木の葉の摩利支天と呼ばれた忍    作:rOOd

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№09 決着

       【桜月 夜中】

    [木の葉隠れの里 とある森]

 

「・・・・・・なんだあれは?」

 

 長年忍びとして生きてきた私ですら、今、自分

の目を疑った。

 それはサトル先生たちも同じだろう。

 誰もが驚愕の表情を浮かべている。

 

「こんなことが・・・・・・あり得るのか?」

 

 サトル先生が、確認するように私たちへ尋ねた

 

「教頭先生。律樹がチャクラから・・・・・・」

「ええ。チャクラの形状変化による武器形成など

 ・・・・・・信じられん」

 

 だが、律樹が構える龍鱗に覆われた蒼い盾から

は、底知れぬほどのチャクラが溢れ出していた。

 

「なんてチャクラ・・・・・・!」

 

 その圧力に思わず息を呑む。

 

 まるで最上位の忍術が発動した瞬間を間近で見

ているかのような威圧感だった。

 教頭先生も南雲先生も無言のまま目を見開いて

いる。

 ――私と同じく、この盾の異常さを察したのだ

ろう。

 

「さてと、カガリを助けますか」

 

 不敵な笑みを浮かべた律樹は、周囲のざわめき

を意に介さない。

 

「(俺の才牙は実体化の限界時間が約60秒。何と

 か持ってくれよ)」

 

 そして、あの『水波能売命』と呼んでいた盾を

静かに構えた。

 まだ戸惑う教頭先生が疑問を口にする。

 

「しかし、なぜ盾なんだ?」

「確かに。クナイや刀ならわかります。

 ですが、盾などであのスサノオと戦えるとは思

 えません?」

 

 その疑問に答える者はいない。

 次の瞬間――。

 

「ああああああああぁぁぁっ!!」

 

 律樹が持つ武器の異常さを本能的に察したカガ

リは獣のような咆哮を上げた。

 

「何をする気だ・・・・・・!」

 

 その時だった。

 スサノオを覆う黒赤いチャクラから、禍々しい

黒炎が噴き上がる。

 

「まずい!」

 

私は反射的に叫んだ。

 

「あの黒い炎は・・・・・・まさか、伝説の炎遁!?」

 

 黒炎は収束しながら形を変え、先ほどと同じ巨

大なクナイへと姿を変える。

 

「なんと、禍々しい気配を放つクナイだ!」

 

 だが、それで終わりではなかった。

 

 一振りだったはずの炎のクナイが次々と分裂し

瞬く間に数を増やしていく。

 

「な、たった数秒で!」

「しかも、この数はーー!?」

 

 サトル先生たちは忍術を発動する異常な早さに

息を呑んだ。

 次の瞬間、それらは一斉に放たれた。

 

「来るぞ!」

 

 サトル先生が叫ぶ。

 だが、律樹は一歩もさがらず、才牙の力を開放

した。 

 

「――『水波能売命』」

 

 ーー蒼い盾が輝き出した。

 

「閻水ーー“海法師”」

 

 直後、盾を中心に巨大な水の球体が展開され

私たちを囲った。

 

 ――ドォォォォォン!!

 

 無数のクナイは次々と水球の結界に激突した。

 

 全ての雑音をかき消す轟音。

 全て焼き尽くす爆炎。

 まさに死を覚悟した。

 

 しかし、水球は揺らがない。

 炎遁のクナイは表面に触れた瞬間、そのまま水

の中へ沈み込むように勢いを失っていく。

 

「ぜ、全部、防いだだと!?」

 

 南雲先生がその光景に愕然と立ち尽くす。

 だが、それだけでは終わらない。

 水球の内部で莫大なチャクラが渦を巻き始める

 

「まさか――」

 

 教頭先生の顔色が変わった。

 律樹は盾を前方へ突き出した。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

 水球が激しく回転する。

 次の瞬間――。 

 

「水遁・水龍巨弾の術!」 

 

 水球から、荒れ狂う大河と呼ぶにふさわしい巨

大な水龍が飛び出した。

 そのまま、咆哮を上げながらクナイを弾き飛ば

し、スサノオへ襲い掛かる。

 

 ――ドォォォォォン!!!!

 

 水龍はスサノオへ激突した。

 轟音と共に地面が抉れ、巨人の足が数十メート

ルも後退する。

 

「なっ!?スサノオを押し返した!」

 

 私は息を呑んだ。

 あのスサノオを。

 暴走した万華鏡写輪眼の力を。

 たった一人の少年が押し返したのだ。

 しかも――。

 

「防御と攻撃を同時に行った・・・・・・だと?」 

 

 教頭先生の声は震えていた。

 律樹は静かに盾を構え直す。 

 

「・・・・・・この盾は守るだけじゃない」 

 

 その瞳は真っ直ぐカガリを見据えている。

 

「ーー未来を切り開くための力だ!」

 

 すると、盾の装飾の鱗が数枚外れた。

 その鱗が私たちを守った水球の結界が再び展開

された。

 

