落とし胤の一夏「今更会いたいとも思わない」   作:LN58

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アンコール 平和な日常・裏 -Interwar- Cpart

 

――――――夏期休業残りわずか

 

 

千冬「――――――」カッ

 

一夏「――――――」カッ

 

 

ガキーン!

 

 

一夏「………………」ギリッ

 

千冬「………………」ジー

 

 

 

 

 

千冬「ここまでだ」フゥ

 

一夏「相変わらず千冬姉は強いな……」ブルブル

 

山田「おつかれさまでした」

 

一夏「ありがとうございます、山田先生」ニッコリ

 

山田「はい!」ニッコリ

 

山田「しかし、生身でIS用の太刀で打ち合うのは世界広しと言えどもお二方だけですよ」

 

千冬「部分展開など基本中の基本だろう?」

 

山田「でも、身の丈よりも大きいものを平然と振り回せるのは普通じゃないと思います」

 

一夏「そうかな。人間には本来タンスやピアノを一人で持ち上げるだけの力が備わっているものです。昔の農村の田舎娘だって米俵背負っていたし」

 

一夏「ISの絶対防御を駆使すれば、人間本来の力を解放するなんて簡単なことじゃ?」

 

千冬「現代戦の要は飛び道具だからな。安定した銃火器に頼っていれば リスクの大きい格闘戦など必要ないから、そういう使われ方をしないのはしかたないか」

 

一夏「学園がどう評価しているか知らないけど、俺なんて千冬姉の足元に及ばない。千冬姉に冷や汗をかかせたことが無いんだ…………」

 

一夏「それに、あの篠ノ之 束ですら千冬姉と同等の力の持ち主なんだ。雪片弐型がピクリとも動かなかった…………」

 

一夏「だから、まだまだ遠い…………」

 

一夏「だけど、ここにいる間は諦めはしない。もっと強くなって、俺は関わる人全てを守るんだ」

 

千冬「うむ」

 

山田「はあ……、姉弟揃って武道家ですね。そんな使い方を思いつくのはやっぱりお二方だけだと思いますよ」

 

千冬「そういえば、一夏。2学期からは部活に入っておけよ。苦情が寄せられていたからな」

 

一夏「必ずじゃないといけないんですか? 俺は代表候補生たちの指導で忙しいんだけどな……」

 

一夏「それに、オープンハイスクールの客寄せパンダになって十分学園に貢献したでしょう? あれは酷かった…………志望動機の集計結果」

 

山田「しかたありません。学園長としては例外は認めたくないとのことで」

 

千冬「こういうのは形式が大切なんだ。お前もよくわかっているだろう? 学園としてもお前の扱いには気を遣っているんだ」

 

一夏「それもそうですね。それじゃあ、生徒会に入りますよ。クラス代表に立候補しなかったのも、最初から生徒会に入るつもりでしたから」

 

山田「そうですか! 織斑くんが生徒会に――――――。これは凄いことになりそうですね」

 

千冬「では、一夏。これからまた会長のところに行くのだろう?」

 

一夏「はい。夏期休業の内容を報告しに」

 

千冬「会長はああ見えて子煩悩だからな。足を運べない私に代わってよろしく頼む」

 

一夏「はい、千冬姉」

 

千冬「明日から私は“織斑先生”だぞ?」

 

一夏「わかったよ、千冬姉!」

 

千冬「フッ。では、行け」

 

 

山田「相変わらず仲が良いですね」

 

千冬「しかし、あいつにとってIS学園の日々は内地留学でしかない」

 

千冬「いずれは本来の役目に就いて、誰にも代わりが務まらない決断の数々に追われる、孤独な戦いの日々へと身を捧げていく」

 

千冬「果たして、一夏は――――――」

 

山田「きっと大丈夫です。織斑先生のことを卒業生がずっと敬愛し続けるように、織斑くんのことをずっと想い続ける人たちがたくさんいますから」

 

山田「…………私もその一人ですし」モジモジ

 

千冬「そういえば、お前の同期のあの3馬鹿から中元が来ていたな」

 

山田「そうなんですか!? どうして、あの3人が…………?」

 

千冬「……さあな。だが、こうして会えなくとも関係が続いていくのは、その……、教師として嬉しいものがある」

 

山田「そうですよ! だから、大丈夫です!」

 

千冬「まさか、教え子に教えられることになるとはな……」

 

山田「嬉しそうで何よりです」ニコニコ

 

 


 

 

――――――“アビス”

 

キュイイイイイイイイイン、キュウウウウウウウウン!

