――――――地下シェルター
SP1「これで地上の状況がわからなくなってしまった」
SP2「あとは、“アビス”の最深部で追手に備えて鎮圧が終わることを祈るだけだ」
一夏「その“アビス”の最深部までどれくらい掛かるんだ、爺様?」
爺様「そうだな。迷路状になっているから、早くて20分ぐらい掛かるな」
一夏「そんなに?!」
SP1「ここは侵入者撃退も意図されているから それぐらいは当然」
SP2「けど、こんな空洞があの高層ビルの下にあるっていうのも不思議なもんだな」
一夏「待って。エレベーターが動いてる」
爺様「どうやら、すぐに追手が来たようだな」
SP1「若様、『白式』で会長を運んで少しでも早く最深部に到着して地上との連絡を!」
SP2「俺たちはこういうふうに用意されている武器や罠でできる限りのことをしておくから安心してくれ。迷路も把握してる」ジャキ
一夏「ご無事で! あなた方も俺が守るべき『関わる人全て』なのだから!」
SP1「ありがたきお言葉、痛み入る……!」
SP2「死なねえよ! それで、会長が引退したら今度は若様を付きっ切りで守ってやるから!」
一夏「その言葉、忘れるな!」
爺様「ではな」
SP1「はい」
SP2「会長もお元気で!」
一夏「(俺は、二人を笑顔で送り出すことしかできなかった……)」
一夏「(おそらく二人は死を覚悟していたと俺は思う。相当数のテロリストを屠ってきたが、まだその規模は把握していなかった)」
一夏「(そして、テロリストたちの目的も不明である)」
一夏「(もしかしたら、爺様ではなく、財閥そのもの――――いや、金持ちに対しての積年の恨みで動いていたのかもしれない)」
一夏「(そういうことから、ビル全体を爆破するという可能性もあったのだ。莫大な損害を与え、社会的信頼を失墜させるつもりなら十分ありえた)」
爺様「待てぃ! それ以上、進むな!」
一夏「しまった!? レーザーネット!?(――――――あそこに安全地帯!)」
一夏「――――――間に合え!」
一夏「くそ、爺様を安全地帯に避難させられたけど、まともに食らってエネルギーが3割もない!」
一夏「すまない、会長…………俺はあなたのことを――――――」
爺様「過ぎたことを悔やむな。ともかく、後もう少しで到着なのだから もう少しゆとりを持って進んで行け」
一夏「………………」ブルブル
爺様「教えたはずだ。後悔するということは時間を無駄に浪費し、自己陶酔と自己正当化に繋がる現実逃避でしかないと」
爺様「結果を出さなければならない立場にある人間に後悔することは許されない!」
一夏「――――――わかってる! 上に立つ者はみんなを導かないといけないから!」
爺様「………………相当追い詰められているな」
爺様「さて、織斑 一夏ぁ?」ピッピッピ
一夏「何、会長? このハッチが開くまで小話?」
爺様「ロバート・A・ハインラインの『宇宙の戦士』を知っているか? 1959年発表だがな」
一夏「何ですか、こんな時に……?」
爺様「原題、そして映画化された時のタイトルは『スターシップ・トゥルーパーズ』だ」
爺様「しかし、小説と映画では大きな違いがあった」
一夏「はあ……(そういえば、爺様はそれを観ていたな……)」
爺様「――――――パワードスーツの有無だよ」
一夏「パワードスーツ?(こんな時に何が言いたいんだ、爺様は?)」
爺様「パワードスーツの登場するSFの原点とも呼べる代物に、80年代の若造どもは心躍らせた」
爺様「そして、その熱意を受けてアメリカ軍でもパワードスーツの開発が行われていたが――――――」
一夏「そんなことは世界中の人間が知っている! 結局、実用的なものは開発できずに、」
一夏「日本の天才科学者:篠ノ之 束によって、IS〈インフィニット・ストラトス〉という空戦用パワードスーツが実現されましたよ」
爺様「ああ、そうだ」
爺様「だがぁ、それだけでパワードスーツの開発史が終わると思うかね?」
一夏「………………は?(爺様は無駄話は一切しない。そうなれば――――――!?)」
一夏「何を言っているんです!? それじゃ、まるでこのハッチの向こうに――――――」
爺様「そうだ。ワンオフ機の実用的なパワードスーツがある!」
一夏「――――――っ!?」
一夏「爺様は何を考えている?!」
