エゴにまみれた危険な悪魔   作:名無しの位階1の虫ケラ六年生

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モチベがある内に投稿


第二十九話 違和感

 

収穫祭2日目

 

『おっはようごさいまーす!!』

 

『新しい朝ですよ〜!!』

 

『本日も〜助け合い!仲良く楽しい収穫をしましょう〜!!』

 

ジャングルに緩い声で起床の放送が流れる。

まだ寝ている生徒たちはこれが目覚ましになって欠伸を噛み殺して起き上がり出した。もうすでに起きていて収穫の準備ばっちりな気合いのある生徒もちらほら見受けられもする。

いつの時代も徹夜をする者はいるが、今回の収穫祭で徹(・)夜(・)を(・)し(・)た(・)生(・)徒(・)は(・)い(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

収穫祭2日目の生徒たちはおおよそ2種類にわけられる。

一日目で体力が削られすでにへとへとな生徒と、すこぶる元気な生徒である。

 

「あーキツい、眠い。寝たの5時だぞ?あの時の俺は頭がどうかしてた……それにまさか、1人で入る風呂があんなに時間がかかるとは思って無かったのもある」

 

アバドン・マルスはどちらかというと、前者の方である。

1日目にずっと魔術を使い続けていたのと、夜に無理をして森林を歩いたこと、極め付けは気が休まらなかった風呂が決定打となりマルスは疲れ切っていた。

 

マルスは夜に魔獣の大群を引き連れてそれを本部に提出した。

およそそれは15万ポイント。どの生徒、教師がみても目ん玉が飛び出る数字だろう。実際提出を受けた教師は驚きすぎてテンションがおかしくなってしまった。ちなみに教師というのは拷問学が担当のマルバス先生である。

マルバス先生は拷問学とそれに精通したマルスにたいしてはどこかテンションが元々おかしかったから気にするようなことでも無かった。

ともかく、マルスは体力も気力も限界に近かった。

 

「寝かせてくれプルソン。充分謝っただろう」

 

マルスは誰よりも早く、勝利への決定的な行動を取った。

 

「………」

 

「まだ怒ってるのか?」

 

「………」

 

「悪かった。これでいいか」

 

勢いよく扉が開かれて、部屋の人数が増えた。ハリセンを振りかぶったメイである。朝から元気な事だ

 

「坊ちゃん!!お縄につけ!!」

 

「だから!俺は手出してないっての!!」

 

「そんなはずがない!!」

 

「変なとこで信頼するな!あほか!」

 

ちなみに、この部屋は防音効果がつけられている。

……この意味わかるな?マルスはやる時はやる男だ。メイの判断は間違ってはいない。ただ今回は本当に何も無かった。

 

「ったく、とにかく……本当に眠いから寝かせろ。眠い。」

 

「…はい、おやすみなさいませ」

 

メイはこんな調子だが、メイドである。切り替えは早い。自分の立場を理解し、踏み込める線をきちんと把握していた。

マルスは睡魔に襲われるように枕に頭を沈めた。それにメイは綺麗なカーテシーをする

 

数秒後マルスから静かな寝息が聞こえてきた。本当に眠かったのだろう。

それを見てメイはプルソンの方を見た。メイは初めてプルソンを認識した

 

「ご挨拶は初めましてですねプルソンさん。私は坊ちゃんに仕えるメイドのメイと言います。クラスメイトですので気軽にお呼びください」

 

「あ、メイさん。よろしくお願いします」

 

プルソンはどこか緊張して答える。目立ってはいけないプルソンがまともに悪魔と会話をしたことが無かったのもあるが、メイの印象がプルソンは少し怖いというか苦手に感じたので萎縮してしまったのが大きい。

 

「はい。いくつか質問しても?」

 

「はい?まあ、僕に、その、答えられることなら」

 

「身体に痛みはありますか?」

 

「?いえ」

 

プルソンは不思議そうな顔をして、否定した。特に身体に痛みはは無い。なんなら、昨日寝たベットは今までで一番の寝心地だった。

あんなにフカフカなのは初めての体験だった。それに、プルソンの実家は布団派だ。

 

「…なら、安心しました」

 

