――――――臨海学校まで残り数日
一夏「はあ…………」ゲッソリ
一夏「静養していた頃が恋しい…………」
一夏「なんで俺なんかが千冬姉や爺様以上の有名人になっているんだ…………」ゲンナリ
一夏「本当に嫌になる――――――人を守るってことがさ」
一夏「何だったか、“
一夏「いや、“人の革新”が待てず人類の粛清を宣言した――――っていうのもフィクションの世界にはよくあるな」
一夏「現実もそう。“共和制の名の下に”フランス革命を主導したジャコバン派による粛清が行われたし、」
一夏「そうだ――――――ISだってそうだ。よせばいいのに、我先にと絶対数の乏しいISを導入するのに高いカネ出して、」
一夏「最も安定している職業の1つと言われた職業軍人やそれに連なる企業が次々と解雇・倒産していった。――――――軍縮だとか何とか言ってな」
一夏「その結果、世界は未曾有の軍事クーデターの脅威に晒されることになった」
一夏「本当に馬鹿だよな。けど、本当の意味で世界が平等で対等になるためにはMAD戦略は必須となってくる」
一夏「持たざる者はその存在を認められない…………」
一夏「覇権思想が見え隠れしているぜ。所詮、平和というのは次の戦争を準備するための期間――――戦間期でしかないということか」ハッ
一夏「俺は『白式』の専属となって、IS学園に入って、みんなを指導をして――――――、」
一夏「そして、実際にテロリズムに遭遇して、それを自分の手で鎮圧して、世界を命運を左右する選択を迫られて――――――、」
一夏「ようやくわかったんだ。俺がどうあるべきなのかを」
一夏「それは――――――」コンコン
一夏「………………録音終了」ピッ
一夏「――――――時間だったな。さて、お相手しましょう」ハア
一夏「…………っ!?」バチィ
一夏「……最近多いな。何だろう? でも――――――」
一夏「――――――よし」ニコッ
一夏「――――――お待たせしました」ニコニコ
一夏「う~ん、台風が臨海学校の日に上陸しそうだな」
一夏「箒の誕生日を兼ねた臨海学校としてはあんまりいいものじゃなくなりそうだな…………」
俺はノートパソコンを打ちながら、巨大なモニターに映し出されるリアルタイムの気象図を見て、溜め息を吐いていた。
あれから俺の部屋は邪魔なものは取り払って模様替えされていた。
主に、俺が安心してプライベートな時間を過ごすためである。そのために徹底的な改修工事がなされ、完全な私室と化したのである。
それによって、3画面のマルチディスプレイのPCが設置されていた。32インチ。
こんなことができるのも財閥の力があってこそだった。つくづく、人と人とが一体化した法人の力の程は恐ろしいと感じた。
一方で、もう片方の巨大な画面にはシミュレータが起動しており、代表候補生4人の対戦ダイアグラムが表示されていた。
一夏「ダメだな、『ブルー・ティアーズ』は…………他の専用機と比べて利点が少なすぎる」
一夏「遠距離射撃型――――――それは結構」
一夏「けど、基本的にIS学園での模擬戦は1対1だ。狙撃手は 安全な場所で狙撃してこそ その真価を発揮する」
一夏「それに、ISの戦闘スピードは従来の白兵戦の比じゃないから、狙撃するまでの時間が従来と同じレベルじゃ簡単に距離を詰められてしまう」
一夏「更に言えば、シールドバリアーの存在によって一撃死はあり得ないから、IS同士の戦いはいかに相手に効率良くダメージを与えられるかのダメージレースにかかってくる」
一夏「つまり、コンセプト自体がISの1対1の総合戦闘には向かない…………狙撃手の持ち味である“見えざる鉄槌”が活かせないんだよな」
一夏「逆に言えば、機動力があって猛攻ができるような近距離格闘機が圧倒的に有利となるわけだ」
一夏「それは“ブリュンヒルデ”織斑 千冬が『モンド・グロッソ』で見事にそれを証明している。まあ、一撃必殺持ちのイレギュラーだけどさ……」
一夏「セシリアには勝ち負けに拘るなと言うべきなのだろうか、狙撃特化はやめて中距離戦闘ができる装備を増やせと言うべきか…………」
