――――――クラス対抗戦まで残り数日
一夏「セシリアさん、もうすぐクラス対抗戦ですね」
セシリア「はい、今日もよろしくお願いしますわ、織斑 一夏」ニッコリ
女子「何ていうか……、セシリア、変わった?」ヒソヒソ
女子「そうよね。同じ専用機持ちだし、織斑くんと訓練しているうちに――――――」ヒソヒソ
女子「そうだ、2組のクラス代表が変更になったって聞いてる?」
女子「ああ、中国から来た何とかって言う転校生に替わったのよね」
一夏「転校生に替わった?(クラス代表の座ってそんな簡単に委譲できるのか?)」
セシリア「ふん。私の存在を今更ながら危ぶんでの転入かしら?」
一夏「この時期に転入できるほどの権限を持つとなると、――――――専用機持ちか」
一同「――――――!?」
セシリア「それは本当ですの、織斑 一夏!?」
一夏「たぶん、そうだと思います」
一夏「最近、中国で第3世代兵器搭載のISがロールアウトされたって聞いてますから、おそらくそれです」
鈴「――――――その通りよ!」
一同「――――――!?」
鈴「2組もクラス代表が専用機持ちになったの! そう簡単には優勝できないから!」
一夏「え、――――――鈴!? お前、鈴なのか!?」ガタッ
鈴「そうよ! 中国代表候補生:凰 鈴音! 今日は宣戦布告しに来たってわけ!」
セシリア「これはこれは、ご丁寧なご挨拶痛み入りますわ」
セシリア「私がクラス代表、イギリス代表候補生:セシリア・オルコットですわ」
セシリア「クラス対抗戦――――――どちらが強く、より優雅であるか、教えて差し上げますわ」
鈴「もちろん、私が上なのはわかりきっているけど?」
セシリア「うふふ、弱い犬ほどよく吠えると言うけれど、本当ですわね」
鈴「どういう意味よ?」イラッ
セシリア「自分が上だってわざわざ大きく見せようとするところなんか典型的ですもの」
鈴「その言葉、そっくりそのまま返してあげる!」プルプル
セシリア「あら、それができるかしらね?」ゴゴゴゴゴ
周囲「ナ、ナンカケンアクナフンイキ・・・」ザワザワ
――――――そこまでにしてください。
一同「――――――!?」
一夏「あなた方が代表候補生として 国家の威信を背負って ライバル意識を持つことは一向に構いません」
一夏「しかし、私たちは武力で以って相手を屈服させる軍人ではないのです」
一夏「ここではISドライバーとして、スポーツマンシップに則って健全な人間関係であることを求められています」
一夏「相手を挑発し、愚弄するような発言は互いに控えてください」
一夏「――――――以上です」
周囲「おおおお!」
鈴「………………」ポカーン
セシリア「………………」カオヲミアワセル
鈴「ま、まあ、ここは礼儀正しく去ることにするわ。それに、私には他にも用があるしね」
セシリア「そ、そうですわね。この場は改めて正々堂々試合で優劣を競うことにしますわ」
鈴「また後で来るからね、一夏! ふん」
一夏「よかった…………」ホッ
箒「一夏…………(それよりも、今のは誰なんだ? 随分親しそうだったではないか…………!)」ギリッ
千冬「ショートホームルームを始めるぞ。席に着け」
一夏「あいつが代表候補生…………」
千冬「おい、織斑」
一夏「あ、すみません」
――――――昼休み
鈴「あんた、ある日 突然 いなくなるだなんて どういうことよ!」
一夏「それは………………」
鈴「どれだけ心配したと思ってんよ、馬鹿!」
鈴「姉弟揃って家から居なくなっているし、何をしても連絡先には通じないし、いったい何があったって言うの!?」
一夏「(これはほとほと弱ったな。あれから一度も連絡を取っていなかったもんな……)」
一夏「(表向きは転校したことになっていたけど、唐突の不自然な転校じゃこうもなるよ……)」
