エゴにまみれた危険な悪魔 作:名無しの位階1の虫ケラ六年生
ヒナを魔の手から守るんだイルマくん
「ふむ…誰もついてきていないようだな。速すぎたか?それとも急ぐつもりもないのか」
俺は後ろに意識を向ける
ケイは、どうやら俺についてきているようだ。あと、主席のアスモデウスもいるようだが…、俺に追いつくことは無いな。
なにせ、背にお荷物を抱えている。
なんでアスモデウスはウァラクを背に乗せて飛んでいるんだ…?
「まあいい」
ウァラクに関しては、深く考えるだけ無駄だ。
もう少し、加速するか
「カルエゴ先生、」
「…なんだ」
「妨害行為や魔術を使うのはアリか?」
「家系能力は使うな…、妨害行為、魔術の使用に関しては、許可する」
高台でのカルエゴ先生との会話を思い出す。
家系能力は使用禁止、普通の魔術は、使ってもいい。か…
背中に魔術を展開する。風の魔法陣だ。
威力は…最大出力で行くか。
ゴール地点まで一直線で行く気持ちを込めて
後ろに向けて魔術を放った
強風の反動で俺は加速した
それと同時に後ろの妨害も達成する
俺を追うように、飛んでいるケイに視線を向けた
精々足掻いて追いついてみせろ
「…風が気持ちいいな」
俺が得意とするのは家系能力。
そして、それと組み合わせて使う風魔術だ。
「クソ、坊ちゃんに羽ばたきひとつで距離を離された」
先程まで隣にいた坊ちゃんは、遥か先にいる。
後ろ姿が、僅かに視認できるレベルに遠い。
やはり、坊ちゃんはお強い。
本家と分家では、強さが違う。
身体能力、頭脳、家系能力。血の濃さが原因と言われているが、詳しくはわかっていない。
とにかく強い。もの凄く強い。
俺はもともと分家の方の護衛として、仕えるはずばった。
が、訓練の中で、成長し続けて1番の成績を修めるようになってからは、本家の方に仕えることが決定し、訓練も自ずと過酷を極めた。
護衛が、お護りする方より弱くてどうする
万が一の肉盾、動ける盾。それが俺の存在価値だ
なのに、こんなにも、遠い。
護るべき坊ちゃんの存在が遠い。
全速力で飛んでいるのに、どうしてこんなに差が縮まらないのか。
俺は…いらないのだろうか、
いや、そんなはずはない。坊ちゃんのお側に、俺は行く!!
前方、遥か先、ちょうど坊ちゃんの背が見える場所、ピカッと何かが光った。
「光?ッいや……」
気のせいで、片付けてはいけない。
訓練で何度も見てきた光。あれは…魔法陣だ
坊ちゃんの魔法が、来るッ!!
それは本能的な直感だった。身体能力を強化する魔法かもしれない。そんな予想はしなかった。あの光は、明らかにこちらを狙って、来ると。
そして、それはすぐにわかった。
風だった
いや、風なんてちっぽけなものではない。
暴風
まるで壁に身体を叩きつけられたようだった、そして波に揉まれるように後ろに押し返され、流れる。翼が言うことを聞かない。抜け出しようにも抜け出せない。
このままでは、マズイ
「くッ……防御魔術!!」
空中で、盾を出現させる。何にも動じぬ俺の盾
風の荒波を割いて進む。
俺が得意な魔術は、防御と身体を強化する魔術。
「重複強化ぁ!!」
身体能力強化魔術は本来、重ねがけをするものではない。してはいけない。
身体があまりの変化に悲鳴をあげて崩壊するからだ。
が、訓練を乗り越えた俺ならできる
魔術を10回かけた。
痛い、が、大丈夫。俺の身体は頑丈だ!
痛みを忘れるように、自分を鼓舞する
一回の羽ばたきで坊ちゃんみたいに全てを置き去るように進む。
景色を追い越す、坊ちゃんとの距離が縮まって……
こない
相変わらず坊ちゃんの背は、豆のように小さく見えて、追いつける気がしない。遠い。物凄く遠い
「ッ……重複強化ぁぁあ」
力を振り絞るように、初めて身体に強化魔法を30かけた。
「ッぐ、ぁ」
身体の全てが悲鳴をあげた。
だけど、速度は落とさない。なんなら、加速している。
もっと速く、速く、速く!!
