落とし胤の一夏「今更会いたいとも思わない」   作:LN58

2 / 16
第1話 クラス対抗戦・裏 -The Obsolete Gentleman- Apart

 

――――――IS学園 始業日

 

女子|ジー

 

女子|ジー

 

女子|ジー

 

一夏「(見渡す限り女の子しかいないヒミツの花園……)」

 

一夏「(まさか、本当にIS学園に入れられるとはな…………)」

 

一夏「(堂々としていればいい…………社交界の下衆どもの欲望に塗れた視線よりは断然心地よい)」

 

一夏「(入学生のデータを見る限り、社交界と縁がある人物は居ないことだし、)」

 

一夏「(俺は『白式』の運用データを取っていればいい――――それだけのことだ)」

 

一夏「(気楽にいかせてもらおう。授業内容も中の上程度だし、ついでに年頃の女性の扱いには慣れておかないとな……)」

 

一夏「(そこから、ISドライバーでしか得られない貴重な人脈を大切に育てていこう!)」

 

山田「みなさん、入学おめでとう!」

 

山田「私は1年1組 副担任の山田 真耶です」

 

一夏「よろしくお願いします、山田先生」ニッコリ

 

山田「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 

山田「今日からみなさんはこのIS学園の生徒です」

 

山田「この学園は全寮制――――学校でも放課後でも一緒です」

 

山田「仲良く助け合って、楽しい3年間にしましょうね」

 

一夏「そうですね。楽しくしていきましょう」ニコニコ

 

山田「(ありがとうございます、織斑くん!)」カルクオジギ

 

一夏「(さあ、続けてください)」ニコニコ

 

山田「それでは、自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で――――」

 

 

 

山田「それでは、織斑 一夏くん。お願いします」

 

一夏「はい、織斑 一夏です。世間で騒がれている“世界で唯一ISを扱える男性”とは私のことです」

 

一夏「でも、“それだけが特別”なだけで、“織斑 千冬の弟”だとか他にもありますが、」

 

一夏「そんなつまらないものに怖がらずに 分け隔てない お付き合いをしていただけると幸いです」

 

一同「おおお!」

 

一夏「……これで、いいかな?(そう、これでいい。“財閥総帥後継者”であることは知る人ぞ知るものでいい)」ニッコリ

 

山田「はい、ありがとうございました」

 

周囲「キャーーーカッコイイーーー」ガヤガヤ

 

一夏「はは、ありがとう。でも、まだまだ自己紹介は続くからここまでにしてね?」サワヤカ

 

周囲「ハーイ」

 

山田「では、次の方――――――」

 

箒「………………一夏」ジー

 

千冬「フッ」

 

 

 

――――――さて、俺がこのIS学園に入学させられた理由なのだが、ほとんど偶然の産物でしかなかった。

 

女性にしか扱えないISではあるが、整備科などの後方支援として男性に対しても門戸が開かれているIS学園――――――。

 

しかし、普通なら財閥の跡取りがたかだか表向きは競技種目にしか使われていないスポーツに精力を傾けるはずがない。

 

何故入学させられたかと言えば、俺が女性にしか扱えないISを動かせたという“特異ケース”になってしまったからだ。

 

だが、これだけでは入学するほどの理由にはならない。使えるのならば、護身用に少し動かせるだけで十分だからだ。

 

俺が爺様にこの学園で掴みとってくるように命じられたのは――――――、

 

 

――――――最初に、“世界で唯一ISを扱える男性”であることによる唯一無二の人脈の構成。

 

 

これは言うまでもないだろう。間違いなくこれは俺だけの財産となる。

 

ただし、財閥の御曹司であることは公言せずに、“織斑 千冬の弟”であることを前面に押す。

 

元々 知っているならそれでいいが、金や地位が絡んでくると たちまち人というものは信頼できなくなる。

 

信頼できないやつかどうかは、金になる木を見た時の反応で判断できる。

 

だから、俺は一人ひとりにある判断機会を逃したくないので公言しない。学園の教員たちにも緘口令が敷かれている。

 

爺様はIS学園の高級スポンサーなので、俺に対して粗相を働くものならIS学園の存続の危機に直面するので、学園側が口外することはまずないだろう。

 

 

――――――次に、IS産業が抱えている矛盾や欺瞞を知ること。

 

