エゴにまみれた危険な悪魔 作:名無しの位階1の虫ケラ六年生
タイトル通りカルエゴ先生の話です。
んっふふふ、そんな嫌っそ〜な顔してもダメだよ
カルエゴ先生には家庭訪問に行ってもらいます!!
カルエゴは、もの凄いスピードで空を飛んでいた。
顔色はあまり優れない
彼の今の状況を説明すると、「終末日前の最終生徒指導」というサリバン理事長の思いつきの発言(命令)により、カルエゴは仕事をしている。
生徒の普段の様子を保護者に報告する、そう、家庭訪問だ。
既にカルエゴの表情には疲労が見える。
なぜなら、もうほとんどの生徒との面談を終えていたからだ。一癖も二癖もある生徒。その親や家族もそれはそれは癖が強かった。
アスモデウスは、自分の話はイルマの話という謎理論で延々と語るし、ウァラクはウァラクで2時間以上も面談を要した。アンドロ家は、面談中に財布を盗ろうとしてくるし、シャックス・リードの姉に玉の輿だと言われ結婚を迫られた。逃げた。カイムの家で、なぜか乾杯をし、面談中に寝るアガレスを引っ叩いた。
そして、先程まで、イルマ宅にて面談を行なっていた。
サリバンのSDであるオペラの策により、使い魔召喚シールでモフエゴ(召喚時のふわふわな姿を指す)にされて、お泊まりしようだのいろいろと酷い目にあったり、あわされそうになりながらもなんとか逃げ出したカルエゴであった。
疲労は最高潮に達している。
オペラから逃れることができた理由としては、最後にイルマよりも強敵な生徒の面談を残していたからである。
「まだ面談する生徒が残っている」と言った時のオペラの悔しい表情を思い出したカルエゴは、少しスッキリとした気分になりつつも、これから向かう生徒の家に嫌な予感が隠せないでいた。
アバドン
アバドン・マルスという生徒にカルエゴはどうしても苦手意識を持ってしまう。喧しいし、無節操でマイペースなところが苦手であるし、向けられる視線が妙に気持ち悪いので、距離を保つようにしていた。
が、今日は家庭訪問。教師であるため、仕事を放り出すわけにもいかない。
嫌な予感を振り払うように、カルエゴは加速した
人里離れた僻地にカルエゴはきていた。
カルエゴは人生初めて訪れる場所である。
無理もない。
なぜなら、今飛行しているところから見える、下の全ての土地は
即ち元戦場である。
戦争があったのはカルエゴが産まれてもいない、ずっと昔のことであるから戦争の後というのはパッとみてわかるようなことはない。
しかし、
建物を探すカルエゴの目は、ぼんやりと前方、遥か先に建造物のようなものを捉えた。少しスピードを上げて進むと、だんだんはっきりと形が見えてきた。
「……これは、」
カルエゴは今日、初めて感嘆の声が口からこぼれた。
そこには、立派な城塞が立っていた。
そして、その中心に城が聳え立っている
これが、学生時代に歴史で学んだ、かの有名な難攻不落の城。
魔王軍は結果的に、反乱軍に勝利することはできたが、最後までこの城、そしてこの土地を攻め落とすことはできなかった。
歴史の教科書では、この土地に一歩でも足を踏み入れれば屍となった。と記載されていた。当時を経験していない彼からすれば、全く持って想像がつかないが、その一文から死の気配を感じたのは記憶に鮮明に残っている。
戦争は昔のことであると言うのに、カルエゴはこの土地に入ることは乗り気ではなかった。
カルエゴは入間宅での帰り際のことを思い出していた。
「カルエゴくん、気をつけるんだよ」
あの阿保理事長。サリバンがえらく真剣な顔で投げかけてきた言葉。
その意味を、理由を。
「ま、カルエゴくんはお守り持ってるから大丈夫だろうけど!気をつけることに越したことはないよ!あの家、物騒だから」
おちゃらけた様子の理事長だったが、最後の一言は重く、カルエゴに嫌な予感を覚えさせた。
お守り。
家庭訪問があるということを生徒に伝えたときに、その後アバドンから渡されたもの。カルエゴはそれを確かめるように、ポケットに手を当てた。
硬い感触が、布越しに感じられる。
「俺の家に来る時は、このネックレスを持っといてくれ。別に首にかけなくてもいいが、ただ、忘れるなよ」
コレを渡してきたアバドン・マルスの言葉を思い出す。
渡された時は疑問だったが、ネックレスを観察してわかったことがある。
