エゴにまみれた危険な悪魔   作:名無しの位階1の虫ケラ六年生

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ロイヤル・ワンの7巻の流れとしては、ほぼ原作通りなのでカットさせてもらい、8巻に入ります。
書籍と同じこと書いたって面白くないので。



第十八話 赤点回避で勉強漬け

 

王の教室(ロイヤル・ワン)

 

そこはかつてバビルスに在籍したたった一名の生徒のために特別に作られた教室であり、その荘厳さと堅牢さは他に類を見ない。

 

圧倒的な実力を持ったその生徒こそ、消失の魔王デルキラである。

 

 

問題児クラスは、問題のある悪魔ばかりいるが、皆得意なものを持ち優秀な生徒であったといえる。

許可書を教職員全員分、3日で集めたのだから。

 

カルエゴ先生もその事実に首を横には振れず、問題児クラスの王の教室への移動が決定した。

俺も少しは貢献しようと、仲の良い教師何名からかサインはもらったが、特に活躍したのはやはり、イルマであろう。

 

城に鍵をかけていた鎖が解かれて、王の教室()は俺たちの教室になった。

 

 

 

「ベットあるな」

 

 

「坊ちゃんやめてください」

 

 

「いや、まだなにもしてないだろう」

 

 

 

「凄い立派で、本家に来た時のこと思い出すっす!!」

 

 

「……本家は大きい城ですし、装飾も多いですから共通点は確かに。しかし、教室の用途だけで作られたこの城と、本家の長い歴史を持つ城とでは、かなり違いがありますが」

 

 

「…言うじゃないかメイ。魔王がいたら不敬罪だぞ?」

 

 

「事実を述べただけです」

 

 

「はは、そうかそうか」

 

 

王の教室はとても煌びやかな装飾が施され、玉座の間なんて部屋もあったが、クラスメイトほどに俺は感動はしなかった。

もう何段階か、スケールの大きい我が家と比べると、まあ、こんなものかと思ってしまう。そうアバドン本家である俺の家は、城なのである。

なので、少しな。いや、教室としてみればあり得ない事なのだが。

 

それはメイも同じだったようで、少し微妙な顔を浮かべている。喜んでいる者たちの手前そんな顔をするなと言いたかった。が、生まれた頃から城に住んでいれば感覚も狂うだろうなというのも本音だ。

 

そこだけを見れば、案外ケイが1番常識を持っていると言えたかもしれない。いや、それはないな。

 

 

 

「坊ちゃんー!!玉座、ありますよ!!座ってみないっすか!?」

 

 

「いや、俺は別にいい」

 

 

 

 


 

 

 

 

終末日が近づいている。

ということは、その前に行われる座学の一斉テストが近づいているということでもあった。

 

王の教室(ロイヤル・ワン)に登校すると、教室の雰囲気が少しヒリついていることに気づいた。

 

 

「……これは、」

 

 

黒板には、大きな字で赤点回避!!と書かれている。

いつも、やる気のないクラスメイトたちがなにやら真剣な表情で机に向かい、教科書と睨めっこをしていた。

 

まさかこいつらが、勉強をしているだと…?

 

 

「皆様、どうやら終末日を満喫したいようですね」

 

 

「そのようだな」

 

 

終末日、長期の休みのことである。

実家に帰るのもよし、師団の活動に勤しむのもよし。遊び呆けるのも堕落するのも、自由だ。

 

ただし、テストの点が良ければ。という条件が付くが…

 

もし赤点を取れば、終末日はカルエゴ先生と補習地獄である。まあ、カルエゴ先生と終末日を過ごせるという点だけを見るならば、俺としてはとても魅力的に感じる。

 

高成績をおさめたものは、位階が昇級し、逆に赤点を取れば位階が降格する仕組みになっている。

そのため、カルエゴ先生と過ごしたいのならば、位階を下げる覚悟で臨む必要があるというわけだ。どうするか……

 

 

「坊ちゃん。俺、テストとか……無理っす」

 

 

隣のケイの口から弱音が吐かれたので目を向けると、この世に絶望した目をしたケイがそこにはいた。

俺とメイは、普段からコツコツと少ない時間でも勉強をしているため、赤点は取る可能性など0に近い。

だが、ケイは別である。

 

座学が壊滅的にダメだ。ウァラクとタメもはれず、負けるというレベル。どのくらいのオツムか察して欲しい。

 

