落とし胤の一夏「今更会いたいとも思わない」   作:LN58

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第0話 第二回『モンド・グロッソ』世界大会決勝戦・裏 -Prologue-

 

 

女性にしか扱えないIS〈インフィニット・ストラトス〉と呼ばれる世界最強の兵器の登場によって、女尊男卑が当たり前となってしまった時代に突入して……

 

 

ISの世界大会『モンド・グロッソ』の第2回決勝戦を目前にして、俺は何者かに誘拐された。

 

その結果、第1回『モンド・グロッソ』総合優勝者“ブリュンヒルデ”織斑 千冬は、大切な試合を放棄して俺のことを救い出してくれた。

 

だが、それと引き換えに、世間では連覇が確実視されていた“ブリュンヒルデ”の試合放棄に世界が沸き立つ。

 

その結果、織斑 千冬という一人のISドライバーの栄光の道は閉ざされることとなった。

 

そして、俺の人生も雷鳴轟く嵐の夜に大きな転機を迎えることとなり…………

 

 

ゴロゴロ、......ピカーン!

 

一夏『ち、千冬姉……』オドオド

 

千冬『………………』

 

一夏『俺は家に帰されるんじゃなかったのか……?』キョロキョロ

 

一夏『ど、どうして――――――』

 

一夏『財閥の豪邸でこんな饗しを受けているんだ……?』ブルブル

 

千冬『いいか、一夏。お前は今日からここで暮らすんだ』

 

千冬『――――――()()()()()()()()として、な』

 

一夏『どういうことだよ、千冬姉!? 俺たちに親なんて――――――!』

 

爺様『それについては儂からぁ説明しよう、――――――孫よぉ』

 

一夏『――――――は、ま、“孫”ぉ?』

 

爺様『別におかしくはなかろう。人として生を受けるには必ず親がいて、またその親がいるぅ……』

 

 

一夏『今更 会いたいとも思わない』バンッ

 

 

一夏『俺の記憶は小学1年の時の 千冬姉との二人きりの 入学式の時から始まっているんだ!』

 

一夏『俺にとって千冬姉以外に家族なんていない!』

 

千冬『………………』

 

一夏『帰してくれ! 俺たちとあなたは無関係だ!』

 

爺様『だが、己の非力さをぉ悔やんではいるのではないかぁ?』

 

一夏『――――――うっ! そ、それは…………』

 

千冬『お前が気にすることはない』

 

一夏『で、でも、千冬姉……! 俺が、千冬姉の――――――!』

 

爺様『そして、お前はもう日常に帰ることはできない』

 

爺様『何故ならぁ、お前は他ならぬ“ブリュンヒルデの弟”だからだぁ』

 

一夏『あ、ああ………………』

 

爺様『お前が日常に帰った所で、再びお前が織斑 千冬の弱みとなるのは明白だぁ』

 

一夏『――――――千冬姉!? お、俺は……! 俺は……1』

 

千冬『待て、勘違いをするな。これは互いにとってWin-Winな交渉だ』

 

千冬『私とお前が引き離されるというわけではない』

 

一夏『じゃ、じゃあ、二人揃っての養子縁組ってことなの?』

 

千冬『ああ、そうだ。私たちはこの人の養子となる』

 

爺様『――――――ただし、姓をぉ改める必要はぁないぃ』

 

一夏『ど、どういうこと……? 養子になったら、普通 義父の――――――』

 

爺様『すでに織斑 千冬は“ブリュンヒルデ”としての比類なき名声を得ており、“世界のオリムラ”として認知されておるぅ』

 

爺様『そのネームバリューをわざわざ失わせる意味はぁ無い』

 

一夏『――――――くぅ、それを俺が…………』

 

千冬『何度も言わせるな。家族を守る以上のことはない』

 

一夏『つまり これで、千冬姉は俺のためにドイツ軍で働くことになって、俺は財閥の会長の養子となって…………」

 

一夏『――――――どうすればいい?』

 

爺様『もちろん、儂の後継者として教育を受け、儂を支えてくれ』

 

爺様『そして、お前も家族を守れるだけの力を蓄えろ』

 

一夏『――――――!?』

 

千冬『………………』

 

一夏『ねえ、千冬姉はいつ知り合ったの?』

 

千冬『最初からだ。()()()()の生活を追跡していて、私たちが捨てられた時にいろいろ手を差し伸べてくれた……』

 

一夏『そうか。そうだったんだ…………』

 

爺様『納得してもらえたぁかな?』

 

一夏『わかった、わかりました』

 

一夏『……最後に訊いていいですか?』

 

爺様『良かろう』

 

一夏『俺は両親のことなんて知らない……知りたくもない……』

 

一夏『財閥の跡取り息子だったか、箱入り娘だったかは知らないけど、』

 

一夏『駆け落ちした末に生まれた俺たちのことを捨てたような男と女だ!』

 

一夏『そんな二人の落とし胤の俺でいいのか……?』

 

一夏『本当は知っているんでしょう! 二人の行方ぐらい!』

 

爺様『――――――今はお前が居る』バサッ

 

 

――――――()()()()()()()

 

 

一夏『あ…………』

 

一夏『……千冬姉』

 

千冬『……何だ』

 

一夏『俺、千冬姉のために頑張るよ』

 

千冬『そうか』

 

一夏『俺には千冬姉しか居なかったから、千冬姉を守れる力を!』

 

千冬『それだけじゃダメだ』

 

一夏『わかっているよ。それが千冬姉の“強さ”だから』

 

 

――――――俺は千冬姉を、そして 関わる人全てを守る!

 

 

千冬『それでいい』ナデナデ

 

一夏『うん』

 

爺様『……ふふ』

 

 

こうして俺はISとも関わりのある財閥の総帥後継者として、過去を切り捨てた新しい人生を始めることとなった。

 

それは これまでの全てと決別した 夢のように現実感のない出来事のようにも捉えられた。

 

あの日を境に、住み慣れた故郷や、これまでの朋友関係、その他もろもろを全て捨て去ったのだ。

 

まるで 自分が自分とは違う人間にでもなったかのような 奇妙な感覚に囚われ続けたが、

 

やがてはそれを日常として受け容れていき、考え方も物の見方も変わり果てた。

 

そして、俺は順調に爺様の庇護の下に社交界を渡り歩けるようになった。

 

 

――――――だが、運命の悪戯か、俺は千冬姉と同じ道へと進むことになった。

 

 

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