 

ISはアラスカ条約によって軍事利用は禁止されており、もっぱら競技用に利用されている。

 

しかし、その実、ISの大多数を運用しているのは世界各国の軍であり、

 

大きな戦争こそ起きていないからこそいいが、ISの実戦配備は着々と進められている。

 

ISという従来の兵器を駆逐した最強兵器に直に携わって、将来起こりうる戦争の在り方などを学べということである。

 

 

――――――最後に、財閥次期総帥として学園生活を最高に盛り上げること。

 

 

言うなれば、ノルマである。俺の次期総帥としての手腕が問われている。

 

手段は問われていない。場合によっては、爺様の力――――財閥からの支援を受けてもいい。

 

とにかく次期総帥としての才覚の片鱗を見せつけないといけない。実績を出すのだ。

 

IS学園の欠点を補強してもいいし、“世界で唯一ISを扱える男性”としての伝説を残してもよし。

 

在籍している間に学園内外のより多くの人心を掴むのだ!

 

 

 

そして、俺とIS学園の接点は 去年のオープンハイスクールの時のこと――――――。

 

第一線を退いてIS学園の教員として勤めている千冬姉を労うために訪れた時のことである。

 

今の状況と同じように 俺以外に女性しかいない見学客の中に紛れて いろんな視線を浴びながら、

 

千冬姉たちの仕事振りを実際に見聞きして一日をIS学園の見学に費やし、もう二度と来ることもないだろう 学園に来た記念としてISに触れた時だった。

 

 

一夏『…………あ、あれ?』

 

千冬『こ、これは――――――!?』

 

山田『お、織斑先生!?』

 

千冬『――――――緘口令を敷く! 幸いオープンハイスクールも終了間近で、私たちしか人がいない』

 

千冬『一夏、すまないが、本当にISを動かせたとしたのなら――――――』

 

一夏『あ、ああ……わかったよ、千冬姉』

 

一夏『まさか、このままIS学園に入学なんてさせられないよな……?』

 

 

こうして俺はIS適性:Aランク(本作オリジナル要素)の優秀な素質が判明し、爺様と学園側との間の半年に渡る討議の末にIS学園の入学が決定したのである。

 

本来ならば 俺は財閥の跡取り息子として社交界の登竜門となる名門校に入れられており、こうして貴賎が交わる場所に降り立つこともなかったことだろう。

 

ちなみに、俺が“世界で唯一ISを扱える男性”と公表されたのは、つい最近である。

 

それと同時に、爺様の財閥の株価や日本円の為替相場が急上昇し、世界中で連日のように俺のことがニュースで取り上げられるようになった。

 

記者会見もしたのにインタビューで同じ内容のことを何十回言わされたことか…………

 

とにかく、俺はそういった経緯もあって 経済的な側面から見ても 俺自身の存在の大きさを自覚することとなる。

 

 

けど、俺が爺様の養子となった時と同じく、この編入に対して完全に納得できたわけではなかった。

 

こうやって俺の意思を無視して環境を変えられるのはこれで2度目である。

 

いくら貴重な体験とは言え、同性の仲間が居ないのも少しばかりきつい。

 

また、俺はセレブの世界に来てわずか数年とはいえ、その感覚に慣らされて久しいので、庶民感覚の欠如が心配された。

 

とにかく、昔の感覚を掴みつつ爺様の子と恥ずかしくない振る舞いをしないといけないという、

 

相反するような要求に対する不安と葛藤があったので自分の立居振舞には気を遣いっぱなしだった…………

 

 


 

 

一夏「久しぶり、篠ノ之箒。6年振りだな。すぐにわかったよ」

 

一夏「中体連剣道女子の部、優勝おめでとう」ニコニコ

 

箒「…………ああ、ありがとう」オドオド

 

一夏「物怖じせずに、さあ! ここを逃したら、きっと満足に喋る機会を失うぞ!」

 

一夏「わかっているだろうけれど、俺もお前も昔とは変わったからな……」

 

一夏「箒と同じように俺もIS絡みでな……」

 

一夏「――――――重要人物保護プログラム」

 

箒「……知っていたのか」

 

一夏「情報っていうのは偉いやつの許に流れてくるものさ」

 

