エゴにまみれた危険な悪魔   作:名無しの位階1の虫ケラ六年生

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早々に、オリキャラ再び



第二十二話 新学期と家系魔術

 

 

新学期から、問題児クラスのみバビルス特別授業が開始されるらしい。

課題として2年生になるまでに位階4(ダレス)に昇級することが出された。

この課題ができなかった場合、即刻王の教室からの退去をさせられるそうだ。

 

ここで、この課題がどれだけ難しいか理解してもらうために軽く説明をしよう。

 

位階4(ダレス)とはひとつの卒業ボーダーラインである。

卒業資格、必要単位とでも言うべきか。

4(ダレス)というのは普通の悪魔が6年間かけたら取れるというレベルの位階である。それを1年生でとれというこの課題は、規格外という他ない。

 

皆はこの課題に阿鼻叫喚。

メイも開いた口が塞がらないようであった。「この学校頭おかしいんですか?」と。

 

まあ、十中八九例のウォルターパークの騒動を解決したのが問題児クラスというのが、報道されたのが原因だろうな。これだけ吹っかけても出来ると思われている。期待されているのである。

実際に、俺もまさかあの時監獄の上でそんなことが行われていたと知って驚いたからな。

 

全員が4に位階を上げることは非常に難しい。そしてこれはバビルス特別授業である。そう、授業。

悪魔学校バビルスは、問題児クラスを4に上げるための支援として、生徒それぞれに()()()()を用意していた。

 

 

フルフル軍曹  ジャズとアロケル

 

ウェパル嬢   ゴエモンとアガレス

 

ライム先生   イクスとウァラク

 

ミスターハット クロケルとカムイ

 

バラム教諭   サブノックとアスモデアス

 

ロビン先生   リード

 

バルバトス   イルマ

 

()()()()    アバドン・マルスとケイとメイ

 

 

まあ、俺とケイは既に位階5に到達しており、課題はあまり関係なかったりするので、応援に回ろうと思う。

ま、頑張れ

 

 

 

 


 

 

 

 

「くそ、やっぱり嫌な予感が当たった」

 

 

思えば、本家からの伝書鳩はいつも厄介事を持ってくる。本家からのほぼ命令に近い頼み事に悩ませられてきた

 

 

「よりにもよって、今回は当主様直々のご命令……くそが

 

 

思わず手に持った文を握り潰してしまう。

 

命令はいつもと毛色が違っていた。

 

[我が息子アバドン・マルスが在学する悪魔学校バビルスでは、新学期から新しい取り組みを授業で行うそうだ。

我が家の家系魔術は少々特殊だ。そのため、特別講師をアバドン家の方から寄越して欲しいとの連絡があった。

そこで、分家の中でも煙の扱いに長け、対人戦闘にも慣れているお前に頼みたいと思っている。

お前が担当するのは、マルスとその付き人の2名だ。

数週間だ。期待している

 

アバドン家当主]

 

 

手紙の内容には、頼みたいと思っている。なんて一応書かれているが、直訳すると自分の息子を鍛えろ、という命令文である。

そして、当主の印が押されているから、この手紙の送り主は命令をできる立場にあるということの証明であった。

当主というのは、その家系にとって絶対的な君主のような存在である。今代の当主のこの手紙はまだ丁寧に書かれていている方なのである。現当主様はお優しいともっぱらの噂だ。

 

 

自分の意見など聞くつもりのないこれのどこが、優しいのだというのか……

 

 

「いや、俺は恵まれている方か……」

 

 

俺は自嘲気味にフッと笑った。

こんな風に拒否権の無い俺だが、実際俺は他と比べて恵まれた立場であった。

 

アバドンの血の濃い分家に生まれたことが一つ。

分家にしては、煙を扱う適性が高かったことが二つ。

魔術無しの戦闘にも長けていたことが三つ。

アバドン領の管理を任せられた長ということが四つ。

五体満足でいることが五つ。

今こうして生きていることが六つ。

 

 

俺は六つ、こんなにも恵まれている。

血の薄い分家として生まれればアバドン家など地獄でしかない。この家は下っ端をまるで換えのきく道具かなんかだと思っている。

弱者は強者に使われるために生まれてくる。そう信じて疑っていない。本家のやつは狂ったやつしかいない。

 

 

「ご命令、しかと承りました。私の全ては本家のお方のために」

 

 

 

そして、弱者も強者に使われることが正しいと信じて疑わないのだ。

 

 

 