一夏「(そして、昔のことを忘れてしまうぐらいの社交界の洗礼に耐える日々…………)」
一夏「(つい先日も、生身の軍事演習に参加させられたし…………)」ハア
一夏「ごめん……答えらない……」
一夏「でも、今は帰ってきているんだ。そういうことにしてくれないか、鈴……」
鈴「…………そうなんだ」
一夏「ごめん、心配かけて…………俺も近々会いに行こうとは思っていたんだ」
鈴「そうだったんだ。うん、忘れてなければそれでいいの、それで」
一夏「ありがとう。そういうところ、凄く助かる(…………本当に)」ニコッ
鈴「か、感謝しなさいよね、馬鹿」カア
鈴「で、でも、まさか、“千冬さんの弟”のあんたまでISが動かせるだなんて驚いたわ」
一夏「俺だって、そのまさかで、こんなところに入るとは思わなかったからな」
鈴「入試の時にISを動かしちゃったんだって?」
一夏「なんでって言われてもな……(もちろん、これも偽装工作。俺は夏のオープンハイスクールで動かしていた)」
箒「一夏! そろそろ、説明して欲しいんだが……!(これ以上は見てられない)」バン
セシリア「いったいどのような関係が……」ジー
鈴「ちょっと、何? 今、一夏は私と話をしているんだけど」
一夏「落ち着いてくれ。二人共、どちらも俺――――私の幼馴染だよ」
箒「幼馴染……?」
一夏「そうか。ちょうど箒さんとは入れ違いに転校してきたんだっけな」
一夏「篠ノ之 箒さん。いつか話した、ファースト幼馴染だ」
一夏「それで、鈴さんはセカンド幼馴染だ」
箒「ファースト……」テレテレ
鈴「へえ、初めまして。これからよろしくね」
箒「ああ。こちらこそ」
セシリア「幼馴染……」ジー
一夏「(ああ、これは友達同士に、ならないか…………?)」
一夏「(う~ん、それと、セシリアがジーっとこっちを見ているな。俺に興味を持ち始めたというところか)」
一夏「(それはありがたいことなんだけど、悩みの種が増えたな…………)」ハア
――――――放課後
一夏「何、怒っているんだ、箒!?」ガキーン
箒「うるさい!」ガキーン
一夏「――――――冷静になれ!」
箒「――――――な!?」
一夏は箒と生で試合をした時に見せた巻き技で、箒の『打鉄』の太刀を再び巻き取ってみせた。
巻き上げられた『打鉄』の太刀が宙を舞って音を立てて大地に置かれた。
一夏「大丈夫なのか? いや、――――――話してくれ! そうじゃないと俺はどうすればいいのかわからない!」
箒「――――――っ!?」イラッ
箒「…………最近、セシリアとも仲が良いようだな」
一夏「それはそうだろう? 最初からそのつもりだったんだし」
箒「それなのに、また女をたらしこんで…………」
箒「――――――弛んでるぞ!」
一夏「……鈴のことか」
一夏「…………俺は中学のある時を境にセレブの世界に行くことになったんだ。それまでの全てをバッサリ捨てて、な」
一夏「鈴はただ単に俺のことを心配してくれていただけだ」
一夏「俺はそういう意味では誠意を見せないといけないな…………」ハア
箒「あ、すまない……(なんで私はこんなふうにしか振る舞えないんだ……)」
箒「(一夏がモテるのはこの学園ではほぼ当たり前のようなことだと言うのに……)」
セシリア「遅れましたわ、一夏さん」
一夏「セシリアさんか」
箒「む…………」イラッ
セシリア「箒さんもごきげんよう」ドヤッ
セシリア「さあ、織斑一夏。私のお相手をお願いしますわ」
一夏「わかりました(まだエネルギーは十分だな)」
箒「ま、待ってくれ、一夏! もう一度、手合わせしてくれ」ジャキ
一夏「――――――何!?(ちょっと待て…………!?)」
箒「さあ、かかってこい、一夏!」
セシリア「さあ、織斑 一夏! 来なさい!」
一夏「な、え……!?(『ブルー・ティアーズ』と『打鉄』のタッグだと!?)」キョロキョロ
