エゴにまみれた危険な悪魔   作:名無しの位階1の虫ケラ六年生

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特訓パートをスキップしないけど、短縮するタイプの人


第二十三話 家系魔術の強化訓練

 

 

特別授業2日目

 

 

マルス、メイとケイの3人はデンスに授業終わりに攫われて、また地下室にやってきていた。

 

 

「ああクソっ!!また、抵抗できなかった!!」

 

 

昨日の特別授業の終わりにデンスの魔術、所謂強制転移に抵抗することが課題として出されていた。そのために昨日とは違い、デンスに()()()()()()()()()ケイは逃走を図った。

結果は強制転移。デンス自体には身体に触れられてはいない。

 

 

「私の煙がどこまであるか、それがわからないと強制転移からは逃れられないぞ」

 

 

「…難しいですね」

 

 

煙は視認不可能だ。

そのため、気づいたらもう自分は煙に覆われている、というのがケイたちの現状であった。

 

 

「さあ、今日からは実践だ」

 

 

「まず、お前たちの家系魔術を確認したい」

 

 

「えっと、俺は自己再生っす。怪我したら自動的に再生するっす」

 

 

「私は、温度操作です。大体のものの温度を操れます」

 

 

「なるほど良い能力だな。お前たちは、家系魔術についてよく考えたことはあるか?」

 

 

「……俺は、家系魔術が下手くそでちょっとずつしか身体が回復しないっす」

 

「私は…近頃、武力として初めて魔術を行使しました。どこまで使えるのか、全く分かりません」

 

 

 

「そうだな、ケイの場合はおそろく回復が自動だから、行使しようという意思というか、イメージを強く持てば自ずと回復が早くなるはずだ。

メイは、全ての魔力をつぎ込んで周りの温度を限界まで熱くしてみろ。限界を知ればイメージもつきやすい」

 

 

魔術はイメージである。

魔力量は魔術の行使に欠かせないものだが、それをどう効率よく最大限に活かせるかが魔術の発動である。

 

デンスからすると、メイもケイもお粗末な魔術行使と言わざるおえない。

 

メイは魔力量は平均より少し多い程度だが、頭が硬いのか消費量が激しいようですぐに魔力不足で動けなくなった。

ケイは魔力量は立派なもので平均を倍近く上回っていたが、魔術が怪我をすると自動で回復されるという特性のせいで、魔力を自分の意思で使えていない。

 

課題は多かった。

 

 

「メイは魔力が少しでも回復すれば、魔術を行使しろ。それを繰り返せ」

 

 

デンスの言葉にメイは苦しそうに顔を歪めながらも、僅かに身体の中に感じられる魔力を掻き集めて空気の温度を熱くする。

立っていることができないのか膝から崩れ落ちているが、瞳には強い意思を感じさせる。

 

 

「ケイは私と戦闘だ。容赦なく瀕死になるまで痛めつける、怪我を直す意思を強く持て、行くぞ」

 

 

デンスはケイに勢いよく迫る。どこから取り出されたのか手にはナイフが握られていた

 

「ッ!!」

 

ケイは突然のことに回避は無理だと判断して、受け止めることを選択。腰に携帯しているナイフに手を伸ばして、それが無いことに気づく。

 

横から迫りくるナイフに視線を向ければ、それは馴染み深い自分のものであった。

いつのまに、と考える暇もなく慌てて腕に部分的に身体強化を施す。

 

 

横薙ぎに振るわれたナイフが防御した腕に当たり、なんなく切断した。

 

 

 

「え、」

 

 

本能のままに地面を後ろに飛ぶように蹴った。重複強化したはずの両腕が無い。切断面から勢いよく吹き出した血で顔が赤く染まる。

生温かい感触であった

 

 

「ッぐあ、ぅ」

 

 

そして、遅れて襲ってくる激痛。

だが、痛みを感じている暇はない。

 

ケイの視界からデンスが一瞬で消える。ケイの今までの戦闘経験からくる勘が後ろだと言っていた。

 

デンスの次の一手が後ろから迫っていた

 

 

「ッ」

 

 

今度は払いではなく刺突。首を横に動かしギリギリで回避する、デンスの方に態勢を向けようと反転すれば、今度は目と鼻の先にナイフが迫っていた。

 

 

「ッ」

 

 

後ろにも横にも回避しても、また迫ってくる。

ケイはそう判断して、身体に重複強化をした上で上体をナイフから逸らしながらデンスの方に逆に踏み込む。

髪が何本か切れたが関係ない。

 

タックル

 

純粋だが、強い。体重と勢いをかけた一撃。

 