 

主任「これで、この機体の再フォーマットは完了ですね。お疲れ様でした」

 

一夏「まさか迷路でトライアルができるなんて思わなかったけど、ISとは違った楽しさがありました」

 

一夏「ISにはこういう使い方もあるんですね。拡張装備と見ればパッケージの一種に含まれるけど、」

 

一夏「――――――このパチモン、もしかしたら第5世代兵装ぐらいの価値があるのかもしれない」

 

一夏「いや、それどころか、次の――――――」

 

SP1「ISは元々 マルチフォームスーツ――――拡張性は十分にあったんですがね。軍用機としての完成度…………違うな、新兵器の開発ばかりに熱心で、周りが」

 

SP2「こういうふうにISを前提とした別次元のフルアーマーパワードスーツをやろうとしたのはうちぐらいなもんだ」

 

主任「第二形態移行(セカンドシフト)した『白式』の形状に合わせて全体の輪郭の作り直しを行い、『白式』が新たに獲得した第4世代兵器『雪羅』の使用にも耐えうる仕上がりです」

 

主任「――――――完璧です。よし、第4世代兵器や『無銘』のデータの記録やエネルギーの供給、その他もろもろの後片付けも終わりました」

 

主任「これで“アビス”はまた封印されます。みなさん、お疲れ様でした」

 

一夏「ええ。お疲れ様でした」ニッコリ

 

 

一夏「これで“アビス”に眠るパチモン――――いや、もう一人のパートナーともお別れか」

 

一夏「けど、二度と使いたくないな、どっちも。特に、――――――『雪羅』は危険過ぎる」

 

一夏「攻撃力・防御力・機動力――――その全てが第二形態移行(セカンドシフト)したことによって明らかに現行の最新鋭機を凌駕し過ぎている……」

 

一夏「どうにかして『白式』を表舞台で使わないようにしないと…………ここに眠れる『無銘』と同じく」

 

SP2「それは無理な話ですって。せめて雪片弐型だけで戦うとか、公開する範囲を最小限に留めることを視野に入れるしかないですよ」

 

SP1「ところで、若様? あなた様の名義で個人的な差し入れがあったのでいただきませんか?」

 

一夏「どういうことだ、それ? そんなものは屋敷の事務所に届けられているはずだけど」

 

SP1「――――――『銀の福音』のことは覚えていますよね」

 

一夏「…………核抑止力(笑)に定評のある、情けないアメリカ軍の第3世代型か。忘れるはずがない。凍結処置されたんだっけ?」

 

SP2「実は、ナターシャ・ファイルス――――『銀の福音』専属の国家IS操縦者からの個人的な感謝状と御中元が来たわけですよ」

 

一夏「それは――――さぞ、無念だったろうな。大人の事情でパートナーが無人機にされて、与り知らぬことで凍結処置されてしまったんだから」

 

一夏「とりあえず受け取ろう――――――って、何だ、このSDカードは?」

 

主任「これにメッセージデータを入れているのではないでしょうか?」

 

一夏「感謝状はデジタルってこと? まあ、個人的なメールサーバーはごく一部の人間にしか開いていないし、しかたないか」

 

SP1「よろしければ、私の端末で」

 

一夏「ありがとう」

 

一夏「えっと、何が入っているのかな――――――」ピッ

 

一夏「“最初にこれを読んでください”、“あなたやあなたが属する団体に対するアメリカ軍の感情”――――――」

 

 


 

 

――――――その夜

 

爺様「フハハハハ! 相変わらず楽しい学園生活を送っているようで何よりだ」

 

一夏「こっちとしては、責任ある立場だからヒヤヒヤものですよ、毎日…………」

 

一夏「ある貧乏人が言った」

 

 

――――――お前にカネが無い悔しさがわかってたまるか、と。

 