 

「はあ、取り敢えず過去問を入手したので、ケイやってみろ」

 

 

 

数時間後……

 

 

占星 9

魔歴 18

薬学 26

拷問 20

魔術 72

 

 

ボロッボロ………

 

 

「魔術だけは、及第点レベルですね。後は壊滅的です。」

 

 

魔術だけが異常に高く、後の教科は全て赤点。

占星術は特に酷いな目も当てられん。

 

 

 

「坊ちゃんの護衛たるもの、勉学もこなさなければ」

 

 

「そ、そういうメイさんは何点なんすかっ!!」

 

 

 

占星 89

魔歴 100

薬学 82

拷問 90

魔術 80

 

メイにも過去問を解かせていたので、メイは黙ってケイの目の前に紙を見せた。全て高得点と言っていい、魔歴に関しては完璧だな。

 

 

「す、すごい………」

 

 

 

自分の点数と見比べてケイはもっと自信を無くしたらしい。

俯いてしまった。

 

そこに、メイが追い討ちをかけるように発言する。

 

 

「坊ちゃんはオール100ですよ。坊ちゃんは天才というやつです」

 

 

「俺なんか……坊ちゃんに、ふさわしく」

 

 

歯を食いしばって余計に俯いてしまったケイ。

おい、メイ。お前には心が無いのか

 

 

「……私は、努力をして、ここまで点数が取れるようになりました。ケイも、努力をすれば、7・8割は正解できるようになります。」

 

 

「最初は、できなくてもいいんです。でも、そのまま諦めていては、なにも始まらない。」

 

 

「ッ……先輩!!!おれ、がんばるっす!!!」

 

 

メイが、ケイの肩に手を置いてサムズアップしている。ケイが希望を見出したような顔をして涙を流している。

 

……なんなんだコレ

 

まあ、頑張れよ。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

僕、鈴木入間は今度の終末テストに向けて、勉強のために机に向かっていた。

 

 

 

「な、なにもわからない…」

 

 

問題集を解いてみようと、アズくんとクララとの3人で意気込んだものの、僕は何一つ正解することができなかった。

文字は、おじいちゃんの魔術で読めるようにはなっているんだけど、問題の意味がわからない。

魔界の歴史はもちろん、拷問も魔術もさっぱりわからない。

 

やっぱり、僕、勉強向いてないんじゃ……

 

 

 

「イルマ、これ解いてみろ」

 

 

 

低い声が後ろからして、ぽんっと硬いものが頭に置かれた。

 

上を見上げれば、アバドンくんがいた。この前のことを思い出して、かーっと顔が赤くなる。

 

 

「ッ、アバドンくんッ…っ、こ、この頃避けててごめん」

 

 

「別に気にしてないぞ、それよりもコレやってみろ」

 

 

「え、あ、うん」

 

 

頭の上に置かれていた硬いものは、問題集だったようで、アバドンくんは僕の目の前にそれを置いた。

言われた通り、表紙を捲る

 

 

Q.1 人間の手足は合わせて何本?

 

 

 

ん?

 

4本だよね

 

 

A.4本

 

 

Q.2「猫」の大好物といえば?

 

 

 

 

A.魚

 

 

 

Q.3「犬」は動物?植物?

 

 

動物…

 

 

A.動物

 

 

…………

………

……

 

 

 

「、100点……」

 

 

なんか、簡単だぞ?

 

 

僕の呟きが聞こえたのか、クラスメイトの皆んなが周りに集まってきた。みんなが問題集をペラペラと捲り答案を確認する。

みんなが食い入るように見ていた。

 

 

「ええ!?うわっ本当だ!!」

 

 

「やはり、な」

 

 

「イルマち、すごーいかしこ!!」

 

 

皆んながものすごい勢いで褒めてくれる。

 

 

「なっ、なんか簡単で」

 

 

「魔界歴史の空想生物学ですよね!このような才能がおありとは!!」

 

え、

 

 

 

「100点なんて凄いでござる!!」

 

 

「ステキ♡」

 

 

「やっぱ頭いいんじゃないかイルマくん」

 

 

僕はいつもなら、「え、…そうかな……ありがとう」と言っていたかもしれない。謙虚であったかもしれない。

だけど、苦手だと思っていた勉強で100点を取ったことで気分が高揚していた。

 

 

「そう……かな」

 

 

 

僕、頭いいんじゃ?