メイはほっとしたように息を吐き出した。メイが確認したのは純粋にやったのかやっていないのか、なのだが。

どうやら本当に何も無かったらしかった。メイの経験上、それの次の日の朝はただでは済まないことが常だ。

あのマルスという男は加減というものをしらない。男悪魔であれば尚更、女悪魔は少しは優しく扱うこともあるらしいというのをメイは噂で耳にしたが真意は定かではない。

メイはソレを聞いた時、あの男が優しい?馬鹿もほどほどにしろと鼻で笑った。

 

「…聞きたいのはそれだけ?」

 

「はい、痛みが無いのなら質問はこれで以上です」

 

「え、」

 

「ふふ……なんで今まで姿を表さなかったとか、ずかずかと踏み込んで欲しい方ですか?」

 

プルソンは困惑して、そしてメイのことがやはり苦手だと思った。

 

「いや、そういうわけじゃ」

 

「特に興味ありません。私、メイドですから」

 

メイは、心底自分に興味が無いのだとプルソンは理解した。

メイの瞳は、目の前のプルソンを見てはいるが、本当の意味で見てはいない。無機質で無感情なものだった。

元々仲良くなれるとは思ってはいなかったが、こうハッキリと目の前で言われると流石に少し落ち込んだ

 

「…はい」

 

「すみません。そんな顔させるつもりは無かったんですが……坊ちゃんはプルソンさんを大変気に入っておられるご様子。これからも是非仲良くしてくださいませ」

 

坊ちゃん、マルスの事を口にするメイの目には確かな熱があった。

プルソンはそれに気づくが、それを口には出さない。ただ、マルスについて考える。

 

「なんで、…僕のこと気にいってるんです、かね………」

 

なぜ、こんなに慕っている綺麗なメイドではなく、自分なんかを構っているのだろうと。心底不思議でならなかった。

珍しくて、好奇心のままに自分を気にかけているのだろうかと、ふと思った。

 

「さあ?坊ちゃんの意図を探るのはメイドとして、畏れ多いことです。ただ…まあ、普通に顔が好きとかそんなだと思いますよ。あれ単純な生き物ですよ。あ、これオフレコで」

 

「へ、」

 

「プルソンさん。どうかお気をつけて」

 

「へ?顔が、す、す、へ?」

 

「プルソンさんそういうとこ危ないですよ。初心なのは危険です」

 

プルソンはメイから数分間謎のお叱りを受けた

 

プルソンは思った。僕は今収穫祭をやっているんだよね?と

緊張感も何一つない2日目の朝だった

 

 

一方その頃、一日目を食べて遊んで拠点作りにひやしたすこぶる元気な生徒リードとイルマの2人は伝説の(レジェンド)リーフを探し求めていた。

 

最難関収穫物 伝説のリーフ

 

全てが謎のそれは今まで収穫されたことは一度もない10万ポイントの大物収穫物であり、まさに名前の通りに伝説である。

そしてそれを狙う彼らはギャンブラーであった。

一日目にポイントである食材を全て食べ尽くした阿保とも言える。

 

未だにイルマとリードは試験開始の0ポイントのままであった。これにはいろいろとわけがあって0なのだが、彼らの男のプライドのために黙っておこう

女悪魔のハニトラに負けて収穫物を献上したなんて、ね口が裂けても言えないだろう。

 

そんな2人は優勝を目指していた。それは必然的に行動を急がなければならないことを意味している。

 

「よっし!そうと決まれば情報収集だ!」

 

「手がかりを探そう!!」

 

2人は元気はあったので、やる気だけは有り余っていた。

そして、実力もあった。

 

「でも生徒の中に知っている奴なんていないだろうし…あったらとっくに見つかってるだろうし。伝説のリーフになんてならないよねー」

 

「うーん…そうだよね。森のことを1番よく分かってるのは森に住む植物とか魔獣だもんね……魔獣と仲良くなって話ができたらいいんだけど…」

 

「ハハハそんなことムリ……」

 

「「あっ」」

 

2人は頭も切れた。

 

「カムイくん!!」

 

「家系能力翻訳(なかよし)!あいつなら魔獣と話せる!!」

 

彼らには頼れるクラスメイトがいた

 

「よーしそんじゃあ、居場所は僕の感覚強奪(コントローラー)でつきとめるよ!道選びはイルマくんで!進みやすい獣道教えて!」

 

「うん!」

 

2人は明るい顔で進んだ。頼みを断られることなど考えてない頭で進んだ。

そして順調にことは進み、ケロリ&カムイチームと合流するため向かった第二エリアで、イルマとリードは2匹の大きな獣に包囲された。

 