一夏「最初の文明が築かれた場所に大河が流れているように……」

 

箒「そ、そうなのか……?」

 

一夏「――――――辛かったろう?」

 

箒「え……」

 

一夏「俺、爺様のところの養子にならなかったら、箒がどんな思いで毎日を生きているのか考えることもなかった」

 

一夏「何故 突然 引っ越してしまったのか、その理由も知らずに…………」

 

一夏「ここでは“篠ノ之 箒”でいられるんだろう? “篠ノ之 箒ではない別な誰か”を演じる必要もない――――――」

 

一夏「ここで出会えたのは奇跡だ! 不謹慎かもしれないけど、分かり合える仲、だからさ――――――」

 

一夏「だから、昔のような付き合いをお願いしたいんだ」

 

一夏「俺は剣道は辞めたけど、居合術は辞めずに磨いてきたんだ」

 

一夏「中体連ナンバーワンの箒が稽古の相手をしてくれると助かる」

 

箒「…………い、一夏」

 

一夏「ほら、約束してくれ」

 

一夏「押しが弱いと損をするよ。社交界ってそういうところだから」

 

箒「あ、ああ! これからよろしく頼む、一夏!」ガシッ

 

一夏「これで昔のように――――――とはいかないところもあるけれど、頑張っていこうぜ」

 

一夏「できる限りを尽くすよ」ニコッ

 

箒「……ありがとう、一夏」

 

箒「本当に変わった…………昔以上に頼もしくなった」

 

箒「また会えてよかった……本当に……(だが、少し…………)」ニコー

 

 


 

 

一夏「今日は、挨拶回りしながら生活をする上での改善点を確認していこう」ブツブツ

 

一夏「あとはアリーナやグラウンドを見て回らないとな(オープンハイスクール以来だから、あんまり覚えていないし)」ブツブツ

 

セシリア「ちょっとよろしくて」

 

一夏「はい。イギリス代表候補生のセシリア・オルコットさん」ビシッ

 

セシリア「まあ、今ので日本の紳士というのを少し見直しましたわ」

 

一夏「それは光栄です」

 

セシリア「あら、本当に礼儀作法をわかっておりますのね」

 

一夏「代表候補生であるあなたには敬意を払うのが当然かと。あなたのような人をエリートっていうのかな?」

 

セシリア「そう、私はエリートなのですわ! 本来ならば、私のようなエリートと同じクラスになっただけでも奇跡! そう、幸運なのよ!」

 

セシリア「あなたはその現実をよく理解していらっしゃいますわね」

 

一夏「(あ、こいつ、悪い見本だな。ちょうどよく居てよかった。この人を反面教師にして、大局的な立ち位置になれば上手くいくな)」

 

一夏「(というか、ただの代表候補生なんかよりも()()()()()()()()()()()()()だという事実に気づかない辺りがね――――――)」

 

一夏「さすが、入試首席で唯一試験官を倒したエリート中のエリートですね」

 

セシリア「そうですわ! 私はエリート中のエリートですわ!」

 

一夏「(まあ、黙っておくか。専用機持ちと乗りたての初心者を比べてそんなに嬉しいか?)」

 

一夏「(しかし、女尊男卑ってのはあんまり社交界だと感じなかったけど、)」

 

一夏「(何というか世間一般には浸透しているって言うのが如実に感じられる一幕だったな)」

 

一夏「(けど、それ以上にさ? ――――――この人、おだてられたら何でもしちゃいそうだよな)」

 

一夏「(……探りを入れてみるか。代表候補生との繋がりを得れば俺の影響力は増すし、この人は磨けば人を惹きつけるだけの華やかはあるだろうからね)」

 

一夏「自信に満ち溢れていて眩ゆい限りですね」

 

セシリア「そういうあなたも紳士としての堂々とした態度がいいですわね」

 

一夏「私も気に入っています」

 

セシリア「ふふふ、あなたとは仲良くできそうですわ」

 

一夏「はい。そう信じていただけるなら、きっとそうなることでしょう」ニコニコ

 

 


 

 

一夏「よし、初日はシミュレート通りの完璧な結果になったな」

 

一夏「元々 純粋な好奇心と好意が働いていたことだし、思った以上に感じが良かったぞ」

 

一夏「さて、あとは俺の部屋の確認と、食堂とトイレだな」

 

一夏「この部屋だな(――――――あれ、何で開いているんだ? 俺だけの部屋なのに)」ガチャ

 

 

箒「――――――い、一夏!?」ドキッ! ――――――湯上がり姿!