 

勉強、できるんじゃ?

 

 

 

 

「イルマ……隠すつもりがあるのか?なかなかに、危なっかしいな。万が一、人間(イルマ)だと知れたら、その時は俺が……」

 

 

 

 

「次の授業は魔歴!イルマ様が100点をとられた教科です!ここは、魔歴を極められてはいかがでしょう!?」

 

 

アズくんが目を輝かせて、アドバイスをくれる。

よし、この調子でテスト頑張ろう!

 

 

「よし!いこう!!」

 

 

早速魔歴の教室に移動しようと思い席を立つと頭に手が置かれた。

 

 

「イルマ、俺も一緒に行こう」

 

 

「え、」

 

 

 

 

「貴様ッ!イルマ様に触れるな!ゲスが!!」

 

 

「シャー!!!!」

 

 

 

アズくんが手に炎を出して僕の頭に置かれたアバドンくんの手を燃やそうとする。

クララも髪を逆立てて威嚇し始めた。

 

 

 

アバドンくんは不敵な笑みを浮かべていた。

 

炎熱くないの?

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

「魔歴担当はダリ先生です」

 

 

「おちゃらか先生かー」

 

 

わかる、ダリ先生賑やかでいいよな。

 

 

「俺、ダリ先生好きだぞ」

 

 

「貴様ッ!なぜいる!!」

 

 

俺はイルマとアスモデアス、ウァラクの3人の後を張り付くように着いて行った。当然、俺のことを目の敵にしている様子のアスモデアスは怒鳴るように声を上げた。今にも手から炎が出そうである。

 

 

「私もいますよ。アスモデウスさん」

 

 

「俺もっす!!ケイっすよ!!」

 

勿論、俺がいるならこいつらもいる。3人セットである。

なんだかんだで、似ているじゃないか俺たち。仲良くしような?炎しまえよ

 

 

「ケイ!!次の授業いっしょ?」

 

 

「ウァラク!一緒っす!!」

 

 

「やったー!!!」

 

 

俺たち6人には特に接点というものはない。一応クラスメイトというの認識はあるが、それ以上が出ない。

メイは普段俺にベッタリ監視のように張り付いているため、仲の良い生徒はいないから論外。俺も、なぜかアスモデアスとウァラクには嫌われているため論外。

ただ1人、ケイだけがよくウァラクと遊んでいるのを見かける。アスモデアスもたまに、巻きこんで一緒に遊んでいたりもするらしい。

ケイが嬉しそうに話してくれた。アスモデアスは怖くないのか?意地悪されてないのか?炎熱くないか?といろいろ心配して聞いたが、面白い!!という一言で俺は黙った。

ケイは高圧的なタイプが苦手だと思っていたのだが…違うか?

 

 

「うるさいのが増えた……」

 

 

悩まし気に顔をしかめるアスモデアス。それに笑いかけるイルマ。

俺はアスモデアスが充分に怖いと思う……すぐ炎に訴えるところとか特に。野蛮だぞ普通に

 

 

「あはは、賑やかでいい「ヒッ、ど、どけ!お前ら!!」

 

 

主にウァラクとケイのお喋りで騒がしくなってきた廊下であったが、突然教室の扉が開き、慌ててかつ怯えたような男子生徒が飛び出してきた。

 

軽いパニック状態…想定外のことが起きた時の反応だ。

 

ぶつかってくる勢いの慌てっぷりに、イルマは反射的に道を開けた。

 

 

「な、なんでしょう?」

 

「さ、さあ?」

 

 

困惑した顔のイルマとアスモデアスが顔を見合わせる。

かくいう俺たちも困惑していた。顔には出さないが

 

 

「とりあえず、入ってみたらわかるだろう」

 

 

先程の生徒の想定外のことが、この教室内にあったというわけだ。

トラブルか?それにしては…静かだが

 

ウァラクとケイは扉にドロップキックをかました。

 

 

「「とりゃー!!!」」

 

 

息ぴったりである。

 

 

扉が勢いよく開き、ケイが先行して入室する。

 

入ってみると、教室内はガラーンとしていて、悪魔がほとんど見当たらない。階段状になった椅子には誰も座っておらず、そろそろ授業が始まるのには異常な状況。

 

そして極め付けは、教室で走る数名の生徒。

表情は慌てているようで、何かから逃げているようにも感じた。

 

 

「おい!これはどういうことだ!?」

 