届く、届く、届いてみせる
坊ちゃんの背中ッ
「…ヘッ?」
幻覚では無かった。
さっきまで、ずっと追いかけていた
坊ちゃんの背中が、目の前にあった。
ヤべッ、ぶつかる
慌てて減速しようとする。が、できない。
俺は盾なのに、坊ちゃんにあたって……
と、とまれ、いや
頭では必死に止まろうとする。
けど、身体は反するようにスピードを出し続ける
身体が悲鳴をあげていた。文字通り、崩壊しかけている。身体が思うように動かない、勢いがありすぎる
止まれない
むり……だ
坊ちゃんが後ろの、俺の気配に気づいた。
坊ちゃんが振り返って、目が合う
坊ちゃんの目は、俺を見て驚きで開かれた
初めて見る、坊ちゃんの表情。
そんな、顔できるんですね。
ごめん、なさ、い
坊ちゃん
俺は坊ちゃんの腕の中で受け止められるように、そのまま減速することができずに、突っ込んだ。
頭を守られるように腕の中に抱え込まれた。
衝撃
ドゴン!!!!バキバキッ、!!ガッ、ダッ、ザ、ザザザザーーー!!!
腕の中で、視界は塞がれてしまっているので、正確にはわからないが。
坊ちゃんが地面にぶち当たったことはわかる。
そのまま背中を当てて減速をはかったということも。抱えられているとはいえ、衝撃は大きかった。
地面の岩は割れ、砕ける。
速度がありすぎた。
やがて、速度は遅くなり、完全に止まった
「はあ……ゴールってな。
ギリギリ追いつけたじゃねえか、ケイ。よく頑張った」
頭の上で坊ちゃんの声がした。
俺はお返事をしようとして、そのまま暗闇に意識を手放した。
坊ちゃんの腕の中はなぜかあったかくて、力強く、心地よかった。
「いたいな……久しぶりに良い攻撃を貰った。
俺が衝撃緩和の風魔術を発動してなければ、今頃ここ一体更地になっていたな。
やはりコイツ、才能がある」
「大丈夫かッ……」
「ああ大丈夫だ。カルエゴ先生」
カルエゴ先生が、目の前にいた。
俺は上半身を起こし、ゴール地点に着いたことを改めて実感する。
「少し、地面を削ってしまった」
俺が座っている地面は、抉れてしまい、その周辺まで亀裂ができていた。
「そのくらい、大したことはない。いつでも直そうとお前ば直せる。
それよりも、その腕のヤツは……危ない状態だ」
「ああ……強化魔術を何十も重ね掛けて、身体が崩壊仕掛かっている」
「救護を、」「いらん」
「なに?」
「コイツの家系能力は自己再生。俺の盾は、壊れない」
「だが、そいつは」
「ああ、家系能力が大の下手くそだ。回復に時間がかかる」
全く、コイツは俺を護ると言って、自分を護ることさえできない。
「…わかった」
カルエゴ先生は、俺のケイを見る気配から救護は難しいと判断したのか、それ以上はなにも言ってこなかった。
何分か経ち、アスモデウス、ウァラクがやってきた。
そこからは、次々と生徒たちがゴール地点に到着する。
え、地面めっちゃ抉れてる。なに、喧嘩したの?戦ったの?なんて騒ぐものが少し
だんだんと賑やかになってきた
「遅かったなメイ」
「はい。誰かさんの風のせいで、足止めを喰らいましたので」
「へー、そんなことがあったのか」
「……まあ良いです。それより、ケイは大丈夫なのですか?」
「ん、まあな。直に目を覚ますだろう」
「治癒魔術はかけないんですか。」
「俺が、治癒系は苦手だとわかっているだろう」
「…そうでした」
俺が治癒魔術が得意であったら、治癒師を必要とせずに無限サンドバッグ遊びができるのだがな。
俺にも苦手なことがある。
それは、再生だ。
破壊するのは…得意なんだがなぁ
「煙の応用でそういった効果はつけれないんでしょうか…」
「できないことはない。
確か…分家にそういうことに煙を使っている変わり者も実際にいるしな」
この家系能力が強力と言われるのは、なんでもできるからだ。
全て思いのまま。
治癒魔術は苦手だが、家系能力の扱いに優れた俺ならば、治癒など、造作もないだろう。
「では、ケイにそれを」
「するわけないだろう。」
「はい?……いえ、坊ちゃんはそういうお方でした」
「可愛いなぁ、俺に追いつくために怪我してさ。身体ボロボロになって……危うく手を出しそうになった。流石にカルエゴ先生がいたので、自重したが」
「やはり最低ですが、自重できたのは進歩ですね。カルエゴ先生以前に、野外ではやめていただきたいですが」
えらいえらいとメイが俺の頭を撫でてくる。お前はなに目線だ?