「「えっ?」」

 

 

 

 

 

「背中に乗れって言ってるのかな?」

 

包囲されて、2人に為す術もなしと思われたが、その獣たちにはどうやら敵意は無いらしい。なんなら、屈んで背中に乗せて運んでくれるらしかった。

2人は顔を見合わせて、カムイに会えると確信した。

 

2人は獣の背に乗って進むこと数分。目の前に広がっていたのは、この森林で初めてみる文明との遭遇だった。

ここは玉座の間なのだろうか、土ではなく床があり、その先には王が座る玉座があった。そしてその周りには打楽器のようなものが何個か置かれている。

 

玉座の間には、2人の悪魔がいた。

玉座に座るクロケル・ケロリ。

その隣に控えるカイム・カムイ。

 

その2名だけだ。そして2人の表情は暗いが、ケロリの様子は特に酷かった。

玉座に座る姿は、まるで信じていた民たちからクーデターを起こされて王の座から引きずりおろされたかのような、そんな目をしていた。

 

そして、それは実際に起きたのだ

辺りの様子がそれを物語っていた。荒れている、とても荒れている。凶暴ななにかが壊して過ぎ去っていったような気配が残っていた。

 

リードの感覚強奪(コントローラー)で噂と魔力の気配を辿って見つけた先には、王国が築かれていた。

いや、元王国だったものというのが正しいだろう。

 

「ねえっ…イルマくんあの2人なんか、凄く暗いけど……なにかあったよねコレ」

 

「密入国者イルマ&リード!と……昨日までの私なら言っていたのでしょうね。我らの王国があった昨日までは」

 

玉座に座るケロリは凍てついた目をしている。

カムイもいつものエロバカ行動が鳴りを潜めている。

いや、そんなことにツッコミをしていい雰囲気ではなかった。とにかく重い、雰囲気重い…とリードはゴクリと喉を鳴らして留まった。

 

「…我らの王国は、昨日の夜に崩れさりました。収穫祭は基本…個人戦だからこそ、群れが脅威になり得る。これが最良の策でした。

しかし、今や群れは消えた。あなた方はこの2日目のどこかに違和感を感じられましたか…?」

 

「え」

 

再度イルマとリードにカムイは問いかけた。

 

「ここに来るまで違和感を感じませんでしたか?いえ、感じたはずです。あなた方は、道中魔獣と遭遇しましたか?」

 

いや、それはもう断定に近い。何かを確信した目をしていた。

イルマはカムイの言葉に、ここまで来た記憶を遡る。すると確かに、言われてみればそうだ。

 

「?ぁ、ほんと、だ、……言われると、確、かに…僕たちここに来るまで一度も魔獣に出くわして、ない…」

 

「え、確かに幸運にも出くわさなかったけど…それは」

 

イルマと違って、リードはあまり状況を重く見ていなかった

 

「幸運なのではありません。紛うことなき、それがこの森林に魔獣がいないという動かぬ証拠です。リードさんあなたの能力ならわかるはずです……その感覚強奪(コントローラー)で、魔獣の感覚は奪えましたか?」

 

「それは……いや、。たしかに、」

 

わかっていただけましたか、とカムイは重いため息を吐いた。この鳥はシリアスのような雰囲気を纏っているが、コイツがドスケベ変態鳥であることを忘れてはいけない。

変態心は不滅である!

 

「昨日の深夜、異変は起きました。騒がしい音がしたので、私たちが目を覚ますと、付き従っていた魔獣たちに取り囲まれていました。」

 

「ッ……」

 

カムイの言葉にケロリがぶるりと震えた。その事を思い出したようだ。

 

「彼らは口を揃えて同じことを言っていました。いえ、私たちに訴えていました。身体が言うことを効かない、助けてくれ、嫌だ、怖い。それは…悲鳴に近かったです。

ただ彼らは徐々に喋ることすら出来なくなっていきました。言葉通り、意思に反して身体が思う通りに動かなかったのでしょう」

 

それともあるいは…その精神までもが、いえ、忘れてくださいとカムイは小さな声でそう言った。

 

「そんなのって…」

 

ないよ、というのは、口に出すことはできなかった。実際にそれは起こったのだから。それを目の前で体験したわけではないイルマは悲痛な声をもらすことしかできなかった。

 

