エゴにまみれた危険な悪魔 作:名無しの位階1の虫ケラ六年生
本来ならウォールターパークにみんなで行くイベントですが、
終末日は長期休暇期間である。
そこでウォルターパーク、魔界有数の遊園地に入間はやってきていた。
遊園地の開園までまだしばらく時間があるらしく、門の前には大勢の悪魔たちが集まっている。
「イルマくんーおはよー!!」
「みんな早いねっ!!」
今日は、問題児クラスのメンバーでウォルターパークを遊ぶ予定をたてている。みんな早く集合場所に来ていたようで、入間は最後の方であった。
問題児クラスのメンバーだけではなく、護衛兼引率としてSDのオペラ、教師のカルエゴとバラムもいる。
そして、入間に誘われてアメリも来ていた。
ウォールターパーク、起床のお時間〜
おはよ〜う、みなさ〜ん
さあっ嬉しい!!愉しい!!はしゃいだ者が一番偉い!
遊ぶことだけ考えろ!ここは幻遊の街!ウォルターパーク!!!
遊びの最高峰へようこそ!!!!
雲が晴れて、巨大な門が開かれる。
入間たちはウォルターパークに足を踏み入れた。
そこには、アバドンの姿は無かった
「まさか、イルマからの誘いと日程が被るとはなあ……タイミングの悪い」
アバドンはいつもとは違う服、つまり制服ではなく私服姿であった。今からデートかと思えるような、バッチリと決められた服装。
アバドンは、遊園地にやってきていた。
いや、遊園地の真下、地下にある監獄要塞に遊びにきていた。
VIPの中でも抽選でしか入ることのできない、シークレットで危険な、
ウラボラス監獄
収容囚魔数、約1600名
遊園地スタッフが看守を兼任し、囚魔管理のための施設も多く備わっている地下要塞。
特徴として挙げるべきなのは、地上の遊園地を稼働させるために必要な膨大な量の魔力。その動力源が、監獄の中に存在すること。
ウラボラス監獄はとても珍しい管理体制である。囚魔の義務は、労働と魔力提供。
つまり、彼らの魔力が遊園地の動力となる。
地上の楽しいを提供する囚魔、罪を償う奉仕活動として機能していた。このシステムを考えたいたやつは良い性格をしていると評判が良い監獄である。
犯罪者による、入りたくない監獄ランキングでは、堂々の最下位である。
「今日は、看守長はいないのか……」
「はい、申し訳ないです…」
「いや、別にいい。今日は見学に来ただけだしなぁ…」
「ウラボラス監獄は、全5階層で成り立っています。上の階層に行くほど強者の看守が守っており、1階層の看守長はおられませんが、2階層の副看守長はおられますよ!!」
「こちらは、2階層は収監される囚魔たちが最初に副看守長トリトンと面会する場所で、重要な階です!!」
「……」
「、次の階行きますね!!」
楽しいツアーは、とても地獄のような空気でスタートした。
今日のツアーの客は、3人。美丈夫とそのメイドとおそらく護衛。美丈夫の名前はアバドン・マルス。
魔界では知らない者はいないアバドン商会の、御曹司である。
案内人であるウォルタースタッフは、作り笑いが崩れそうになりながらも無理矢理テンションを上げた。
アバドンは商会としても有名であるが、就職活動を経験した者はよく知っていると思う、アバドン商会の求人キャッチコピーは「ミスしたら(物理的に)首を切る」というもので、これを真に受けず就職したこの案内人の同期は、現在音信不通である。
案内人は、今日の客が怖かった。
「時間制で、囚魔たちは5階層の作業場で魔力提供という労働をします!現在いる3階層の囚魔たちも、この後作業場で労働するようになっております!!」
「このツアーは地上のように、体験型アトラクションはないのか?」
「……ご希望であれば、なんなりと!!」
案内人は、恐怖に負けた。
「んー、ならそうだなぁ。囚魔と触れ合おうか」
「そ、それは。」
動物とふれあい広場みたいに、囚魔とふれあいたいと言い出したアバドンに案内人は口角を引き攣らせる。
