エゴにまみれた危険な悪魔 作:名無しの位階1の虫ケラ六年生
一日目の夜に焦点を当て、いろいろな視点からみてみる回
始まりのタネの入手シーンは割愛させていただきます。
3日目、第一ブロックエリア
問題児クラスであるアスモデウスとサブノックのペアはある生徒2人と行動を共にしていた。
「なぁ、なぁ、なぁ!!」
「魔獣が一匹も見当たりませんね…」
その2人というのは、フルフル軍曹を師匠と言って師事しているドロドロ兄弟であった。2人はバビルス悪魔学校の一年生ではあるが、入学したのは去年のことである。
つまり留年生ということだ。
なぜ彼らは留年したのか、それは生い立ち、家庭事情、複雑な心境などなどあるのだが、簡潔に言うならば、戦場にいて単位が取れなかった。という事実だ。
魔界は混沌に溢れ、争いが絶えない世界である。争いとは大小さまざまであるが、その中でも戦争は、争いを最終的に体現するものだ。
魔界は広大だ。それに比例するように魔界に生きる悪魔の種類も多い。同じ悪魔というカテゴリーではあっても、容姿、文化、思考…etc全く持って違う、ということに気づく。
魔界には、みんな違ってみんな良いという言葉が存在しているが…本当にそれはそうだろうか?もし違い、が良いというのならとうの昔に戦争な無くなっている。…いや、そもそも戦争なんて起こり得ないし、争いの種なんてものは生まれないのだ。
ある辺境の地では違う部族同士での争いが絶えず。ある西の地では人型と獣型悪魔とでの差別が根強く残り頻繁に命が散る。また過酷な地にはとある種族が迫害を受けてひっそりと暮らしている。
搾取する側と搾取される側。魔界はそう回っている。
魔界のあらゆるところに、争いは存在する。
そして北方には有名な戦場があった。
話を戻す。ドロドロ兄弟はそんな暗い背景があるはずの戦場に子供心ながら憧れて、一年生の時にそこに飛び込んで、瀕死になったところを師匠ことフルフル軍曹に拾われた。
そこから戦いというものを教えてもらい、力ある悪魔へと成長を果たしたのである。彼らが幼いときに憧れた戦場を駆ける英雄に
ではなぜそんな2人が今、問題児クラスの2人と行動を共にしているかという疑問に対して答えよう。
もう何度目になるが、彼らの師匠はフルフル軍曹だ。そして今その師匠は、ジャズとアロケルの特別講師として雇われている。
ドロドロ兄弟は、恩師ともいえる軍曹のことをとてもとても慕っていた。つまり、収穫祭に参加して師匠を取り返しにきたというわけだ。
師匠が担当している生徒をボコボコにして、師匠に戦場に帰ってきてもらおうと、そう考えて……その生徒たちの名前を調べるのを忘れるというヘマをやらかした。
彼らは、アスモデウスとサブノックの特別講師はフルフル軍曹だと思い込んでいた。実際のところはバビルス教師のバラム・シチロウである。
が、それを教えてくれる悪魔はいなかった
そして一日目から4人で行動を共にしているわけということである。
「これじゃあどっちが一番か決められねぇじゃねぇか!!!」
「だねー」
「私たちは、別に勝ち負けにはこだわってはいないが…」
「魔獣が出ないというのは、ポイントを得る上で死活問題よのぅ」
ドロドロ兄弟が2人をボコボコにするために考えたのは、どっちが強ぇーかハッキリしようぜ!という単純なものだった。
そしてその強さの判断をする方法として、魔獣を倒した数を採用した。
だが、どこを探しても重要な魔獣が見つからない。
一日目にいた獣たちは、森林から消えてしまったかのように存在が確認できなかった。
「いろいろ不可解なことがあるね」
ドロドロ兄弟の弟の方、ニロが事実確認をするように声を出した。
それにアスモデウスが続ける
「まずは、魔獣がいないこと。次に、足跡が同じ方向へと向かっていること。最後に、魔獣が移動したのは夜だと
「ウヌらは、夜遅くまで寝ずに互いに魔獣を狩りあったのは覚えているな。アスモデウスがノックしたのも覚えているな」
「ああ!覚えてるぜー!!