 

デンスは態勢を崩し、ケイは背中からナイフを突き刺された。

 

 

「ッぐ、ぶ」

 

口から血が吹き出した。

 

本来ならナイフを持っている腕を持ち、固定させた上でタックルをしていた。

ケイはアドレナリンが出ていて忘れていた、自分は今、両手が無かったのだと。

 

下に視線を向けると、腹部からナイフが突き出ていた。

それは赤く染まっている。

 

痛みと異物感が身体中を支配する。そして、また激痛。

一気にナイフを引き抜かれたことがわかった。

 

切り口からどくどくと血が溢れている。

止まらない

 

 

死ぬ

 

ケイは本能的に悟った。

 

 

「うでぇ!!!!」

 

 

大きな声で叫んだと同時に口から血が吐き出される。

 

出血で赤く染まった歯がよくみえる。

 

 

「おらっあああ」

 

 

手が、生えた

 

ケイは戦闘の中で成長していた。

 

 

 

そして、四肢を切断された。

 

 

「今日は、ここまで。身体強化による肉体を超越したような爆発的な力は評価するが、それだけだ。」

 

 

デンスのその言葉と同時にケイの視界はふわっと傾いた

 

ケイの身体はどさりと地面に落ちる。身体を支える足が無くなったからに他ならなかった。

 

 

「切り口を火の魔術で焼いて止血しておいた。残りの時間は、回復に努めろ」

 

 

ケイは虚な目で、されど意識を失うことはなかった。言葉にならない苦悶の声が口から溢れ続ける。

今にも消えそうな命の灯火を、焼けた肌の痛みが繋ぎ止めていた。

 

頭が酷くズキズキと痛む

 

 

腹部の傷がなんとか塞がったところで、ケイは限界が来たのか意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

北部の戦闘訓練施設の地下室に、悪魔が3()人倒れていた。

3人の内2人は気絶している。

 

 

「あんまり、ケイを虐めるな」

 

 

「……訓練です」

 

 

「それは仕方ないな。だか俺がムカつくかは別の話だ」

 

 

倒れるアバドン・デンスと、それを見下ろすアバドン・マルス

 

 

「メイはまだコツを掴みきれていない。ケイは、今回で少し成長した。」

 

「はい」

 

 

「ケイは呑み込みが早い。追い込めば追い込むほど、ケイは成長できる。メイは……努力し続けるしかないな」

 

 

「どちらも可能性があります。

ケイは自分の意思で瞬時に回復できるようになれば戦闘において不死身に近い力を発揮できる。

メイは魔術の操作の幅が広がれば、相手を即死させることも片手間になるポテンシャルを持っている。

最高の部下になれる。」

 

 

「俺も、お前との魔術無しでの戦闘は、なかなかにタメになるものがある。この数週間のお前の働きに大いに期待しているぞ」

 

 

「はっ」

 

 

 

 

 

 

特別授業3日目

 

 

「今日は昨日の反省を踏まえて、もう少し追い込むことにした。」

 

 

「な、鬼……」

 

 

「俺、昨日の怪我の痛みがまだする気がするっす……」

 

 

 

「弱音は吐いたら、その分厳しくするのでそれを理解して発言しろ」

 

 

「はは」

 

「…うっす」

 

 

「メイは昨日と同じように自主練した後、私と実践形式で魔術を使ってもらう。ケイは、昨日とは違い切断ではなく切り刻むので、部分的な回復を瞬時にできるようにしろ。では、始め」

 

 

 

「ケイ大丈夫かー」

 

 

特別授業4日目

 

 

「昨日は、メイの対人が情け無いことが判明したため、メイを主に指導する。」

 

「とりあえず、ケイは自傷して回復し続けろ。与えられる痛みには耐性があるようだが、戦闘において自傷も時には必要に迫られる時がある。慣れろ。

メイは、魔術がマスターできていないのはもちろん。接近されると身を守ることもできない。今日は基本的な護身術を叩き込む。

では、始め」

 

 

 

「連絡きてる、楽しそうだな」

 

 

 

 

特別授業5日目

 

 

「昨日と引き続き同じことをするが、少しギアを上げる」

 

 

「メイは、身を守り時間を稼ぐ方法を昨日覚えたはずだ。今日は徹底的に魔術で応戦しろ。自分の距離、間合いというものを意識して、ものにしろ。

ケイは、自傷と回復の繰り返しだ。大分回復の速度が上がってきたので、今度は質を上げる。マルス様が、お前の切断面に異物、石や土などを混ぜてくれるそうだ。環境によっては、自動回復が敵となる可能性もある。その時の対処法を確立しろ。

