落とし胤の一夏「今更会いたいとも思わない」   作:LN58

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アンコール 平和な日常・裏 -Interwar- Apart

 

――――――夏期休業前

 

一夏「さて、幼児教育ボランティアや高齢者ボランティア、企業の慰労訪問は終わりっと」カタカタ

 

一夏「うん! これで平の実績は十分」

 

一夏「2学期からは生徒会だな」

 

一夏「たしか、のほほんさんが――――ちがうちがう。布仏 本音さんね。彼女が生徒会の書を記やっていて、3年生の姉が会計だったな」

 

一夏「で、生徒会長が――――――うっ、頭が…………」ズキーン

 

一夏「…………ちょっとハードスケジュールだったから疲れたのかな」

 

 

コンコン・・・

 

一夏「む、どうぞ」

 

ガチャ・・・

 

シャル「一夏! ご主人様!」ニッコリ

 

ラウラ「お、お茶でもいかがでしょうか……」プルプル

 

一夏「ああ、ご苦労様……(おお、ラウラよ。落ち着け。零すなよ)」ハラハラ

 

一夏「はい、よく出来ました(えっと、……何 考えてたんだっけ? まあいいや)」ナデナデ

 

ラウラ「ふふん……」エッヘン

 

一夏「これは、アレンジティーかな? 何か妙に紅みがかっている上に蜂蜜っぽい味に酸っぱさがある…………」

 

シャル「こちらもどうぞ」

 

一夏「これってヘクセンハウス(お菓子の家)じゃないか! 食べていいの?」

 

シャル「はい!」ニッコリ

 

一夏「あ、この香り――――――」クンクン

 

一夏「わかった、――――――生姜でしょ? それをトリックル(はちみつ)で味付けしているんだな」

 

シャル「凄い!」

 

ラウラ「よ、よくわかったな」

 

一夏「安い生姜を使ったんだな…………紅生姜で直接ってところかな」

 

シャル「そ、そこまでわかるだなんて」

 

一夏「ははは、セレブの世界に入ってまずしたことは衣食住の可能性を追究したことだからさ」

 

一夏「その中で、高級料理は無理だったけど お菓子作りが 特にはかどってね」

 

一夏「だから、香辛料や香料の違いなんていうのはすぐにわかる」

 

一夏「でも、美味しくいただくよ」モグモグ

 

一夏「うん、美味しい。これならこういう形での奉仕もやぶさかでないね」

 

シャル「ご主人様!」

 

ラウラ「ご主人様!」

 

一夏「いいね。これは美味い! ほら、あ~ん」

 

シャル「あ~ん」パクッ

 

ラウラ「あ~ん」パクッ

 

シャル「僕、これ、好きだな……」

 

ラウラ「こ、こんなにも幸せなことがあるのか……」

 

一夏「うん(いやぁ、メイド姿が板についてきたな…………)」

 

一夏「お客さんをもてなすのに頼んでいいかな、こういうの」

 

一夏「セレブの俺が言うんだから自信を持っていいよ」ニッコリ

 

ラウラ「や、やったぞ、シャルロット!」ニッコリ

 

シャル「うん! やったね、ラウラ!」ニッコリ

 

 


 

 

一夏「いやぁ、ここまでお菓子作りができるようになるなんて思わなかったよ」(お忍び変装中)

 

ラウラ「軍隊ではローテーションで食事係をやっていたが、私でもこういうものを作れるようになるとは思いもしなかったぞ」モジモジ

 

一夏「さて、今日来たのはゲームセンターだ」ガヤガヤ

 

ラウラ「まるで戦場のような騒音だな。これではほとんど何も聞こえないではないか」ザワザワ

 

一夏「いや、意外とすぐに慣れていくもんだよ? 人間の持つ 必要な情報を選り分ける能力を身近に感じるところがここなのさ」

 

一夏「さて、ここに小遣い5,000円がある。今日はここで遊ぼう! 50回は遊べるはずだ」

 

ラウラ「わかった」

 

一夏「それじゃ、エアホッケーから行こうか」チャリン

 

一夏「――――――勝負だ! ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

ラウラ「なるほど、直感的に何をすればいいのかがわかるぞ」

 