 

アスモデアスが状況を問い詰めるように声を張った

 

 

「あ、ああ…!ダリ先生が悪周期で休みで…かわりにバラム先生が…」

 

 

「!!」

 

 

「バラム、どこか聞いたことがあるような…あ、そうだ……僕が100点を取った問題集の著者!」

 

イルマが持っていた荷物の中から思い出したように、例の俺が渡した問題集を取り出して表紙を確認した。

そこには、著者バラム・シチロウと書かれていた。

 

 

「バラム先生は少し特殊でして…わっ、我々も今回はやめて起きますか…?」

 

 

逃げる生徒の顔は青いし、アスモデアスの顔もどこか暗い。

バラム先生の噂に真実味ができてきたな

 

 

「上です、坊ちゃん」

 

 

「んーこれはまた。斬新な授業、特殊な先生というわけだ」

 

 

「大丈夫です。坊ちゃんの方が特殊ですよ」

 

 

ケイの言葉を聞いて上を見上げた。

そこには天井に這うようにして生える頑丈そうなツルのような木の枝と、それに身体を縛られ動けない生徒たちがいた。

 

 

「!!!!」

 

 

「な、なんでアバドンくんたちはそんな平気な顔で眺めているの!?」

 

 

イルマが、目の前の光景に唖然としつつも、それを呑気に眺める俺たち3人にまで驚きの目で見てくるのは心外というものである。

 

 

「た、たすけ」

 

 

縛られた生徒の内の1人から細かい悲鳴のようなものが聞こえる。しかし知ったことではない。

バラム先生は見ての通り特殊な授業をする教師のようだが、バビルスの教師であることには変わりない。死にはしないだろうし、大怪我もないだろう。

 

よってその言葉に俺が動く必要はない。

 

 

バラム先生が、俺に危害を加えなければだ。

 

 

言った側から、天井から木が俺の身体目掛けて向かってきた。

すかさず、俺の隣にいたケイがどこからかナイフを取り出して、木を切る。まあ…そりゃ刃物携帯してるよなぁ

 

 

「坊ちゃんに危害を加えようとした、な?ころ「落ち着け」

 

 

俺を拘束しようとしたのであろうものを見たことで、暴走しそうになっていたケイの首根っこを掴み落ち着かせにはかる。

この暴走状態は、周りの声に意識が向かなくなるらしい。しかし、俺の言葉は聞こえるそうで、すぐに普段の様子に戻る。

 

アバドン家護衛名物ではあるが、原理がよくわからん

一応主人の命令には従えるようには躾てあるようだが…どうやって調教しているのやら。今度現場に見学でもいってみるか?

 

 

「とりあえず、バラム先生。この木を俺にはやめてもらえるか?代わりに生贄としてこのメイを出そう」

 

「な」

 

 

俺に向かっていた木がメイに方向転換した。メイの瞳は酷い裏切りを見たと言っているようだが、無視をする。

 

 

「嬉しいなぁ、こんなに生徒が来てくれて。はい、では…授業を始めます」

 

 

目の前には、図体のデカい大男がいた。

鳥のような足に、鋭い爪。

髪は長く、そして白い。口元は隠すように覆われていて、素顔というものを暴いてみたくなる気持ちを抱かせる。

 

第一印象は、ヤバイ悪魔といったところだ。

 

 

ところで、この教師のこのスキンシップは、セクハラには入らないのだろうか?

俺は許されないで、バラム先生が許されるのは何故なのか

俺は理不尽を呪った。

 

 

 

 

「魔歴において空想生物は、数多く登場する」

 

 

「空想生物は思いこみの学問だ。魔界には未踏の地も多く、きっと新種もいるはず…」

 

 

1人ヒートアップするバラム先生。生徒はおいてけぼりだった。

バラム先生は木を自由自在に操れるようで、木で拘束した生徒を自分の近くに持ってきては頭を撫でまくる、という意味不明な行動を繰り返していた。

 

生徒の顔はみなげっそりとしている。

 

 

「さっき、みんなが逃げていったのって…」

 

 

「バラム先生の触り癖。空想生物学の担当だからか生き物をみるとすぐ触りだして授業になりません」

 

 

「そっか……」

 

 

イルマとアスモデアスは、なす術もなく大人しく木に拘束されて頭を撫でられていた。かわいそうに

 