「それは言わんでいい!!」
サブノックと兄の方のイチロの言葉に、一日目に自分が暴走した時のことを思い出してアスモデウスは赤面して叫び声をあげる。
アスモデウスとサブノックの講師はバラムだった。彼は生物についてとても詳しく、もちろん悪魔についてもそれは適用されていた。
2人はバラムから、収穫祭が始まる前に悪周期の状態に強制的になれる薬を最終手段として貰っていた。
それを高ポイント魔獣との戦いで、一日目の夜に使ってしまった。
悪周期というのはストレスが溜まるとなる、状態のことを言うが、それによってもたらされるのが、力の増幅というものだった。
アスモデウスは仮悪周期状態になり、とても強くなって暴走した。破壊破壊破壊と美しく笑っていた。
普通は、悪周期というものはそこまで美しくなることはできないのだが…それはこの際置いておこう。
「その話はもういいだろう!いつまでもイジるな!」
暴走したアスモデウスだったが、サブノックともともと決めていたセーフワードもあり、意識を戻すことができた。
セーフワードというのは言うまでもなく、「イルマ」である。アスモデウスは自ら望んでイルマに魂の忠誠を誓っていると公言しているヤバイやつだった。
「ウムそれもそうだな。話も進まんし…」
「そうだ。重要なのはそれ以降の話だ」
「ええ…僕たちは、その後寝ていました」
「おっかしいーよな!!夜通しで戦うはずだったのによお!!!」
この収穫祭で、徹夜をしたものはいなかった。
これが何を意味するのか、わかっているのは1人だけだった。今日までは
「魔獣が移動した。私たちが寝ている間に。
そして朝起きれば、魔獣はどこかに消えてしまった」
「出来すぎている…と思っていましたが、今日確信しましたよ」
「どうやらアバドンにまんまと出し抜かれたわけだ」
「一番とられたー!だぁッーー!!!」
彼らは、3日になってカルエゴによるポイントの中間発表を聞いた。
アバドン、メイ、ケイ 50000Pと
彼らは馬鹿ではなかった。なんなら、賢い部類だった。特にアスモデウスと弟のニロは頭が回った。
自分たちは、アバドン・マルスになんらかの方法で眠らされたのだと。
ただ、それを本当の意味で理解しているのは、やはり1人だけだ。
4人は打倒マルスを掲げて進み始めた。獣の足跡を辿って、凍った世界と化しつつある第二ブロックへと彼らの足は歩んでいく。
今、第二ブロックに行ったところで、彼らはその活動困難な環境に足踏みをして、引き返すことになるだろう。
なぜもっと早く獣の足跡を追跡しなかったのか、なぜ2日目ではなく3日目になってようやく動き出したのか、
彼らは迷いなく進む
その行動が彼ら以外の意思が介入しているということに気づきもせずに
『中間発表おー!!後半!』
『高P獲得生徒が発表されました!残りの生徒たちの発表〜の前に!』
『Pについて改めて諸注意だよー!!』
3日目、太陽が天高く昇ったころ、また緩い声で放送が行われた。
声の主は、もうお馴染みすぎるダリとスージーだった。
『現在発表しているPは皆さんが食材を報告筒に提出してP換算済みの分です。まだ手に持っている分はPに含まれておりません!』
『ずっと持っていると、他の子に取られちゃうかも!?』
2人の会話は注意のように見えて、その内容は生徒同士の奪い合い、競い合いを焚き付けているものだった。
そして、最初の被害者が生まれる
『だからみんな早めに報告筒に行こうねー!!ところで…』
『問題児クラスのシャックス・リードくーん!!』
悪魔は楽しいことが好きだ。そのためなら割となんだってする。悪気無く、笑って簡単に実行する
それに、彼らは教師だ。生徒が成長すればするだけいい。なら、試練を与えるのも必然といえた。
『君が持っているその鉢!!それは食材じゃないけど、提出するとなんと2万Pだ!知ってたかなー?報告しないとハイリスクだぞぉー!?』
『みんなも気をつけてねー』
『あ、なぜその鉢が高Pかって…気になるよね〜……なんと伝説のリーフの〜〜!?』
『おおっと!コラコラそれは秘密だゾ!!』
『あ、そうでした!これオフレコね〜ふいっ!!』
リードは2日目と3日目をかけてリ伝説のリーフを手に入れるための鉢植えを手に入れた。
襲いかかる試練に立ち向かい、それを乗り越えたリードは「自分まさに主人公だった!」とテンション高めで盛り上がっていたところに、悪魔のような放送が流れたのだ。
リードは心の底から思った。なぜ、言う?と
そして同時に、大地が揺れた
それはリードにとって、悪夢の始まりだった
「あれは…なんだ」
大地が揺れた。それは、マルスが建てた城も例外では無かった。
マルス、メイ、ケイ、プルソンの4人は談話室で和やかにお茶をしていた。収穫祭だというのに、呑気なものである。
