木の葉の摩利支天と呼ばれた忍    作:rOOd

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№15 上役たちの駆け引き 中編

       【桜月 夜中】

 

    [木の葉隠れの里 会議室]

 

「さて、次は千手律樹の才牙についてだ」

 

 意外な形でカガリの暴走の報告が終わり、張り

詰めていた会議室の空気がわずかに緩む。

 その変化を見逃さなかった三代目は、静かに口

を開いた。

 

「・・・・・・火影殿は、才牙を使える者たちの実戦を

ご覧になったのですか?」

 

 ダンゾウの問いに、三代目はゆっくりと頷いた

 

「うむ」

 

 三代目は静かに頷く。

 

「まだ極秘した方がいいと判断し、儂と儂の側近

 の暗部、そして今回の関係者のみで観戦した」

「確か、千手律樹以外に双子の弟である縄樹も例

 の“才牙”を使えると聞きましたが?」

 

 三代目は、ダンゾウの情報収集の早さに感心し

ながら頷く。

 

「うむ、その通りだ」

 

 三代目は静かに目を閉じ、あの実戦を思い返し

た。

 

「・・・・・・正直に言おう。儂は驚愕した」

 

 会議室が静まり返る。

 

「あれは単なる子供同士の手合わせではない」

 

 三代目はゆっくりと顔を上げ、一呼吸置く。

 

「才牙という未知の力が、忍の戦いを根底から覆

 しかねん可能性を秘めていた」

 

 そして目を開き、居並ぶ面々をゆっくりと見渡

した。

 

「そして同時に、胸が高鳴った」

 

 誰も予想しなかった言葉だった。

 

「久しく、これほど心を躍らされたことはない」

 

 三代目の瞳には、隠し切れない輝きが宿ってい

た。

 

「律樹と縄樹が互いの力を極限まで引き出し、最

後の最後まで一歩も譲らず戦い抜く姿を見て、儂

の心は晴れやかになった」

 

 あの二人がさらに成長すれば、木ノ葉の未来は

大きく変わる。

 

「・・・・・・儂はそう確信した」

 

 三代目は静かに微笑む。

 

「驚愕と高揚――あの実戦を見た儂の感想は・・・

 ・・・その二つに尽きる」

 

 ダンゾウは、それ以上質問を重ねなかった。

 忍界最高峰と謳われるヒルゼンが、ここまで断

言しているのだ。

 これ以上問い詰めるのは得策ではないと判断し

議題を切り替える。

 

「才牙については、また別の機会に議論するとし

 よう」

 

 ダンゾウは鋭い目つきで全員を睨みつけた。

 

「今は、最も優先すべき問題について話を進める

 べきだ」

 

 その一言で、会議室は静まり返った。

 

 誰もが、ダンゾウが次に何を口にするのか理解

していたからだ。

 

「――うちはカガリについてだ」

 

 ダンゾウに視線が集まる。

 ホムラが静かに問いかけた。

 

「ダンゾウ・・・・・・。カガリをすぐに暗部へ迎え入

 れる気か?」

「その通りだ」

 

 即答だった。

 続いてコハルが口を開く。

 

「やはり、あの不安定さを危惧しての判断か?」

「うむ。話を聞く限り、その方がいいはずだ」

 

 ダンゾウは懸念について話した。

 

「まず、千手律樹は『才牙』という力を自在に制

 御している」

 

 その言葉に、全員が静かに頷く。

 

「一方で、うちはカガリはスサノオを無意識に発

 現させ、暴走した」

 

 ヒカクは腕を組んだまま、黙って耳を傾ける。

 

「今回は律樹が止めたことで被害は最小限に抑え

 られた。だが、次もそうなる保証はない」

 

 ダンゾウの声がさらに低くなる。 

 

「次は、里そのものを壊滅させるかもしれん」

 

 シテンもまた無言のまま、その言葉を受け止め

ていた。

 

「そうなってからでは、すべてが遅い」

 

 それまで沈黙を貫いていたヒカクが、静かに口

を開いた。

 

「・・・・・・私も、カガリの暗部入隊には同意だ」

 

 その一言に、会議室がわずかにざわめく。

 ダンゾウは口元をわずかに緩めた。

 

「ほう・・・・・・うちはの長代理であるお前が同意す

 るとは意外だな」

 

 ヒカクは冷ややかな視線をダンゾウへ向ける。

 

「ダンゾウ、勘違いするな。私は貴様を信用して

 おらん」

 

 その言葉に、ダンゾウの表情から笑みが消えた

 

「だが、今のカガリは里にとっても、一族にとっ

 ても危険な存在になり得るのは事実だ」

 

 ヒカクは苦悶の表情で続けた。

 

「それに対しては否定できん。だからこそ、監視

 と鍛錬が必要だ」 

 

 ヒカクは三代目へ向き直る。

 

「三代目。カガリが暗部に入隊するならば、条件

 があります」

「・・・・・・申してみよ」

「カガリを配属するのは、ダンゾウ率いる『根』

 ではなく、火影直轄の暗部です」

 

 会議室に緊張が走る。

 

「『根』へ預けることだけは認められません」

 

 ヒカクはダンゾウを真っ直ぐ見据え、強い口調

で言い切った。

 

「火影直轄の暗部であれば、私はカガリの入隊に

 賛同します」

 

 相談役たちは互いに視線を交わした後、水戸門

ホムラが静かに口を開いた。

 

「・・・・・・わしも、ヒカクの意見に賛成だ」

 

 その言葉に、うたたねコハルも頷く。

 

「うむ。『根』ではなく、火影直轄の暗部ならば問

 題はない」

 

 シテンも腕を組んだまま口を開く。

 

「現状を考えれば、その判断が最も妥当ですな」

 

 三代目は会議室を見渡し、皆の意見を整理する

ため、考え込んでいた。

 その瞬間――

 

バンッ!!