チェーンには、特にこれと言って着目するべきものはない。しかし、チェーンに通されたペンダント。これには、魔力が籠っている。
独特な魔力だ。注意して意識しないとわからない、ほんの僅かな魔力。
「あ、そうだ。上空には気をつけろ」
なぜが、アバドンが最後に言い忘れていたみたいな様子で付け足した言葉が今頭の中で再生された。
「…上か」
思い出したので、
下ばかり見ていたカルエゴは、上を見上げた。
すると、砲弾が上から降ってきていた
もう一度言おう、砲弾が上から、降ってきていた。カルエゴにめがけて
「は?」
口から間の抜けた声が出る
突然の状況に、思考が止まりかけるが、カルエゴの今まで培ってきた経験が身体を反射的に動かした。
咄嗟にに彼はケロベロスを出し、迎え打つかたちになる。
ケロベロスの鋭い爪が砲弾に触れた
その瞬間、砲弾が爆発した
衝撃と、煙幕が身体を襲う
「ッ、」
ケロベロスで防ぐことができたので、カルエゴに外傷は無かった。
ただ上からの勢いを消すことは出来ず、先程の位置から下降していっている。
カルエゴは、視界不良のなか羽を動かし体勢を整えようとした。
すると煙を裂いて、砲弾が目と鼻の先に突然現れた。
「ッ!!」
完全に不意を突かれた。うまい、と場違いにもカルエゴは思う。
二発目、偶然ではない。確実にこちらをピンポイントで狙っているようだった。
なぜ、ここまで位置を把握されているのか。なんのために攻撃してくるのか。いろいろと考えたいことはたくさんありつつも、まずは目の前の脅威となりうるものを排除することが最優先である。
ケロベロスをもう一度出す。
今度は触れても爆発はしなかった。しかし、勢いがある。
ケロベロスでなんとか受け止めながら、物理法則に逆らうこともできず、カルエゴは、地面に突き落とされた。
ーーーード、ズドン!!!!!!
地面に当たった瞬間、勢いよく砲弾が爆発した
カルエゴに外傷は無かった。彼の位階は8である。
これくらいのことで怪我などはしない
しかし、後手に回っているのはよくなかった。
相変わらず、カルエゴの視界は不良だ。
「………」
徐々に、煙幕が晴れていく
彼は気づいていた。囲まれていることに
数はざっと10人といったところかと見当をつける
攻勢に回る必要があると思った。先に仕掛ける。カルエゴは意識を切り替えて、ケロベロスを出した。
煙幕が吹き飛び、視界がクリアになる
やはり、数は10人
攻撃を、
「ようこそいらっしゃいました。アバドン家にようこそお客人」
煙が晴れた先にいたのは敵…ではなく、召使いのような格好をした悪魔たちであった。皆揃ってカルエゴに微笑み頭を下げる。
カルエゴは、開いた口が塞がらなかった。攻撃しようとした手は中途半端に上げられて、どうしようかと空間に停止させられたままだ。
どうやら、客人を困惑させるのがアバドン流のお出迎えらしい。
もし、これがカルエゴよりも位階の低い悪魔であったならば、怪我のひとつやふたつは免れなかったであろう。
あの阿保理事長の「あの家、物騒だから」という言葉はここからきているのだろうとカルエゴは悟った。
カルエゴは息を深く吐いて、辺りを見回す。どうやら、城塞の近くに落とされたらしい。
確かに速く目的地には到着したが、なんだか、カルエゴは解せなかった
その後、アバドン家の使用人らしきものたちに案内され、城にまでたどり着いた。それまでの道中、城塞に囲まれたその中は、いろいろな建物が立ち並んでいた。
あんまり、見たら殺しますよ?と案内人が言うものだから、カルエゴは思わず真顔になった。
冗談です。と付け足された言葉は冗談に聞こえなかった。
「さ、到着しました。お手数おかけして申し訳ない」
「ええ、本当に」
案内人がニコニコして悪びれてもいない表情をみて、カルエゴは皮肉を込めて返す。
カルエゴは、もうちょっと文句を言っても許されると思った。
そして、それは当然のことであった
カルエゴは家庭訪問に来ただけなのに、攻撃されているのだから
「ここからは、私に代わり城内の使用人がご案内します。では、」
城門が開かれると、そこには言葉通り使用人がいた。
使用人はカルエゴを見て頭を下げる。
「ようこそいらっしゃいました。カルエゴ先生」