ラウラ「では、ご……織斑 一夏! その強さを学ばせてもらう!」

 

一夏「いや、たしかにアメリカではスポーツにもなっているぐらいだけど、俺はプロじゃないぞ?」

 

ラウラ「行くぞ!」カンッ

 

一夏「なっ……(やはり、ドイツ軍最強のIS乗り! 本職なだけあって身体能力がずば抜けているな……)」ストン

 

一夏「だけど、テーブルに身体を載せずにパックがゴールに落ちなければいいのだから、こういうことだってできる!」カンッ

 

ラウラ「な、何ぃ!(マレットを両手に持っただと!?)」

 

一夏「ルール違反は一切してないぞ? パックを直接身体で受け止めることは反則だが、一人でパックを2つ使うことや片方のパックを置くことにペナルティはない!」

 

ラウラ「こ、これが、織斑 一夏の戦術…………!」カンッ

 

一夏「だから、こういうふうにすることだってできる!」

 

 

ラウラから送り出されたパックを受け止め、自分のエリア内でパックを激しく弾き飛ばすと、一夏は両手のマレットを置いて居合の構えをとった。

 

 

ラウラ「どちらかのマレットを取って意表を突くつもりか!」

 

ラウラ「だが、そんなものに惑わされはしないぞ!」

 

一夏「………………!」

 

 

そして――――――、

 

 

一夏「はああああ!」

 

ラウラ「来たな!(やはり、右手で振りぬく先にある左側のマレットを手にしたな! ただの虚仮威しだったな)」

 

一夏「――――――ふん!」

 

 

しかし――――――

 

 

ラウラ「む?(掴んだマレットが左右を往復するパックに当たらなかった、だと? 馬鹿な、織斑 一夏が外すわけが――――――はっ!?)」

 

一夏「はあっ!」カンッ

 

ラウラ「なんだと――――――」ストン

 

 

――――――隙を作らぬ二段構えだった。

 

身体を前傾にして右手で左側のマレットを手にしてそのままパックを当てるものだと最初は思われた。

 

ラウラは居合の速さに反射的に身構えたほどだったが、意外と重くて扱いなれないマレットのせいで想像したよりは鈍かった。パックには当たらなかった。

 

しかし、そう思ったのも束の間、実は後れて逆の手で逆のマレットを掴んで、一瞬 気が逸れた瞬間を狙い撃ったのである。

 

 

――――――まさに電光石火だった。

 

 

ラウラは まさに一瞬 何が起きたのか全く理解できなかった。

 

織斑姉弟が居合の達人ということで、居合というものに興味を持ってビデオ鑑賞したり文献調査したりして研究しだしたラウラだったが、

 

まさか連続で居合抜きができるとは思いもしなかったので、想像を超えた技量を前にしてむしろ感動すら覚えていたのだった。

 

 

一夏「さあ、打ってこい!」

 

ラウラ「そうだ! それでこそ、私が憧れる織斑 一夏だ!」カンッ

 

一夏「そこだっ!」カンッ

 

ラウラ「まだまだぁ!」カンッ

 

 

カンッ、カンッ、カンッ、カンッ............

 

 

一夏「今日は結構はしゃいだなぁ…………」

 

一夏「初見のガンシューティングを4コインでクリアしたり、クレーンゲームで大量のお菓子とぬいぐるみをゲットして、プリクラというものもしてみたり――――――」

 

ラウラ「また、ご主人様と来たいな……」ニコニコ

 

一夏「そうか。ラウラがそう望むならきっと叶うよ」

 

ラウラ「そうか、そうなのか。えへへ…………」ニヤー

 

一夏「プリクラのシールはもらうとして……、このぬいぐるみやフィギュア、キャラクタータオルは貰っていってくれ! 今日の記念として!」アセアセ

 

ラウラ「ほ、本当か!?」

 

一夏「ああ、これでベッド周りが思い出で埋まるだろう(こんなものを俺が持って帰ったら笑い草にされる!)」

 

ラウラ「ゲームセンター…………いいところだ」

 

一夏「ああ……、だけど、18歳未満は保護者同伴無しでは20時以降は入れないからそこは気をつけてね」

 