 

一夏「すると、ある大富豪がこう言い返した」

 

 

――――――そっちこそカネが有る苦労がわかってたまるか、と。

 

 

爺様「ふむ」

 

一夏「爺様が俺のために言って聞かせてくれた、このジョークの意味が今ならよくわかるよ」

 

一夏「“ある”人間と“ない”人間とではわかりあえない。わかりあうためには共通の何かを探しだすか、作り上げるしかないんだって…………」

 

爺様「ふむ。知識や経験はまだまだだが、――――――いい面構えだな」

 

一夏「心理学的な話――――――、“ない”ことを強く意識しているのは“ある”ことを切望していることの裏返しだって聞いたことがある」

 

一夏「それだけ執着しているってことだからね、――――――その価値基準に」

 

爺様「だが、その価値基準は時としてベクトルが異なってくる。“好き”の反対が“嫌い”だったり、“無関心”だったり、はたまたぁ“LOVE”だったりなぁ」

 

一夏「俺はさ、爺様――――――」

 

爺様「ふむ」

 

一夏「『守る』ことと『救う』ことの違いって何なのか、ずっと考えていた」

 

一夏「その答えが、――――――仏教的かもしれないけれど、その執着を捨てること――――意識させないことなんじゃないかって……」

 

一夏「有り体に言えば、どうでもよくすれば問題なくなるってこと」

 

一夏「ここを襲撃されたあの雷雨の夜、俺はテロリストたちの声を聞いた。断末魔を見た。殺気に晒された――――――」

 

爺様「すまんな…………儂は二度も三度もお前自身と取り巻く環境を変えてしまった」

 

一夏「………………」

 

一夏「……なあ、爺様」

 

爺様「どうした?」

 

 

一夏「…………なんで()()()()は爺様から逃げていったの?」

 

 

一夏「千冬姉は答えてはくれなかった。だから、両親の事なんて全然知らない」

 

一夏「別に会いたくなったってわけじゃない」

 

一夏「今でも、会いたいとも思わない」

 

一夏「けど、今の爺様を見ていると、何故だか気になって…………」

 

爺様「…………ふむ」

 

爺様「そういえば、お前はまだ男と女の関係というものを今でも忌避しているのだったな」

 

一夏「…………当たり前だ」

 

一夏「子を成すこと以外に何の利益があるっていうんだ……」

 

一夏「社会を存続させるための必要悪だというのはわかっているけど、やっぱり必要悪でしかない」

 

一夏「それに――――――」

 

 

爺様「――――――それに、お前が肩入れしている小娘たちがみな大人の都合によって人生を狂わされていたことに怒りを覚えているのだろう?」

 

 

一夏「――――――っ!」ギリッ

 

一夏「そうだよ! だから嫌なんだ、男と女の関係ってやつが……」

 

一夏「俺はある時ふと『子を成すだけの関係なら別にいいか』だなんて思ってしまったことがある……!」

 

一夏「爺様からすれば満足かもしれないけれど、そんな鬼畜の所業ができるものか!」

 

爺様「………………」

 

一夏「俺の両親の失敗は、つまらない感情に流されて自分たちに酔い痴れて現実を見ようとしなかったからなんだろう?」

 

一夏「その結果が、俺なんだ! そんな俺に――――――」

 

爺様「ぶぅるらあああおおおおおおおおおおおう!」バシッ

 

一夏「うわっ!?」

 

爺様「あの二人にどれだけ落ち度があろうとも、それ以上は許さぁん!」

 

一夏「なんでだよ!? 覚悟も地位も能力も人脈も不揃いな二人だったからこそ、爺様の許から逃げ出すしかなかったんでしょう!」

 

一夏「爺様の許にいれば、今ものうのうと暮らせていたろうに…………!」

 

爺様「たしかにそうだ。あの二人には途方も無いぐらいの格差があった。身の程知らずもいいところだった」

 

爺様「あの二人が駆け落ちした時、儂は怒りに身を任せた」

 

爺様「あの二人に対して手を回して徹底的に迫害した。その結果、二人は――――――いや、言うまい」

 

爺様「だが、終わってみれば、儂は大きな過ちを犯したことに気づいてしまったのだよ」

 