やはり、馬鹿にしているだろう
「お背中を見ても?」
「……大して怪我もしてないぞ」
「念の為に。」
メイの目を数秒見つめ、わかったと折れた。
コイツは有無を言わさない迫力を稀に出す
失礼します、とメイが俺のワイシャツを脱がせる。と言っても、ワイシャツも制服も見事に破けてしまっている。
幸いズボンには強化魔法が間に合ったので、社会的なものは守ったが。
「お背中…腫れてらっしゃいますね」
「思ったより、コイツが速くてな。受け止めてコイツと地形と、ズボンを護ることで精一杯だった」
家系能力を使えたら、もう少しやりようがあったのだが。
使うなという約束を破るわけにもいかない。授業だからな
「私は…ケイと違い防御魔術も…治癒師のように治癒魔術も使えません」
「ああ」
「ですので、こんなことしかできませんが、せめて、少しでも痛みが紛れれば」
メイが俺の背中をさする。
メイの手は冷んやりとする
メイの家系能力は温度操作。
ただの使用人としては、役立つ良い能力だと思う。コイツが側にいるだけで、そこは快適な空間になる。暖かくも涼しくもできる。
コイツは良いメイドだ
あと、メイ自身の体温調整ができるのもいいな。最中は、かなりこれがよくて、
「坊ちゃんキモいことをお考えにならないでください」
「お前には、全てお見通しだな」
「私の前で、隠し通せるなんて、千年早いですよ」
そうか、
そうか………もな
「え、ちょっとなにアレ。なに、上半身裸でいちゃついてんの?見せつけてんの?」
「私も女悪魔に介抱されたい!!」
「……すげえ、筋肉。下手したらサブロよりあるんじゃねえか?」
「きゃっ、逞しい」
お前ら、聞こえてるぞ
その後、またもや目立つ運命なのか、イルマは気が立っていると言われていたいた金剪の長の背中に乗り、なぜかサブノックと一緒にゴールしてきた。
「それではこれより
サブノックが飛行試験前と比べて、性格が丸くなっているのは気のせいではないだろう。
「
イルマはいったいこの試験中になにをしたんだ?
「彼の胸の袋に手を入れれば、
それどころか、サブノックはイルマを我がライバルと言う始末。え、羨ましい。NTRた気分だ、この場合はBSSか?
「では順に並べ!ちなみにそこの
「陰湿ッ…!!」
「くぅ、屈辱」
サブノックとイルマは金剪の長を引きつれて、最下位でゴールをしたので、カルエゴ先生により、見せしめとして正座をさせられている。
プライドの高いサブノックは、屈辱と言い悔しそうに甘んじでそれを受け入れていた。
え、可愛いんだが。
そして、隣にいるイルマ。
お前はいつも美味しいところを取っていく。カルエゴ先生を召喚したら、セクハラ仕放題じゃないか。クソ羨ましい。
逆らったら、契約上躾が使い魔に下るのだろう?なんだ、ソレ羨ましい。
こっちは、使い魔のグリフォンを孕ませれないというのに……
躾以前の話だ。親に止められてしまっては、無理矢理もできん。
なんだ……、その、俺も隣で正座していいか?羨ましいんだ。サブノックの筋肉を揉み
「坊ちゃんキモい。…いい加減にして、バッチを取ってください」
「ああ、」
隣のメイに小突かれたので、サブノックから目を逸らす。
俺は、ケイに最後の最後で抜かれなかったため、飛行試験の順位は一位である。
魔界には
これは、悪魔界の
10段階で悪魔の序列を決める。数字で全てが決まる。
すぐに硬いものを見つけたので、取り出す
「
授けられた、
全体の中間だが、ピラミッド型で考えてみると普通に強いレベルの位置付けになる。
まあ、家系能力も試験中に使ってはいないし、こんなものが妥当だろう。
そこまで魔法を多く使えるわけでもないからな、少々我が家は家系能力の力が強すぎるあまり、それに頼りすぎているふしがある。
この機会に、他の能力も向上させるのも手だろう。
いや……もともとそのために、悪魔学校バビルスに入学したのだ。
俺は高みを目指さなければならない
「すげえ!!