ラウラ「わかったぞ、ご主人様!」

 

ラウラ「今日の感動をクラリッサに報告しなければ!」ウキウキ

 

一夏「…………本当に変わった。こうして見ると本当に世間知らずなお嬢さんだな(だけど、あれで少佐なんだもんな……)」

 

一夏「(情報によれば、ラウラは表向きは孤児出身という話だが、軍用のデザインベイビーである可能性が高いとされる)」

 

一夏「(戦うためだけに生み出された生体兵器が、まさかこれほどまでの人間性を獲得するとは、何が起こるかわからないもんだな……)」

 

一夏「(いや、俺の人生もそうかもしれない)」

 

一夏「(『あの日』が無ければ――――――)」

 

一夏「(そして、『あの日』を境に、俺は自分の意思で財閥総帥後継者の道をひたすら行っている――――――)」

 

一夏「(その成果の1つが今、ここにある――――――!)」

 

一夏「卒業してからはわからない。でも、今だけでも“ラウラ・ボーデヴィッヒ”にしてあげられることを――――――」

 

ラウラ「さあ、行くぞ! シャルロットが待っている」ニコニコ

 

一夏「ああ」ニッコリ

 

 


 

 

――――――夏期休業の始め

 

シャル「次、僕だよね?」ドキドキ

 

一夏「それじゃ行こうか、お嬢さん?」

 

シャル「うん!」ニッコリ

 

 

 

一夏「ここが俺の――――与えられた屋敷だ(いやはや、まさか本職体験をご希望なさるとは…………これは本気で就職するおつもりだ)」

 

シャル「綺麗なところだね」

 

一夏「まあ、俺が衣食住に不自由していなかったからメイドたちが仕事を無くして徹底的な庭掃除に専念しだしたからね……」

 

爺様「いやあ、よく来てくれた。一夏、そしてシャルロット」

 

シャル「会長……」ペコリ

 

一夏「…………爺様は本気らしいな」

 

 

 

一夏「この小包みは?」

 

爺様「包みを開けてみよ」

 

シャル「…………札束? 日本円の?」

 

爺様「100万ある」

 

一夏「小切手とか電子マネーで生活していたせいで初めて見たけど、意外と――――――」

 

シャル「――――――薄い?」

 

爺様「そう、たしかに薄く見えるかもしれんが、それを手にするのに普通の人は数ヶ月も働き、または人を欺き、犯罪を働く者までいる……!」

 

一夏「100枚“しかない”と考えるか、100枚“もある”と考えるかで重みが変わってくるな…………」

 

シャル「そうだね。そこが大きな違いだね」

 

一夏「だけど、ハイパーインフレを引き起こした戦前のドイツのように、ベビーカーに大量の札束を載せても紙くず同然にもなるんだから、」

 

一夏「カネの自在性と魔力は恐ろしいものがある。俺が“世界で唯一ISを扱える男性”と報じられただけで円高になるぐらいにね」

 

一夏「それだけに、心の弱い人間ほどカネの魔力に魅せられてしまう…………カネが“ある”か“ない”かで世界が大きく変わる」

 

シャル「…………そうだね」

 

爺様「――――――財が溢れるほど人間は本来の姿を失う」

 

爺様「お前はそのことがわかっているようだな」

 

一夏「ああ」コクリ

 

爺様「ただ忘れてはならないことがある」

 

爺様「――――――財の価値は生き様の価値と同じだということを」

 

一同「――――――!」

 

爺様「よく覚えておけ」

 

爺様「財は力――――――、矛と盾、あるいは剣と鞘だ」

 

爺様「――――――財は人を生かし、財は簡単にその人生を断つ」

 

爺様「税金の匙加減で自殺者が増えたり減ったりするのを考えれば、よくわかるだろう」

 

爺様「そして、お前が手にする『零落白夜』の光の剣には我が財閥の未来だけでなく、世界の命運をも左右するだけの力がある」

 

一夏「…………」コクリ

 

シャル「…………」ゴクリ

 

爺様「だが、己の責務を全うするのにその道はあまりにも過酷だぁ」

 

 

爺様「――――――ここからが大切なことだ」

 

 