 

 

一夏「ん? 失礼しました」バタン

 

一夏「あれ、部屋を間違えたか? それとも、こっちの情報が間違っているのか?」

 

一夏「えっと、寮長に訊いたほうが早いか。たしか、1年の寮長は千冬姉だったな」

 

箒「ま、待ってくれ、一夏!」ガチャ

 

一夏「ん? ああ、やっぱり目の錯覚じゃない……(急いで応対するために 所々 (はだ)けているな……)」

 

箒「わ、私に用があったのだろう?」ワタワタ

 

一夏「こいつを見てくれ、箒。この割り当て、どう思う?」ピラッ・・・

 

箒「え……そ、そんな馬鹿な…………」

 

 

千冬「部屋の都合がつかず、自動的に割り振られてしまったようだな」

 

千冬「すまない。こちら側のミスだ」

 

箒「織斑先生……」

 

一夏「それじゃ、俺は帰っていいですか?」

 

千冬「……どこにだ?」

 

一夏「――――――実家に」

 

箒「え!?」

 

一夏「久々に実家で寝泊まりしたのは昨日と一昨日だけだったし……」

 

千冬「外泊は許可できん」

 

箒「そ、それじゃ、一夏は私と――――――!」

 

一夏「あ、それじゃあ、ここがいいな、――――――寮長室」

 

一夏「どうせ臨海学校の時とかの部屋割りで妥協する場面なんてくるんだからさ、家族水入らずってことでさ」

 

千冬「む、確かにそうかもしれないが、寮長としてはそれは承諾しかねる」

 

一夏「そんな堅いこと言わずに、ねえ? ねえ!」

 

箒「――――――い、一夏ッ!」

 

一夏「え、何?」

 

箒「わ、私が我慢すればいいだけの話だ。それでこの話は終わりだ」

 

一夏「……それでいいの? まあ、俺は箒となら()()()()()()()()()問題無いと思うけど」

 

箒「そ、そうか!(ん、『きちんとしておけば』――――――?)」

 

千冬「そうか。くれぐれも間違いは起こすなよ。そうなれば 二人の命は無いからな」

 

一夏「ああ、まったくだ。後で公式の謝罪文をいただきますよ?」

 

千冬「そうだな。至急用意させておこう」

 

箒「えっと、そこまでしなくてもいいのでは…………?」

 

一夏「何を言っているんだよ? しかたがないとはいえ、こんなことが世間に知れ渡ったらスキャンダルものだ」

 

一夏「ただでさえ、俺の入学には各方面からの賛否両論の板挟みになっているのに……」

 

一夏「それに相部屋が“篠ノ之 束の妹”だからな……」

 

一夏「ゴシップ記者の飯の種にさせるわけにはいかない」

 

一夏「こういうところははっきりさせておかないといけないのさ」

 

箒「あ…………(私は自分のことしか――――――)」

 

一夏「それがわかったら早く行こう」

 

一夏「私、織斑 一夏は篠ノ之 箒との一時的な同室を望む」

 

千冬「ああ、確かに聞き届けた」

 

千冬「さあ、篠ノ之、もう遠慮することはない」

 

箒「は、はい! 私も武士としての節度を似って――――――!」

 

一夏「相変わらず堅いな、箒は」クスッ

 

箒「なっ! それはお前がそうさせたのだろう!?」

 

一夏「さあ、部屋に行こう、俺のベストルームメイト」ニッコリ

 

箒「………………卑怯だぞ、一夏」ボソッ

 

一夏「ん? はっきり言わないとわからないぞ、箒?」

 

箒「何でもない! それよりも、これから一緒に過ごす以上は――――――!」ムスッ

 

千冬「とっとと戻れ、お前たち」

 

一夏「はい! おやすみなさい、寮長!」パシッ

 

箒「あ、おやすみなさい! ――――――って一夏、引っ張るなぁああ!」

 

千冬「ああ、おやすみ」

 

千冬「ふふ、根っこは変わっていないらしいな……」ヤレヤレ

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。