【桜月 早朝】
[木ノ葉隠れの里 木ノ葉病院]
「千手律樹」
三代目は俺に、とてつもない圧を込めて問いか
けた。
「お主は何者だ?」
「どういう意味ですか?」
三代目は髭を撫でながら言った。
「お主が昨日、スサノオを鎮めた力・・・・・・才牙」
鋭い眼差しで俺を見る。
「サトルたちの話を聞く限り、その力は忍術では
ない」
三代目はさらに考察を続けた。
「おそらく仙術でもない」
そう言って天井を見上げ、小さくため息をつく
「そもそも、チャクラを武器として具現化するな
ど・・・・・・あり得ん」
そして改めて俺を見据えた。
「律樹。才牙とは何だ?」
俺は三代目をまっすぐ見返し、答えた。
「才牙とは、忍の魂そのものです」
三代目は困惑したように眉をひそめる。
「魂?」
俺は頷き、話を続けた。
「俺はある時、魂の奥に手を伸ばすような感覚を
掴みました」
三代目は黙って続きを促す。
「魂の奥に手を伸ばす感覚・・・・・・か」
俺は静かに頷いた。
「はい。そして気づいたんです」
自分の胸に手を当てる。
「人は誰しも、心の奥底に願いを持っています」
「願い?」
「守りたいもの。貫きたい信念。譲れない覚悟
――そういうものです」
三代目は目を細めた。
俺は言葉を続ける。
「その願いが極限まで研ぎ澄まされ、魂と一つに
なった時、形を持つ」
目を閉じて胸を掴む。
「それが才牙です」
病室に沈黙が落ちた。
三代目は腕を組む。
「つまり、才牙とは血継限界でもなく、忍術でも
ないと?」
「はい」
俺は即答した。
「才牙は才能ではありません」
「魂の在り方です」
三代目の目が鋭くなる。
「ならば、誰でも使えるのか?」
「理論上は」
その答えに三代目がわずかに目を見開く。
「ただし、ほとんどの人間は辿り着けません」
「なぜだ?」
「自分の魂と向き合うことが、何より苦しいから
です」
俺は静かに言った。
「人は嘘をつけます」
まわりの人たちを見ながら続ける。
「他人にも、自分にも」
俺の言葉でその場の全員が口を閉ざす。
「ですが魂には嘘が通じません」
三代目は俺の言葉に俯いた。
そう、忍は仮面を被る生き物だ。
任務のために感情を殺し、真実を隠す。
だが魂だけは偽れない。
「だから才牙は危険なんです」
俺は真っ直ぐ三代目を見た。
「強い者が才牙を持つんじゃない」
俺は掌を上に向ける。
「才牙を持った者が強くなる」
そして、チャクラの球体を出現させる。
「それほどまでに魂の力は大きいんです」
三代目は長く息を吐いた。
「なるほどな・・・・・・」
そして昨日の出来事を思い出す。
暴走したスサノオ。
里を覆う憎悪。
その全てを前にしても、律樹は一歩も退かな
かった。
「だからお主は、うちはの娘を救えたのか」
「正しさではありません」
俺は首を横に振る。
「守りたかっただけです」
「守りたかった……?」
「はい」
俺は迷いなく答えた。
「カガリが泣く姿を見たくなかった」
「それだけです」
三代目は目を見開く。
里を守るためでもない。
任務だからでもない。
英雄になりたいわけでもない。
ただ一人の少女を守りたい。
その純粋な想いが、あの力を生み出した。
俺の答えに三代目は苦笑した。
「まったく・・・・・・」
「お主は柱間様に似ておるな」
「え?」
「理屈ではなく、人を守ろうとするところがの」
三代目は窓の外へ目を向ける。
朝日が木ノ葉を照らしていた。
「だが、安心はできん」
三代目は再び律樹を見る。
「才牙という力は未知じゃ」
鋭い目つきでこう結論づけた。
「もし道を誤れば、尾獣以上の災厄になる可能性
もある」
「それは否定しません」
俺は静かに答えた。
「だから俺は、使い方を学び続けます」
三代目はしばらく考え込んだ後、小さく頷いた
「よかろう」
三代目は静かに頷いた。
「現時点で、千手律樹を危険人物とは判断せん」
その言葉に病室の空気がわずかに緩む。
だが――
「監視は付ける」
「はい」
「それと・・・・・・」
三代目の目が少しだけ哀れむような色を帯びた
「お主には、まだ越えねばならん試練がある」
「・・・・・・は?」
嫌な予感がした。
次の瞬間――
バァン!!!
病室の扉が爆発したかのような勢いで開いた。
「猿飛先生エエェェ!!」
聞き覚えのある怒号が響く。
金色の髪を揺らしながら現れたのは、
俺の姉であり・・・・・・・・・
伝説の三忍――綱手姉さんだった。
「私の弟を勝手に尋問してんじゃないよ!!」
三代目は頭を抱えた。
「来おったか・・・・・・」
そして律樹は悟る。
これから始まるのは尋問ではない。
もっと恐ろしい――
“綱手姉ちゃんの説教”だと。
ーto be continuedー
次回 縄樹の同情