「良いよな?」
「はい!もちろんです!!」
案内人は恐怖に屈した。
檻に収容された囚魔たちを品定めるように眺めながら歩くアバドン。
「可愛い子とか、人気の囚魔いるか?」
そんな、おすすめの看板動物はみたいに言われても…と口から出かけた言葉を飲み込んで、案内人は笑みを作りなおした。
「えっと、そうですね。どのようなのが好みだとかございますか?」
「ん、そうだな。
「それは、かなり特徴的ですが…囚魔は監獄に入れられるようなことをした奴らですから、それくらいの傷を持ったやつは探せば何人かはいると思います。」
案内人はコイツ欠損フェチかよと思いながらも、記憶を辿る。囚魔とは暴力的な連中が多く、古傷を抱えるものは多い。角が折れているものは少ないがいなくはない。
そして、ちょうど視界の中に、特徴が一致する囚魔を見つけた。
「んー……そうですね。あっ、アレとか角、片方折れてますね」
「………」
「どうかされました?」
「坊ちゃん、本来の目的から外れるようなことは……、はあ。案内人の方、檻を開けていただけますか?」
「わ、わかりました」
不自然に押し黙ったアバドンに疑問を持ちながらも、案内人はメイドに言われるがまま鍵を取り出した。このVIPツアーは一応ツアーという形を取られてはいるが、魔界の偉い悪魔がこうして収監された囚魔に会うためのものであったりする。今まで、そういうことに使われてきた。
もちろん、娯楽として怖い者見たさでくるお貴族様方が多いが。今日の客は御曹司ということもあり、案内人はぼんぼんが遊びに来ただけだと最初は気楽な考えであった。
しかしこの御曹司は、前者であったらしい。
歴史の裏に隠されたような秘密が監獄で行われる。なんてことは珍しくない。お偉いさんが、囚魔から情報を聞き出しにくる、処分しにくる。なんてことも今まであったらしい。
まあ、今回はそれとはまた毛色が違うようだが。
案内人は4人部屋の檻の鍵を開けた。
念を押すのも忘れずに
「お前たち、くれぐれも失礼のないようにな!!」
囚魔たちは
「ささっ!!どうぞ!!!」
アバドンは、檻の中に足を踏み入れた。
檻は4人部屋であった。男が4人、むさ苦しい部屋である。
「そこの角が左右非対称なお前」
「あぁ?」
褐色肌で金色の短髪の男がチンピラのように声をあげた。
男は顔が良かった。
「そう、お前だ。」
4人の囚魔はアバドンを警戒していた。それもそうだ、知らない男が突然檻に入ってきた。それに看守の腰がものすごく低い。
「まあ、そうピリピリせずに落ち着け。なに、少し相手して欲しいだけだ。もちろん、拒否してもいい。逃げれたらだが」
天井のシミでも数えとけば、すぐ終わる。その一言が合図となり、ウラボラス監獄3階層は、ある囚魔の悲鳴とも喘ぎ声ともいえる叫び声が鳴り響いた。
それは、案内人が囚魔の作業の時間になったと告げるまで続いた。
天井には新しく赤いシミができた
「いやー、治癒魔術を使えるやつが案内人でよかった」
「あ、ありがとうございます」
「こちらこそ助かった。なあ?ほらお前も礼を言え」
アバドンが声をかけたのは、先程まで自身が痛ぶっていた顔が良く、チンピラの風貌をした囚魔。
その様子は、短時間ですっかり牙を抜かれてしまったようで大人しい。アバドンにされるがまま肩を抱きかかえられ、片腕に収まるようにして歩いていた。
「……」
「最初の威勢はどこへ行ったのやら」
3階層の囚魔たちは、5階層にある作業場に移動している途中であった。その囚魔の集団に何故か、アバドンは混じっていた。
「火」
当たり前のようにアバドンの口元には、煙草が咥えられていた。後ろに控えるメイドが黙ってそれに火をつける。
「スーッ…………フゥー」
アバドンは、深く吸って、味わい尽くしたかのように煙を吐いた。
「た、煙草」
「なんだ?監獄は禁煙だったか?」
「い、えその。」
