木の葉の摩利支天と呼ばれた忍    作:rOOd

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№17 家族会議

      【桜月 昼前】

    [木の葉隠れの里 千手家]

 

「これより千手家、家族会議を始める」

 

 休日の昼前。

 姉ちゃんに「全員、居間へ集合」と呼ばれた。

 オレとりつ兄は顔を見合わせながら集まった。

 

「姉ちゃん、いきなり何だよ」 

「そう構えるな、縄樹。簡単に言えば、カガリに

 ついてだ」

「えっ!?カガリ?」

 

 りつ兄はすぐに何かを察したように姉ちゃんを

見る。

 

「・・・・・・やっぱりさ。カガリを、うちで預かるこ

 とにしたのか?」

「その通りだよ、律樹」

 

 その言葉に、オレは思わず声を上げた。

 

「えっ!? なんで?」

「暗部に入れられるのを阻止するため、か」

「相変わらずだね。ほんと何でもお見通しだよ

 アンタは」

 

 オレだけが話についていけず、きょとんとして

いる。

 一方、りつ兄は次々と推測を口にした。

 

「大方、ダンゾウの差し金だろ」

「まあね。あいつを言いくるめるのには苦労した

 よ」

「ダ、ダンゾウって・・・・・・志村ダンゾウ?」

「そうさ。暗部の総司令官のダンゾウだ」

 

 その名はアカデミー生のオレですら聞いたがあ

るので、思わず息をのんだ。

 

「そんな大物まで関わってたのかよ・・・・・・」

 

 姉ちゃんとりつ兄は黙り込んだ。

 やがて、最初に口を開いたのは姉ちゃんだった

 

「縄樹。この前、律樹がカガリに才牙を使ったこ

とは覚えているね?」

「え? あっ、うん」

 

 姉ちゃんは真剣な眼差しでオレを見つめる。

 

「その時、どうして律樹が才牙を使ったのか、

 不思議に思わなかったかい?」

「し、写輪眼を止めるためだろ?」

 

 オレがそう答えると、姉ちゃんは静かに首を振

った。

 

「それだけじゃない」

 

 重苦しい沈黙が居間を包む。

 

「カガリは、ただ写輪眼が開眼しただけじゃない

 あの子は、その場で右眼を万華鏡写輪眼まで開

 眼したんだ」

「・・・・・・えっ?」

 

 オレは思わず息を呑む。

 ま、万華鏡写輪眼!?

 それって、じいちゃんと対立していた、うちは

マダラが持っていたという、あの伝説の瞳じゃな

いのか・・・・・・!?

 

「しかも、その力に呼応するようにチャクラが暴

 走し、不完全ながらスサノオまで発現した」

 

 追い打ちをかけるような事実に、オレの頭の中

は真っ白になる。

 

 スサノオ……。 

 炎の巨人を生み出すと伝えられる、うちは一族

最強の力――。

 

 そんなものを、カガリが・・・・・・?

 

「そ、そんな・・・・・・」  

「律樹が才牙を使った本当の理由は、暴走したチ

 ャクラを鎮め、カガリの命を守るためだったん

 だよ」

 

 姉ちゃんの言葉は静かだったが、その重みはオ

レの胸に深く突き刺さった。

 

「姉さん。ダンゾウ抜きだと、上役たちの意見は

 どうだったの?」

 

 オレが混乱していると、りつ兄は会議の動向を

聞いた。

 

「それがカガリを暗部に入隊させることで一致し

 たんだよ、律樹」

 

 姉ちゃんはりつ兄を見て静かに頷く。

 

「全員か?うちはの代表も?」

「ああ。うちはの者ですら反対しなかった」

「そうか・・・・・・厄介だな」

「まあね。もしカガリが暗部に入ったら、どうな

 るか・・・・・・想像できるだろ?」

 

 姉ちゃんの言葉に、りつ兄は静かに目を閉じた

 

「・・・・・・ああ。暗部は任務がすべてだ。カガリは

 里のためだけに使われ、普通の人生は二度と歩

 めなくなる」

 

 りつ兄は悲しい表情を浮かべた。

 

「・・・・・・なんでだよ」

 

 縄樹は悔しそうに拳を握り締めた。

 

「なんで、うちはの人たちまでカガリを差し出す

 ようなマネをするんだ?」 

 

 その声は怒りに震えていた。

 

「同じ一族なんだろ?守ろうとは思わなかったの

 かよ・・・・・・」

「縄樹、それは少し違う」

「彼らはカガリを憎んでいるわけじゃない。ただ

 恐れているんだ」

「 恐れている?」

 

 綱手は縄樹をまっすぐ見つめた。

 

「縄樹、お前は千手朔夜という人を知っている

 か?」

「千手朔夜・・・・・・?」

 

 縄樹は首を傾げる。

 

「いや、知らない」

 

 綱手は静かに頷いた。

 

「それも無理はない。お前が生まれる前に亡くな

 った人だからな」

「その人が・・・・・・カガリと関係あるのか?」

「ああ」

 

 綱手は一拍置き、静かに告げた。 

 

「カガリの母が・・・・・・千手朔夜だ」

「・・・・・・え?」

 