一夏「(接近戦では『打鉄』に圧され、そこを一方的に『ブルー・ティアーズ』に狙撃されてしまうではないか!)」
一夏「(――――――何だ この、黄金タッグは!?)」
一夏「(え? なんで俺がこんなのと戦わないといけないの?)」
箒「一夏」ゴゴゴゴゴ
セシリア「織斑 一夏」ゴゴゴゴゴ
一夏「(――――――な、何だ このプレッシャーは!?)」
一夏「ああ……、やれるだけやってみるかな……?(
――――――訓練後
一夏「まったくひどい目に遭った……」
鈴「おつかれ、一夏。はい」
一夏「ずっと待っていてくれたのか」
鈴「まあね」
鈴「……やっと“二人っきり”だね」モジモジ
一夏「え?(そのフレーズ、俺も使ったことがある。ってことは――――――え!?)」
鈴「一夏さ、やっぱ 私がいないと寂しかった?」
一夏「そうだな――――――っ!?」ドクン
その瞬間、『あの日』の一夏の悲壮な決意と何もかもが変わってしまった当惑の日々が思い出された。
一夏「――――――ああ、そうだな」ウツムク
鈴「あ……」
一夏「……ごめんよ。いなくなるならせめて、別れの挨拶ぐらいしておけばよかった…………」
一夏「中学のみんな 元気にしているかな……」
鈴「…………ごめん。そういうつもりじゃなかったのよ!」アセアセ
鈴「ただ、一夏が変わっていないかなって確かめたかっただけで――――――」
一夏「なあ、鈴?」
鈴「な、何?」
一夏「クラス対抗戦が終わったら、みんなに会いに行こう」
鈴「そ、そうね。私もあれからどうなったのか気になっているし。――――――特に五反田兄妹がね」
一夏「ああ。本当にな……(箒と同部屋であることはしばらくは隠しておこう)」
鈴「(本当は、昔のことを覚えてくれているか聞き出そうと思っていたけど、触れないでおこう)」
鈴「(それと、二人っきりの時は砕けた口調なのはいいけど、人前の口調――――すごく違和感あってね……)」
――――――クラス対抗戦 当日
一夏「再来週なんていうのもあっという間だな」
一夏「光陰矢の如し――――――『あの日』のことも昔のことのようだ」
セシリア「こちらの準備はよくってよ?」
一夏「セシリアさん。相手は『白式』と同じ近接格闘型の分類ですけど、確実に中距離用の射撃武器を持っているはずです」
一夏「十分に距離を取って戦ってください。『ブルー・ティアーズ』のオールレンジ攻撃の使い方が勝敗を分けますよ」
セシリア「はい。あなたや箒さんとの経験を活かして勝利を掴み取って見せますわ」
一夏「それでは、健闘を祈ります」
セシリア「はい!」
アナウンス「両者、規定の位置についてください」
セシリア「では、参ります!」
一夏「これはわからないな。ただ言えることは、長期戦になればセシリアが不利になっていく――――――」
一夏「先に得意レンジに入った方が勝ちだ。開始直後の中距離戦闘が勝敗を分けるはずだ」
一夏「それだけに――――――」ゴクリ
箒「一夏、客席に行くぞ」
一夏「ここでいい、箒」
鈴「来たわね。この前 言ったこと憶えているわよね?」
セシリア「はい。――――――弱い犬ほどよく吠える、と」ニコー
鈴「言ったわね」ムカッ
鈴「あの時は一夏の顔に免じて見逃してやったけど、容赦はしないわよ!」
セシリア「そういうところが弱い犬らしいとお気づきにならないのかしら」クスッ
鈴「……そうね。口で言ってもわからないなら、身体に叩き込んであげるわ」
鈴「それがあんたのことだってね!」
――――――
アナウンス「試合開始」
――――――
試合は近距離型と遠距離型の熾烈な距離の奪い合いになっていた。
近距離型の『甲龍』が近づこうとすれば、遠距離型の『ブルー・ティアーズ』は離脱しようとする。