「彼らはこの拠点を破壊し、どこかに示し合わせたように行ってしまいました。残った魔獣は、先程貴方を運んだケロリ嬢の使い魔の2匹だけ。彼らも危ない状態でしたが、召喚解除で事なきを得ました。

今は、昨日の夜とは違って、彼らは自由に動けると言ってますから…昨日だけおかしかったのでしょう。」

 

「もう二度と見たくもない。あれは、まるで、無理矢理何かに操られているような気味の悪い様子でしたよ。「そして私たちは何も出来なかった」

 

初めてケロリが言葉を喋った。そこにはいろいろな感情が多く含まれていたのだろうが、一番強かったのは悔しさだった。

 

「ケロリ嬢……」

「こんな惨めなことは無かった。自分の無力さに、民たちの助けにわたしは、私はっ、なにもしてあげることが出来なかった!!悔しくて、悔しくて…たまらない!!!」

 

ケロリは感情の昂るまま一際大きな声でそう言って、そして顔を俯けた。彼女の膝にぽとりと水が落ちる。

 

ケロリは泣いていた。

彼女は、数週間特訓をした。それは悪周期の手前になるほど精神をすり減らすほどの過酷なもので、それを経験したケロリには、確かな自信というものが身についた。

そして、ようやく鍛えた力を実践するという場で、それは折れた。

 

バキバキに折られた。蹴られたのか殴られたのかもわからずに、誰にやられたかさえわからない、一方的に、ただ理不尽に。

自信を、自分というものを、ポキっと小枝を折るように折られたのだ。

 

なんて惨めなのだろうか

 

「………」

 

誰も彼女に言葉はかけられなかった。哀れむことも、慰めることも、全てが間違っているように感じて3人はただ押し黙った。

同情は、おそらく一番彼女はされたく無いだろう。

 

そして、涙がおさまるまで数分を要した。

カムイが重い口を開いて、2人を見つめる。

 

「…という状況ですので、おそらくあなた方は私たちになんらかの助力を求めてやってきたのでしょうが、それにお応えすることはできかねます」

 

「そっ、か……僕たちのお願いは全然気にしなくていいんだけど……その、魔獣たちがどうしてそんなことになったのか心当たりとか、」

 

「……」

 

カムイがわかっていたら、こんなに暗い表情はしていないだろうし、昨日あれに対処できたのは言わなくてもわかることだった。

カムイは言葉には出さなかったが、表情がそれを物語っている

 

それでも、イルマはめげなかった。

 

「僕たちに、なにか手伝えることあれば言って欲しい。少なくとも僕は、魔獣たちがどうしてそうなったのか、どこに行ったのか、知りたいと思ってる、」

 

逆境だからこそ、イルマは輝く。

誰かが諦めても、皆んなが諦めても、イルマは、全てを諦めない。

 

それが、彼のエゴだ

 

「ちょ、ちょっと!!待ってよイルマくん!僕のことも忘れないでよね!?こんなこと放っておけるわけないから!!それに、僕らの探し物には魔獣が必要不可欠だし…」

 

リードはいいとこ取られた!みたいな様子で慌てて、イルマに乗っかる。リードはリードでギャンブラーだった。こんなことでめげる悪魔だはない

 

「とりあえず!なにか手掛かりがないか、探しに」

 

 

 

 

 

「待ちなさい」

 

イルマがよし!と気合を入れて、歩き出そうとした時のことだった。ケロリは、小さくもハッキリと真のある声でイルマを呼び止めた。

 

「さっき、貴方たちの探し物に、魔獣が必要不可欠と言いましたね」

 

「え、」

リードは驚きを漏らす、予想外の反応といったところだ。

 

「……その探し物とは、そう、伝説(レジェンド)のリーフ

そうよね?」

 

「なんでそれを」

 

イルマはケロリが出したその名前に驚きを隠さず目を見開いた

 

「私たちは、それについて魔獣から聞いた手掛かりを知っている。きっかけは、ギャンブルをしたくなったのよ。

大きな賭け。倒したい相手がいたから、一日目から、私たちはギャンブルをしたの。」

 

「……女王」

 

カムイが思わずというように、呟いた。ケロリ嬢ではなく、女王と。

王国があったあの時のように、

 

ケロリの姿は、民がいなくなった今も、紛うことなき女王であった。

彼女にはカリスマがあった

 