爺様「織斑 一夏よ。決してお前は一人だけで戦っているものだと思い上がるでないぞ」

 

爺様「敵は多くとも、お前にはお前の手によって救われた者や導かれた者たちが確実にいる」

 

爺様「――――――味方は必ずいる!」

 

爺様「彼らの声に耳を傾ける余裕を失うでないぞ」

 

爺様「さもなければ、『あの日』、織斑 一夏が世界と自分に対して掲げた誓いを見失うことになる」

 

爺様「決断はお前だけに与えられた自由と責任だが、その決断を支える者たちがいるということを忘れるでないぞ」

 

一夏「胸に刻みます」

 

爺様「そして、シャルロット・デュノア」

 

シャル「は、はい……!」

 

爺様「お前がこれから身を捧げることになろう相手は、自分の信念を貫こうして情熱に身を焦がす青二才だ」

 

爺様「それ故に、優しい。優しすぎる」

 

爺様「生まれてこの方、絶望といえるほどの苦楽を味わってこなかったおぼっちゃん故に、これから現実に対して悲観的になっていくだろうが、」

 

爺様「アイデンティティの原点として“織斑 一夏”の在り方を定義し続けてやってくれ」

 

爺様「人間は最初から世界に奉仕するためにぃ生まれてくるのではぁない」

 

爺様「どれだけ壮大な目的があろうとも、その原点は身近な人間への思い入れがあってこそだ」

 

シャル「わかりました! 僕、やってみせます!」

 

爺様「良い返事だ、シャルロット・デュノア。お前にならぁ任せられるだろう」ニンマリ

 

爺様「では、朝から長話 すまなかったな。2泊3日、楽しんでいってくれ」バサッ

 

一同「…………」ペコリ

 

バタン

 

シャル「…………ねえ、一夏」

 

一夏「――――――俺も、『“シャルロット・デュノア”にだったら――――』と思う時があったよ」

 

シャル「え!?(それって“そういう意味”なのかな…………!?)」ドキドキ

 

一夏「これはISに関係なく、それ以前に財閥総帥後継者となった俺の問題だ」

 

一夏「俺はこの学園に入ってシャルとラウラを守ってやったな」

 

シャル「うん、そうだよ」

 

一夏「だけど、それだけじゃダメなんだって思い知らされたよ」

 

シャル「え?」

 

一夏「守ることも導くことも、これまでの環境をただ大きく変えるだけだから、それだけじゃダメなんだって」

 

一夏「俺はシャルにデュノア社と心中して欲しくなかったから声を掛けた」

 

一夏「俺はラウラに千冬姉の強さがいったい何なのかを教えるためにVTシステムの幻影を断ち切った」

 

一夏「でも、それだけでシャルもラウラも“今のほうがいい”と思えたか?」

 

シャル「え?」

 

一夏「そんなわけない。禍根を断ってやったとしても、それによる変化を受け容れて心が満たされなかったら意味が無い」

 

一夏「環境が変わり、その中での自由を享受できるかどうかにかかってくる」

 

一夏「俺は『あの日』、千冬姉に許してもらえたから“今の俺”になれたんだ」

 

一夏「もし、千冬姉が何も言わなかったら、きっと…………」

 

シャル「……そうだったね。僕もあの時、初めて自分が誰かに必要とされたように思えたから――――――」

 

シャル「きっとラウラもそれ以外の道を知ったから――――――」

 

一夏「俺はこれから環境を――――人の人生を思いのままに操ることも可能となっていくだろう」

 

一夏「だけど、俺が良かれと思ったことが必ずしも相手にとって良いことだとは限らない」

 

一夏「――――――ラウラはわからない。軍人だから」

 

一夏「けど、せめて“シャルロット・デュノア”だけは救われたって後になって振り返ってくれるように、」

 

 

一夏「――――――幸せになってくれ」

 

 

シャル「――――――!」ブワッ

 

シャル「うん! 幸せになるよ、一夏…………」ポロポロ

 

シャル「だから、一夏も、ね?」

 

一夏「ああ、ありがとう、シャル」

 

シャル「よぅし、頑張っちゃいますよぉ!」

 

一夏「楽しみにしているよ」ニコニコ

 

 

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