一夏「ISの導入によって阿鼻叫喚を巻き起こして崩れ去った男と女のミリタリーバランスがようやく安定してきたっていうのに、」
一夏「爺様は『白騎士事件』のようにまた――――――!」
爺様「安心しろ。ISのシールドエネルギーとのハイブリッドエンジンだ」
爺様「つまり、IS適合者でなければ動かん」
爺様「お前はこれを使って二人の応援に向かえ。迷路の地図データもちゃんと入っている」
一夏「俺に本当の人殺しをやれというんですか……?」ゴクリ
爺様「大丈夫だ。武装は全て硬質ゴムや催涙弾だ」
一夏「見たところ、胸部以外の大部分が露出するように見えますが? フルアーマーですらないじゃないですか! ISの絶対防御なんて無いんですよ!?」
爺様「ハイブリッドだと言っただろう?」
一夏「ハイブリッドだから――――――?」
爺様「このパワードスーツは空戦用のISとは違って、地べたを駆け回るしかできない陸戦用だが、ISを通してシールドエネルギーを供給することができる」
爺様「ISのような量子化そのものは実現できなかったが、その代わりにパワードスーツそのもののノウハウは着実に他の技術に応用されたというわけだ」
爺様「更に、IS用のパワーバッテリーも2基搭載されている。これをISのエネルギー充填に使うことも可能で、部分展開と出力調整次第でISのPICや量子化装備も問題なく使える」
爺様「名付けるならば、…………“FS”でいいか」
――――――FS〈フィニット・ストラトス〉だ。
一夏「こんなパチモン、本当に役に立つのか……?(ISをコアにしたフルアーマーパワードスーツ…………“
一夏「IS自体も物理法則なんてあったもんじゃない摩訶不思議兵器だけど、人型二足歩行兵器っていうのも非現実的な最も不安定な形だ」
一夏「“
一夏「なるほど、ISとの併用を前提にした兵器だから、装着の仕方もISの物理装着と全く同じか。お、解除の仕方はこうなっているのか…………」
一夏「あ、これは俺専用なのか…………『白式』の待機形態のガントレットを覆えるように非対称の腕の造りだ」
一夏「ガントレットじゃなかったら――――――いや、ネックレスやイヤーカフスの形は同期させるのが難しそうだし、これでいいのか」
一夏「で、このFSのコードネームは? 起動キーにしたい」
爺様「――――――『無銘』だ」
一夏「え?」
爺様「その機体はワンオフ機であり、そして 量産する気も公表する気もない」
爺様「それはどこにも所属していない、儂の趣味で創りあげた私物ということだ」
爺様「証拠に型式番号も割り当てられていない」
爺様「それ故に、――――――『無銘』だ」
爺様「この存在は噂の域をでない無色透明のような幻の機体ということだ」
爺様「いつだったかの“腐った卵の白身”のようにな」
一夏「………………」
爺様「安心しろ。この区画はこのメンテナンスルーム以外、外部への通信が遮断されている領域だ」
一夏「………………今日、俺が気紛れで来なかったらどうするつもりだったんです?」
爺様「さあな? 儂は お前がいたから ここに逃げてこれたのだ」
一夏「長生きするわけだ……」
一夏「――――――メインシステム起動、『白式』との同期完了、
一夏「シールド展開のテスト、――――――クリア!」
一夏「――――――『無銘』、発進する!」
キュイイイイイイイイイン! キュウウウウウウウウウン!
一夏「(武装は硬質ゴム弾のフルオートショットガン2丁と腰に帯びた催涙グレネードとショットシェルしかないシンプルな装備――――――)」
一夏「(――――――だからなのか、あまり重くない!)」
一夏「(これ、シールドエネルギーが無かったら相当アレなんじゃないのか? いくら携行火器しかないとはいえ、どうやったらこんな軽量化が…………)」
一夏「(ISより挙動は重たいけど、とんでもない足回りだ! どんなモーター積んでるんだ、これ!?)」
一夏「(それにISのシールドバリアーを前提にして脚部には装甲がほとんどないから、階段も少し重い程度に足を上げて上れる!)」
一夏「(これは間違いなくお呼び出しでの経験とデータが活きている! 念入りに俺と『白式』のデータを取っていたのはそのためか)」
一夏「(あとは、生かすも殺すも俺次第だ――――――!)」
キュイイイイイイイイン!