堂々と監獄で喫煙をし始めるアバドンに案内人は注意をしようとして、今日何度目かの恐怖に敗北した。
「ああ、監獄じゃ嗜好品は少ないか。だが…煙草のひとつやふたつはあるだろう?」
アバドン、いや、アバドンの口元に咥えられた煙草に、囚魔たちの視線が集まっていた。確かに、ウラボラス監獄では嗜好品を外から入手できる囚魔が存在している。しかし、監獄でも吸える連中はごく一部。そして、監獄で堂々と看守の前で吸えるものは1人も存在しなかった。
そのため、煙草に注がれている視線は羨望
そしてそれを感じ取ったのか、アバドンは面白そうにクツクツと笑った。
「これは、アバドン商会の新作でな。上流階級向けのものだから、お前たちは吸ったことはないと思うぞ。まだ改良途中だが…」
吸うか?と。
囚魔たちが唾をゴクリと飲んだような音が聞こえた
指の間に挟んだ煙草を、反対の手に大人しく収まっている囚魔の口元に持っていった。そして無理矢理に口に咥えさせる。
囚魔はビクッと震えたが、抵抗する様子は見せない
「吸え」
囚魔は震えた口でアバドンの言葉に従うように、深く吸い込んだ。
その様子を他の囚魔たちは食い入るように見つめている。囚魔たちの顔には、自分も煙草を吸いたいと書かれていた。閉じ込められた檻で囚魔は娯楽に飢えている。
「うまいか?」
「…ぼーっと、する。いい、気分…頭蕩ける
「少し調整する必要があるか…」
ドゴン!!!!
突然、大きな音と共に床が揺れた。
突然のことに混乱し囚魔たちがざわめきだす。
「……これは振動っす、地上でなにかあったようっすね」
アバドンの護衛の少年が、静かに声を発した。
[ザザ、ザザ…魔獣が地上にて三体出現した。3階層にいる看守は速やかに囚魔を檻に入れ、地上に応援に迎え。繰り返す]
そして、案内人から音声のような音が響いた。
それはよく聞こえた。
どどどとどドドドドドドド!!!!
うおおおおおおおお!!!!!!!
床が揺れた。いや、揺れている。
音がこちらに向かってきていた。
[第2階層の看守室が侵入者により制圧された。牢屋の鍵が解除され、全囚魔たちが檻の外に出た。監獄内にいる看守は速やかに出入り口を封鎖せよ!決して上に出すな!!]
今度は案内人の携帯しているトランシーバーからではなく、監獄内にあるスピーカーから声が聞こえた。
先程から地面を揺らす振動の正体。
下の階から囚魔たちが上がってきていた。
「どうなっている!!!???」
突然の異常事態に、案内人が叫んだ。
「仕組まれたように早い行動、計画的な犯行だろうな。」
「……坊ちゃん、」
「ああ」
前方視界の先には、大勢の囚魔たちが押し寄せていた。
アバドンは抱き寄せていた1人の囚魔を地面に放り捨てる。それはもう事切れていた。
ツアー客3名、看守、囚魔たちは、大勢の囚魔の波に呑み込まれた。
死体は踏み潰されてその整った顔が識別できないものに変わり果てるのは時間の問題であった
「はぁ…これだから、集団は嫌いなんだ」
監獄の第5階層から第3階層は静寂に包まれていた。
地面には、囚魔と看守たちが死んだように倒れている。
「広範囲にかけて行う魔術は、効果を適用させる対象の判断が面倒だ。」
静寂のなか、積み上げられた囚魔を椅子のようにして座る男が1人。
アバドン・マルスであった。
その顔はいつもはみない、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。囚魔の波の中でもまれたからか、キチンと整えられていた服装は乱れ、所々に血液のようなものが付着していた。
アバドンが家系能力を行使する判断をしたのは、波に呑まれてからおよそ30分経ってから、最初は護衛の防御魔法で身を守りつつ、普通の攻撃魔術で襲いかかる囚魔の相手をしていた。
床には多くの死体が転がり、足の踏み場がなく戦闘に支障がでてきた上に、下の階から上がってくる囚魔は途切れる気配がなかった。