では、始め」

 

 

 

「ケイ可愛いなあ」

 

 

 

 

特別授業6日目

 

 

 

「お前たちは確実に成長している。良い傾向だ」

 

 

「メイは魔力量の消費が抑えれるようになってきている。この調子で励め。

そして、温度を上げる、下げるを交互にしか今まではさせてこなかったが、今日からは並行して違う温度操作をできるようにしろ。お前は頭が良いはずだ、それくらいやってみせろ。

ケイは、判断能力が向上している。異物が付着した面を部分的に切ってまた付着する前に瞬時に回復させるという行動はほぼ満点に近い答えだ。

自傷は終わりにして、お前は次の段階に進む。守る対象がありながらの私との戦闘だ。お前の本職だ、やれるだろう?」

 

 

 

「俺でなかったら、何回か死んでいるぞ?盾の役割を果たせ」

 

 

 

特別授業7日目

 

 

「今日で一週間だ。成長スピードは目を見張るものがある。」

 

「メイは、温度操作を並行で行うと魔術が乱れることが課題として昨日わかった。私が攻撃した時に魔術が切れてしまうのは特に減点だ。情報を並行して、処理しろ。死ぬ気で安定させろ。

ケイは、護衛として今のままでは失格だ。昨日の醜態はなんだ?マルス様に何度危険が迫った?護衛を馬鹿にしているのか?

自分を盾に身を挺して護衛対象を守る行動は褒めるべき所ではあるが、その後がダメだ。腹がナイフで刺されたとしても腕で貫かれたとしても瞬時に腹を回復して、敵を拘束するくらいの反撃をしてみせろ。

回復をもっと柔軟に使え。

では、始め」

 

 

「俺もケイの腹に手突っ込みたい」

 

 

 

特別授業8日目

 

 

「今日からより過酷な状況での実践を行う。今まではこれが終われば家に帰り布団で寝れていたが、今日から一週間は違う。アバドン領内の整備されていない自然での、サバイバル訓練だ」

 

 

「私が行き先を伝えずに、アバドン領北部のどこかに魔術で転移させる。煙の制限がアバドン領内では敷かれているために、私が治めている北部内しか転移はできないが、それでも北部は広大だ。

転移した場所をスタート地点とし、日の出までに、北部の城塞内に帰ってくることを課題とする。今は魔獣が活発に動く時期だ、城塞の外には多くの魔獣が蔓延っている。そして、アバドン領内の魔獣は凶暴で有名だ。

マルス様のお手を煩わせないように気をつけること。

では、始め」

 

 

 

 


 

 

 

 

「で、ここがどこかわかるやつはいるか?」

 

 

俺、メイ、ケイの3人は仲良く見知らぬ土地にやってきていた。

普段アバドン領の中央に住んでいる土地勘もない俺たちからすれば、同じ領内でもここは異郷の土地であった。

転移させられたものの、ここが北部であることしか情報がない。辺りを見回しても城塞の影すらも見えないため、どうやら大分遠くに飛ばされたようである。

前方に山が見えるが……山越えも視野に入れるべきか

 

 

「……同僚の使用人が、北部出身の方で北部の都市は山を越えた先にある、と言っていました。

学校の帰りで時刻はもう遅いです…危険ですか、山越えをしなければ明日の朝までには都市に到着できないかと」

 

 

メイが答えた。

顔色はこの一週間優れない上に、どこか口調は荒々しい。苛烈な訓練で精神が悲鳴を上げているのかもしれない

 

 

「山の空は怪鳥の領域です、それに…恐ろしいグリフォンが生息しているとか………」

 

 

ん?グリフォン…グリフォン?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

我は誇り高きグリフォンである。

 

同族にあったことは、父と母のこれまで2体だけ。遥か遠い険しい山岳地帯に、同族が住んでいると風の噂で耳にはしたことがあるが、それも何十年も昔のこと故、今現在は知るところではない。

父上も母上も今は亡き身。グリフォンは基本的に群れないために、子孫繁栄には向いていない。長寿の生き物であるのも子を積極的に作らない理由かもしれない。

しかし、我もそろそろいい歳だ、繁殖に努めるのもいいかもしれん。どこにグリフォンの雌がいるかはわからないが我は何者にも囚われない長寿の身、遠出するのも良いと考えていた。

そんな時に、悪魔からの久方ぶりの使い魔召喚の気配を感じた。強大な魔力だった、下手をすれば我の魔力量を超えている。

悪魔のような矮小の身で?面白い…。

番を探すついでに、今の悪魔の文明に触れてみるのも良いかもしれないと軽い気持ちで我は、悪魔の召喚に応じた。

 