 

 会議室の扉が勢いよく開かれた。

 

「猿飛先生エエェェ!!」

 

 息を切らせて飛び込んできたのは綱手だった。

 

「綱手!?何事じゃ!」

 

 綱手は構わず、三代目の席まで歩み寄る。

 

「なんで、カガリを暗部に放り込むんだい!?」

 

 会議室が静まり返る。

 三代目は小さく息を吐いた。

 

「・・・・・・綱手、少しは空気を読め」

「うるさい、そんなことはどうでもいい!」

 

 綱手は机を叩き、怒りをあらわにする。

 

「あの子は私の妹分なんだよ!」

「い、いつから、そんな関係になった?」

 

 三代目は綱手の突然の主張に、思わず引き気味

になる。

 

「つい、最近さ。あの子はもう、私の大事な妹分

 だ!!」

 

 綱手の勢いに押されながらも、三代目は静かに

首を振った。

 

「落ち着け綱手。お前の気持ちはよく分かった」

 

 一度言葉を区切り、火影としての厳しい表情に

戻る。

 

「だがな。今回の件は、情だけで判断するわけに

 はいかん」

 

 会議室の空気が引き締まる。

 

「うちはカガリは万華鏡写輪眼を開眼し、暴走し

 のだ」

 

 綱手は神妙な顔で三代目の言葉を聞く。

 

「さらにだ。不完全とはいえ、スサノオまで発現

 させた」

 

 三代目は全員を見渡した。

 

「幸い、千手律樹がおったから被害は最小限で済

 んだ」

 

 三代目は綱手を見据えた。

 

「しかし、もしあの場に律樹がおらなんだら・・・・・・

 里に甚大な被害が出ていた可能性は高い」

 

 誰も反論できない。

 

「だからこそ、儂はカガリを危険視しておる」

 

 三代目は小さくため息をついた。

 

「これはあの子個人を憎んでいるからではない。

 里を預かる火影としての責務じゃ」

 

 三代目の声は静かだったが、その一言一言に

は重みがあった。

 

「情に流されれば、里を守ることはできん。

 儂は火影として、最悪の事態を常に想定せねば 

 ならんのだ」 

 

 綱手は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。 

 

「・・・・・・すみません。少し熱くなりすぎました」

 

 さっきまでの怒気は消え、部下たちが知る冷静

な上忍・綱手の表情へ戻る。

 

「火影様」

 

 綱手は真っ直ぐ三代目を見据えた。

 

「カガリが危険な存在だという判断は理解してい

 ます」

 

 会議室が静まり返る。

 

「ですが、危険だからといって遠ざければ、あの

 子はますます孤立します」

 

 綱手は落ち着いた口調で続けた。

 

「だから、ご提案があります」

 

 三代目が静かに頷く。

 

「カガリを千手家で預かってください」

 

 その一言に、会議室の空気が揺れた。

 

「私と縄樹、そして律樹で見守ります。暴走の危

 険があるなら、その兆候を常に監視し、必要な

 ら私が医療忍者として対処します」

 

 綱手は一切迷いなく言い切る。

 

「危険だから切り捨てるのではなく、危険だから

 こそ信頼できる者のそばに置く。それが最善だ

 と、私は考えます」

「待て」

 

 ダンゾウは綱手を鋭く睨みつけた。

 

「綱手、その提案は受け入れられん」

 

 会議室に再び緊張が走る。

 

「だが――」

 

 ダンゾウはゆっくりとヒカクへ視線を向けた。

 

「ヒカクの言う通り、カガリを『根』へ入れるべ

 きではないという点については同意だ」

 

 その言葉に、ヒカクはわずかに眉を上げる。

 

「万華鏡写輪眼を開眼した娘を、儂の配下へ置け

 ば、余計な疑念を招く」

 

 ダンゾウはゆっくりと顔を上げた

 

「うちはの者も納得せぬだろう」

 

 ダンゾウは腕を組み、続ける。

 

「ゆえに、火影直轄の暗部で監視・育成するとい

 う案には異論はない」

 

 そこで鋭い視線を綱手へ戻した。

 

「しかし、千手家で暮らさせるのは別問題だ」 

「情に流されるな、綱手」

「万華鏡写輪眼の危険性は、お前も理解している

 はずだ。里の安全を考えるなら、公私の区別は

 つけねばならん」

 

 ダンゾウの低い声が会議室に響いた。

 

ーto be continuedー

 

 




次回 カガリの出生
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