このままでは埒が明かないと判断し、
付与した作用は昏睡。人体に特に影響はない。ただ、戦っている最中に昏睡してしまっているため、状況によってはその限りではない。
「面倒だから、全て対象にしてしまった…」
彼の足元には、メイドの服を着た若い女悪魔と、黒い服を着た少年が横たわっている。
「地上で強い爆発があり、地下にまで振動があった。
2階層が侵入者により制圧され、囚魔たちの波が押し寄せたのがおよそ1時間ほど前。
3階層から5階層までの倒れた悪魔を確認して回ったが、現在ウラボラス監獄に収監されているはずのキリヲは発見できず……か」
「これは、間違いなく……関連している。」
「今回の目的は……単純だな。脱獄だ」
彼は1人煙草に火を着ける。
ひとつ気になる点は、アミィ・キリヲはウラボラス監獄に志願して収容されたということー…
「せっかくここまで会いにきたんだ。追いかける、か?」
立ち上がって動き始めるのは煙草の火が消えた時であった。
一方その頃、地上では魔獣の最後の足掻きによる、体中の魔力を凝縮させた自滅攻撃を、入間の
という英雄まっしぐらなイベントが起きていたが
アバドンはそれを知らない。
アバドンは3階層から、2階層にやってきていた。
2階層は酷いもので看守たちは地面に倒れ伏し、囚魔を閉じ込めていた檻を管理していたであろう機械は鍵が解除された上で破壊されていた。
徹底している。
「副看守長トリトンだったか…?やられているじゃないか」
案内人がツアーの際に名前を出していた副看守長(この監獄で2番目に強い)さえも他の看守のように、意識を失い倒れ伏している。
息をしているものもいるが、出血多量で治癒しなければいずれ死に至るものが半分であった。あとは既に、息が止まっている
「面倒な。」
アバドンは家系能力を発動させ、煙を生成し、風魔術と索敵の効果をダブル付与させる。
目に見えない不可視の煙に、一気に2階層、1階層とが瞬く間に覆われた。
アバドンは意識を集中させるために、目を瞑る。
頭の中に、監獄のマップが情報として表示されていた。2階層から5階層にかけて、動かない光が多数。そして、1階層に、ある場所で不自然に固まっている複数の光。激しく動いてはないが、動いていないわけではない。
「当たりか?」
アバドンは目を開き、1階層以外の情報を遮断する。
光までの最短ルートが頭に情報として入ってくる。
アバドンは物凄い力で地を蹴った
「本当に、なにも知らないんだな?」
「だから、何度もそう言っているだろう」
その後俺は現場に駆けつけた魔関に、重要参考人として魔関署警備局の本部に連行された。このテロ事件は、生中継でお茶の間に流れ、悪魔に多くの強い衝撃を与えたらしい。本部が動いているということは、大きな事件として捉えているのだろう。
そして俺は現在、取り調べ室にて尋問をされていた。
「お前たち魔関の犬どもは無駄に嗅覚が優れているからな、俺に聞かずとも、今回の主犯くらい把握しているだろう?」
俺は魔関にお世話になるのは、なにも初めてではない。嫌というほど冤罪にかけられてきた俺である。今回のように事件の現場に居合わせてなくとも、令状を家に持ってくるようなことをするのが魔関署である。
この取り調べ室にも慣れたものだ。
「………」
そして、目の前で黙りこくったこの男も、顔馴染みである。
いつかお前を監獄にぶち込んでやると熱烈な告白も貰っている。
腐れ縁だ。
「ハッキリと言え。俺だけ言うのは、公平じゃないだろう?」
「その言い方は、なにか、知っているんだな……」
「おっと、これは一本取られた」
揶揄うように笑ってやれば、男は苦々しく顔を歪めた。
「ほざけ、……今回のウォールターパークの魔獣襲撃事件の主犯格は、数名のスタッフだということはわかっている」
「おいおい、それだけか?そんなこと誰でも考えればわかる。オツムが弱いのか?なんで、魔関ともあろうものがまだ、犯人を特定できていない?」
