現代ダンジョンで魔法少女になったら男に戻れなくなった 作:TSスキー
『行って! ────スケッチ・サーヴァント!』
天城真央────いまは魔法少女キララ・パレットであるが、彼女がそう詠唱すると両脇に控えていた2匹の狼がモンスターに向かって走り出す。
現在の場所はアキバダンジョンの地下3階、グレイズボアという巨大なイノシシのモンスターが主に出現する階層である。
独特なタッチで描かれた2匹の狼がグレイズボアに襲いかかり、自慢の突進を放つ暇も与えず、そのまま倒しきった。
片方の狼が落ちた魔石を拾いあげ、それをくわえたままこちらのほうに走って戻ってくる。
天城はそれを受け取ってから、少しだけ狼の頭を撫でてあげた。
「あっ、たぶんレベルが上がったみたいです」
そう言うと彼女は荷物を取り出して、スキルシートで自分のレベルを確認する。
私も横から覗き込むと、確かに【レベル3】の表記が浮かび上がっていた。
「おめでとう、問題なさそうなら次の階層に行こう」
私がそう伝えると、彼女も同じ気持ちだったようで、片方の狼の背に軽やかに飛び乗り、そのまま走り出そうとする。
「待って、移動中は隠蔽魔法かけるから」
「わかりました! ありがとうございます!」
次の4階層までは徒歩でも20分くらいはかかる距離だ。
狼に乗って走るなんて目立つ行動をしたら、道中でかなりの数の冒険者に目撃されてしまうだろう。
とはいえ、すでに戦闘中に他の冒険者が遠巻きにこちらを眺めているのは確認しているので焼け石に水かもしれないが……。
2人と2匹分の隠蔽魔法を施す。
初めて他人にこれを使ったのはつい最近のことだが、この魔法がかけられているもの同士ならお互いの姿は視認できるので、移動にも支障はきたさない。
……こういうところの気は利くのに、肝心なところはどうにもならない。
ちなみに、天城の戦闘中になると隠蔽魔法は私も含めて全員解除することにしている。
よって現在の私は魔法少女マロン・ノワールの衣装の上に、フード付きの全身が隠れるローブを着用中だ。
じゃあ普段からこれにすればいいじゃないかと思われるかもしれないのだが、魔法少女の衣装を隠してしまうと攻撃魔法の威力が大きく下がるのだ。天城のサポートをしているだけなら戦闘はしないので問題ないが、単独15階層攻略でそこまでのデバフを受け入れる気にはなれない。
狼に乗って疾走するキララ・パレットを見守りながら魔法杖に腰掛けて飛行を続ける。
その日は4階層のモンスターと少しだけ戦ってもらい、夕方ごろには引き返してダンジョンを後にした。
■■■
今日は天城真央のレベリングに付き合っただけなので、魔石を換金する必要はない。
ダンジョン前の自動改札であればパスケースに入れている免許証をタッチするだけで通過できるため、少女形態の姿のままダンジョンを出ることにした。
できるだけ人から顔を見られないようにフードを目深にかぶり、天城とタイミングをずらして改札を抜ける。
受付で魔石の換金を終えた彼女を待つこと3分ほど、ダンジョン協会アキバ支部から退出する。
最近は有名人になってしまったという懸念があるので、ダンジョンと関係ない普通の通りでも極力フードをしっかりとかぶるようにしている。
「……気になってたんですけど、どうしてマロンちゃんは私服までフードのものばっかりなんですか?」
「私がマロン・ノワールだとバレないように」
私からすれば、何を当然のことを聞くのだと思ってしまったのだが、天城は不思議そうな表情を見せた後、何かに納得したように頷いた。
というか、天城こそ普通に外を歩いていて大丈夫なのだろうか?
すでにネット上には二人目の魔法少女が現れたということは知られており、隠し撮りのようなキララ・パレットの画像は出回りつつあるのに。
……あれ、よく考えたら、それなら学校にすら行けなくなるのでは?
その疑問に対する解答はすぐに天城が教えてくれた。
「大丈夫ですよ、基本的に変身前の姿と変身後の姿を結び付けられることはありません」
どういうことだ、と聞こうとする前に天城は自分のスマートフォンを開いて一つの画像を見せてくれた。
それはインターネット上に上がっているなかで、現状もっとも写りの良い『魔法少女キララ・パレット』の画像だった。
「この前、この画像を学校の友人に見せたんです」
とんでもないことをするもんだと思った。
若干画質の粗さが残る画像ではあるし、髪型も髪の毛の色ももとの天城真央から大きく変化しているが、それでもこの美少女然とした顔立ちを見れば本人だと気づかないわけがない。
「誰ひとり、この画像の魔法少女がわたしだとは気づきませんでした」
「本当に?」
あまりにも信じがたいというか、非現実的な話だと思ってしまう。
「変身するところを見られない限り、結びつかないんです。────魔法少女ってそういうものじゃないですか?」
疑問形でそう言われてしまったのだが、魔法少女の常識なんて知るわけがない。
だが、まあ、学校で彼女が実験したという結果を聞いた以上、信じないわけにもいかないだろう。
そもそも魔法少女なんていう存在そのものがふざけた固有スキルなのだから、そういう認識阻害のような能力がデフォルトで備わっていても、納得できなくはない。
パーカーのフードをおろすと、視界が一気に開ける。
変装魔法を使って男になっているときよりも視線が低く、世界がやや違って見える。
通行人、とくに男性からの視線をチラチラと感じるが、目を見開いて驚くような反応をするものは誰一人いなかった。
その後しばらく天城と二人で歩き続けたが、周囲の視線こそ集めるものの決定的な出来事は何も起こらなかった。
……
「たしかに」
「そうでしょう! じゃあ行きましょう!」
そう明るい声の天城に手を引かれながら前に進む。
……ん、家の方向こっちじゃないよな。
「どこにいこうとしてる?」
「もちろん、服を買いに!」
じゃあお一人でどうぞ、と伝えたが彼女は有無を言わさず、私の左手を引いて近くの複合商業施設に入ってしまう。
入り口の時点で察するが、10代の女性向けの洋服屋がテナントとして多く入っているビルだ。
「マロンちゃんすごく可愛いのに、ファストファッションのパーカーだけなんてもったいないですから」
「いや、別にこの服でも────」
「レベリングに付き合っていただいたお礼に、洋服代も全部こっちで出しますので!」
そこから私はひたすら天城の着せ替え人形としてあらゆる服屋の試着室にぶち込まれつづけた。
挙句の果てには着替えを覗かれて「下着も買わないとダメですね」と結論をくだされ、ランジェリーショップにまで連れ込まれてしまった。
「どうせなら、可愛い私服のマロン・ノワールの方が嬉しいもんね」
ぼそりと、天城が何か呟いた気がした。
だが、その声はカーテンに遮られて聞き取れなかった。
高評価ありがとうございます(敬称略)
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