『甲龍』が予想通り積んでいた第3世代兵器の衝撃砲『龍咆』による射角が無限の見えない砲撃を浴びせようとすれば、
負けじと機体と同名の第3世代兵器である『ブルー・ティアーズ』によるオールレンジ攻撃で牽制する。
それぞれの国が威信をかけて搭載した第3世代兵器の正面対決が火花を散らして白熱していた。
しかし、試合は膠着するに従って、ここで機体の特性による差が大きく出始めることになった。
圧されてきたのは、セシリアの『ブルー・ティアーズ』だった。
徐々に『ブルー・ティアーズ』のオールレンジ攻撃の精度が落ちていき、セシリアの表情に焦燥が見え始めていた。
それは第3世代型ISの特徴的な弱点の現れだった。
第3世代型ISは第3世代兵器と呼ばれるイメージ・インターフェイスを利用した 直接 脳波で自在に操作できる兵器を積んでいる。
しかし、基本的にISはシールドエネルギーによって一括で動作するのだが、第3世代兵器を動作させるためにエネルギー効率がかなり悪かった。
更に、ISは脳波コントロールなのでイメージ・インターフェイスによる脳波コントロールと被っているので、
使い分けるために 機体制御を放棄して 第3世代兵器の運用に意識を集中しなければならないという共通の欠点があった。
特に、第3世代兵器の操作自由度が高ければ高いほど機体制御は大きく失われ、棒立ちになって隙を晒すことになった。
さて、今回の戦いの場合、射角が無限の『龍咆』とオールレンジ攻撃の『ブルー・ティアーズ』――――――、
いったいどちらがより集中力を必要とし、隙が大きいかと言えば、
当然、4基のレーザータイプと2基のミサイルタイプもあってISとは別に独自に行動できる『ブルー・ティアーズ』である。
更に、鈴の『甲龍』は同じ第3世代型ISでも燃費と安定性を重視した特異的な設計なので、長期戦になればなるほどセシリアの『ブルー・ティアーズ』は追い込まれていくことになる。
また、後ろに下がることは前進することよりも難しいために、セシリアが距離を取ろうと離脱しようと思えば離脱先を考えないといけないという苦労もあった。
鈴は追う側なので相手を追いかけるだけでいいので、そこまで負担にはならなかった。
昔から相手から大きく距離を取るための後退は前進するよりも遥かに難しいとされており、撤退戦の名手はそれだけで戦上手と言われた。
織斑 一夏が見るに、この戦いの対戦ダイアグラムは4対6。基本的にセシリアが不利だが、どちらも十分に勝機がある戦いであった。
ISはパワードスーツ――――つまり、身体の動きが直接動作する類の兵器である。
そして、ISは起動から基本動作全てを脳波コントロールしているので、疲れて一瞬でも気が緩めば負けなのである。
一夏「試合時間は8分を超えたか」
一夏「中学剣道の試合で3分、高校生以上は4分。延長戦は3分だから、少なくとも延長戦2回は入っているぐらいだな」
一夏「やっぱり、機体特性の差が出てきたな……」
箒「セシリア、頑張れ…………」
一夏「だが、鈴の方も疲れている。一瞬の気の緩みが勝敗を分ける。まだまだ勝負はわからない」
一夏「もし、俺が二人とそれぞれ戦うことになったら――――――まあいい」
一夏「何にせよ、専用機持ちの真剣勝負は代表候補生のプライドを賭けた戦いだ」
一夏「終わったら、どっちもしっかりと労ってやらないとな」
箒「――――――一夏?! これは!?」
一夏「…………そろそろ決まるか」
そして、試合は互いの死力を尽くした運命の交差点へとついに進んだ。
セシリアの『ブルー・ティアーズ』に鈴の『甲龍』の衝撃砲『龍咆』が直撃し、
吹き飛ばされたものの、セシリアは不退転の意思でレーザーライフルを構えたのだ。
そして、それに飛び込み、得意の接近戦で一気に勝負を決めようとする鈴の『甲龍』!