ああ、面白い。
コイツは煽ってやればやるほど、顔を歪める。反応が良いとやりがいがあるというものだ。
「…お前以外にも、取り調べはした。同僚のスタッフたちも、囚魔も誰一人として、そいつらの名はおろか……姿すら思い出せないということだ。
お前の犯行じゃ、ないだろうな…?」
ふむ、なるほど、な。
良いことを聞いた
俺は盛大にため息を吐いて、席を立った。
「所詮は犬っころ。それは、結局は何もわかってないと言っているようなものではないか。言いがかりは毎度のことだが、やめて欲しいものだ…俺は帰らしてもらう」
「おい、情報は、」
「はあ?ろくに情報を出してないやつが強請るなよ」
「ッ……」
本当に良い表情をする。悔しいよな、自分の無力感が。次に会う時までなにがいけなかったのか精々考えることだな。
俺は帰ろうとドアの方に歩みを進めようとした。
またな
「じゃあ「ちょっと待ちなさいよ」
「ん?」
出ようとドアノブに手をかけようとしたところで、俺が開く前に扉が開いた。
女の声がしたかと思えば、扉を開けて入って来たのは、とても魅力的な女悪魔だった。
俺よりは背は低いが、女の平均よりは充分に高い身長。出るところは出て締まるところは締まっている魅惑のスタイル。職業柄動きやすい方がいいのか、短く切られたショートの髪は艶があって色っぽい雰囲気を際立たせている。そして、極めつけはその顔。整っていることはもちろん、鋭くハッキリとした目が自信を感じさせて、俺はコイツの顔が好きだった。
コイツも所謂、腐れ縁だ。
……タイミングのいい。
「ねえ、情報持ってるでしょ?マ・ル・ス♡」
女は、俺にしなだれかかって来たかと思えば、耳元で甘い声を囁く。その豊満な胸を当てることも忘れない。
視線を下にやれば、胸のボタンがいつのまにか解かれており、谷間が存在を主張をしていた。
「ふふ、マルスの(持ってる情報)ちょーだい♡」
「おい、ファム。何度それをやめろと言ったらわかるんだ。見苦しいぞ」
「なに怒ってんのよオム。アンタが情報取られるだけのカモになっているから、私がサポートしてるんでしょー?わかるー?」
「は?なんだと」
「んー?いいよ?やる?私が勝つけどねぇざぁこ」
この二人は、俺以上に互いが腐れ縁だ。
同い年で、小さい頃からずっとお互いの顔を見て育ってきたらしい。兄妹ではないが、本家と分家の血縁関係にはあるらしく、ほぼ兄妹のソレといっては過言ではない仲ではあるそうだ。
なぜ、俺がそんなことを知っているのか。大体の取り調べは、毎回コイツらで、今日のように取り調べ中に口喧嘩に発展するものだから、嫌でも知った。
「はぁ……喧嘩するほど仲がいいってな。俺は帰るぞ」
「「ちょっと待て」」
「「仲良くない」」
タイミングもバッチリ。やっぱり仲良しじゃないか。
「もう!オムのせいでムードぶち壊し!!」
「マルス、まだ帰っちゃイヤ」
目をうるうるさせて、上目遣いで見てくるその表情はこう、くるものがある。
「おい!!ファム!!」
「お前と違ってこの女の方が、俺の扱い方をよくわかっているぞ」
「なに…?」
「マルス、触って♡……んっ、ッふふ」
弾力のある絹のように白い胸を直接揉んでやると、気持ち良さそうにヨがる声をあげる。
…本当に、コイツは俺をよくわかっている。こんな痴女っぷりを発揮する癖に、最後までさせない。お触りまでで、本番には決していかない。流されない。
俺が、初めて抱ける予想ができなかった女。
もえる
俺がそう思うことすら、コイツの策なのだろう。
良いだろう、手の上で転がされてやる
「……この事件は、思ったよりも深く魔界に関わっている。アザゼル・アンリ、お前らのボス犬に伝えろ。13冠に気をつけろ、とな」
「ッ、13冠……!?」
「な、どういうことだ。お前はなにを知って」
「ここからは、別料金だ。お前たちが敵か味方になるかわからない以上、情報を渡すには高くつくぞ?今度こそ、帰らせてもらう」