それが、大きな間違いであるとも知らずに。

 

 

 

 

召喚時の容姿は契約者に影響されると言われる。

前回召喚された時は、()()()()()()()()()()()()()。今回もその程度の変化だと思っていた。

しかし、我は矮小な悪魔の姿(小娘)になっていたのだ。

 

混乱した

折れかけるプライドをなんとか堪えて、慣れない二足歩行の細い足を震えながらも立たせた。視界に入る肌が白かった、少しでも爪を立てれば血が出ることは容易なほどに皮膚が薄い。これが我の足だと…?吐き気がした

 

突然の身体の変化にも驚いたが、それ以上に驚いたのは、契約者であった。

使い魔の身からすれば、主人ともいえるそれは、最悪の性格をした悪魔であった。実力を備えていることがまた憎らしい。

 

悪魔が排出を行う個室、トイレといったか…

 

我は召喚されたその日、そこで雄としての尊厳を破壊された

 

 

 

 

 

我は召喚されることに恐怖を覚えていた。

 

グリフォンが高度な知脳を持つとはいえ、身体機能が大きく異なるグリフォンと悪魔とを行き来する生活は決して慣れるものではなかった。

 

何日かに一度召喚される日々が続いた。

頭のイかれた契約者が解剖と称して、我の身体を隅々まで覗いてくるあの行為が嫌だった。我は本来であれば雄だというのに、まるで雌のように扱われるあの行為が嫌だった。

「綺麗だ」

あの気色の悪い目が気持ち悪かった。

「ここが、悪魔のイイところだ。覚えようなあ」

己の本来の身体ではない姿が、快楽を感じているのが悍ましかった。

「気持ちいいな?ほら、欲しがってる」

己の精神が契約者から与えられる快楽に傾いていることを理解したくなかった。

「俺の子、孕んでくれるよな?」

我は、気高きグリフォンの雄だというのに、己の身体は、腹の奥が、雄を求めていた。

我は…どうしたらいい

 

己がわからなくなっていった

 

 

 

 

それから、ピタリと音沙汰が無くなった。

 

我は歓喜した。

あの忌々しい日々に原因はわからずとも一時的な平穏が訪れたことに安堵した。

あの男は我の身体を悪魔化して犯すだけには飽き足らず、いろいろな悪魔に手を出しているようであった。多くの男女があの男に恨みを持っているだろう。

夜道にでも後ろから刺されたのだ。でないと、あの獣のような男が我を求めないことなどあり得ぬからだ。

気持ちが清々とした。

 

しかし以前、我と男の間には濃い契約で結ばれた繋がりというものを感じる。死んではいない。それに、男の状態はどうやら怪我をして弱っているような気配も感じられなかった。

不可解だった。

 

 

 

…我の身体に飽きたのであろうか

 

モヤモヤとした気持ちが頭を支配するのはなぜだろうか

 

ズキリと胸が痛むのは、

 

召喚時の雌の悪魔ではない、グリフォンの身体が熱を求めるのは、なぜなのだ

 

我は、気のせいだ、思い違いだと目を背けるしかなかった。

 

 

なぜ、我はこんなに苦しい……

 

 

 

召喚されないこと、あれから約一カ月余り。

 

我は自分の縄張りにて、本来の生活を取り戻しつつあった。山の頂に寝床を構え、腹が減ればそこら辺の魔獣を捕まえて食べる。気まぐれに空を飛んだり、水源で水を飲んだり、山の上から景色を眺める。

何もない、今まで通りの生活。

 

そこに不満などを感じるはずはないのに、あの男と出会ってから、どこか退屈に感じる。

 

 

……

 

 

……ん、縄張りにどうやら悪魔が侵入してきたようだな。

 

丁度いい、暇を持て余していたから遊び相手に付き合ってもらおう。

多少怪我をさせても殺さなければ、遠くで群れている悪魔どももわざわざ我を討伐しには来ないだろうて。

 

 

 

 

………

……

……

 

 

 

 

 

 

「……本当にこの道はあっているのか?どう見ても、獣道だが」

 

 

 

「おかしいですね…私の同僚が言っていた話と違う……」

 

 

 

「先輩、方向音痴なんじゃないっすか?絶対間違ってるっす、整備されてなくて、馬車ひとつ通れないっすよ」

 

 

「…引き返しましょう」

 

 

「ロスっすねえ…もう羽で飛んでいきませんか?怪鳥の縄張りとか蹴散らせばいいんすよ」

 