「一年は大体
「次は…」
「ケイ、起きろ」
ケイの頬を軽く叩く
すると、意識が戻ったのか、ケイはうめき声をあげる。
「…ぅぅ、坊ちゃん?あ、俺、」
「俺が運んでやるから、自分の手で
「あ、はいっ…す」
ケイを所謂お姫様抱っこで、
「掴めたか?」
「あ、はいっ……なんか、あり、ッ…ました」
身体が痛むのか、辛そうだが、健気に笑ってみせるケイ。手から
ほお…これは
「
使い魔召喚も悪くなかったし、今回飛行試験に至っては、身体強化魔術を何十も重ね掛けするという、才能を見せた。
全力を出したのだ。これは、当然の評価だろう。
俺は自分の授かった
「すげー!!2人とも
「素敵な殿方たち…♡」
「すてき…」
クラスメイトたちからの歓声を貰いながら、ケイと一緒に、メイのところに戻る。
「流石は、坊ちゃんでございます」
「ソレよりもケイだ。
今日1番輝いていたヤツは紛れもなくコイツだ。…まあ、ただ重複強化は天才的だが、その後に身体がすぐ使い物にならなくなるのは、減点だかな。
…主人に運ばせるとは、悪いやつだ」
「照れ隠しはいいですよ坊ちゃん」
「照れてなどない」
「ふふふ、そうですか……。
私はお二人と違って、あまり高い
「お前は、優秀なメイドだよ」
俺は気落ちしているメイを気休めかもしれないが、褒めてやる。
メイがメイドとして優秀なのは紛れもない事実だ。直ぐに調子に乗るのは良くないがな。
メイ自身が1番わかっているだろう。
メイドとしては、優秀。
悪魔としては、
「ありがとうございます」
メイの
これが、全てだ
最後の、イルマの番になった。
俺は確信していた、何か皆とは違うことが起きると。
イルマはいつも目立つ。とにかく目立つ。なにかが、普通の悪魔と違うのだ。引っかかる。なにか、なぜか
気になる
「また変なもの出したりして」
「あー使い魔先生とか?」
「オイ殺すぞ」
生徒がカルエゴ先生を揶揄い、カルエゴ先生は物騒なことをいう。
そもそもな…とカルエゴ先生は付け加える
「
「この数百年間鳴いたことすら無…
ギィィエエエエエェェェッ
カルエゴ先生の言葉を真向から否定するかのように、
イルマが袋に手を入れた途端、突然動揺したように鳴きだし、暴れた。
そして、そのまま空に飛び立ってしまった
明らかに普通じゃない
「ええ、ちょ、ああっ!!まだバッジとってな」
「え、…」
「……イルマち、それ……なに?」
「え?」
魔王予言の書というものがある
予言の悪魔が、次の魔王を予言したものを記した書だ
あまねく種族を配下に収め
血の契約を結び
万物を癒し賜う
彼は、異郷より舞い降りて
右手に
鳴いて逃げた
手を掲げる右手から、皆が視線を外せなかった。
イルマの右手の指には、
なぜか、なぜか、魔王の予言書を思い出した。
最後の文しか、共通点は無い。だが、それは俺がイルマを知らないだけで、
ちょうど、使い魔も孕ませられなくなって、やることも無くなっていたところだ。ちょうどいい。
詳しく、イルマについて調べる必要がありそうだ
障害となるのならば、そのときは
逃げろイルマくん!イルマくんに魔の手が迫る!!
さ、どんどん改変していくぞ加速ぅ