一夏「まいったな。このままだと代表操縦者への道はかなり遠いぞ…………」
・俺の『白式』なら、
・鈴の『甲龍』とは、中距離戦闘に膠着して先にセシリアの方がスタミナ切れになる可能性が大きい。勝てないとは言わないが、基本的に不利。
・シャルの『ラファール』とは、距離を選ばない戦い方ができる上に『
・ラウラの『シュヴァルツェア・レーゲン』とは、第3世代兵器だけ見れば相性はいいが、それしかない『ブルー・ティアーズ』では…………
一夏「聞く限りだと、本国からは『BT兵器』の運用データの収集を優先させられているから実弾兵器は支給されないらしいな……」
一夏「こうなったら俺の方で――――――」ピポパ
一夏「――――――主任、生産された両用量子化武装、臨海学校で使うかもしれないからカタログを送ってくれない?」
一夏「場合によっては、共同開発も――――――いや、忘れてくれ」
一夏「さて、久々に街に訪れることになったが…………」
シャル「日本の夏は凄いね、ラウラ」
ラウラ「うむ。適度に水分補給しなければならないな」
一夏「あの……、シャル、ラウラ?」
シャル「何――――――」
ラウラ「どうしたのだ――――――」
――――――ご主人様?
通行人「おおおお!」ジー
通行人「メイドダー」ジロジロ
通行人「スゲー、ホンモノハジメテミター!」パシャパシャ
一夏「暑いんだったら、メイド服を脱いで――――――やめろよ! 暑苦しい!」
一夏「それに、そんな目立つ格好したらお忍びの意味がないだろう!」(お忍び中)
シャル「え、でも僕は、その、いち……ご主人様の使用人だし…………」テレテレ
ラウラ「男はこういうふうに奉仕されると嬉しいのだろう? それにメイドはこのままの格好で買い物に出かけると私の副官が言っていた」
一夏「………………変装術を学んでおいてよかった」ボソッ
シャル「ご主人様?」
ラウラ「…………?」
一夏「まあいい。今日、お前たちは水着を買いに来た。俺は実家の掃除をしに来た」
一夏「だから、ここでお別れ。それじゃ、送ッテクレテアリガトウ」タッタッタッタッタ
シャル「ええ……!?」
ラウラ「安心してくれ。ご主人様の実家の住所は把握している」
一夏「げ……」ピタッ
シャル「そ、そうだよ。僕たちは使用人なんだから、ご奉仕させて!」
ラウラ「何か問題でもあるのか?」
一夏「お前たちは事の重大さを理解していないな……!?(俺が何のために変装しているか理解していないだろう!)」
一夏「…………ここは暑いし人目もある。そこのデパートに入るぞ」ハア
シャル「はい、ご主人様!」ニコッ
ラウラ「ご主人様~!」ニッコリ
一夏「ははは、いいご身分だよな、俺…………(メイド服は目立ちすぎるから、私服を着せないと家に連れていけない!)」
一夏「さて、ここが俺の家だ。人目が付かないうちにさっさと入るぞ」
シャル「ここが、ご主人様のお家……」ドキドキ
ラウラ「教官の家ということでも実に興味深い」ワクワク
一夏「『あの日』以来、入学式直前だけだったからな…………結構 埃がかぶっているところもあるだろうな」
一夏「とりあえず、まずは昼食を摂ってから掃除をすることにするか――――――ん、どうした?」
シャル「ご主人様! 僕とラウラはご主人様の使用人なんだよ!」
ラウラ「そうだぞ! さっきから全く奉仕させてくれないではないか!」
一夏「そんなこと言われても…………(うん、シャルに倣うラウラの姿を見ていると、本当に姉妹みたいだ…………)」
一夏「俺は生計を立ててくれている千冬姉を支えるために家事全般を習得していたから、元々 使用人なんて要らないんだよ」
シャル「そ、そんな…………せっかくの機会が…………」ウルウル
ラウラ「そんな…………それでは私はどうやってご主人様の強さに触れれば…………」プルプル
一夏「あ…………(使用人要らずで屋敷のメイドたちを泣かせていたっけな…………)」
一夏「そ、そうだな。そこまで言うなら、奉仕されてやらなくもない……」