次の瞬間には、どちらかが勝者となり敗者となる。そんな一瞬が――――――。
だが、その時――――――!
セシリア「――――――!?」
鈴「――――――!?」
――――――
一同「――――――!?」
――――――
一筋の巨大な光の柱がアリーナの天井を突き破り、アリーナの大地を焼き払ったのだ!
――――――
千冬「試合中止! オルコット、凰、直ちに退避しろ!」
――――――
観衆「キャアアアアアア!」
――――――
一夏「映像が途切れた!?」
箒「一夏、避難勧告が出たようだぞ!」
一夏「………………」
箒「…………一夏?」
――――――
セシリア「ようやく、距離を取れたと思いましたのに……」
鈴「ようやく、体勢を崩せたのに……」
セシリア「いったい何が起きましたの!? グラウンドが火の海に…………」
鈴「わからないわよ! とにかくすぐにピットに戻るわよ」
セシリア「そうですわね――――――は、アラート!?」
セシリア「な、何ですの、この『所属不明のIS』というのは!?」
鈴「私も捕捉されたわ! ――――――何? 何なのよ!」
鈴「こんな異常事態、すぐに学園の先生たちが駆けつけて事態を収拾してくれるはず……!」
セシリア「――――――砲撃、いきましたわよ!」
鈴「くっ!」
セシリア「BT兵器のレーザーを軽く上回る戦略級レーザー!?」
セシリア「そんなものが実装されているだなんて、それでは私の機体の存在意義が――――――」
鈴「何あれ? ――――――フルスキンのIS?」
――――――
山田「オルコットさん、凰さん! すぐにアリーナから脱出してください!」
山田「すぐに先生たちがISで制圧にいきます!」
――――――
セシリア「しかし、そんな悠長なことを言っていられませんわよ!」
鈴「来た! く、あれだけの出力のレーザーを雨のようにバラ撒くだなんて!」
鈴「先生たちはまだ来ないの!?」
セシリア「ああ……、エネルギーがもうすぐそこを尽きますわ!」
謎のIS「――――――」グッ
セシリア「…………はっ!?」ゾクッ
――――――不覚! 一生の不覚!
その時、セシリアは死を覚悟した。目の前には謎の黒尽くめのフルスキンのISが立ちはだかり、視界いっぱいいっぱいのパンチが飛び込む!
鈴の『甲龍』の『龍咆』がある程度直撃していたが、そんなものをもろともせずに押し迫る巨大な魔の手!
セシリア「きゃああああ!」
鈴「倒れなさいよおおおおおお!」
謎のIS「――――――」
恐怖のあまりに縮こまるセシリア! だが、次の瞬間――――――!
――――――俺は関わる人、全てを守る!