一夏「………………?」

 

爺様「儂はな、一夏……」

 

爺様「人間というものはやはり愛が無ければダメなのだと思うのだ」

 

一夏「はあ…………?」

 

爺様「わからんのか、一夏よ?」

 

一夏「まったく…………その通りだとは思いますけど、それだけじゃダメなのは爺様がよくご存知でしょう?」

 

爺様「お前は打算的でかつ機械的な婚姻関係を嫌う一方で、結ばれるには取り巻く環境への覚悟が必要という、極めて対極的な結婚観を持っているな?」

 

一夏「当然じゃないか…………祝福されるべきものなんだから」

 

爺様「なら、それ相応の相手をこちらで見繕えばそれでよいのだな?」

 

一夏「…………言っている意味がわからない。それに、相変わらず俺の結婚に結び付けたいんだな、爺様は」

 

一夏「俺は爺様の財閥に所属する日本籍のISドライバーであり、財閥総帥後継者だぞ?」

 

一夏「その伴侶として相応しい――――、国籍も、家柄も、覚悟も、能力も、その全てを備えている人なんているんですかね?」

 

一夏「まず最初に、国籍は大切だ」

 

一夏「俺はれっきとした日本籍の企業と契約を結んでいるから、他所の代表候補生と婚姻を結ぼうものなら国家レベルの介入や干渉、監視が付く」

 

一夏「次に、家柄――――――」

 

一夏「言うまでもない。あの二人が爺様の許から逃げ出した事の大元は旦那の年収や学歴で世間体を気にするセレブの営みのせいだ」

 

一夏「付け加えて、IS学園の人間は完全に対象外だ。俺の正体を知る人間はわずかにいるけれど、それでも――――――」

 

 

爺様「――――――いるぞ? その全てを備えているのが」

 

 

一夏「…………どこかの組の未亡人だとかそんなんじゃないよね?」

 

爺様「お前よりも1つ年上だがな」

 

一夏「え、お見合いリストにそんな人がいたかな? それとも、社交パーティで会ったことがある人なのか…………?」

 

爺様「――――――織斑 一夏」

 

一夏「――――――破棄します」

 

爺様「フッ、まだ何も言っていないではないか……」

 

一夏「流れからいってどうせ――――――、その女傑とやらと夫婦の契りを交わしてこいと言うのでしょう?」

 

一夏「爺様……、いくら晩節に出来のいい後継者を得られたからって事を急ぎ過ぎでは?」

 

一夏「俺は爺様にはまだまだ及びませんよ。これからも初めてのことを経験していくでしょうし、その時は――――――」

 

爺様「ならばこそだ。ここで1つ、結婚を前提にした異性との付き合いというのを経験してみてはどうだ?」

 

一夏「…………それが大人のスポーツ、ですか?」ハア

 

爺様「フハハハハ! そうだ! 色恋にも駆け引きは重要でな」

 

一夏「黙っていても鬱陶しいと思っていても、相手の方から擦り寄ってくるっていうのに…………」

 

一夏「で?」

 

爺様「ああ、そうだったな。お前の婚約者だったな」ニヤリ

 

爺様「言うなれば、アレだ」

 

爺様「ファースト幼馴染、セカンド幼馴染と来たら、」

 

 

――――――()()()()()()だろ?

 

 

一夏「――――――!?」

 

一夏「まさか、“更識家”のあの人…………!?」ゾクリ

 

爺様「うむ」コクリ

 

一夏「……認めないぞ! そもそも、幼馴染と言えるほどの付き合いもしていない!」ガタガタ

 

爺様「震えているな?」ニンマリ

 

爺様「そういえば、あれはIS学園の生徒会長をしていたな?」

 

爺様「お前はいずれ次期生徒会長になるのだ。いい機会だから“いろいろ”教わってくるといい」

 

一夏「………………くぅうううう!」プルプル

 

一夏「爺様、言っておく」

 

爺様「何だ?」

 

 

一夏「今更会いたいとも思わない」

 

 

 

――――――与えられた自由に、“答え”は在るのか……?

 

 

.............MISSION IS UNFINISHED.

 

 

 

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