シャル「本当に!? ホントのホントに?」キラキラ
ラウラ「嘘じゃないよな、ご主人様!」ワクワク
一夏「(メンドクセー。善意の押し付け――――というよりは、依存か、これは。扱いに困るなー、これ)」
一夏「じゃあ、とりあえずは昼食ができるまで“大人しく”待っていてくれ」
一夏「これが最初の奉仕だ。ご主人様の仕事が滞りなく進むように見守るのも使用人の務めだ」
シャル「うん、わかったよ、ご主人さま!」
ラウラ「了解した」
一夏「(でも、このままだとやることがなくて暇そうだから、――――――しかたない!)」
一夏「ちょっと待ってくれ」
シャル「はい、ご主人様」ニコニコ
ラウラ「???」
一夏「はい、これ――――――俺と千冬姉のアルバム」
シャル「――――――!?」
ラウラ「――――――!」
一夏「こういうものしか思いつかなかったけど、それでも見ながら待っていてくれ」
一夏「今日の昼食は、そうめんと天ぷらってことで」
一夏「アルバムは現在も更新中だから、寮に帰ったら、ね?」
シャル「うん、凄くいいよ!」ドキドキ
ラウラ「こ、これが教官とご主人様の若い頃の…………!」ドキドキ
一夏「ははは……(さて、作りますか)」
あれから、シャルロット・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒはこの通り女の子らしさを演出するようになり、仲の良い姉妹のようになっていた。
そして、何故か、――――――俺の専属メイドになっていた。
これは爺様の差し金らしく、そういう属性を与えることで宙ぶらりんになった自己像を再構築させる意図があるらしい。
爺様はいつの間にかラウラ・ボーデヴィッヒと面識を得ていたらしく、おそらく俺がシャルにラウラの面倒を見るようにした繋がりからそうなったようだ。
軍人が使用人になるのに抵抗がなかったのか気になったが、どうも使用人に対して悪い印象は持っていなかったらしく、その辺はラウラの副官やシャル、爺様の力添えのおかげのようだ。
使用人にプラスの価値を見出しているあたり、ラウラの今後は明るくなりそうだ。
しかし、俺には爺様が曾孫の顔が見たいから差し向けたようにも感じられ、二人の自重の無さから察するに爺様が背中を押したものだと疑っていた。
つまり、俺には秘密だが水面下で親公認の関係に発展していた可能性があったのだ。二人は何も言ってこないが…………
――――――ただ子を成すだけの関係ならそれも構わない。
と、一瞬だけ俺はそう思ったことがあったが、俺はすぐにその考えを打ち消した。
この二人も、倫理観の欠如した情けない大人たちの犠牲者なのだから、俺がその二人を汚すことは躊躇われたのである。
シャルとラウラが俺にこれだけ依存してきたということはそれだけ愛情に飢えていたことの証であり、
だからこそ、俺は俺ではない他の誰かとの末永い恋愛を願っていた。
――――――俺ではダメなのだ。俺では。
爺様は俺の血を引く子孫が欲しいと願って二人を差し向けたようだが、二人は俺からの愛情を欲していた。彼女たちは間違いなく“女”であった。
だから、俺とあの二人とではあまりにも価値観が違い過ぎた。俺は“男”ではなく、言うなれば“王”であったからだ。
――――――俺も随分と財閥の倫理観に染まったものである。子作りだけなら別に構わないと一瞬でも思ってしまったあたり…………
しかし、俺が背負うことになる業を共に受け止めてくれる人物が周りに誰一人としていないと思っていたのも事実であった。
同じ夢を語れる同志や労苦を分かち合える同年代の同胞が俺にはいなかったのだ。
その果てに、たとえ妻を娶り子を成したとしても、きっと“王”は家庭を顧みない。愛よりも義務を優先するに違いなかった。
――――――そして、その子はきっと“父”を憎むだろう。
それ故に、俺は“孤独な王”へとなっていくのだ。
進むのは修羅の道。より多くを救うために非情にならざるを得ない過酷な運命――――――。
誰か一人だけのために全てを捧げることはもう許されない――――――!