………………

……………

………

……

 

 

 

 

 

 

ここは、アバドン領北部。

アバドン・マルスとメイ、ケイの3人は授業が終わった途端に、突然教室に現れた男に捕まえられたと思えば、一瞬にして知らない部屋にいた。

 

混乱する2人と落ちたついたアバドン・マルスに男は告げた

 

 

「私は、アバドン・デンス。アバドン領の北部を治める者であり、今日から特別講師として指導させてもらうことになった」

 

 

「マルス様とお顔を合わせるのは、先日ぶりでございますね」

 

 

男はデンスと名乗った。その顔は嘘くさい笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「分家の私が、マルス様にご指導できることは大変な名誉でございます。」

 

デンスはマルスの方に向き、頭を下げる。

 

 

「マルス様の護衛の2名」

 

そして顔を上げたかと思えば、メイとケイを睨みつけた。

その顔には怒りがうかがえる

 

 

「はひ、」

 

「……はい」

 

 

「お前たちは、減点だ。突然教室に現れた見るからに怪しい俺から、なぜマルス様をお守りしなかった?」

 

 

デンスの言葉にメイとケイは苦々しい顔をする。

 

 

「…私は、咄嗟に動けませんでした」

 

 

「俺は、警戒してたっすけど……悔しいですが、教官並…いやそれ以上に、気配が読めなかった。懐にすぐ入られて接近を許してしまったっ……」

 

 

2人の言葉を聞いて、デンスは目の睨みを少し弱めた。

 

 

「ちゃんと自分をわかっているようなら、よし。では、突然場所が移動したのは、なんでだかわかるか?ついでにここはどこだと思う?」

 

 

「え、…なんかの、魔術っすか?ここは、部屋?」

 

 

「……煙生成。分家の方に多い派生技でしょうか……。デンス様は北部を治められている分家の長。そして、今から行う授業の内容はアバドンの家系能力が関連してくる。ならば、人目のつかないよく把握した場所がいい。城の地下といったところでしょうか」

 

 

メイは、手を口元に当てて推理するように、言葉を紡いでいく。

 

デンスはそれを見て満足そうに、関心した。

 

 

「…正解だ。メイドの方は頭が回るようだな。まあ、城ではないが、地下なのは当たりだ。よろしい。では……今日の授業を初めよう。お前たち2名は今日は見学だ。みて学べ」

 

 

 

デンスはマルスに向き直った。

そして、深く頭を下げる。その表情と声は真剣そのものであった。

 

 

「マルス様お待たせしてしまって申し訳ない。私と、()()()戦っていただけるだろうか」

 

 

「オッサン本気か?」

 

 

「本気だ」

 

 

マルスは、何が面白いのか突然笑い出す。

浮かべるのは余裕の笑みであった。

 

 

「ははは、流石に手加減はするが。できるだけの本気は出してやろう。だから勝負にはならないぞ?」

 

 

「望むところだッ」

 

 

デンスはマルスよりも早くに生まれ、マルスよりも経験も多く、マルスよりも努力をしてきた。

しかし、血というものがある。

本家と分家という壁が存在していた。

 

 

デンスが勢いよく駆け出し、()()()

ケイの重複強化のように速度によって消えて見えなくなる現象ではなく、本当に消えたのだ。

 

 

アバドンの後ろにデンスはいた。

 

「「ッ……!!」」

 

 

そしてアバドンの首に攻撃を加えようとして、()()()()()()()()

 

 

「「へ?」」

 

 

突然の展開に理解が追いつかない2人。

自分で殴ってそのまま後ろに倒れるデンス。まるで道化のようであった。

 

 

いったいな…加減しろよ、俺…これが本家の操作ですか。凄まじい能力、流石でございます」

 

 

デンスは、起き上がる際に苦々しい表情を浮かべる。瞳には、悔しいというよりも諦めのように近い感情があるようにも見えた。

 

そしてアバドン・マルスの方に片膝を折って頭を垂れる。

 

 

「お前の技もなかなかじゃないか。煙を発生させた空間と空間を繋げ瞬間的に移動させる仕組みか…。最初に俺たちをここに移動させたのもこの技だな。それとまさか自分にまで煙の支配をしているとはな。なかなか思い切ったことをする」

 

 

「任務の上で、精神魔術をかけてくるような相手が多いためその対策として煙で自衛をしています……しかし、自分にかけていた支配が、上書きされてしまった。」

 

 

アバドン家はその煙という能力が強い家系である。

ならば、アバドン()アバドン()になれば、どちらが勝つのだろうか?

