現代ダンジョンで魔法少女になったら男に戻れなくなった 作:TSスキー
「今日もお付き合いいただいてありがとうございました」
現在、私は天城の自宅にてケーキをご馳走になっている。
時刻は21時過ぎであり、今日も先ほどまでアキバダンジョンに潜って天城のレベリングに付き合っていたところだ。
「順調にレベル上がってきてるね」
「はい! おかげさまでレベル10になりました」
今日は地下9階層でブラストグリフォン相手に戦う天城を横でサポートしていたが、正直とくに何もやることがなかった。というのも、ここまでの階層を通して天城が苦戦したことが一度もないのである。ワイバーンやグリフォンなどの飛行するモンスター相手にもソロで問題なく対処することができている。
「あ、これ、レベリングに付き合っていただいているお礼です」
そう言いながら天城が差し出してきたのは何かが入った封筒だった。
やけに厚みのある茶封筒だ。
「なにこれ……え?」
封筒の口を覗いて驚いた。
現金が2~3センチほどの厚さで窮屈そうに封筒内に収められていた。
よくみると3つの束で重なっていた。
普通の女子高生からこんな大金が差し出されるという事態に脳が混乱している。
いや、確かに彼女はダンジョンで討伐したモンスターの魔石を換金してはいるが、これまでのものをすべて合わせてもこんな金額にはならないはずだ。
「どうしたの、このお金?」
「え? ああ、元々のわたしの貯金もあったので」
何となく察してはいたのだが、天城はかなり裕福な生活をしている。
このマンションだって駅から徒歩5分の場所でほぼ新築、かつ部屋の広さも2LDKで一人暮らしには十分すぎるほどだ。
何なら、一部屋は来客用として私が泊まらせてもらうこともある。
この立地でこの広さであれば家賃はかなりするはずなのに……。
仙台のご実家が裕福なのだろうか?
そんな疑問を投げかけると、天城の解答はシンプルだった。
「隠してたわけじゃないんですけど、わたし漫画とか描いてて、それの収入がかなりあるのでお金には特に困ってないんです」
紅茶を飲みながらそう答える彼女だった。
彼女の魔法少女としてのモチーフは漫画家であり、頻繁に使用する固有魔法である『スケッチ・サーヴァント』は自分で描いたものを実体化する能力だ。
それを使用して彼女は基本的に狼を2体ほど常に召喚して戦っている。
その狼も含め、どの召喚獣もかなりの画力で描かれているので彼女は絵が得意だというのは知っていたが、まさか漫画家をやっているとは予想外だった。
「すごいね、どんな漫画書いてるの?」
「えっと、そのうちお見せしますので……」
具体的に書いている作品名を教えてもらえはしなかったが、いつかは教えてくれる様子である。
しかも、東京での生活資金は彼女一人で賄っているようで、実家からは仕送りなども貰っていないらしい。
「ここの家賃も経費で落としてるので」とは彼女の談である。
資金源はわかった。
彼女の暮らしぶりがやけに優雅だったことにも納得がいった。
だからといってこんな大金を受け取るわけのはさすがに憚られた。
「さすがにこんな大金受け取れないよ」
「どうしてです? あ、税金関係とかなら税理士紹介しましょうか?」
首を傾げながら逆に質問してくる彼女は、何なら私より社会的なそういう知識に秀でているように思えてしまい、少し恥ずかしかった。
別に贈与税とかの処理が怖くて拒否しているわけではない。
「サポートで付き添いしてるって言っても、私は何もしていないから」
そう、彼女のダンジョン探索でのサポートとはいいながら、私は何もしていない。
強いていえば隠蔽魔法を使っているくらいのものだが、まともに戦闘をしたりしたことは一度もないのだった。
「そんなことないですよ、移動中の隠蔽魔法のサポートとか万が一のことがあった時の保険とか、そもそも腕利きの冒険者一人を丸1日拘束してるんですから正当な報酬です」
だから受け取ってください、とそのまま封筒を押し付けられる。
「あとで栗原さんのことも伝えておくので、税理士の連絡先もラインで送っておきますね」と事後サポートも完璧にされてしまった。
「いやいや、だとしても金額が大きすぎる」
これまで天城のために使った日数をすべてダンジョン探索に費やしていたとしても、ここまでの金額は稼げない。
あげます、いらない、あげます、いらないの応酬を繰り返すこと何度か、根負けしてしまったのは私だった。
この子、一度決めたら絶対にやり通すというか、意志がめちゃめちゃ強いんだもの……。
■■■
「お風呂ありがとう」
「あ、そのパジャマもやっぱり似合ってますね!」
最近はダンジョン探索の日は天城の家に一泊させてもらうことが増えた。
私用のパジャマもこちらにいくつか置かせてもらっている。
……置いているというか、天城がいつの間にか購入してくれていたのであるが。
バスタオルで髪を乾かしてながら、天城を見るとリビングの机の上で何かの作業をしているところだった。
