木の葉の摩利支天と呼ばれた忍    作:rOOd

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閑話 巻き添えの縄樹

       【桜月 昼前】

 

    [木の葉隠れの里 千手家]

 

「・・・・・・りつ兄・・・・・・だ、大丈夫か?」

 

 入学早々問題を起こしたりつ兄は、教官室でサ

トル先生に説教をもらっていたので、オレだけ先

に帰った。

 その後、サトル先生が息を切らしながらやって

来て、「律樹が病院に運ばれた」と言われた。 

 その日の夜、オレは心配で全然眠れなかった。

 

「な、なひゃんとか……!?」

 

 昼前、りつ兄は姉ちゃんと一緒に帰ってきたが

顔は原形が分からないほどボコボコだった。

 

「なんとかに見えねぇよ!?」

 

 オレがツッコミを入れると、姉ちゃんは額に手

を当てて 大きくため息をついた。

 

「はぁ・・・・・・。安心しな。命に別状はないよ」

「そ、それなら良かったけど・・・・・・一体何があっ

 たんだよ?」

 

 オレが尋ねると、姉ちゃんはじろりとりつ兄を

睨んだ。

 

「コイツが女の子にひどいことをしたんだよ」

「ひどいなこと?」

「昨日、こいつと揉めたうちはカガリだったか?

 その子にキスをしたんだよ」

「ぶふっ!?」

 

 オレは盛大に吹き出した。

 

「りつ兄〜!?」

「いりゃ・・・・・・ぢがうん! じ、じじょが・・・・・・

 あったんだ!」

「どんな事情があっても、普通キスしねぇよ!」

 

 オレのツッコミに、姉ちゃんは深く頷く。

 

「その通りだ。だから殴られた」

「いやいや、どう見ても殴られたってレベルじゃ

 ねぇだろ!?」

 

 りつ兄の顔を見れば、誰だってそう思う。

 だが、姉ちゃんは真面目な顔になった。 

 

「まあ、実際は事情が少し複雑でね」

「複雑?」

 

 姉ちゃんはりつ兄を見てこう言った。

 

「サトル先生の話だと、律樹は暴走したカガリを

 止めるために戦った」

「暴走!?戦った!?」

「ああ。写輪眼の力が暴走しかけたそうだ」

 

 姉ちゃんは説明を続けた。

 

「カガリの暴走するチャクラを抑え込むため、律

 樹は直接自分のチャクラを送り込む目的でキス

 をしたと」

 

 姉ちゃんは腕を組む。

 

「結果的にカガリは助かった・・・・・・」

 

 大きくため息をついた。

 

「だが、目を覚ましたカガリが恥ずかしさと怒り

 で律樹を半殺しにしたってわけさ」

「半殺しじゃ済んでない気がする・・・・・・」

 

 オレが呟くと、姉ちゃんは苦笑した。

 

「まぁね、最初は病院の医者がカガリにやられた

 律樹を治療した」

「え?じゃあ、なんで今ボコボコなの!?」

 

 姉ちゃんは冷ややか目でりつ兄を睨みつけた。

 

「その後、私がボコったんだよ」

「なんで!?」

「女として許せなかった。それだけさ・・・・・・」

 

 オレは姉ちゃんの顔を見て、背筋が凍った。

 一方、りつ兄は涙目になりながら小さく呟く。

 

「オリャ・・・・・・わりゅぐない・・・・・・のに・・・・・・」

「いや、キスした時点で八割くらいアウトだろ」

 

 オレは即座にそう言い切った。

 

「まぁ、とりあえず双方無事だった」

「・・・・・・これで無事?」

 

 姉ちゃんはオレの顔を見てため息をついた。

 

「言いたいことはわかるがな」

 

 そう言うと、姉ちゃんは少し真面目な表情にな

って続けた。

 

「縄樹。実は今回の件、箝口令が出されている」

「か、箝口令!?」

 

 姉ちゃんの言葉にオレは驚いた。

 

「関係者以外は一切情報を漏らすなと、猿飛先生

 のキツイ言われたよ」

 

 カガリが写輪眼によって暴走したから?

 けど、そこまでするのか?

 

「・・・・・・つーかさ、それって関係のないオレに言

 っていいの?」

 

 姉ちゃんは首を横に振り、こう言った。

 

「いや、お前も関係者だ」

「・・・・・・いやいや、話の流れからすると、オレは

 無関係じゃん」

 

 姉ちゃんはオレとりつ兄を見比べると、どこか

疲れたような目で口を開いた。

 

「・・・・・・縄樹」

「な、なんだよ?」

「お前、才牙っていう力を使えるんだって?」

 

 姉ちゃんの言葉に、オレは息を呑んだ。

 

「・・・・・・誰から聞いた?」

 

 自分でも驚くほど低い声だった。

 姉ちゃんは少し不思議そうな顔をする。

 

「・・・・・・律樹だよ」

 

 思わず隣を見る。

 りつ兄は気まずそうに頬を掻いていた。

 

「もしかして・・・・・・」

「そう、カガリを助けるために才牙を使ったら

 しい」

 

 

 やっぱりか。

 ・・・・・・りつ兄は昔からそうだった。

 自分のことはどうでもいい。

 

 秘密が知られようが、傷つこうが構わない。

 だけど、大切な誰かが泣いていたら話は別だ。

 

 どんな代償を払ってでも助けようとする。

 

 だから理解できる。

 理解できてしまう。

 

 りつ兄なら、きっと迷わなかった。

 

 才牙の秘密とカガリの命を天秤にかけて。

 そして、カガリを選んだ。

 

「・・・・・・はぁ」

 

 オレは大きく息を吐いた。

 

 怒る気にもなれなかった。

 むしろ胸の奥が妙に苦しかった。

 

 二人だけの秘密だったものが失われた寂しさと。

 

 それでもカガリを助けたかったりつ兄の気持

ちを理解してしまう複雑さが。

 心が少しぐちゃぐちゃに混ざっていた。

 

「まったく・・・・・・」

 

 オレは苦笑する。

 

「りつ兄らしいよ」

 

 そう言うと、りつ兄は困ったように笑った。

 

 

ーto be continuedー

 

 




次回 縄樹の力
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