そう、だからこそ、何度も気高く宣言し続ける。それが『あの日』に生まれ変わった織斑 一夏の存在理由!
――――――俺は関わる人全てを守る!
――――――部活棟 剣道場
一夏「どうした、箒? また剣筋が鈍っているぞ(アレの日だったっけ? いや、ルームメイトだった頃の様子を見ていたんだから、これは別の理由――――――?)」
箒「…………そうだ。私は覚悟が足りない未熟者だ」
一夏「………………」
箒「………………?」
一夏「………………」ジー
箒「…………あ、そういうことか(一夏は“私からの言葉”を待っているんだもんな)」
箒「実は、姉さんが私専用のISを用意してくれたのだ」
一夏「なるほど、それは大変だな……(それじゃあ、近々 篠ノ之博士が姿を現すということなのか……)」
箒「これで一夏と肩を並べられる――――っと一瞬だけ舞い上がったが、私なんかでは 到底 敵わないから……」ウツムク
一夏「…………そうか、そいつは複雑だな」
一夏「たしかに、俺は他では真似できないような成果を出してきた。だから、そう思うのはしかたないだろうさ」
一夏「けれど、気持ちで負けていたら ずっと負け続けるよ?」
一夏「それこそ、俺に戦わずして負けている――――――心を斬られた状態だ」
一夏「こう考えてみたらどうだ? ある分野において互角の能力があればパートナーとしては心強いけれど、それだけがベストパートナーの在り方じゃないだろう?」
一夏「パートナーの弱点を補えることも重要な要素だ」
箒「だが、すでに一夏にとってのベストパートナーはいるだろう…………」
一夏「ああ、たしかにそうだけど、ISっていうのは多種多様の用途があって、ある目的にしか特化していないのが現状だ」
一夏「なら、今いるベストパートナーとは違うところを伸ばして、誰とも違う俺のベストパートナーになればいいさ」
箒「一夏…………」
一夏「とにかく、機体はまだ届けられていないんだ。話はそれからだろう?」ナデナデ
箒「そうだったな…………すまない、いつもいつも」
一夏「まったくもう…………」
一夏「(何か、構ってちゃんの雰囲気を出しているけれど、今はこれでいい。箒の実力は地味だが将来有望と教員たちの間では期待されているからな)」
一夏「(でも、そうか。あの篠ノ之 束が来るというのか。何か一波乱ありそうだな…………用心しなければな)」
――――――臨海学校 当日
山田「今、11時です! 夕方までは自由行動! 夕食に遅れないように旅館に戻ること!」
山田「いいですね?」
一同「はーい!」
一夏「(ここも爺様の息がかかった場所である。それ故に――――――)」スッ
一夏「さて、クーラーボックスにビーチパラソル、マットと警笛――――――」
千冬「…………何をしている?」
一夏「え? 何って、ビーチの監視ですけど?」
一夏「今年は例年よりも暑いことだし、台風だって近いから時化が出てくる可能性もある――――――」
千冬「そういう時のための人員はちゃんと割り振られている。これは大人の役目だ」
千冬「こんな時でもお前は…………」ヤレヤレ
一夏「ははは、職業病ですよ。関わる人全てを守りたくなる――――――そんな病」
千冬「こういう時ぐらい子供らしく遊んでこい。私も着替えてくるから」
一夏「――――――ホントに?!」ガタッ
千冬「そう、がっつくな。ではな」
一夏「イヤッホオオオオオオ!」ダダダダダダ
千冬「相変わらずだな、一夏のやつは……」クスッ
一夏「――――――次は誰……?」アセダラダラ
鈴「もう1回、私よ!」ピョイ
一夏「飽きないもんだな、ホントに……」ダッダッダッダッダ
一夏「もう、これぐらいでいいだろ? そろそろ肩が痛い……(15人ぐらい肩車して走り回ったからもう…………)」ゼエゼエ
鈴「情けないわねー」ニッコリ
セシリア「な、何をしていらっしゃいますの?」イラッ
鈴「見ればわかるでしょう? ――――――移動監視塔ごっこ」ギュッ