カルエゴが担当するクラスの1人。メイという女子生徒がいた。
そう、最後の面談は、アバドン・マルスだけではなく、メイとケイの面談も兼ねている。
「ああ、」
使用人のお手本のような笑みを保つメイに、カルエゴは短く返した。
メイに案内され、カルエゴは城内を歩いていた。これといって会話はせずに、2人の足音だけが、廊下に響く。
壮麗な外観に見合い、内観もそれは見事で、美しかった。
カルエゴは心の中で、アバドン家の美的センスに感心する。
「着きました。坊ちゃんの部屋から遠い応接室になっております。安心してください。」
「なにがだ」
「身の安全を確保致しております」
ささ、どうぞとメイが扉を開けた。
カルエゴはなにか解せない気分になり、それを声に出そうとし、やめた。
開けられた扉から覗く、部屋の内装が素晴らしく目を奪われ言葉が出てこなかったからだ。
勝手に足が部屋の中に吸い込まれた。
統一感のある品の良い調度品。
部屋を軽く見渡せば、中心に長椅子が机を挟んで置かれており、おそらくアバドン・マルスの両親であろう2人の悪魔が腰掛けていた。
「よくいらした。ナベリウス・カルエゴ先生。どうぞ椅子に腰掛けて」
「…はい」
対面の椅子に座るよう促されて、カルエゴも腰掛ける
「では、坊ちゃんとケイを呼んで参り「坊ちゃんっ!!だめっすよ」「良いだろ。俺は待ちきれないんだ。」「ダメって先輩がいってました」「俺は主人だ」「それと、これとは別っすよ。その拘束具なにに使うつもりっすか」「お前には関係ないだろう」「大アリっす!!ダメっすよソレ渡してください」「嫌だと言ったら?」「武力行使っす!!」「は?お前が俺に勝てるとでも?」「ッ、やってみなきゃわかんない!!」
なにやら、廊下から騒がしい声が聞こえてくる
カルエゴの眉がピクっと動いた。
その対面にいる2人の口角がピクっと動いた。
メイの顔に青筋が浮かんだ。
「……少し、行って参ります」
「ああ、そうしろ」
「ふふふ」
「……」
メイは能面に。アバドン・マルスの父親は、苛立ちを顕にする。母親は目の笑っていない微笑みを浮かべた。
カルエゴは、そんな様子に何とも言えない顔をするしかなかった。
メイが部屋を出てパタン、と扉が閉まる。
途端に騒がしい声が止まった。
そして、数分後、何事も無かったように戻ってきた。
「お待たせしました。」
「カルエゴ先生、来てくれて嬉し……」
アバドン・マルスはニコニコ笑顔でカルエゴに話しかけて、隣のメイに脇腹を突かれた。
が、アバドン・マルスはその程度で止まるような男ではない。
ニコニコしたまま、椅子にドスンと腰掛けた。カルエゴの隣に
カルエゴの隣に腰掛けた
「………」
近い
カルエゴはどう反応すればいいかわからなかった。というか、突然の予想できない行動に思考が停止したと言ってもいい。
距離感の縮め方がおかしかった。
するとおもむろにアバドンの両親が立ち上がって、アバドン・マルスの肩をガシッと掴んだ。そして無理矢理椅子から立たせて、カルエゴの対面の椅子に座らせる。そして、動けないように2人で挟んだ。
母親に至っては、拳をぐりぐりとアバドン・マルスの頬に押し付けている。痛そうだった。
「さ、皆揃ったな」
「お茶です。失礼致します」
「いや、そうはならんだろ」
父親が何事も無かったように笑顔で話し始めようとし、普通に横からお茶を机に置きだしたメイに、カルエゴは流石にツッコミざるおえなかった。
「はは、カルエゴ先生すまんな。ウチの愚息が」
もう、話す前からカルエゴは疲れていた。
カルエゴは頭痛を覚える。それを誤魔化すように、出された紅茶をひと口啜った。
うまい
カルエゴは、割と全て許してもいいような気持ちになった。
だけだった。
さっさと終わらせて家に帰って寝ようと決める。
「お宅のお子さんは……勉学、実技ともに優秀で、総合力という点ならば、学年一位と言っても過言ではない実力を持ち合わせていると思います。」
「ただ…、その力をどう使うか。そこが課題です。
アバドン・マルス…くんは、非常にマイペースな面が強い。普段の生活での行動がかなり目立つ。実力があることは、褒められたことですが、それをなんのために使うかよく考えることが重要です。」