「私はね、これをした犯人がわかってたわ。ええ、わかってて目を逸らしたの。怖くて、また立ち向かって折られるのが怖くて、直視するのが怖くて……でも今は違う。

魔獣が向かった先、それは…あそこよ」

 

ケロリはある方向を指した。その手はもう先程のように震えてはいない

 

そして、指の先には立派で堅牢な城が建っていた

 

「アバドン・マルス。先手は譲ったけど、最後は私があなたにライブで勝つ…!!」

 

彼女は自信を取り戻すために、戦う。

もう二度と泣かないために、彼女は笑う

 

「そのためにまずわ、伝説のリーフね、なに?どうしたのほうけた顔して、あぁ…もしかしてギャンブラーが貴方たち2人だけだと思った?ふふふ」

 

口を開いてぽかんと止まっていたイルマとリードを取り残して、ケロリは悪戯が成功した時のように笑う。

 

「4人集まれば、最強だよ!」

 

リードは固まっていたが、数秒後すぐに復帰して頼もしいねと声を挙げた。3人は伝説のリーフの作戦会議で早速盛り上がり始めた。

 

イルマを1人残して

 

「…アバドン、くん?」

 

この時誰にも知れず、なにかが確実に動き始めた音がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔獣たちと深く関わっていたケロリとカムイはいち早くその違和感を体感して気づいた。そして、それは2人だけではない。

 

だんだんと他の生徒たちは違和感を感じ始める。

 

獣が1匹も見当たらない。腹を膨らすために食材を探しても食べれるものは植物しかない。

おかしい、なにかがおかしい。

魔獣が移動した?それとも誰かが狩り尽くしたのか?

違和感が生徒たちを襲った。

 

そしてここにも違和感に襲われている生徒が2人

 

「魔獣が全くいないっすよ!!」

 

「昨日たくさん狩って保存しておいたので食料には困りませんが…どうしましょうか、このままではポイントが獲得できない。…拠点を放棄して移動した方が?いえ、優位性を下げることに、なら…」

 

違和感を感じていたのはメイとケイの2人も同じであった。

 

「なんか、獣の足が残ってるんすよね。それもおそらく大群…これは怪しいっすよ。それに、これもおかしいっすよ!城の周りに足跡がたくさんあるっす!夜の内にでも来たなら、俺が気配を見逃すはずが無いっすよ!!」

 

「はいはいそうです……ケイ、貴方、寝てても気配に必ず気づくんですか?」

 

「?当然っすよ!訓練したっすから!一匹ならまだしも、こんなに大勢の見逃すはずが無いっすよ!!だから、おかしいなーって……俺、気を抜いてたのかなー気をつけないと、」

 

「まさか…いえ、ですがそうでないと状況の説明がー…。」

 

「?」

 

メイは思案していた。この状況にはとても見覚えがある。この前の特訓14日目と酷似している。

 

「これは、坊ちゃんのか「ねえ、置いてかないでよ」

 

なにかを確信して、声に出そうとして、そこでメイの耳は少々の声を拾った。

なぜだか、それはとても懐かしいような感じがするものだった。

 

「へ…?」

 

思案をやめたメイが目の前に意識を向けると、そこには少女がいた。

 

背丈はメイの頭一つ二つ分いやみっつ分も小さいかもしれない。

あまり太陽に当たってないのか、白い肌に、黒曜石のような瞳。癖ひとつない黒髪は長いまま伸ばされ、腰よりも下までの長さがあった。

身体の肉つきは良く、白くはあるが血色はいい。

 

表情は幼さを感じさせつつも、年不相応な落ち着きのようなものも見える。

幼い顔から、綺麗という印象を得るほどに少女は完成されていた。

 

「私たちずっと一緒って言ったよね?」

 

綺麗な赤に染まった唇が形良く開かれる。

 

少女の声は、透き通っていた。心に響く声をしていた。

やはり、それはメイにとって、とても聞き馴染みのある声だった。

 

 

「うそ……そ、んな」

 

 

メイは目を見開いていた。瞳は動揺を隠すことなく揺れている

口から漏れ出た声は、掠れて上手く言葉にならなかった

 

「メイ!久しぶりだね!」

 

忘れることはできない大切な人の声

 

呪いの声

 

 

目の前で楽しそうに笑う少女は、メイの人生で初めての友達であった

 

 

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