いや、強者の余裕と言うのが正確か、
「巨大な植物のようですが……あれは、ニギニキ草?いや、まさかあんな大きくなるほどの魔力は……」
窓の外には、木々の上を突き破って、上へ上へと伸びた植物が不自然に一つあった。あんな目立つもの、さっきの揺れまで存在していなかった。
つまりそれは、先程の揺れの正体らしい。
メイはマルスの方をちらりと伺ったが、それにマルスはいや、といって首を横に振った。
マルスにはこれをした人物に心当たりがあった
「ケイ、窓を開けろ」
「はいっす!」
ケイは、元気よく部屋の窓を開けた。すると、放送が聞こえてくる。それは緩い声だった。しかし、ダリとスージーのものではない。
「イルマだ」
『鈴木入間!生還しましたぁ!!あっ、これカメラですか?えっと…リードくーん!!始まりのタネゲットしたよー!!!早く合流しよー!!』
ケイの身体強化されてよく視える目は、その植物の上に悪魔を2人と小型魔獣カメラを一匹捉えた。悪魔に関してケイは片方は知らなかったが、もう片方はよく知っていた。
イルマだった。その顔は笑っている
開いた窓から放送が流れてくる。それは賑やかな2つの声だった。
『貴様!!なんだこの騒ぎはあっ!?もっと大人しく出て来れんのか…!?』
『あっカルエゴ先生!?すみませんっその、僕もここまで派手に出ちゃうとは…あ、これニギニキ草でして』
『そんなことはいい!!負傷の有無!収穫物の報告は!?リタイアするのか!?』
『えっあっ、いえ!優勝します!』
『……だったら…さっさと収穫に戻れ!この0Pビリが!!』
カルエゴの怒声を最後に放送は止まる。
爆音だった放送が突然止まった室内には、一瞬にして静けさが訪れた。開いた窓の外は静かで、鳥の囀りさえ無い。
「坊ちゃん!イルマさん自身あるみたいっすよ!目が輝いてるっす!」
「……ケイ」
それをいつだって破るのは、空気を読まない悪魔だ。メイは低い声でケイを叱りつけた。メイの視線はただ1人マルスに向かっている。
マルスはとても静かにじっと外の一点を見つめていた。
巨大化したニギニキ草に
イルマに
「……妨害しますか?」
メイはマルスの方をみて、そう言った。その言葉に初めてマルスは外への視線を外して、メイの方を向いた。
2人の、目と目が合う。
メイは息を呑み、それ以上声を出すことは叶わなかった。背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
ケイですら異様な様子に気づいたのか、表情をかたくし直立して動かない。
それは、マルスの瞳からドロリと、欲望がこぼれ落ちたような錯覚を見たからだった。
二度目の室内に訪れる、静寂
だが、その空気も先程同様に案外すぐ破られた
「…嫉妬」
プルソンのぼそっと出された言葉によって
「あ、」
そしてそれは無意識に口から出された言葉だったらしい。ヤベという表情をしてプルソンは固まり、マルスの様子を恐る恐る伺う。
虎の尾を踏んだような怯え方だ。そしてそれは正しい反応だった。
マルスはとても凶暴な目をしていた。
「……当然潰す。イルマだけじゃない、他の奴らもだ。全部叩きのめして、格というのを理解させる。」
プルソンに煽られたマルスは軽くぶち切れていた。マルスはプライドが高く、沸点が低かった。
マルスはカルエゴに気に入られているイルマに嫉妬していたのをプルソンに指摘されたことが気に食わなかった、それだけだ。
それだけで、容赦なく力を振るう。
どこまでも、自分を突き通す悪魔。それがマルスだ
「もともと、その予定だったしな……あぁその前に、プルソンには口のききかたを教えないとなぁ…?」
「あ、僕しんだわ」
イルマの声はマイクに乗って、森林全体に放送された。
伝説のリーフ、それは大量Pの獲得を意味しランキング上位になる大きなチャンスとなる。イルマが全生徒から狙われない道理はなかった。
そしてここでも、それを聞いた生徒が動き出していた。
「高ポイントの収穫のために貴方たちには敵を魅了してほしいの」
ケロリは使い魔の一匹に手紙を持たせて、同じ問題児クラスであるエリザベッタとウァラクを呼び出した。
これはケロリの収穫祭最後の賭け、勝負だ。
「あっ、伝説のリーフを狙うの?」
エリザベッタは高ポイント収穫という言葉に、先程イルマがアナウンスで言っていた伝説のリーフのことを真っ先に思い浮かべた。
もしそうならば、それはクラス内での争いを意味するが。狙ってくるのは、ケロリではない。
「イルマさんたちが伝説のリーフを獲得できるように、私たちが敵を排除する」
「敵って?」
イルマは派手に宣言してしまった。
優勝するなどと言って、自分が始まりのタネを持っていることをバラしてしまった。
あのアホ〜〜!!!!