SP1「さすがにキツイな……」
SP2「隠れる場所が多いと言ってもここは地下で、無限に広がる外じゃないからな……」
SP1「何だ…………?」
キュイイイイイイイイン! キュウウウウウウウウウン!
SP2「“アビス”の奥からだぜ! これは間違いない――――――!」
「うわああああ!」「何だあれは?!」「――――――ISなのか?!」
SP1「どうやら、無事に最大戦力の補充ができたようだ」ジャキ
SP2「それじゃあ、反撃と洒落込みますか!」ジャキ
一夏「(さすが世界最強の兵器:IS〈インフィニット・ストラトス〉――――――)」
一夏「(――――――そして、そのISを動力として動くFS〈フィニット・ストラトス〉だ!)」
一夏「(バチモンだと馬鹿にしてたけど、高い完成度だ)」
一夏「(基本はローラー移動だけど、しっかりと足を付けて動くからISよりも動きが安定している)」
一夏「(そして、しっかりとシールドも機能している。特殊作戦用の取り回しを重視した武装なんかじゃシールドエネルギーの1%も削れないぞ!)」
「グレネードだ! グレネードで対処するんだ!」ポイポイ
一夏「そんなもの!(イグニッションブースト――――――うお!?)」
「何だ、あのパワードスーツは!?」
「ローラー移動したかと思ったら、ISのように宙を浮いて猛スピードで来たぞおおお!」
「逃げろおおおおお!」
「逃げるな! しっかりと盾を構えていれば――――――」
一夏「まとめて薙ぎ払う!(――――――回し蹴り!)」ドガシャ
「うわあああああああああ!」
「…………嘘だろう? 鋼鉄のシールドが粘土のように千切れ飛んだぞ?」
「『白式』以外にもあんな化物がいるなんて聞いてねえよ!」
「シールドバリアー、圧倒的機動性、そして破壊力――――――どうすればいいんだよ!」
「早く、エレベーターをおおおおおお!」
一夏「(どうだ! ISの絶対防御によって剛体化したパワードスーツの鋼鉄の足から繰り出されるこの回し蹴りの威力は――――――!)」
一夏「(さて、エレベーター前まで押し込めたが、一気にエレベーター前を占拠する!)」
一夏「(さすがに素手で殴りつけるのは骨が折れる。他に接近戦の武器は――――――スタンロッドがあった!)」
一夏「(イグニッションブースト!)」ビリリバチバチ
「うわあああああ!」「ぐあ!?」「のわああああ!」ドカバキバチチ
ドサッバタッ、シーーーーーン
一夏「よし、これで――――――」フゥ
SP1「よくやってくれた」パン、パン
SP2「後は一人ひとり、弾丸をプレゼントしてあげるだけだ」パン、パン
一夏「え」
SP1「その機体は“アビス”と共に封印されるべき代物だ。外部に漏れれば、新たな軍拡の火種になりかねない」
SP2「そういうこと。自衛に使うのは構わないけど、侵略するのに使われるのは御免こうむるってわけさ」
SP1「世の中には、知らないほうがいいこともある――――――それだけのこと」
一夏「……それはわかっている! だけど、だからと言って、殺す必要なんか――――――」
SP2「若様。残念だけど、こいつらはもう犯罪者なの。生かしておいたところで
SP2「ここで一思いに殺してやったほうがこの先苦しまずにすむんだから、慈悲ってもんだよ? ずっと苦しんできたんだしさ?」
一夏「そんなこと――――――」
SP1「この人たちが今日に至るまで苦しみ続け、我慢しきれずに凶行に走った哀れな存在だということには同情する」
SP1「しかし、同情はするが 愚かな選択をした以上 許す訳にはいかない」
SP2「まあ、さんざん人を殺してきた俺たちもいずれ裁きを受けることになるが、それでより多くを救えるなら…………!」
一夏「………………う」ピピピ
一夏「(む、何故 無線通信が? 専用の回線が『無銘』にはあったということか。さながら、ラビリントスのミノタウロスだな……)」ピッ
――――――
爺様「聞こえるか、一夏?」
――――――