一夏「ああ……?!(体重を頭の方に掛けるなああああああ)」グラア
鈴「あらら」ピョイ
一夏「ぐふぅ……」バタン
セシリア「一夏さん? バスの中で私と約束したのを忘れました、の!?」バンッ
一夏「約束……?」ゲホゲホ
セシリア「さあ、一夏さん? お願いしますわ」チラッ
周囲「おおおお!」
鈴「あんたこそ、一夏に何させるつもりよ!」
セシリア「見ての通り、サンオイルを塗っていただくのですわ」
セシリア「レディとの約束を違えるなど、紳士のすることではありませんですわよ!」
一夏「わかった。その前に、給水させてくれ…………(最初に比べると随分と態度が変わったもんだな…………“一夏さん”ねえ?)」
一夏「――――――」ゴクゴク
一夏「はあ…………(生き返るぅうううう!)」
一夏「よし、始めるか」
鈴「一夏、そのヤシの実ジュース 飲んでもいい?」
一夏「いいよ、別に。他にもいろんなフルーツジュースがあるから、好きに飲んでくれていいよ。ゴミは海の家に捨ててね」
鈴「やったね!」チュー
周囲「ええええええ!」
鈴「ふふふ、美味しい!(一夏の飲みかけ、一夏と間接キス…………えへへ)」ゴクゴク
セシリア「むむむ……!」
一夏「待たせてごめんね。私もオイルマッサージは1回しか経験ないから上手くできないだろうけれど、」
一夏「まずはこの香料を微かに感じながら気持ちよくなっていってね」
セシリア「はい!(何でしょう、この香料は? なんだかとっても良い心地になってきましたわ……)」
一夏「そうそう。マッサージを受ける時は力まずにしっかりと酸素を体内に取り込んで…………」スゥーハァー
セシリア「はあ、はあ…………」スゥーハァー
一夏「そうそう、そんな感じ」サワサワ
周囲「キモチヨサソー」
周囲「コッチマデドキドキシチャウ」
周囲「アトデワタシニモヤッテ、ヤッテー!」
セシリア「ハアハアハア…………」
一夏「大丈夫かな? ちょっと息が荒いよ? ほらほら、最初の呼吸を大切に――――――リラックスして、リラックス」ニコッ
セシリア「あ、はい…………」ポー
一夏「さて、首もそろそろ――――――」サワッ
セシリア「あ」ピクッ
一夏「(――――――な、何だ、今の?)」
セシリア「そ、その辺りを重点的にお願いしますわ……」ハアハア
一夏「はい?(?????)」キョロキョロ
周囲|ジー
鈴|ポー
一夏「やるしかないか……」サワサワ
一夏「首の辺りなんてそこまでやる必要ないだろうけれど、ここが気持ちいいのか…………え?」バチィ
セシリア「あ、ああ、もっとそこを――――――!」ハアハアハア
一夏「えっと、――――――こう?(な、何だ 今の? 静電気のようなものは……?)」グイッ
――――――バチバチィ!
セシリア「ふわあああああああ!?」ビクゥン
一同「――――――!?」ドキッ
一夏「うわあああああ!? どうしたの!?(って、俺も思わず飛び上がった――――――!?)」アセアセ
セシリア「な、何でも、ありませんわ……」ピクンピクン
セシリア「そ、それよりも、気持ちよかった、ですわ。また、いつかまた――――――」ニコー
一夏「そ、そうなの? えっと、これで終わり……?(な、何なんだ? このセシリアの、可愛さ――――違うな、何て言うんだろう、この感じ?)」キョロキョロ
一夏「――――――あれ、みんな、どうしたの?」
周囲「………………」カア
一夏「な、何もないんだったら、私は監視業務に戻ります。――――――それでは!」スタコラサッサー
一夏「(な、何だったんだ、今の“やっちゃった感”はああああああああ!?)」アセダラダラ
セシリア「い、一夏さん…………私、幸せですわ…………」ビクンビクン
周囲「イイナーウラヤマシイナー」ポー
鈴「………………」ポー
一夏「…………ウォーターアミューズメントパークの職員っていうのは思ったより大変なんだな」ハア
一夏「というより、ただ単に人数不足なだけか」