 

「……もう辺りは真っ暗です。空を飛ぶのは危「でもこのまま足場の悪い山道を歩くのよりは絶対ましっす」

 

 

「俺一応夜目も聞くんで、お二人とも俺についてきてくださいっす。飛びますよ」

 

 

「メイ、行くぞ」

 

 

「っ、申し訳ありません……」

 

 

ケイが先行して空を飛ぶ。それに離れないようついていく俺とメイ。

流石は護衛訓練を幼少から受けていたケイである。こういう場面には慣れているようであった。

 

夜の山は寒くて静かだ。

 

たまになにかの甲高い鳴き声や獣の地を這うように唸る声が聞こえてくる。

 

大体の魔獣は昼間に活動する。しかし、夜に活発に動くものもいないわけではない。夜が活動時間の魔獣はとても静かで狩りが上手い傾向がある。

 

夜の山を越えるのは相応のリスクを伴う。

常に周囲に気を配らなければならない。突然巨大な鳥がものすごい勢いで飛びかかってくるなんてザラだ。

 

 

「怪鳥が接近、処理しました」

 

 

「何匹目だ?」

 

 

「5です」

 

 

短時間で、襲いかかってきた鳥は5匹。この山の鳥はよほど飢えているらしい。夜動く魔獣には肉食が多いため、狙われやすいのもある。

 

空中戦は、悪魔よりも鳥の方に分がある。

しかし、ケイの持ち前の技術がその差をカバーしていた。今のところ俺の方には血の一滴も付着していない。

 

 

キィイイイイイイイイァアアアアア!!!!!

 

 

山に響く甲高い鳴き声。

 

 

この声で山の魔獣が起きたのか、山がざわめき出した。

空の雰囲気が変わった。肌を刺す鋭い冷たさと風向きが変わったのか身体に打ち付ける強風。

 

なにかがくる

 

 

 

「ッ…!!前方に巨大な鳥を目視………グリフォンっす」

 

 

 

「ッ……」

 

 

 

ケイとメイの緊張した声を風が後ろに運んでいく。2人はもう戦闘の態勢にすぐさま切り替えていた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「報告は以上っす」

 

 

「ご苦労、よく頑張ったな」

 

ケイがここまでの道中で起きた事の報告をデンスにしている。

オッサンは笑っているが、目の下の隈が酷い。まさか…今までずっと仕事をしていたのか?

 

今度父さんに仕事を回すのを減らすように言っておくか……

 

 

 

俺たちはグリフォンを退け、夜の山を越えた。そこからは特に危険なこともなく、日の入りまでには北部の城塞都市に辿り着いたのである。

俺は特になにもしていないため身綺麗であったが、メイとケイはボロボロであった。メイドの服は獣道を進んだ時に枝に引っかかったのか所々穴が空き、エプロンは土で汚れている、ケイの服は黒でぱっと見ると汚れは目立たないが、よくよく見ると少量の血が付着したのか茶色いシミのようなものができていた。

2人とも髪はボロボロだ。枝や葉っぱが頭についている。鳥の羽まで付いているな…少し笑えてくる。

 

 

 

さて、一度本家に帰ってシャワーを浴びて、服を着替えて学校に登校しなければならない。

この特別授業があるからといって通常授業が無くなるわけではなかった。あと6日寝れない日が続くのかと思うと少し憂鬱だった。

 

 

 

 

 

 

「結局、あのグリフォンなんだったんですかね……」

 

 

「あっちから向かってきた割に、いちいち逃げ腰だったっていうか……」

 

 

「さあな…そういうこともあるのだろう」

 

 

「はあ……そういうものでしょうか」

 

 

 

 

 

そういえば、俺の使い魔もあんな見た目であるが、グリフォンだったなと思い出す。

 

だが今日のグリフォンは体格的に雄であったし…俺の使い魔とは違う個体だろう。俺の使い魔は雌だ。

 

今度使い魔を探して今日の雄と番わせるのも良いかもしれん。

たしか雌のグリフォンは雄よりも()()()()()()()姿()だったはずだ……

 

 

 

 

 

 

 

3人で馬車に揺られながら、笑い合う。

 

 

 

窓の外を見ると、日が顔を出し始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





補足すると、年食っているように思えるこのグリフォンの年齢を人間にして例えると、20代のイケイケな時期です。恋人募集中

よしイライラするし悪魔ボコろうと思って行ったら、契約者だったウソやん。からの必死に逃走。
戦う意志があったなら、メイとケイを圧倒できる力は持っていた。

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