もっと厳密に言えば、どちらの煙の支配力が勝つのだろうか?という問題である。

 

 

「私のこの煙は元祖(オリジン)様の操作には遠く及ばない。本来の操作に限りなく近い本家の方に、手も足も出ない。」

 

 

 

元祖(オリジン)というのは、この煙生成という能力が最初に発現した原点の悪魔である。

 

煙の本来の色は黒であった。異なる家系能力、異なる血が交わった結果、現在まで煙は多種多様に変化してきた。

 

原点は、3つのみの効果しか存在していなかった。

 

文献には、操作と付与、破壊と記されている。

 

 

操作 黒い煙に呑まれ、闇に支配される

 

付与 闇に呑まれた者は毒に侵されたような痛みでもがき苦しめられる。そして死を迎える

 

破壊 闇に触れたものは全て破壊される

 

 

アバドン家で現在使われている能力は、操作と付与が主である。一見、デンスが使っている空間と空間を繋げる煙はまた違うものに思えるが、生物ではなく空間を支配しているだけで、操作であることに変わりはないのである。

 

魔王に反逆した当主が、操作の扱いに長け、洗脳というものを用いていたせいで、操作=洗脳というような印象を誰もが持っているが、実はいうと操作というのは支配であって、誰しもが洗脳の能力を使えるわけではない。

 

 

「身体を支配された気分はどうだ?」

 

 

「……最悪です。」

 

 

「ははは、そこはマルス様に支配されて幸せです、だろう?」

 

 

「ッ……」

 

 

笑うアバドン・マルス

顔を歪めて頭を垂れるアバドン・デンス

 

同じ姓を持つというのに、2人には目に見える差というものがある

同じ血が通っているのに、2人には明確な格というものがある

 

アバドンの血と能力がほぼ受け継がれてきた本家

他家の血と能力を多く取り込んでいる分家

 

本家は元祖(オリジン)の能力を色濃く継ぎ、分家は他家と交わったことで変化した能力が発現した。

 

煙には早い話上下関係が存在する。

アバドン(本家)アバドン(分家)が煙を同じ場所に発生させたとすれば、アバドン(本家)の煙が優先される。

では、アバドン(本家)アバドン(本家)が煙を同じ場所に発生させたとすれば、どちらが優先されるのか?

能力の強さ=血の濃さであれば、家系図が上に行けば行くほど優先されるのだろう。

能力の強さ=経験であれば、赤ん坊の本家とお爺さんの分家では分家が優先されるのだろう。

 

前者も後者もどちらもそれは正しくない。なぜならば、今現在アバドン家で最強と言われているのはまだ歳の若いアバドン・マルスであるからだ。

 

能力の強さとは、才能である。

結局はこれに行き着くのであった

 

 

 

「お前たち2人、みたか?弱者と強者の違いだ。才能の違いだ。本当の強者には、努力したって勝てやしない。まずそれを解れ」

 

 

デンスの言葉はとても重みを感じた。

生まれてから今まで、才能というものを感じて生きてきたものの重みであった。

 

「ッ、」

 

 

「………」

 

 

2人は現実を直視したくなかったのか、地面を睨みつけた

 

 

「ただ、同時に強者は上澄みしかいないということも知れ。マルス様のように最強に近いお方なんて早々いない。というか、あったら困る。

弱者は群れろ、考えろ、そして出し抜け。」

 

 

 

 

「この数週間、俺はお前たちを強い弱者にする。」

 

 

 

デンスの声は今日1番に、力強かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこからか、ホワイトボードが持ってこられていた。

 

デンスがペンを持ちホワイトボードの上にアバドン、と書く。

そして、後ろに座る2人に向き直った。

 

 

「まずお前たち…どこまでアバドンを知っている?」

 

 

突然に授業が始まった。

 

 

「え、っと…?」

 

 

「そのアバドンというのは、家系能力の点で、でしょうか?」

 

 

 

「まあ、それが強いな。」

 

 

「…私たちメイドは、煙生成というものを主人から説明される、ということはありません。しかし、とても使い勝手がよく恐ろしい能力だとは伺っています。

坊ちゃんは、特殊なご趣味がございまして…、そういった時に使われると聞いたことがございます。たしか、感覚を狂わせる煙。」

 

 

「えっと、俺はなにもわかんないっす……教官が、煙を扱える方だったので、凄い強いということは、知ってる、す」

 