「先生たちは、この結界から出ないでください」

「おい、律樹!?」

 

 律樹は自分の盾を見てこう言った。

 

「まだこいつをうまく扱えなくてね。先生たちを

 巻き込まない自信がない」

 

 そう言って律樹は、盾の持ち手を取り外した。

 すると盾はひとりでに宙へ浮かび上がる。

 

「・・・・・・時間がない。残り三十秒ってとこか。

 ヨッシャ、押し切る!」

 

 盾を中心に蒼いチャクラの球体が形成される。

 さらに持ち手の柄から伸びたチャクラの鎖が盾

へと繋がり、その瞬間――。

 持ち手の先端から、鋭く湾曲したチャクラの鎌

刃が出現した。

 

「ーー『水波能売命』」

 

 それはまるで、盾と鎌を一体化させた異形の武

器だった。

 

「閻水ーー“蛟龍”」

「な、盾が鎖鎌に変わった!?」 

 

 教頭先生が息を呑む。

 

 律樹は鎌を肩に担ぎながら、暴走するカガリを

見据えた。

 

「さあ、終わりにするぞ、カガリ」

「ああああああああぁぁぁっ!!」

 

 律樹に恐怖するカガリに呼応するようにスサノ

オが咆哮し、再び炎遁で無数のクナイを形成して

放たれた。

 だが――。

 

「遅い」

 

 律樹は冷ややかに呟くと、“蛟龍”の一閃を放つ

 

 次の瞬間、蒼い流水の斬撃が奔る。

 炎遁のクナイは浄化された悪霊のように次々と

かき消え、その軌跡には何一つ残らなかった。

 

「今度はかき消された・・・・・・!」

 

 南雲先生が震える声を漏らした。

 そして律樹は地面を蹴った。

 一直線。

 スサノオへ向かって駆ける。

 

「グオオオオオオオオッ!!」

 

 スサノオの拳が振り下ろされた。

 その一言と共に、『水波能売命』が眩く輝いた。

 蒼い波紋が広がる。

 まるで静かな湖面を思わせる神秘的な光だった

 

 次の瞬間。

 波紋の中から蒼い鎖が無数に出現する。

 鎖は生き物のように空を駆け、次々とスサノオ

へ突き刺さった。

 

「なっ――!?」

 

 暴威を振るっていた巨体が、その場で縫い止め

られたかのように静止する。

 

「き、教頭先生! あれは!?」

「まさか・・・・・・あの蒼い鎖は・・・・・・!」

 

 教頭先生の顔から血の気が引いた。

 

「間違いない・・・・・・ミト様の封印術だ」

 

 周囲がどよめく。

 律樹が使っているのは、かつて初代火影の妻

ミト様が残した封印術。

 それを、この年齢で再現しているというのか。

 

 だが、驚くべきはそこではなかった。

 

 蒼い鎖に貫かれたスサノオから、荒れ狂うチャ

クラが徐々に静まり始めたのだ。

 

 怒り。

 

 憎しみ。

 

 恐怖。

 

 暴走する万華鏡写輪眼を支えていた負の感情が

静かな水面へ落ちた墨のように溶けていく。

 

 スサノオの装甲が砕けた。

 腕が崩れる。

 胴体が消える。

 

 そして――。

 ガラスが割れるような音と共に、巨人は完全に

崩壊した。

 

「あ・・・・・・」

 

 そこに立っていたのは、カガリだった。

 力なく前へ倒れる。

 律樹は咄嗟に抱き止めた。

 

「この馬鹿野郎!」

 

 意識のないカガリへ苦笑する。

 

 だが、次の瞬間。

 

「ああああああああああああ!?」

 

 カガリの身体から再び禍々しいチャクラが漏れ

出した。

 

「まだ残ってるのか!?」

 

 教頭先生が叫ぶ。

 律樹は小さく舌打ちした。

 

「仕方ねぇな」

 

 そして。

 律樹はカガリの顔を引き寄せ――。

 そっと唇を重ねた。

 

「っ!?」

 

 その場にいた全員が固まる。

 舌を絡めながらの口づけを交わした。

 

「「「なっ!?」」」

 

 俺は蒼いチャクラを口から直接送り込んだ。

 

「っー!?っんんんんん!?」

 

 カガリは口づけされているのに気づき、正気に

戻ると顔を真っ赤となった。

 俺の胸をどんどんと叩きながら、悶絶している

カガリの身体から漏れていた禍々しい黒赤いチャ

クラは俺の蒼いチャクラと完全に調和した。

 

「・・・・・・ん」

 

 俺はもう大丈夫だと思い、唇を離した。

 赤い顔のカガリが小さく声を漏らす。

 そして、そのまま緊張がピークし、気絶した。

 律樹は安堵の息を吐く。

 

「よし、任務完了。カガリ救出成功!!」

「「「待てぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」」

 

 私たち全員の叫びが夜の森に響き渡った。 

 

  ーto be continuedー




次回 三代目火影
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