「なにしてるの?」
「今日手に入った固有魔法の検証をしようかと」
天城は今日、レベルが10になった。
私がレベル10になったときは『グラン・ノワール・フィナーレ』という強力な固有魔法を追加で獲得したのだが、天城にもそれがあったらしい。
天城の手元を見ると、魔法陣などを記入するための特殊な紙に何かを描いているところだった。
何かの魔法式でも書いてるのかなと思いながら覗き込んでみると、そこに書かれていたのは私のどの予想とも外れていた。
「間取り図……?」
四角く区切られた空間のなかにはそれぞれリビングを表すLやキッチンを表すKが記入されており、それが間取り図だということはすぐにわかった。
玄関の位置から部屋の配置に何となく既視感を感じたが、それもそのはず、この間取り図はいま私たちがいるこの天城の自宅だったからだ。
「はい、この家の間取り図です」
そう言いながら彼女は、魔法少女としての魔法ペンでリビングの横に新たな四角形を追記した。
さらに、リビングとその四角の間の線の扇形の扉を示す記号を追加する。
というか、フリーハンドなのにめちゃくちゃ綺麗な直線を引いているところに思わず関心してしまった。
さすがプロの漫画家である。
だが、疑問に思う点が一つあった。
「ん? そんなところに部屋なんてなくない?」
そう、彼女が今書いた部分には部屋なんて存在しないのだ。
彼女が扉の記号を描いた場所を現実の間取りで見直すが、そこには何もなくリビングの壁だけが広がっている。
というか、そんな場所に部屋があったら隣の家の人の空間に食い込んでしまっていることが容易に想像される。
その『存在しない部屋』の中央に【MBZ】と記入すると、彼女は詠唱を開始した。
『この間取り、少し描き足します──ルーム・リライト』
間取り図が書かれた魔法紙が光る。
その光は徐々に強くなっていき、最終的にこの空間全体を満たした。
不思議と、眩しすぎるというような不快感はなかったが、再び目を開けると、先ほどまで壁だった場所にあらたな扉が設置されていた。
まじかよ。
「おお、成功ですね」
え、ほんとに部屋を作ったのか、という疑問を解消するために天城と二人でその部屋の扉を開ける。
扉を開けた先は、窓がないせいか真っ暗ではあったが、こちらの部屋から差す光でどの程度の広さなのかはすぐにわかった。
「たしかに、さっきの間取り図と同じくらいの広さ」
「ですね、これがわたしがレベル10になって獲得したスキルみたいです」
目の前に広がる空間に足を踏み入れる。
壁を触れてみると、コンクリートとも何とも言い難い均一な素材で構成されているように感じた。
「窓がないから暗いね」
「……すみません、窓を追加しようとすると空間のイメージが一気に難しくなるみたいなんです」
たしかに、この部屋に窓を設置しようとすると、どう考えても隣家の人の窓と被ってしまうはずだ。
魔法を発動する上での重要なイメージがつきづらいという理由にも納得がいく。
「これをダンジョンで使えたらキャンプ道具とか全部いらなくなる」
「……それもすみません、わたし自身が『閉じた空間』として認識できる場所じゃないと使えないっぽいです」
つまり、ダンジョンだとその階層すべてを魔法紙に記載しないと発動できないようだった。
……なかなか使いどころの難しい魔法だな、と思う。
現状だと自分の家に空間を追加するくらいしか使い道がないので、用途としては保管庫にするくらいのものであろうか。
すでに十分広いこの家に追加の保管庫が必要なのか疑問ではあるが。
その後も天城と二人でこの部屋の耐久力や防音性能などを確認していった。
実験の結果、耐久性能も防音性能も極めて高いことがわかった。
魔力を込めたこぶしで壁を殴ってもびくともしないし、扉を閉じた状態で大声で叫んでも外には一切漏れることはない。
……いや、だとしてもレベル10で手に入る魔法としては微妙なんじゃないかと思ったが、天城本人はなぜか満足そうな表情を浮かべていた。
本人が喜んでいるなら水を差すこともないだろうと思い、何気なく先ほどの間取り図に視線をやる。
「そういえば、この【MBZ】ってなに? リビングのLみたいに書かれてるけど」
何となく気になったので天城にそう聞いてみる。
「あ、いえ、特に意味はないんです。強いて言えば『おまじない』みたいなものですね」
それにしてはこの3文字を描くときに何か特別な感情が乗っているように思えたのだが、……まあ、それも含めて魔法のイメージを確固たるものにするための『おまじない』のようなものだったのだろう。
そう結論づけて、その日の魔法検証は終了となった。
M:魔法少女
B:ぶち犯し
Z:ゾーン
※なお、窓はありません。
高評価ありがとうございます(敬称略)
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