「先日まで、生徒会に入っていたときは、素晴らしい行動力でバビルスの治安、風紀を保っていました。……将来は、アバドン家の当主になると伺っていますが、纏める力はマルス……くんにはあると感じています。ですが、もう少し他生徒と色恋以外の交流をして、協力する力を身につける必要がありますね。」
「メイ…さんは、先日のテストでも高成績をおさめています。学力は申し分なくあります。入学当初は、実技に関してはかなり苦手意識を持っているようでしたが、処刑玉砲以来、家系能力を上手く扱い、魔術の使い方もよくなってきています。努力ができる力を持っていることは、将来のために強みになります。」
「将来、いえ、現在もマルス…くんの専属使用人と伺っています。学校でもサポート能力を発揮して彼に貢献する姿が見かけられます。ただ、他の生徒との交流が少なく、交友関係を広げることで様々な知識や価値観を知ることも大事だというのことを忘れないように。……主人の他に興味が無い、というのであれば、主人のために自分が顔を広げるということを考えてみるのも一つの手だと思います。」
「ケイ…くんは、入学当初から実技に自信があるようで、学年の中でも上位の実力を持ち合わせています。先日のテストでは、苦手な教科を克服して成績の伸びを感じました。これからも学力を向上させたい。護衛という職業柄、どうしても力というものが重要になってくることはわかりますが、力というのは、なにも身体だけではありません。知識を持っていることは、主人を守る上で大切な力になると思います。」
「ケイ…くんは、自分で物事を考えたり、判断するということを、マルス…くんに委ねていることを普段の生活から見受けられます。これからは、自分で判断して行動する、という場面に会うこともあると思います。その時のために、自分でよく考えるということを意識してこれから生活することが重要ですね。」
……………
………
……
…
…
…
アバドン・マルスがカルエゴを自室のベットに連れ込もうとしたり、もう外も暗いから泊まっていけだのと最後までゴネたが、メイが最強の母親という切札を出したため、カルエゴ先生の身は守られたのである。
カルエゴが去って、アバドン家。
アバドン・マルスは自室に監禁されていた。扉の前は使用人による厳重態勢が敷かれている。バリケードまでされていた。
もちろん守っているものは、カルエゴの身であった。
カルエゴは一応、アバドン家からは出ているが、まだアバドンの領空にいる。警戒を解くべきでは無かった。
そして、扉の前に警備を置くだけでは心許ない。アバドン・マルスはなにをしでかすかわからない存在である。
そのため、気を少しで他のものに逸らそうとアバドンの部屋には生贄が2名捧げられた。
言うまでもなく、メイとケイである。
「……カルエゴ先生って、もっと怖い悪魔だと思ってました。なんか、俺勘違いしてたかも、しれないっす…」
「いつものあの様子から……まさか、生徒1人ひとりのことをまとめたノートを作っているとは、予想外でした…………ツンデレなのでは?」
「あ、可愛い」
アバドン・マルスは1人ベットの上で、悶えていた。
問題のある一名を見なければ、部屋はいたって平和なものである。
生贄の2人は己に与えられた役目を見事に全うしていた。とくにメイの行動は素晴らしく的確なものであった。幼少期からアバドンと関わってきているだけのことはあり、扱い方というものを熟知していた。
しかし、忘れてはならない。
2人は獣の気を鎮めるための贄である。
興奮した獣は、2人に襲いかかった。
「やっぱり、こうなりますよね」
メイは諦めの境地に至っていた。
もはや慣れである。動じない心境。
穏やかな気持ちで獣を受け入れたのである……
「キメェ!!!!」
そんなこともなかった
今回は厨二病風味で書きました。砲弾とかそういうのロマンあるので、世界観に取り入れていきたいですね。また書きたい。
砲弾が予測できないところから落ちてきたり、位置が把握されていたり、煙が関係してます。というかこの話は全て家系能力で始まり、家系能力で終わるのが大体です。
なのに、家系能力の説明を全くしておらず、設定を出そうかな…と悩んでいます。
最初に書いたのが、設定なのでそれが本編まである。
しかし、私が設定とか読み飛ばすタイプなので、物語の上で語られる方が良いかなあ…とも思ったり。