一夏「会長。“アビス”に侵入した敵は全て、…………“射殺しました”」
――――――
爺様「…………そうか」
爺様「よく聞け。テロリストの多くは突入した部隊によって鎮圧された。一部取りこぼしたようだが、直に捕まることだろう」
――――――
一夏「そう…………」
――――――
爺様「しかし、どうやら地上部分を吹き飛ばすために爆弾を仕掛けていたらしい」
――――――
一夏「なんで こう悪い予想ばかり…………」
――――――
爺様「確認された爆弾は全てで5つだそうだ」
爺様「そのうち、エントランスや地下に仕掛けられていたものは解除された」
――――――
一夏「じゃあ、残された3つはどこに?」
――――――
爺様「この“アビス”専用のエレベーター地上口と、最上階付近に2つだ」
――――――
一夏「残り時間は?」
――――――
爺様「爆弾処理班の推測だと20分だ。おそらく爆発しても“アビス”は無事だろうが、脱出は困難となるだろうな」
――――――
一夏「わかった。解除に向かいます」ピッ
一夏「爆弾を仕掛けていたらしい。残り1つはエレベーター地上口にあって、2つは最上階付近にあるらしいから、エレベーターのは頼む!」
SP1「爆弾解体か。久々だな」
SP2「それじゃあ、こっちは会長の護衛とここの後片付けに回る。ついでに、その機体からエネルギーを補充しておけ。その機能、あったろ」
一夏「そうだった。では、――――――早い!?」
SP2「そりゃ、エネルギーパックを2個も積んでいるからな」
SP1「よし、エレベーターが到着した。急ぐぞ」
一夏「『無銘』解除――――――ありがとう」
一夏「さあ、行くぞ!」
一夏「くそ、長い長いエレベーターだった」
一夏「――――――残り時間は!?」
――――――
爺様「10分だ」
――――――
一夏「来い、『白式』! イグニッションブースト!」
SP1「ご武運を!」
一夏の『白式』は真っ先にビルの外に出るためにあらゆる障害物を突き飛ばして駆けていった。
防弾ガラスなど『零落白夜』の月光のように青く淡い光の剣でやすやすと切り裂き、
ビルの外に出ると再びイグニッションブーストの急発進で垂直に昇っていく。
外は雨はザーザーと激しい音を立てて降っていた。
一夏「くぅううううううう!」
――――――
爺様「爆弾があるのは儂の部屋と屋上のようだな」
――――――
一夏「うおおおおおおお!」
それは隕石のようにビルを突き破り、内装をメチャクチャにして、爆弾目掛けて突入する。
一夏「これが爆弾か!(…………どういうことだ? この程度の爆弾ではこのビルを倒壊させることなんて不可能だぞ!?)」
一夏「解体に後回しにして、最後の爆弾を!」
――――――
爺様「頼むぞ」
――――――
そして、爆弾を刺激しない程度に来た道を引き返す。
メチャクチャにして入ってきたのと対照的に比較的ゆったりと出て行ったために、己がどれだけの破壊をもたらしてしまったのかがよくわかってしまう。
一夏は目的のために必要とされる損害のことを考えて、つい溜め息を吐いてしまう。
だが、この程度で怯んではいられなかった。いや、怯んでいては全てを失うのだ。
何かを失うことは哀しくとも、全てを失うよりはこれまで通りを演じていた方が圧倒的に損害が少ないのだ。生きる希望は死なないのだ。
だから、一夏は今は止まらなかった。上に立つべき者は前に進むことしか許されない。
ザーザー
ゴロゴロ、
一夏「さて、屋上だが、――――――あれは何だ?」
一夏「爆弾らしきものを発見したが、明らかに普通の爆弾とは違う…………!」
一夏「――――――何だろう、かなり大きい?」
――――――
主任「聞こえますか、若様!」
――――――
一夏「主任ですか! 見えますか、あれが? まさかあれが本命?」
――――――
主任「落ち着いて よく聞いてください」
――――――
一夏「?」
――――――
――――――あれは戦略級核弾頭です。
――――――
一夏「何だって!!!?」
...ピカーン!
