木の葉の摩利支天と呼ばれた忍    作:rOOd

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閑話 才牙への道のり 壱

        【秋冷 早朝】

 

     [木ノ葉隠れの里 千手家]

 

〜千手律樹 三歳〜

 

「・・・・・・本当に綱手の弟になるとは」

 

 俺は家の縁側に腰を下ろし、庭を眺めながら

これまでのことを振り返っていた。

 赤ん坊の頃はぼんやりとしていた前世の記憶も

成長するにつれて少しずつ鮮明になっていった。

 そして最近になって、ようやく自我がはっきり

と定まった。

 だが、ここまで成長するのは本当に大変だった

 歩けるようになるまで、何もかも思うようには

いかなかったのだから。

 本当に、赤ん坊から人生をやり直す転生者たち

の苦労が、今ならよくわかる。

 

「・・・・・・・・・しかし、あの神様、いい加減すぎる

 だろ」

 

 思わず額に手を当ててため息をつく。

 文句を言っても、今さら前世には戻れない。

 

「・・・・・・まあ、済んだことを考えても仕方ないか」

 

 俺は気持ちを切り替えると、千手家の訓練場へ

向かった。

 修行着に着替えると、畳の上に静かに正座し

両手を合わせる。

 

「ヨシ、まずは修行だ」

 

 前世の記憶を頼りに推測する限り、才牙の習

得には『魂』が必要だと思う。

 もし、才牙が魂から生まれるものだとしたら

――。 

 

「魂に干渉できれば、才牙も得られるはずだ」

 

 そう呟くと、俺はゆっくりと目を閉じた。

 呼吸を整え、意識を己の内側へと沈めていく。

――魂の在りかを探るために。

 

「まあ、どんな世界にも瞑想や座禅といった精神

 修養はあるし、まずはそこから始めるか」

 

 俺は静かに座禅を組み、精神統一の修行を始め

た。

 呼吸をゆっくりと整え、意識が身体の奥深くへ

と潜っていくようにイメージする。

 外界の音を遠ざけ、己の内側だけに意識を集中

させていった。

 

・・・・・・一ヶ月後

 

「・・・・・・・・・あ〜、しんどい」

 

 修行を終えた俺は大の字になって畳へ寝そべっ

た。

 

「しかし、精神統一が、ここまで大変だとは思わ

 なかった」

 

 最初は一分と持たなかったが、それでも毎日続

けた結果、少しずつ集中できる時間が伸びてきた

 今では三十分ぐらいは保てるようになった。

 

「それでも、まだまだ先は長いな・・・・・・」

「律樹、また修行?」

 

 そう呟いたところで、不意に縄樹が声をかけて

きた。

 

「まあな。あ~、疲れた」

「なんだよ。毎日正座してるだけじゃん」

「正座じゃなくて座禅だ」

「同じだろ。ただ座っているだけだし」

 

 その言葉に、俺はぴくりと眉を動かした。

 

「・・・・・・なに〜。だったら、お前もやってみろ」 「え?」

「精神統一だ。やり方を教えてやる」

 

 俺は縄樹を自分の向かいに座らせた。

 

「まずは背筋を伸ばして座禅。呼吸をゆっくり整

 えて、余計なことは考えず、意識を自分の内側

 へ向けるんだ」

「へん! そんなの簡単だよ」

 

 縄樹は自信満々に胸を張ると、勢いよく正座し

た。

 

「見てろよ。オレ様なら一時間くらい余裕だから

 な!」

「・・・・・・その自信が、いつまで続くかな」

 

 俺は腕を組み、ニヤニヤしながら様子を見守る

 

「ふっ。精神統一なんて楽勝――」

 

 そう言いかけた縄樹だったが、三十秒後。

 

「ぐあぁぁぁっ! 足がぁぁぁ!!」

 

 悲鳴を上げると同時に集中が途切れ、そのまま

後ろへひっくり返った。

 

 ドサッ。 

 

「む、無理ぃぃ・・・・・・!」

 

 縄樹は大の字になって畳へ寝そべり、荒い息を

つく。

 その姿を見て、俺は堪えきれず口元を緩めた。

 

「くくっ・・・・・・だから言っただろ」

「笑うな、いててっ足が〜!座禅って、こんなに

 きつかったのかよ!」

「毎日続けてると慣れるんだよ。修行っていうの

 は、そういう地道な積み重ねだからな」

 

 縄樹は悔しそうに頬を膨らませながら、畳の上

で足をさすり続けていた。

 

「まあ、泣き虫の縄樹くんには座禅なんて向いて

 ないな〜」

「あーっ!? 誰が泣き虫だー!!」

「姉さんが任務で帰ってこない日は、夜中に泣い

 てるくせによ」

 

 俺がニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて言う

と、縄樹は顔を真っ赤にして殴りかかってきた。

 

「律樹、ぶっ殺す!!」 

 

 俺は左足を半歩引き、縄樹の拳をひらりとかわ

し、その勢いを利用するように縄樹の右手首を掴

み、軽く体をひねった。

 

「うわっ!?」

 

 次の瞬間、縄樹の体は宙を舞い、畳の上へ見事

に転がった。

 

「いててて・・・・・・・・・」

「力任せに突っ込むからだ。相手の動きをよく見

 ろって、何度も姉さんに言われているだろ?」

「くっそ~! もう一回だ!!」

「止めとけ、何度やっても同じだよ」    

「そんなこと「同じだ。現実を認めてこそ強くな

 る・・・・・・それが忍びだよ」」

 

 俺が静かに言うと、縄樹は反論しかけた口を閉

じ、大人しくなった。

 

「・・・・・・現実を認めたら、本当に強くなれるのか

 よ」

「さあな。でも、現実を認めず、本能だけで戦う

 奴はただのケダモノだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「忍者っていうのは、現実を見据え、耐え忍ぶ者

 のことだ」

  

 縄樹はしばらく口を閉ざし、こう尋ねた。

 

「なら、少しずつでいいから、前に進むための努

 力をすればいいのか?」

「そうだ。縄樹、前に火影になりたいって言って

 いただろ?」

「うん」

「火影への道に近道なんてない。あるのは茨の道

 だけだ。その苦難を乗り越えた者だけが、火影

 になる資格を得られるんだよ」

 

 縄樹は俺の言葉をじっと噛みしめるように俯い

た。

 そして、小さく拳を握りしめる。

 

「・・・・・・分かった。俺、諦めない。絶対に火影に

 なってみせる!」

 

 その瞳には、さっきまでの迷いはなく、強い決

意の光が宿っていた。

 

「よし。そのためにも、まずは座禅を簡単にこな

 せるようにならないとな」

「へっ、見てろよ。律樹より長く座ってみせるさ

 !」

 

 俺たちは顔を見合わせ、どちらからともなく笑

みを浮かべた。

 

ーto be continuedー

 

 




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