そういう俺はというと、普通に椅子に座っていた。

ケイが暴走するから、やめてとバラム先生に頼んだのだ。まあ、普通にお願いするまでもなくこのようなことを教師がするのさおかしいのであるが……まあ、悪魔だしな。

 

 

「私の頭を撫でたら、訴えます」

 

 

「あ、はい…」

 

 

メイは、頭に伸びてきたバラム先生の手をピシャリと払い落とした。怖っ…

バラム先生は凶悪な見た目に反して、シュンと落ち込んだような顔をする。

 

ギャップという感想よりも、普通にメイの言葉が真っ当すぎて、俺はどう反応すればいいかわからなかった。

 

バラム先生の行動に性的な意図は無いのだろうことは見るからにわかるが、頭を撫でている事実は過度なスキンシップには変わりないので、相手がセクハラと感じる場合もあるのではないだろうか……

 

まあ、そこはバラム先生も考えてはいる……のか?

 

 

「バラム先生の触り癖だがよ……触るのはそいつが実験に使えるか吟味するためで、気に入ったら攫って夜な夜な実験三昧ってウワサだせ……」

 

 

1人の男子生徒が恐る恐ると言ったように言葉を吐き出した

 

 

「それに」

 

 

「では今日、人間について考えよう」

 

 

 

「出た空想討論。テスト関係ね〜〜」

 

 

バラム先生は、たしか、人間という空想生物を本気で存在すると信じている変わり者という噂だったが、どうやらその通りの人物だったようだ。

 

実際に、空想でもなんでもなく人間は本当に存在するしな。

過去にも現在にも。

すぐ近くに

 

 

「もし君たちの目の前に、人間が現れたらどうする?」

 

 

バラム先生から問いが出された。

絵面を考慮しなければ、ようやく授業らしくなってきた

 

 

「そりゃあ、食う!!」

 

「ね、すごいおいしいんでしょ!?」

 

「高く売れるかもしれーねし、見つけたら売る!!」

 

「いやいや、空想だろーが…いないものの話したって仕方ないだろ?」

 

 

生徒の答えはそれぞれだ。

結論としてはそんなもの存在しない。だからそれを考えたところで意味がない、に行きつく。

 

 

「確かに人間は欲の塊で悪魔の糧であったとされてるね」

 

 

しかし、()()いるのなら、食べたい。というのが世間一般の答えだ。

人間はとても美味しい。

 

 

「坊ちゃんは、人間に会ったらどうするっすか!?」

 

 

隣にいるケイが元気よくそう聞いてくる。こいつは、俺の考えやすることが正解だと思っている節がある。なにかとこういう場面で、俺の意見を聞いてくる癖があった。

 

 

「ん?俺か?俺は…どうしたっけ、な」

 

 

「?」

 

 

「…そうだな。人間はどうされたかったんだろうな……」

 

 

「………」

 

 

「坊ちゃんがどうするかって聞いてるんすよ、!!俺!!」

 

 

「はは、そうだったな。とりあえず自分のものにする。飽きたらー…」

 

「飽きたら?」

 

 

美味しく食べる

 

 

喉まで出かかった言葉をすんでのところで止める。危ない危ない。

ここには、人間だろうイルマがいるし、口うるさいメイもいる。迂闊な言動は控えるべきだな。無駄に怖がらせるだけだ

 

 

「先生は、どうするんですか〜?」

 

「やっぱ食べる、とか?」

 

「やっぱ、バラム先生だし……人体実験するんだよ」

 

 

「まぁもし人間に会えたら……どうやって生き残ったのか聞きたいね」

 

 

どうやって生き残った、か。

 

確かに気になる要素だ、バラム先生の言葉に自然と口角が上がった。

 

 

 

「人間含め、空想生物はとても弱い生き物だとされることが多い」

 

バラム先生は、黒板にチョークで簡単な魔界の生物と空想生物の絵を描いた。

比べるように右と左に分けてある。

 

魔界のネコには羽があるが、空想生物のネコにはそれがない。

魔界のイヌはケロベロスを見るとわかるようにとても凶暴だが、空想生物のイヌは従順と聞く。

魔界のトリは金剪の長を見てもわかると思うが物凄くデカいが、空想生物のトリはとても小さい。

 

 

「見ての通り、現存生物の方がハイスペックと言えるね」

 

 

黒板を見てすぐにわかる。なんというか、空想生物は見るからに…弱い。

 

 