一夏「今のところ、電子ゴーグルで観測できる範囲では沖まで泳ごうとしている生徒の姿は見えないっと」スッ
一夏「(このゴーグルは両用装備の簡易デバイスで、望遠拡大機能を標準装備し、更にアプリの内容次第で大人数の人間の監視も行えるすぐれものだ)」
一夏「(次いでに、3サイズも計測する機能も初期アプリに入っていた。…………爺様! ――――――お値段たったの8万円!)」
一夏「目を離せないのが監視員の辛いところだな。俺も短期決戦にしか特化していないからそんなに集中力は長続きしないし、どうしたものかな……」
一夏「だけど、こういう時に空間認識能力は養われる。――――――パーティ会場に不穏なやつがいないかを見極めるためにも必要なのだ」
一夏「お、あっちのビーチバレーは確かこれで3-4……」
一夏「お、あれは――――――!」ガタッ
山田「ビーチバレーですか。楽しそうですね」
山田「いかがですか、織斑先生?」
千冬「では」
山田「はい、やりましょう」
周囲「おおおお!」
一夏「綺麗だな、千冬姉…………(上から88――――――!)」ジー
鈴「あんたって本当に千冬さんにベッタリよね……」ハア
一夏「俺のことをこの歳になるまで育ててくれた人なんだ」
一夏「そんな人を大事に思って何がいけない――――――はっ!?」ドキッ
鈴「やっぱり、一夏は重度のシスコン…………」ハア
一夏「迂闊…………!」ギリギリ
鈴「はい、かき氷」
一夏「ありがとう」キリッ
鈴「…………わかってはいたけれど、これは関門よね」ハア
鈴「でも、負けないわよ!」
一夏「あ、ああ……、より一層の努力を期待する…………(そうかそうか、やる気を出してくれるのは嬉しい限りだ)」
鈴「たぶんそれ、私の言っている意味と違ってる…………」ハア
鈴「(――――――こうなったら言質をとって有利に進めてやるんだから!)」
一夏「ははは…………ん?」ピピピ
一夏「やっぱり、台風は避けられないか。明日の運用試験は中止になるかならないか、際どいな…………」ブツブツ
――――――夕食の席
一夏「辛いなら、テーブル席に移ろうか?」
セシリア「へ、平気ですわ」
セシリア「…………この席を獲得するのにかかった労力に比べれば、このくらい!」ブツブツ
一夏「――――――席?(ああ、日本の礼儀作法を学びたいってことなのか? 初対面の頃と比べると本当に変わったな、セシリアは)」
セシリア「そ、そうですの! あははは…………」ニコニコー
シャル「一夏? “女の子”にはいろいろあるんだよ……」
一夏「そうなの?(“女の子”――――――やっぱり、俺と同じ視点にはいないということなのか…………)」
シャル「そうなの……!」
一夏「ともかく、楽な体勢になっていいから、ね? 最後だけ正座になればいいから」
セシリア「わ、わかりましたわ」
一夏「さて、改めていただきますか(…………シャルと箒が不機嫌そうだが今は何もできん。――――――許せ)」モグモグ
箒「………………」ムスッ
一夏「えっと、次はこの部屋の女子とやって、その次は――――――」ゼエゼエ
セシリア「い、一夏さん!?」
一夏「セシリアさん? この部屋でございましょうか?(うわ、メンドクセー)」
セシリア「そ、そうですの! さ、いらっしゃいな」キラキラ
一夏「お邪魔します」アセタラー
セシリア「ようこそ、いらっしゃいました」
女子「オリムラクンダー」
女子「ホントニキテクレター」
一夏「そ、それで何をご所望でしょうか?」
一夏「くそ、こういうのは苦手だな…………(確実性が皆無な運否天賦ではどうしようもない!)」
セシリア「ふっふっふっふ…………」
一夏「私は、ツーペア」ハア
セシリア「ロイヤルストレートフラッシュですわ!」ドヤア
一夏「うわああああああ!」
セシリア「やりましたわ! このゲーム、私が勝者ですわ!」
女子「イイナー、セシリア」
一夏「負けた負けた…………」
セシリア「それでは、一夏さん!」