 縄樹は目を見開いた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 

 呼吸を荒げながら問う。

 

「千手ってことは・・・・・・」

 

 綱手は静かに頷く。

 

「ああ。カガリには、千手の血が流れている」

 

「そんな・・・・・・」

 

 縄樹は言葉を失った。

 

「じゃあ、カガリは・・・・・・うちはだけじゃなかっ

 たのか?」

「そうだ。あの子は、うちはと千手

 ――両方の血を受け継いで生まれた子なんだ」

 

 りつ兄は静かに呟いた。

 

「・・・・・・なるほど。これで全ての辻褄が合う」

「え? りつ兄?」

「あの異常な成長速度も説明がつくよ」

 

 りつ兄はゆっくりと顔を上げる。

 

「うちはの精神チャクラと、千手の身体チャクラ

 を受け継いでいるのなら・・・・・・万華鏡写輪眼の

 開眼のありえない早さも、不完全のスサノオの

 発現も不思議じゃない・・・・・・むしろ必然だ」

 

 そして、その視線を綱手へ向けた。

 

「姉さん。もしこのままカガリの暴走が続いたら

 どうなる?」

 

 綱手は重く目を伏せる。

 

「・・・・・・いずれ精神が耐え切れなくなるよ。最後

 は精神崩壊――廃人になる」

「・・・・・・やっぱり、そうか」

 

 りつ兄は小さくため息をついた。

 

「なら、怪我の功名だったか・・・・・・。アカデミー

 でのケンカは、結果的には正解だったな」

「えっ!? なんで?」

 

 縄樹が首を傾げると、綱手は静かに頷いた。

 

「結果的にはね。でも、まさか入学早々に問題を

 起こすとは思わなかったよ。あんた、私より自

 来也に似てるね」

「俺は自来也さんみたいなスケベじゃないよ」

「はん、何言ってるんだい。カガリの唇を奪った

 くせに」

 

 姉さんにそう言われ、俺は何も言い返せず、口

笛を吹くふりをした。

 縄樹が不思議そうに眉をひそめた。

 

「でも、りつ兄。なんでアカデミーでケンカして

 良かったんだ?」

 

 律樹は腕を組み、静かに答えた。

 

「カガリの精神は、限界寸前だったんだ」

「限界寸前?」

「ああ。あのまま誰にも本音を吐き出せず、一人

 で抱え込み続けていた」

 

 姉ちゃんは苦悶の表情を浮かべた。

 

「そうなれば、もっと遅い時期に暴走していたは

 ずだよ」

 

 律樹も苦い表情を浮かべる。

 

「そうだね。その頃には写輪眼も忍術も、今より

 遥かに成長していただろう」

 

 縄樹は息を呑んだ。

 

「それって」

「ああ、今回の暴走した時の被害とは比べ物にな

 らなかったはずだ」

 

 姉ちゃんは額を押さえた。

 

「下手をすれば教師や生徒だけじゃ済まない」

 

 そのまま、顔を上げた。

 

「里全体を巻き込む惨事になっていた可能性すら

 ある」

 

 居間が静まり返る。

 綱手は小さく頷いた。 

 

「だから結果的には、あのケンカで感情が爆発し

 たのは不幸中の幸いか」

 

 綱手は二人を静かに見渡し、ゆっくりと口を開

いた。

 

「だけど、遅かれ早かれ、カガリの危険性は必ず

 里の上層部に知られていただろう」 

 

 居間に重い空気が流れる。

 

「うちはと千手、二つの血を受け継ぎ、幼くして

 万華鏡写輪眼に覚醒した子・・・・・・。そんな存在

 を、里が放っておくはずがない」

 

 オレは思わず拳を握り締めた。 

 

「じゃあ・・・・・・どうすればよかったんだよ」

「だからこそ、解決策は一つしかないよ」

 

 綱手は静かに息を吐くと、りつ兄がゆっくりと

顔を上げる。

 

「・・・・・・さっきも言ったように、カガリを千手家

 の人間として迎え入れる。だが、それだけでは

 説得力が弱い」

 

 そこで一度言葉を切り、綱手へ視線を向けた。

 綱手は静かに頷く。

 

「律樹、お前がカガリと婚約することだ」

「・・・・・・えっ!?」

 

 オレは思わず声を上げた。

 りつ兄だけは驚くことなく、静かに目を閉じた

 

「そうするかしかないか・・・・・・」

 

 りつ兄は姉ちゃんへ視線を向け、静かに尋ねた

 

「三代目と話し合って出した結論なの?」

「いや、私の独断だ。けど、猿飛先生も同じ考え

 だと思う」

「えっ・・・・・・」

 

 オレは目を丸くした。

 

「ってことは、姉ちゃんが勝手に婚約を決めたっ

 てこと?」

「そういうことだ」

 

 綱手はあっさりと頷く。

 

「うわぁ・・・・・・」

 

 オレは苦笑いを浮かべながら頭をかいた。

 

「三代目様、まだ何も知らないんだろ? なんか

 ・・・・・・ちょっと可哀想だな」

 

 りつ兄も思わず苦笑を漏らし、綱手は肩をすく

めるだけだった。

 

ーto be continuedー

 

 




次回 婚約あいさつ
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