような描写が苦手な方が防衛できるように、付けているんですが、本作にはラブなんて存在しないんですよ。