エゴにまみれた危険な悪魔 作:名無しの位階1の虫ケラ六年生
ナニを教えてくれるんですか?
「坊ちゃん直々に、ご指導を……?」
「ああ、特別だぞ?」
困惑を隠せない私と、ニコリと微笑んでいる坊ちゃん。
対比が激しい
「お前の家系能力は、今回の
坊ちゃんが、私の手を取って手のひらを指し、コツンと突いた。
ニヤリと不敵な笑みを坊ちゃんは浮かべる
「お前は、自分の家系能力を本気で使ったことはあるか?」
「本気で、誰かを殺そうと思ったことはあるか?」
「今回の特訓では、俺のことを嫌いになってもらう」
「…まあ、俺のことを常日頃から嫌うお前には簡単だろ?」
「俺を殺しに来い」
その言葉が合図となり、一週間の地獄が始まった。
いや、これがいつもの私の日常
地獄は、いつも側にいる
甚振られ、辱められ、壊される
許さない、許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
ころす
「その感覚を忘れんじゃねーぞ」
地下運動場にて
処刑玉砲 試合当日
「ではルールを確認する」
カルエゴ先生は処刑玉砲の内容を説明し出した。
ルールはこうだ。
外野に1名、残りは内野
ボールに当たったものは外野へ。外野からの攻撃はあり、生還はなし
魔術はボールにのみ使用可である
敵に直接の攻撃は不可
チームの勝敗、当てた生徒のランクによって評価も比例する。
制限時間15分
ワンバウンドセーフ、顔面アウト
「AとBの腕章を配る。つけたらコートへ分かれろ」
カルエゴ先生から、それぞれに腕章が配られる。それを腕につけた。
「坊ちゃんは…Aチームっすか!!俺Bです!!」
「私は……坊ちゃんと同じAチームですね」
俺の腕を見て、ケイが元気よく声をかけてくる。
どうやら、俺とケイはチームが分かれ、俺とメイは一緒のチーム分けになったようだ。
「異議あり!なぜ私とイルマ様のチームが違うのだ!?」
「厳正なる力の配分だ。異論は認めん、整列」
アスモデウスはどうやらイルマと別のチームになったようである。カルエゴ先生に異議を唱えているが、取り付く島もなさそうだ。
Aチームには、
Bチームには、
Aチームには、
今回も俺は家系能力を使う気はないしな。そもそも、煙を生成してしまえば、直接攻撃で
試合ではなく、一方的な蹂躙になってしまうのも、面白くない。
それに、俺が今回の処刑玉砲で例え、全員にボールを当てたところで、昇格は望み薄だろう。
俺以上の
俺が今回出張っても特に得はない。
「では、処刑玉砲開始!!」
ピピー!!!!
カルエゴ先生の声と共に、ホイッスルが鳴り響く。
じゃんけんで勝ったBチームが、はじめのボール権を持ち、試合がスタートした。
「で、これ誰が投げる?」
「拙者!拙者!」
「ここは私が…」
「もーらい」
Bチームが、最初に誰が投げるかで迷っているところを、Aチームのジャズがボールをこっそりと気づかれずに奪っていた。
手にはボールが収まっている。
「なっ、いつのまに!?」
Bチームから驚きの声が上がる。
手際の良さを見るに、ジャズという男悪魔の家系能力だと俺は当たりをつける。
盗みの家系か?…気をつけないとな
ジャズは奪ったボールを同じくAチームのサブノックに手渡す。
「ほい、パス」
「ウム」
適材適所をわかっている動きだった。
サブノックの腕力でボールが勢いよく投げられる。
Bチームのクロケルが氷の壁を発生させるが、健闘むなしくボールはそれを破壊し、そのままクロケルの体に当たってしまう。
ところで……ボールにしか魔術を付与してはならないというルールを忘れてしまったのであろうか
防御は魔術ではなく、素手で行わないといけない。それか、ボールに魔術を付与して止めるか……
今回の処刑玉砲では、ケイの魔術は使えないな……
なんたって、ケイの得意なものは
盾を生み出す魔術
身体強化の魔術
家系能力は治癒系
ボールには付与できない魔術ばかり、まあ、サブノック同様に身体スペックが高いので、魔術無しでも十分に闘えるだろうが。
これは、明確なチャンスだ。
そうだろう?メイ
「……殺す」
俺が、この一週間で教えた通りに、殺すつもりでメイはこの処刑玉砲に臨めていた。
メイはケイに対しての殺気を隠せていなかった。
いや、隠すつもりなどないのだろう。
そもそも…当然というか、ケイは戦闘教育を幼少期から受けている身、当然気づく。どんなに、殺意を隠そうとしても、経験の差でバレる。
奇襲は狙うな。
堂々と、確実に倒せ
殺気を当てられたケイも完全にやる気モードになった。
ターゲットは勿論、メイ。
両者、バトルだ。
魔術では、メイが有利
身体能力では、ケイが有利
初見殺しという点では、メイが有利である。
どちらが、勝つか。
私は、弱い。
今まで、ずっとそう思っていたし、これからもずっとそうなのだと思っていた。
「お前の家系能力は、伸ばしたら強い」
坊ちゃんが、特訓1日目にそうおっしゃった。
私の家系能力は、温度操作。
狭い室内や、体温を変えたりすることしかできない。攻撃能力など、0に等しい能力。
強さが至上の魔界で、この能力は無価値だ。だから代々私の家系は、使用人なのだ。下につくことしか叶わない。
せめてもの救いが、奉仕をすることには適した能力だったこと。
代々私の家系は、空調を整えるためだけに生きていた。
だというのに、強い?