「空想生物は古代的というか…このフォルムで生存できるならば、そこはよほど平和な環境と言えるだろう」

 

 

「しかし、魔界の生態系は苛烈だから、我々は進化上で尾や羽根を手に入れてきたわけだ」

 

 

「角はなくとも、羽さえあれば逃げ…あれば、あれ……あれば?」

 

 

まずい

 

バラム先生は、イルマの背中を触って、止まった。

バラム先生の()()()、もっと注意しておくべきであった。バラム先生は、大の生物好きで、生物を見ると触りだし自負の実験室に連れ込むというのがもっぱらの噂である。そう、生物が好きなのだ。

生物が好き=生物に詳しい

悪魔に詳しい彼が、イルマ(人間)に触れば、違いに当然気づくだろう。…気が回っていなかった。これは、ミスだ

 

 

バラム先生はイルマを肩に担ぎ上げたかと思うと「授業を切り上げるから各自教室に戻るように」と言い残して、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 

 

 

「なんなんですか、一体」

 

「イルマくん連れて行かれちゃいましたね?」

 

 

「……お前たちは、先生の言う通り教室に戻れ」

 

 

「坊ちゃんはどうするっすか?」

 

 

「…俺は、やらないといけないことができた。護衛はいらん」

 

 

あれは、俺の人間だ

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

終末テストは赤点補習者は該当者なしで、問題児クラスはテストを乗りこえたのであった。

平均点以上を取った(アレフ)(ベト)に昇級し、アロケルは学年1位だっため(アレフ)から(ギメル)に位階が昇級した。

 

ケイに勉強を教え始めた当初は地獄かと思ったが、ケイは吸収力という才はあるのか、苦手意識を軽減させてからは点数は自ずと上がり平均点よりも点数を取れるようになった。

なんとか赤点を回避したのである。

 

肩の力が抜けたクラスメイトたちは、打ち上げをすることにしたらしい。男子だけで打ち上げをするらしく俺とケイはそれに誘われた。

 

問題は、メイを1人にすることだが……

 

 

「坊ちゃんいってらっしゃいませ」

 

 

「いいのか?」

 

 

「はい、私は私で、女子会にお誘いされましたので行ってみようかと」

 

 

「そうか…、楽しんでこい」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

どうやら俺の気遣いは杞憂だったようだ。メイはメイで楽しんでいるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女子会!!」

 

 

緑の珍生物事、ウァラクさんが声を張った。どうやらウァラクさんが主体で回すらしい。私を女子会に誘ってきたのも、ウァラクさん。

…そういうことには疎そうだなと勝手に思っていたのだったが、それは決めつけであったかもしれないと思い始めた。

 

それに、こういう場所は私が一番不慣れだろう

 

 

「男子だけ打ち上げなんてずるいものね!自己紹介しましょ!」

 

 

「ウァラク・クララ!元気!」

 

 

「イクス・エリザベッタよ」

 

 

「クロケル・ケロリ…です」

 

 

「アザゼル・アメリ…生徒会長だ…」

 

 

「メイと申します。坊ちゃんのメイドを務めております」

 

 

女子会のメンバーは、私を含めた問題児クラスが4名。そしてなぜか生徒会長が1名という謎の組み合わせだった。

考えられる理由としては……生徒会長はイルマさんと仲が良いと聞くから、それ経由だろう。しかし、それにしても異質な組み合わせであることには変わりない。

私としては、この前まで目をつけられていた師団の団員である。思うところがないわけでも無かった。

坊ちゃんが生徒会役員として強制研修させられた。勿論それは私にも当てはまることであった。私はあの数週間、()()()()()()()で研修をさせられたのだ。布面積の少ない服を着せさせられた時の屈辱感は忘れられないし、忘れるつもりもない。

私はアバドン家のメイドであり坊ちゃんの専属メイドだ。ならば私の肌は、当然坊ちゃんのもの。坊ちゃんがいないところで肌を晒すなんて…ありえない。

 

私はこの研修の采配をしただろう生徒会長アザゼル・アメリに私怨があった。

 

 

 

「女子会と言えば…そりゃあ、恋バナよ!!!」

 

 

私が生徒会長を睨みつけていると、イクス・エリザベッタさんが興奮したようにキャーと黄色い声をあげた。

 

…恋、ですか

 

 

「みんな気になる人はいたりするのかしら?」

 

 

「気になる?」

 

 

「好きな男子のことよークララちゃんはいるの?」

 

 

「ハイ入間ち!!」

 

 

エリザベッタさんの質問にあっさりと恥ずかしがる様子もなく堂々とウァラクさんは答えた。

それが、少し羨ましいなと感じる。

そんなに堂々と宣言できるのかと。

 

 

「会長さん?」

 

「なんっなんでもない!!」

 

 

なぜか、生徒会長が大袈裟に反応しているがなんでしょうか。…もしかして、恋に興味でもあるのというのか?