 

 

「なるほど、概ね予想通りだな。じゃ、話に出てきた坊ちゃんもとい、マルス様。なにかご意見あるでしょうか?」

 

 

 

「ペン」

 

 

「はい」

 

 

デンスからペンを受け取ったマルスは、ホワイトボードにすらすらと文字を書いていく。

 

 

「煙生成は操作、付与、破壊という初代の悪魔アバドンが持っていた能力が基本となって成り立っている。これを話すにおいて、前提として煙とはなにか理解する必要がある」

 

 

ボードには新たに、操作・付与・破壊の3つが書き足された。

 

そして、煙生成とは?と疑問系の言葉が、書かれた。

 

 

 

「煙は物体の攻撃、魔術に干渉されないと同時に干渉できない。煙が干渉できるものは、生き物である。

そして、煙には持続時間が存在する。煙が存在することが可能な期間は5ヶ月。この期間が過ぎれば自然消滅する。また煙を生成した術者または、煙で支配されていた生き物がなんからの理由で死ねば同様に煙は消滅する。

特殊だが、煙を同じところに同時に発生させた場合、片方が優先されてもう片方は消滅するというものもある。

これ以外のことで、煙が消えることはまず無い。

ここまでで、質問はあるか?」

 

 

「えっと…煙は風とかに流されたりするんすか?」

 

 

「良い視点だな。答えは干渉されない、だ。普通の煙とは根本的に違う、別のものと捉えた方がいいな」

 

 

うーん…?とケイがわかってないような返事をした。

 

 

「煙を生成した後も維持に魔力を消費するのでしょうか…」

 

今度はメイが手を挙げて質問する。

内容にニヤリとマルスは笑った

 

 

「そこが肝だな。答えは消費されない、だ。」

 

「それは…凄まじいですね」

 

 

アバドンの家系が強いと言われる所以の一つが、魔術を発動すれば長時間魔力を消費せずに行使できるということだ。

煙生成という魔術は、生成する時にだけ魔力を必要とする。

まさにコスパ最強の魔術であった

 

 

マルスはホワイトボードにとっても便利!と書き加えた。その言葉を書く意味があるから微妙なところである

 

そして改めて話を再開した

 

 

「では、早速操作から説明しよう。

操作とは、簡単に言えば、煙を生成し触れた生物を支配できるものだ。俺が先程デンスにやったことのように、身体の主導権を握れるものが主だ。デンスが一瞬で移動したもののような特殊なものは分家だけにみられる例外中の例外だな」

 

「次に付与だ。これは、煙に効果を付与する能力全てに当てはまる。つまりは、1番アバドン家の多くが使っているものだ。

対象を決める。

これはこの煙生成を使う上でもっとも重要なことだ。ターゲットを決めずに広範囲で毒煙を発生させて殺さないやつまで殺してしまった、なんて洒落にならないからな。

毒や痛みなどの単純なものはもちろん付与だが、対象を決めるという行為も付与と同じ枠組みの話だ。ターゲットにだけ効く煙の付与と例えれば早いか。

現在は煙に魔術を付与することも可能になっているため、これは3つのなかでも特に便利だ」

 

 

「最後に破壊だな。これについては情報がなさすぎる。

これは普通の煙とは違う。全てに干渉できる煙だ、おそらく、武力だけで見るならこれが1番強い。

しかし、初代の悪魔以降この特性を引き継いだものは確認されていないから憶測になるが…」

 

 

「質問はあるか」

 

 

「はいっす!!俺頭悪いんでよくわからないんすけど!!つまりは、馬鹿みたいに強いってことっすよね!!!!」

 

 

「…っぷ、く、くははは!!そうだな。そういうことだ、くっ、ふは」

 

ケイの脳筋的だが、確かに的を射ている言葉にマルスは大笑いし出した。どうやらツボに入ったようで、止まる気配がない。

 

ホワイトボードに馬鹿みたいに強いが追加で書き加えられた

 

 

改めてみると、ホワイトボードは必要だったのかという疑問が浮かんでくるものだった

 

 

「アバドンの家系能力はとても強力ではあるが、魔力が切れればその力も行使はできない。俺に攻撃を当ててみろ、そうすればお前たちは合格だ」

 

 

 

デンスの言葉で1日目の特別授業が終了した

 

 





収穫祭編が次回から本格的にスタートです

収穫祭は魔入間の盛り上がり所のイベントだと思うので、ガッツリ展開に関わっていきます。
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