ケロリは心の中でそう叫ばずにはいられなかった。
それに、リードが手に入れた鉢植えのことも全生徒にアナウンスで知れ渡ってしまっている。ケロリはリード同様に教師2人の悪ふざけを呪った。
どいつもこいつも、なぜ言う?と、思わずにいられなかった。
そんなことを考えても現実は変わらない。これで、多くの生徒が敵に回った。
アバドンを敵として定めていたケロリであったが、敵は全生徒となってしまったのだ。
アバドンのせいで魔獣が狩れなかった生徒たちは高ポイントに飢えている。標的がマルスからこちらに変わった音がケロリにははっきりと聞こえた。
だが、ケロリがこれからすることはなんら変わらないのだ。
他の有象無象は関係ない、警戒するのはただ1人のみ
傲慢なあのクソキショ性格ヤリチン男だ。ケロリの中でマルスの株は大暴落を記録していた。
「アバドンさんは、必ず妨害をしてくるでしょう」
「あら、アバドンくん?」
ケロリは、アバドンのことをよく理解してはいない。理解したくもない。
普段の様子を見るにタチの悪いことをしてくることは簡単に予想がつく。あの男はひとがされて今一番嫌なことを嬉々としてするタイプの悪魔だとケロリは認識していた。
そして、それは正しい。
「アバドンさんを抑えるには、貴方がキーです」
「はりきって頑張らなくっちゃ♡」
ケロリの言葉に、エリザベッタは妖艶に微笑む
それはピュアでありながらも色気のある魔性の女のそれだった
ケロリが立てた作戦とは、つまりハニトラである。
シンプルであるように思えるそれは、マルスに勝つ一番の可能性を秘めていた。とても良い効果的な方法であるといえる。
ケロリはこの作戦に全てのものを賭けるつもりだ
勝つためには、プライドを取り返すためには、どんな手段も厭わない。クラスメイトも男女関係なく巻き込んでやると。
そして、自分ですらも
ケロリはこの収穫祭でメガネをとる覚悟を決めた
この計画には人手があればあるだけいい。手紙では2人を読んだはずだったのだが、エリザベッタと同じチームであるクララが見当たらないことに気づく。
「ところで、クララさんはどこへ?」
「クララちゃんは森に1人で遊びに行ったわよ。冒険するって」
「…自由ですね」
悪魔とは協調性が無い生き物だとケロリは改めて思った。
敵は多い。そして、狙われているのもなにもイルマ1人だけではない。
今、1人になるのは危険な行為だった。
「随分と枯れたな」
坊ちゃんがやれって言ったんですよ!!
マルスは自分のメイドの怒鳴る声を思い出しながら、第二エリアを歩いていた。
周りを見渡すと、草木は枯れて植物が死んでいるのがわかる。この森林の植物はどうやら暑さには耐性があるようだったが、寒さには弱いらしい。
魔界の生態系で生き残る植物とはいえ、大したことないなとマルスは思う
メイの温度操作で氷点下まで下げられた第二エリアは、わずか一日で生命がいないエリアへと変わり果てていた
マルスが1人で森林の中を歩いている、という事実はロクでもないことをするときを意味していた。一日目の夜のように
「ふむ…イルマは……」
初日に生成した煙は今現在もこの森林全体を支配下に置いていた。
魔獣を支配した煙。
それはなにも魔獣に限られたものではなかった。本質は全ての生命を支配下におく煙だ。
それは、悪魔も例外ではないということ
マルスの頭の中には、生徒の動きが情報として流れ込んでいた。
生きている限りは彼の支配から逃れることは、不可能。
「便利だが、面倒な能力だ」
マルスは才能に恵まれておきながらも、どこまでも傲慢で強欲であった。彼は欲望の塊であり、それは悪魔のサガでもある。
マルスは自分の能力を正しく評価していた。能力を過信している節はあるが、普段使いの不便さには途方に困る時があると身を持って知っていた。
多くの生命を支配した時の、頭に流れ込んでくる情報量の多さには鬱陶しさすら覚える。マルスの頭でも処理能力というのに限界はあった。
ただ、それでもこの能力は破格の性能である
「イルマは、……リードと合流したか」
マルスの頭には大量の情報が流れ込んでくる。いらない情報は遮断し、必要な情報だけをピックアップする。
気に入ったものだけの位置を把握する。
そして、良いものを見つけた
「…ダメじゃないか、1人で森林を歩くなんて……悪い悪魔に襲われるかもしれないだろ?」
マルスの口は歪んでいた
アクセスが急に増えたと思ったら、ルーキーの方のランキングに乗ってるみたいですね。多くの方に読んでいただけて嬉しいです
評価とお気に入りに感謝