「とりあえず、ボールの温度を上げて……そうだな、投げる瞬間に当たると火傷するくらいの温度を付与しろ」
へ?
私は視界の先にいるケイをじっと見つめていた。
ケイもこちらに気づいている。
サブノックが、アスモデウスにボールを当てようとして、逆にとられて当て返された。そのボールがこちらに転がってきたので、手に取る。
このボールは、
大体の魔術は耐えれるように設計されている。
だから、熱くしても……溶けない、爆発しない
全力で、行く!!!!
息を吐き、大きく踏み込んで、振りかぶる。
ケイに向かって思い切り投げつけた。
ケイは、私のことをじっと観察するように見ていた。口元は笑っている。
余裕の笑みだ。
「…せんぱい、俺のこところしたいんすね?バレバレっすよ。殺気ダダ漏れ。せんぱい素人っすね」
気に食わない。
私が弱者だって、舐めくさっている
今まで自分を弱者だと信じて疑わなく、受け入れてしまった私を
目の前の弱者を見下す、強者たちを
ぶっ壊してやる
私が投げたボールをケイは、なんてことのないように
取られたので、当たることはかなわなかった。
が、掴んだ。
掴んだ掴んだ掴んだ。
口角が上がる。
ははは、
口から乾いた笑い声が出た
「ッ……!!!?あツッ!熱?なんで」
ちゃんと効いてる。
私の家系能力が、確かに、効いてる。
痛みを与えている。呻き声を上げさせている。
やったやったやったやったやった
私は勝ちを確信した。
人生初めての勝利に酔いしれるように、私は放心状態になる。
嬉しい……
心にずっしりと、確かに、歓喜が落ちた。
「ヒュッ」
一瞬、現実を忘れていた。
嬉しさと興奮で、何も見えなくなっていた。
耳の横を通りすぎたボールの風切り音で、意識を戻す
……待て、
風切り音?
ボール?
「痛みで、外れた……ッチ」
ケイが、腫れた赤い手で、ボールを投げ返していた。
その目は、酷くギラついている
私の準備は万全だった。掴まれたら、勝ちのはずだった。
今頃、私が勝っていた。
想定から、外れていたことは、ケイが、思ったよりも熱さに耐性があったこと。
「ふは、肌が焼けるように、熱い。いや……焼けてる。
痛いの嫌いなんすけどね………俺、本当に、痛くて、熱いの……嫌いなんすよ。せんぱい」
「せんぱい、先輩だからって…後輩いびっちゃ、ダメすよ?ね?」
「ッ……!!!!」
効いていない!?
いや、明らかに痛がっている。私の魔術は効いてはいる。
だが、確実性に欠ける
仕留め損なった
いや、次で、仕留める
「な、何これ熱ッ、無理掴めない」
「貸してください。私が投げます」
「え、あぁうん」
同じチームの生徒を退かせ、ボールを拾う。
もっと……熱く、もっと……寒く
私は、大きく振りかぶり、もう一度ケイに向かって投げた
「先輩!!さっきみたいな、熱ごときでもう俺は、痛がらないぜ!!」
ああ、ケイ、あなたは、頑丈でしたね
熱さなんてへでもないのでしょう。
ならば、今度は逆
ケイはボールを掴み、投げ返す気であった。
自分の力への慢心からくるのか、それとも何かに突き動かされての行動か。
何であれ、その行動は、よくなかった。
メイの勝利を決定ずけるものとなる。
「ッがぁ!!??…熱いッ!冷たいッ!!痛いい、痛い!!いや、いやだ、やめ、めろ、やだ、……ぁぁあ」
かった、かった?勝った…
今度こそ、ケイはボールを手から落として
地面に倒れた
勝ったんだ。私
力が抜ける。
身体が脱力する
ああ……勝った
「ッ……ぅぅ」
私の意識はそこで途切れた。
多分今の私は、紛れもなく笑っているだろう
「はあ……アウトだ。最後まで気を抜くんじゃねぇ
…嬉しそうだな、メイ」
メイが、ケイを外野行きにした。
それどころか、意識まで刈り取る攻撃だった。
その後を追うようにして、メイ自身も意識を失ったのは、マイナスポイントだがな
メイの家系能力は、付け焼き刃であった。
一週間しか、特訓する期間がなかったから無理もない。
今まで、まともに攻撃手段として家系能力を使ったことが無かったメイには、かなり辛い使用だっただだろう。
一週間でこれだけ、できたのだ。
コイツには、可能性がある。
才能はない、戦闘センスもないし、教えてもなかなか覚えれない。
が、家系能力には可能性は広がっている。
そして……目の前のイルマという男も、そこしれない可能性だ
勝負は一瞬であった。
アスモデウスが、ボールに炎を纏わせて、イルマに投げた。
それをイルマは、回避するも逃げるのでもなく、前に出た。
掴む
炎を掴む。
そして、勢いをそのままに、身体の向きを回転するように方向を変えて、投げ返した。
うまい、純粋にそう感じた。
この前の決闘のイルマからでは、見れなかった動きだ。
イルマはナヨナヨしていて、覇気もなく、噂のような怖さは感じない。
こんなにも弱っちいのに、実際に、アスモデウスには勝つし、金剪の長だって従えてみせた。
予測不能。
だから、可能性がある。
イルマは予測できない。一番どうなるかわからない。だから、可能性がたくさんある。
処刑玉砲
イルマとメイの2人が、
メイが勝つことは、予想していた。
いや、確定していたことだ。魔術が使えるか、使えないかのハンデは大きい。
問題はこっちだ。
依然意識を失ったまま、魘されるようにしているケイを俺は抱きかかえていた。
少し、これは調べる必要があるな
キショ要素が足りない……