――――――
主任「実はある筋によると、最近フランスが所有する戦略級核弾頭が1基行方知れずとなったという話が――――――」
主任「そっちのチャチなおもちゃの方は空中に放り投げて処分すれば問題はないでしょうが、」
主任「戦略級核弾頭ともなれば――――いや、基本的に戦略級だとか言うのはミサイルの有効射程の話であって威力の大小ではなかった……」
――――――
一夏「威力のことなんかわかりきってますよ! 大都市1つが消し飛んで数え切れない人たちの生命や生活が失われる――――――!」
一夏「どうすればいいんですか!? とりあえず、こっちのはすぐ処分しますから!」ポイ、パン、パン、チュドーン
――――――
主任「ブラックボックスである以上は迂闊なことはさせられない…………」
――――――
一夏「爆弾っていうのは信管が作用しないと爆発しないんでしょう? だったら、爆弾と信管を分断できれば――――――!」
――――――
主任「やめるんだ! 核弾頭は放射性物質が充満している! 爆発はしなくとも致死レベルの放射線がバラ撒かれる恐れがある!」
――――――
一夏「なら、解体は諦めて外部入力を遮断して信管を無力化するしかないか」
――――――
主任「それしかない! だが、ブラックボックスではどうすればいいのか…………」
――――――
一夏「予想される残り時間は5分もない……」アセダラダラ
一夏「どうすればいい!? どうすれば…………?!」
一夏「あれ? ここの反応が出ていたってことはこれにも時限爆弾が――――――あった」
一夏「…………待てよ? 核弾頭に時限爆弾を括りつけて使うか、普通?」
一夏「となると、核弾頭を起爆させるだけの能力もなく、これは放射線漏れを狙っているのか?」
――――――
主任「たしかに、起爆用のプルトニウムの方が放射能としては強力だ。起爆させないほうが放射線被曝としての被害は甚大だ」
主任「そう、核融合反応を利用する水爆にしろ、基本は核分裂反応で起こす原爆の膨大なエネルギーが必要」
主任「とにかく、起爆剤となる一段目のプルトニウムの処理が問題であって、核融合物質や劣化ウランなんかは大した問題じゃない」
――――――
一夏「ISの絶対防御なら核弾頭に穴を開けるつもりの爆弾をまともに受けても、たとえ『白式』が大破しても最低限 俺は無事だろう」
――――――
主任「無理矢理 爆弾を引き剥がそうというのか!? それは至難の業だぞ! 微振動信管が備わっているはずだ!」
――――――
一夏「そう、失敗すれば核弾頭にヒビでも入ってプルトニウムが真っ先に俺の身体を蝕み、一帯は死の大地と化す――――――!」プルプル
一夏「なんで俺がいきなり世界を救うだなんていう責任を負わされているんだ!?」ポロポロ
一夏「俺が“世界で唯一ISを扱える男性”で、“ブリュンヒルデの弟”で、ざ……セレブの御曹司――――――誰が見ても勝ち組だからか!?」
一夏「それだけの業を背負うってことなのか…………!?」
一夏「千冬姉、みんな――――――!」
一夏は泣きべそをかきながらも己の使命に突き動かされて、核弾頭に取り付けられた触るべからずのチャチな爆弾を眺めた。
――――――ただ進むしかない!
それが何かをできる人間の特権でもあり、責任でもあった。
どんなに愚かな選択であろうと結末が変わらないのならば、より良い未来を信じて この一刀を振るうだけである。
切断するには明らかに大きすぎる雪片弐型を展開し、核弾頭を傷つけないように先端で切除するように慎重に距離を調整する。
周りには誰もいない、駆けつけても間に合わない、世間一般ではほとんどの人間が眠りに就いている今日と明日の境目――――――。
――――――生と死の境目。
ザーザーと降り注ぐ闇夜の雨が一夏の視界を奪い去るが、一夏の心に曇りはない。
残り時間は1分を切り、ついに関係各位一同が覚悟を決めることになった。
一夏「それじゃ、通信は切る。――――――また会えることを」
――――――
爺様「ああ。また会おうぞ」
SP1「どうか、ご無事で!」
SP2「会長が老いてから授かった命なんだ。早死したら許さないからな!」
主任「若様! 我々一同は“織斑 一夏”と『白式』を信じていてます!」
――――――
一夏「………………」ピッ
一夏「………………」フゥ
ゴロゴロ、
――――――9,
――――――8,
――――――7,
――――――6,
――――――5,
――――――4,
――――――3,
――――――2,
――――――1,
ピカーン!
一夏「――――――!(――――――逆袈裟斬り!)」ズバッ
一夏「…………!」
一夏「やった!(爆発よりも早く核弾頭から引き剥がすことができた! 後はこいつを遠くに――――――)」ピカッ
チュドーン!
一夏「ぐわああああああああ!(やはり、微振動信管が入っていた…………!)」
一夏「かはっ……(――――――だが、何だこの威力は!? 威力が段違いじゃないか!?)」
一夏「…………落ちていく(…………失敗したのか)」
一夏「………………すまない、みんな(俺は何も――――――)」
ザーザー
ゴロゴロ、......ピカーン!