…………
………
……
…
…
魔関署からの帰り道。俺は珍しく、馬車を使わずに自分の羽で飛んでいた。
時間をロスすることは痛手に感じはするが、それに見合ったものが手に入ったので問題はない。
さて……
「父さん。俺だ」
『マルスか、どうだった魔関は』
「そうだな、
『そうか…』
俺は監獄での出来事を思い出す。
俺はあの後、1階層の複数の光の正体を突き止めた。
光の正体は囚魔であった。テロ事件に乗じて脱獄を図った囚魔たち。
俺は、煙を使って囚魔の頭の中を覗いた
自分たちは、キリヲという囚魔から脱獄の計画を知らされた。
キリヲはあらゆる悪事にその集団ありとうたわれた
なんでも、
その計画には、囚魔たちの協力が必要。手をかせば、上手いこと脱獄させると持ちかけられた。
地上の遊園地の三ヶ所に、わざと魔力を送り込む。そうすれば、遊園地を破壊することができるらしかった。
見返りとして、
2階層の看守室は
そして、大きな戦闘をすることもなく、1階層に着くことができた。
事前に教えられていた場所には、鉄格子があり、空が見えた。脱獄できると思った。
キリヲも一緒に脱獄する手筈であったが、途中ではぐれたらしく、無我夢中で走っていたため気づかなかった。
しかし、脱獄が目の前にあったので、そんなこともう関係なかった。
鉄格子に伸ばした手が魔術で弾かれなければ
鉄格子の隙間から、見える外に
キリヲがいなければ
どういうわけか、キリヲは
それから、
「我らバール様の命を受け、ウォルターパークの全破壊と、キリヲ様の解放に参りました」と。
裏切られたと思った。見捨てられたと思った。
そして、キリヲの口から語られた事実。
「一言も僕は君らを脱獄させるなんて言うてない」と。
脱獄は、キリヲの脱獄であって、最初から他の囚魔は含まれていなかったのだと理解した。
俺たちは絶望した。
キリヲはそれを見たかったのだと、興奮した顔で言った。
自分たちは所詮「ワル」でしかなく、キリヲが「悪」だったのだと、理解した。理解させ
『もういい』
「そうか?」
電話越しに父さんのため息が聞こえた。
俺は父さんに今回の事件の詳細を話していたつもりが、あまりにも面白いものだったので、語るのに熱が籠っていたらしい。
「魔関は、これらのことを何一つ知らない。魔関はクソ犬だが、優秀。なにもわからない、なんて普通はありえない。
そして、俺の煙は真実を知れた。
このことから、確実に認識を阻害するような魔術がかけられていることがわかる。おそらく、それもかなりの大きい規模でだ。」
家系能力 煙生成
我が家の煙は、魔術に干渉されない。これは、攻撃魔術だけに適応されたことではない。精神魔術などの目に見えないものにも適応される。
つまり、脳が弄られた相手でも、この煙を使えば全てがわかる。
情報戦において、我が家は負けることはない。
「それよりも今回、覗いて得た1番重要度の高い情報は今回の犯人。キリヲ、
これから、この3つのどれかを聞けば、あとの2つが確実に関連していることがわかるようになる。
もう少し、俺の行動が早ければ、キリヲもしくは
いや、それだと面白くないから、結局はしないだろうな。
まあ、生まれながら公平ではないが。俺は少しでも公平に生きたいと常々思っているのだ。
『わかった…その3つの動向に注意をするとしよう』
「あと、一応念の為に、魔関の……そうだな13冠アザゼル・アンリの行動も注視してくれ。ここが手を組むとは思えないが……どうなるかはわからないからな」
『…わかった』
さて、面白くなってきたぞ
ちなみに、キモ男の入間くんへの好感度がもっと高ければ、ウォルターパークで遊ぶ√もありました。
8から10巻をこの一話で詰め込みました。次回は終末日継続話出して、そして、キリのいいところで収穫祭に入ろうと思ってます。
そろそろバトって原作に関わりたい