鈴「え」
セシリア「……あ、あら? 攻撃は――――――?(そして、今の声は――――――)」
謎のIS「――――――!?」
――――――声が聞こえた。
まさに一瞬の出来事だった。
セシリアがとりあえず助かったと理解した時には、目の前には背を向ける白い機体がそこに居て、黒いISの両腕がなくなっていたのである。
見覚えのある白い機体が握る太刀には光の刃が発生しており、今まさに自分の命を脅かした強大な悪の権化たる黒いISを一刀両断にするところであった。
何が起きたのか、目の前で起きたことが信じらなかったセシリアが鈴の方を見ると、鈴の方も同じような反応だった。
そして、白い機体は黒い機体の胸に光の刃を突き刺し、そのまま燃え盛るグラウンドの炎の中へと消えていったのだ。
セシリア「お、――――――織斑 一夏! 織斑 一夏!?」
鈴「一夏、応答して! ねえ!」
セシリア「こちらもダメですわ。あちらから通信を切っておりますわ」
鈴「これじゃ、どうなったのかわからないじゃない!」
セシリア「互いにエネルギー残量は残りわずか…………(ああ、織斑 一夏――――――!)」
一夏「うううおおおおおおおおおお!」
謎のIS「!!??………… 」
一夏「………………ふぅ」
一夏「――――――機能停止を確認!」
一夏「セシリア・オルコット、凰 鈴音――――両名の無事を確認!」
一夏「他の人命の損失も無し!」
一夏「やったよ、千冬姉……!」
一夏「――――――俺は守ることができたんだ」
鈴「ねえ、見て!」
セシリア「あれは――――――!」
――――――
山田「二人共、大丈夫でしたか!? 今、アリーナの機能が回復して、教師部隊が突入します!」
――――――
鈴「今更 来られてもねぇ…………」ハア
セシリア「あ…………」
煙の中から煌めく、青白さをまとった光の刃が天を向く。
それは全てが終わったことを表したサインだった。
そして、教師部隊が今更ながら到着したのを見て取ると、セシリアと鈴はホッと息を吐いたのだった。
しかし、次の瞬間には青筋の光の正体は煙が晴れていくのと同様に姿を消していた。
――――――その夜
一夏「ふぅ、今日は二人の命を救えて万々歳だ」
一夏「他にもアリーナに居た全員が脅威に晒されたんだから、ISドライバーとしての実績は十分すぎるぐらいだな」
千冬「ああ、お前はよくやってくれた」
千冬「しかし、教師部隊に隠れて あの場を去る必要はなかったんじゃないか?」
一夏「…………そのことなんだけどさ」
一夏「俺の勘だけど、あの二人は俺に好意を抱いている気がするんだ」
千冬「………………それで?」ヤレヤレ
一夏「あそこで命の恩人として印象付けたら、きっと 一生 俺についてきてしまいそうな気がして――――――」
一夏「俺はたしかに“特別”だし、憧れを持って近づいてくるのは別に構わないけど……」
一夏「でも、住む世界や見えてるものが全く違うんだよ、俺とあの二人とでは――――――いや、みんなと」
一夏「社交界の洗礼を受けたからわかるけれど、あの世界は今回の襲撃事件以上に陰湿でしんどい世界だ」
千冬「………………」
一夏「ほら、これ。お見合いのリスト」
一夏「このリストを見るとわかるんだけど、その人の父親や一族の職業、年収なんかの欄が自己紹介よりも大きく載っていてさ」
一夏「これを見る度に、俺と千冬姉を捨てた顔も知らない両親への言い知れない衝動が湧き上がっていってね……」
一夏「それに、セシリアは両親が死んだ後、一族で財産の奪い合いを経験しているし、」
一夏「鈴の場合は、日本から離れた理由が離婚なんだって」
――――――嫌になるよ。男と女の関係っていうのが。
一夏「そんなのよりは、より多くの人々を守る役割がいいな。千冬姉や爺様がそうであるように」
千冬「そうか」
一夏「まあ、爺様からは結婚――――というよりは『孫の顔を見せろ』って言われてはいるんだけどさ。俺がその孫なんだよ。養子になっているわけだけど」
一夏「…………」フゥ
一夏「さて、あの無人のISはやっぱり――――――」
千冬「ああ、国際IS委員会が管理している絶対数:467のコアのどれでもないものだった」
一夏「篠ノ之博士が新しく開発したのか、それとも第三者が新造したのか――――――これからどうなるんだろうな、千冬姉?」
一夏「今更ながら、俺はとんでもない世界に来ちゃったな……」
千冬「…………そうだな」
セシリア「あの時 聞こえたあの声は間違いなく……」
――――――俺は関わる人、全てを守る!
セシリア「そして、あんなにも『白式』の背中が雄々しく見えたのは、やはり私は――――――」
セシリア「そう、あの方はいつもいつも毅然としていて、それでいてそつがなくて――――――」
セシリア「きっと、私はあの方に――――いえ、私はもうあの方の――――――」
セシリア「…………織斑 一夏」
セシリア「私は――――――」