あの生徒会長が、?まさか……、まあ、生徒会長が誰を好きになろうとどうだって、私には関係ないこと。

 

 

「確かに悪周期のイルマくんは迫力があってステキだったわ♡」

 

 

「悪周期であんなに劇的に変わるとは…びっくりしましたね」

 

 

「ギャップっていうのかしら♡」

 

 

そういえば坊ちゃんは、悪周期に一度もなったことはなかったっけ……

 

 

 

 

…………

………

……

 

 

「メイさんは、好きな男子いるの?」

 

 

「はい?」

 

 

「そう、恋してる?」

 

 

ぼーっとしていた。

突然の問いかけに素のままの声が出てしまったのは、メイド失格である。学校生活が始まってからというもの、どうにも気が緩むことが増えてきたような気がする。

このままでは仕事にまで支障がでかねないので、気を引き締めなければ

 

少し考え込んで、口を開いた

 

 

「私…ですか、私は幼い頃から同じ歳の異性というのは、坊ちゃんしかいませんでした………」

 

 

好きだとか恋だとか、気になる悪魔がいるとか、今まで女性悪魔であれば一度はしたことがあるであろう会話を私は、今日初めて体験した。

実際に目にして、耳にして、実感した。

この目の前の悪魔たちと、私は違うと

 

女子会に来て良かった。改めて自分の異質さを知れた。

 

私は、いろいろと考えて長年悩んで、坊ちゃんに対する気持ちを初恋だと名づけた。アバドンのメイドたちは恋バナするものたちなどおらず、その初恋と私が判断したことは正しかったのか…今までずっとわからずに生きてきた。

 

そして今日、やっと正解がわかった

 

 

私は、坊ちゃんのことが

 

 

「アバドンくんは、危ない魅力があるわよねぇ♡主人と従者の禁断の恋、なんてロマンチックなのかしら♡」

 

 

 

 

 

私はー…

 

 

 

好きだったり、恋だったりといった単純なものじゃない。

もっと複雑で血みどろで、色々な気持ちが混ざりあった上で、深く深く愛している

 

 

 

 

 

私の坊ちゃんへの想いはだ。

 

 

 

 

「私は、坊ちゃんのメイド。それ以上でもそれ以下でもありません」

 

 

だからこそ、こんな気持ちは隠し通さなければならない。

主人に想いを寄せるなど不敬以外のなにものでもない。

私の存在意義は坊ちゃんで、坊ちゃんのために生まれてきた。

坊ちゃんに可愛がってもらって目をかけてもらった。名前まで与えてくださった。

坊ちゃんが私の名を呼ぶたびに頭に麻薬のように快楽が回って、私の全身を犯す。

 

けど、私はどうしてもそれ以上を求めてしまう。

悪いことだとはわかっているのに、悪魔である私は愚かで欲深いのだ。

 

叶わないとわかっている。

 

 

 

ただ一言「愛しています」と言えたなら、

 

ただ一言「マルス様」とお名前を言えたなら、

 

 

どんなにそれは幸せなことだろうか

 

 

 

 

私は幸せを願って、今日も夢を見る。

 

ただ、それは永遠に夢のままだ。現実のものにはならない。

 

 

 

生まれた時からそう決まっているのだ。

 

 





>「坊ちゃんはオール100ですよ。坊ちゃんは天才というやつです」
これをすると、後々の収穫祭(オロバス)とかの話が変わってきてしまうんですね。オロバスが2位男じゃなくなってしまうんですよ。最初のうちは原作展開で進めていきたい
いやーどーしよ。

ああ、それとオロバス、お前逃げた方がいいよ


ちなみに、入間くんとバラム先生が出会うイベントは原作通りなのですが、イルマくんは自分が人間だということともう一つ、アバドンに血を飲まれているともポロッとバラム先生に言ってしまったために、バラム先生の中でオリ主は要注意人物に認定されました。
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