一夏「え、何? そろそろ行かないといけないんだけど…………わかった。何がお望みかな?」
セシリア「また、マッサージしてくださいね?」モジモジ
一夏「ああ、わかったよ。約束しよう……」
セシリア「はい!」
一夏「(…………何だろう? それにマッサージか…………あの時の感覚はいったい?)」バタン
セシリア「ふふ、ふふふ……(ああ、またあの時の絶頂が味わえるのですわ)」ニヤー
女子「セシリアガエロイコトカンガエテルー」
女子「セシリアハエロイナー」
セシリア「な!? え、エロくなんてありませんわ!」
セシリア「(で、でも、一夏さんになら、私は――――――)」ニヤー
女子「エロイナーエロイナー」
セシリア「ああもう!」
一夏「終わった…………今、11時か(5部屋×30分はキツかったな……)」
一夏「ハードスケジュールをこなしてこそセレブの嗜みと実力だけどさ…………」
一夏「ああ、ようやく帰りつけた……」ドサッ
一夏「布団フカフカ…………やっと一息…………」ハア
千冬「おお、帰っていたのか、一夏」
一夏「あ、千冬姉!」ガバッ
千冬「今日は監視業務や小娘共の接待――――――、いろいろご苦労だったな」
千冬「今日に至るまでお前の活躍には教員一同、賞賛の言葉しかない」
千冬「会長の支援があったとはいえ、女手一つでここまで立派に育ってくれたものだ」
千冬「――――――私はお前のことを誇りに思っている。私の宝物だ」
一夏「――――――!」ブワッ
一夏「その言葉が何よりも嬉しいです」スリスリ
千冬「よしよし」ナデナデ
一夏「それじゃ、ご褒美をください」
千冬「何だ? 言ってみろ」
――――――マッサージさせてください。
一夏「千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?」
千冬「そんなわけあるか、馬鹿者が」
千冬「あ……! 少しは加減をしろ……」
一夏「ごめん、ごめん。じゃあ、ここは?」
千冬「ま、待て、そこは…………や、止め――――――」
一夏「すぐに気持ちよくするね。だいぶ溜まっていたみたいだしね」
一夏「ここは?」
千冬「そ、そこは、ダメだって言っている…………」
一夏「でも、解されていっているのがわかるよ。気持ちいいんだね、千冬姉?」
千冬「そっちこそ、やけに気合が入っているではないか」ハアハア
一夏「だって、ずっとずぅっと千冬姉と一緒に居られる時間が無かったからさ……」
一夏「こうやって千冬姉の肌の温もりを確認できることがこの上なく嬉しいんだ……」
一夏「千冬姉が気持ちよくなっていくと、俺も段々と嬉しくなって気持ちいいよ」ハアハア
千冬「力が、強い…………」ハアハア
一夏「俺は『あの日』生まれ変わったんだ」
一夏「俺は千冬姉を、爺様を、そして関わる人全てを守るって!」
一夏「だから、この手はいずれ血に塗れようとも癒やしの力を秘めていたい……」ハアハア
一夏「ISのように無限の力を秘めた拳なんだ!」
千冬「そ、そうか――――――ああっ!」ハアハア
一夏「ところで、千冬姉?」ハアハア
一夏「ふすまの向こうで聞き耳を立てているやつが5人ぐらいいるっぽいんだけど」ボソッ
千冬「ほう……?」ピクッ
一夏「まあ、こんな時間に来るのは例の5人かな?」ハアハア
一夏「はははは、ちょうどいいや」
一夏「――――――全員ヤッちゃおうか、千冬姉?」
千冬「何をしているんだ、あの小娘共は…………」ハアハア
千冬「まあいい。好きにしろ」
一夏「うん。それじゃ最後に、はい!」グイ
千冬「――――――っ!」ビクン
千冬「………………」ハアハア
一夏「それじゃ、そこにいる5人、入ってきなよ」
千冬「………………」ヨロヨロ
千冬姉は徐ろに起き上がると、夜風を浴びながら冷やしておいたビールを一息に呑み干した。
その後、ふすまの奥で盗み聞きしていた例の5人が意を決して姿を見せる。
そして、頬を染めた5人に向けて千冬姉はこう言うのだった。
千冬「お前たち、腰を抜かすなよ?」ニヤリ